trpgダブルクロス:天開司卓「Certification of Hero」   作:夏目ヒビキ

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オープニングフェイズ
シーン1 「蒼羽 朱」


休日のショッピングモール。中は喧騒に包まれており、多種多様な人々が歩いている。家族連れ、カップル、友人、若干柄の悪い集団。様々な人がいるが、すべからくして同じ事、それは確かに幸せな日常を過ごしているということだ。

 

「いらっしゃいませー!!」

 

「何だよコレなんでこんな高ぇんだよゴルァ?!」

 

「すみませんお客様。そちらはそのお値段からお下げすることはできないんですよぉ」

 

「んだオラァ?……あー。まあええわ。買うわ」

 

「ありがとうございます。こちら19万8000円でございます〜」

 

「んー高っかいなぁやっぱ?!」

 

 

ーー本当に、多種多様である。

 

そんな多様性の中に、飛び込もうとする二人組。蒼羽朱と、森藤涯である。二人は幼馴染で昔からよく遊んだりもしており、結構な仲良しだ。だが、恋人ではないしお互いそのつもりは無いはずなので、今回の外出もあくまで友人として、だった。

 

「いやぁー!!今日は付き合ってくれてありがとう!!」

 

「……」

 

そう快活に笑う朱に対して森藤の顔はあまり明るくなかったが、朱の方はあまり気にしていないようだ。

 

「寝てるとこ叩き起こしちゃってごめんね!一人は寂しかったからさ、一緒に行きたかったんだよ!!」

 

「……まあ、あそこまで枕元で叫ばれたらなぁ。行くしかねぇよ。寝れねぇし」

 

未だ半開きの目をこする森藤。こうやって無理やり引きづり回されるのも慣れたものなので、別に何とも思わなかったが。

 

「ごめんって!!そんなことより遊ぼ遊ぼ!!別に何かしたい訳じゃないけど……ご飯食べる?買い物する??森藤はどうしたい??」

 

「……今すぐベッドに戻りたい」

 

「だぁーめだって!!せっかく来たんだから一緒に遊ぼうよ!!ほらほらこっち来て!!あ、ぬいぐるみだ!!かわいーい!!!!」

 

「んなぁぁぁぁあ」

 

森藤の脱力しきった声は当然、朱には届かなかった。

 

 

 

 

 

 

「どうする?次どこ行く???」

 

手に抱えたぬいぐるみをさすりながら、嬉しそうに頷く朱。

 

「ああ、そろそろゲーセンにでも行くか?」

 

彼女に振り回されてもうすでに2時間ほど経つのだが、森藤自身もそれなりに楽しんでいるようで、悪態も最初ほどはつかなくなっていた。

 

「いいねぇ!待ってました!!今度こそ前回のリベンジをーー」

 

「はいはい。また小銭貸せとかやめてくれよ?」

 

「うん。頑張る!」

 

「頑張るって……お前なぁ……」

 

「さあさあ行こ行こ!!時間は有限だー!!!」

 

そう行って先に歩きだす朱を、後から追う森藤。人混みを掻き分けながら、彼女についていく。

 

(まったく、しょうがねぇやつだな……)

 

ふと周りを見渡せば、喧騒に満ち、笑顔が溢れている。かけがえのない日常。何気ない日常。こんな日々がいつまでも、いつまでも続けば、続くなら。

 

ーーそんな願いを抱くのは、彼らの過去を鑑みれば当然なのだろう。だが、彼ら運命を司る神は、それを許してはくれなかった。

 

 

 

ーー突如、爆音が響く。

 

何が起こったのか?そんなことを考える暇もない。程なくして楽しげな雰囲気は一変した。絶叫と轟音が場を支配する。悲鳴と共に炎があちらこちらから上がる。

 

何秒気を失っていただろうか。朱は伝わる熱波に怯みながらも、必死で目を開ける。その瞳に映ったのは、爆破炎上するブティックストアと、その場に先ほどまできらびやかに展示されていた化学繊維が炎上する姿。そして、ようやく状況を飲みこむ。するとーー

 

「ッーー」

 

 

身体のあちこちが痛い。気がつけば全身から血が出ている。視界も真っ赤に染まっていた。

 

「ああ!!痛い!!!痛い!!!」

 

全身を焦がすような痛みと熱に、苦しみ、悶える朱。だが、そんな場面でも彼女は友人のことを忘れなかった。

 

(……そういえば、森藤はーー)

 

思う通りに動かない身体を引きずりながら、辺りを見渡す。すると、そこには頭から血を流して倒れ込んでいる森藤の姿があった。

 

「森藤?!森藤?!」

 

呼びかけても返事がない。まさか、まさか、まさかーー

 

(こ、こんな時はどうすればーーまず血を止めないと。でもやり方がーー)

 

 

そんなことを考える間も無く、続いてあちらこちらのショーウィンドウから轟炎と爆音が上がる。先ほど以上に激しくなる瓦礫の束と炎。意識が朦朧とする。視界が、だんだんと覚束なくなる。

 

 

(私は、また何もできないのか?あの時みたいに、また?そんなの嫌だ。今度こそ、私はーー)

 

 

彼女の強い願いと反対に、視界は段々と薄暗くなっていく。迫り来るセカイと、逃れられない死。そして、淵に立ち尽くしていた意識でさえもついにーー

 

 

 

 

ーー黒く、昏い奈落へと落ちていった。

 

 

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