フルパワーグリッドマンの首を持ち上げるレパード。
グリッドマンは蹴りを入れようとするが、気付いたレパードによって地面に叩き付けられてしまう。あまりにも暴力にうめき声を上げるグリッドマン。
さらにレパードがもう片方の腕を上げ、鋭い鉤爪を見せ付けるように向ける。早く助けないと殺されてしまう。ハルオはすっかり重くなったヴァルチャーを持ち上げようとする。
「……くそっ……」
グリッドマンは……裕太達は、本来このシティに関係なかった。
なのに率先して協力してくれて、共に戦っている。
それに彼らには家族がいる。家族を残してこの世界で死んでいくなんて、果たして許される事なのか。少なくともハルオはそんな事など許しはしない。
彼らには生き残ってほしい。元の世界に帰って家族と日常に触れ合って欲しい。
自分のような人間が増えるのは、二度とあってはならない。
「ううう……ウオオオオオオオオオオオオ!!!」
グリッドマン達を助ける為、ハルオはヴァルチャーを動かす。
レパードへと急接近し、ヴァルチャーの巨大な翼で打撃を加えた。それによってグリッドマンを離しつつ吹っ飛ばされる。
だがレパードの棘がヴァルチャーへと射出。棘がヴァルチャーの左腕に貫通し、壁に磔をされる。
そうして動かなくなったハルオ機に迫るレパード。するとその瞬間大きく揺れ出す空間。突然の出来事にレパードの体勢が崩れていく。
『先輩!!』
体勢を崩したレパードに銃弾が撃ち込まれた。ユウコのヴァルチャーからだ。
何発も、何発も喰らい続けた結果、背中から伸びていた棘が粉々に砕かれる。攻撃の影響でユウコ機に振り返るレパード。
ただ気を取られすぎていた。あまりにもユウコ機を注目する余り、フルパワーグリッドマンの接近に気付いていなかった。
『ハアアアアアアア!!』
振りかぶられるキャリバーの斬撃。レパードが振り向いた時には左腕が切断。断面から迸る火花に、床に転がる左腕。
部位をもぎ取られた焦りからか、レパードがグリッドマンから離れるように飛び下がった。まるでヤモリのように壁に張り付く。
『サカキ大尉! メカゴジラシティにゴジラが出現している!! 今の揺れは奴の熱線だ!!』
「!!」
突如としてマーティンの報告が舞い込んだ。ハルオはそれを聞いて強く反応する。
自分達を破滅に追いやった宿敵が、このメカゴジラシティを破壊しようとしているのだ。かつて倒した敵を発見して、奴は何を思っているのか。
それよりもレパードの方だ。ハルオは磔にされたヴァルチャーの左腕を引きちぎり、レパードに照準を向ける。
しかし捉えようとしても、すぐにどこかへと飛んでしまう。まるで獣のような俊敏性でハルオ達をかく乱していく。
これでは攻撃しようにも出来ない。ハルオが歯ぎしりする……が、
『ダアアアアアアアア!!』
グリッドマンやヴァルチャーの背後から青い怪獣が出現。手の甲の鉤爪でレパードの首を刺し貫いた。
あれは、先ほどの巨大怪獣の上に乗っていた
怪獣が出現した事に、ハルオはおろかグリッドマン達も驚く。
『おい、一体何の用だ!? 俺達の邪魔しに来たのか!?』
『勘違いするな!! ここでお前達が死なれたら困るだけだ!!』
しかし彼は目に留まらぬ速さで回り込み、レパードに羽交い締め。もがこうと暴れるレパードだが、それでも決して離さない
『早くやれ!! こいつを倒せばこの街が終わるんだろう!?』
「!」
『何突っ立っているんだ!? とっととやれ!! グリッドマン!!』
自分が攻撃されるのを承知で言っている。
そう分かったハルオはフルパワーグリッドマンへと振り向く。彼は
しかし覚悟を決めただろうか。彼はキャリバーを掲げ、高らかに叫ぶ。
『フルパワー……チャージィ!!』
キャリバーの刃にエネルギーが放出され、あたかも巨大な剣になる。
全身の装甲が金色に発光し、この暗い空間を照らす。
そしてキャリバーを、動かなくなったレパードへと振りかぶる。
『グリッドォ……フルパワーフィニッシュウウウウ!!』
エネルギーの切っ先でドームが切り裂かれた。
また攻撃がレパードに向かう直前、
エネルギーの切っ先がレパードを一刀両断。大量の部品をばら蒔き、放電を放ちながら身体が崩れていき、爆散。
空間に満たされていく黒煙。やがてキャリバーが斬り裂いた壁の亀裂から、その煙が排出されていった。
『……どうやら我々が勝ったようだな』
『だね』
マックスとヴィットの言葉に、ハルオはやっと実感する。
自分達は勝った。あの化け物を倒す事が出来た。もしグリッドマン達がいなかったら、今頃どうなっていたか。
心の底から安堵をするハルオ。するとそんな彼にグリッドマンが振り向く。
『サカキ、後は君が頭部を破壊するだけだ』
「!」
意外な言葉だった。思わずハルオは目を丸くする。
『確かにこれはお前の役目……お前自身がトドメを刺すべきだ……』
『そうそう、とっととやって終わりにしようぜ。今までのお礼を兼ねて、あの頭部にガツンってさ』
「…………」
キャリバーもボラーも促している。
まさかこんな事になるとはハルオも予想付かなかった。だがメカゴジラシティは元はと言えば、ハルオ自身が管轄していた物、彼らの言い分は至極正しい。
ハルオは真っすぐメカゴジラの頭部を見据えた。未だ頭部は最初発見した時と同じく、空間の中央に転がっている。
「……ガルグ。お前はあの時に言っていたな。人を超え、ゴジラを超えたその果てに至れと……。今の俺なら、お前の言葉に返す事が出来る」
ガルグとの最期の会話の時、ハルオは何も答えられなかった。
それはいずれそうなるのではと危惧し、ガルグに返す言葉が見つからなかったからだと彼は思っている。だがこの戦いを経て、彼は自分の答えを見つけた。
その答えを口にしようと、火器を頭部へと向ける。
「俺は、お前の言った人ならざる者にはならないようだ。このナノメタルに屈する事もない……こんな物など必要ないんだ」
彼はハッキリとガルグ……そしてメカゴジラシティに伝える。
彼をそうさせたのは他ならない、隣に立っているグリッドマン達だ。別世界の住人なのに、身体を張って一緒に戦ってきた『仲間達』。そんな彼らに比べればナノメタルなど取るに足らない。
もちろんグリッドマンだけではない。六花や内海、そしてたくさんの仲間が、今ハルオのそばにいる。
六花が言っていた「一人じゃない」。この言葉が、ハルオを
「だから俺は……」
操縦桿を握り、スイッチに指を添えるハルオ。
その時、頭部の目に赤い光が灯る。まるで獣が口を開けるようにパーツが展開されていく。
「一人の人間として、仲間と生きていく!!」
パーツの奥からレーザーは放出。ハルオに直進。
しかしハルオは寸前で回避。火器を発射。
一発の銃弾がメカゴジラの頭部に着弾。無機質な装甲が熱によって変形し、中から破裂。
粉々に吹き飛ぶ瞬間を、ハルオは目を離さずに見守った。かつて『人類最後の希望』とされた怪獣が今、目の前で破壊されていく様を。
『……終わったか』
「……ああ、終わった」
メカゴジラの頭部は金属の破片となり、火を噴いていた。
ハルオがグリッドマンにそう答えたが、突如として爆発音と振動が襲い掛かる。
「奴の攻撃か……全員、ここから離脱する!!」
無言で頷いたグリッドマンがツインドリルブレイクを発射し、壁に穴を開ける。そこからハルオ達が脱出した。
すぐにメカゴジラシティの上空へと急上昇。ある程度の高さまで上がり、シティの様子を確認する。
──ウ゛オ゛オオオオオオオオオオオオオオ……… ──
メカゴジラシティの前に巨大な獣が立っている。ゴジラだ。
ゴジラの大木のような体表が、みるみる内に赤く帯びていった。それに比例して、彼の中心に陽炎と大量の火の粉が発生して燃え上がる。
熱を利用した攻撃だ。ハルオが気付いた時には、シティの砲台が少し溶解しつつ爆発する。
爆発、爆発、爆発、爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発爆発。
膨大な熱エネルギーによって砲台が誘爆したのだ。一瞬にしてシティが爆炎にまみれ、やがて火の海と化す。
――オ゛オ゛オ゛オオオオオオオオオオオオオオンンンン!!!――
燃え上がる炎の中、ゴジラは帯電を頭部に収束。歪に溶けていくシティへと熱線を薙ぎ払った。
15キロ以上の範囲を及ぶシティ全体が貫通され、次々に爆散。
さらにゴジラが再び熱線を繰り出し、一発目を免れた物も爆散――破壊。
広大な機動増殖都市は、ハルオ達の目の前で一瞬にして焦土と化し、
怪獣の王は、勝利を歓喜するように咆哮を上げた。