GODGRID ─決戦機動電光超人─   作:ミレニあん

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第4回 交・流 ‐ハルオと裕太‐

「ふむ、落ちた衝撃で部品が破損しているみたいだ……」

 

 薄暗い部屋の中。破損したジャンクを見ながらマックスが唸る。

 

 今、マックスとキャリバーでジャンクの修理を行っていた。とは言っても何もない場所でなおかつ修理道具もなし。この時点では、いくら新世紀中学生でも完全に直すのは難しいらしい。

 

 裕太はその作業をそばで見守る。ジャンクいじりなどやった事ないので、黙って修理が終わるのを待つしかなかった。

 

「おお、ここにいたかぁ……ってジャンクがやべぇ事になってんじゃん」

 

「これは厄介だなぁ、見る限りだと」

 

 部屋に二人の人物が入ってきた。

 ボラーとヴィットである。

 

「……ようやく戻ってきたか。外はどうだった?」

 

「いやさぁ、そこら中森だらけでめっちゃ不気味だったんだよな。しかも俺達は平気だったけど大気が猛毒らしいぜ」

 

「後、濃厚な霧のおかげで通信が遮断されているって。おかげでスマホもいじれないよ」

 

「そうか……とりあえず時間がない。ジャンクを直さない事にはグリッドマンが目覚めない」

 

 ヴィットの呑気な発言をスルー。キャリバーの指示で二人もジャンク修理に携わった。

 と、またもや一人部屋に入ってくる。

 

「いやぁ遅れてすまない。工具を持ってきたよ」

 

 マーティンが戻ってきたようだ。修理用の工具箱を持ってくると一旦離れていたのだ。

 

「助かるマーティン博士。それと色々と面倒を掛けてすまない」

 

「いやいやお互い様だよ。僕も前時代のジャンクを触れると思うとワクワクしてきてさ。さて、どこから手を付けようかなぁ」

 

 まるで新しいおもちゃに触れるように、嬉しそうに手を付けるマーティン。

 裕太は少しクスリと綻びつつも、彼に頭を下げる。

 

「本当にありがとうございます。見知らずの俺達にここまでしてくれて……」

 

「別にいいんだよ。それに響君、人間は本来助け合いながら生きていく生物なんだ。どんな外道でもそれは例外じゃない。君達の住む世界でも同様のはずだ」

 

「は、はぁ……」

 

 いきなり哲学……あるいは科学的な事をマーティンが言いだす。

 それは彼自身が科学者だから、というのもあるだろうか。

 

「僕達はその助け合いの共生を一切しない存在を知っている。確かにあれは貴重な研究対象だけど、同時になんとも孤独な存在だなと思いたくなるんだ」

 

「孤独……ですか?」

 

「ああ、色んな意味でね。それで話を戻すけど、君達が別世界の人間だからと言って助けない訳にはいかないんだ。だからこれは僕の勝手だと思ってくれ」

 

「…………」

 

 優しい人。マーティンに対して、裕太がそう思うようになった。

 

 彼はジャンクの修理をしながら新世紀中学生とたわいない話を始めた。裕也はもう一回頭を下げた後、部屋を後にする事にする。

 

「……助け合いの共生を一切しない存在……」

 

 マーティンが言っていた存在とは何の事だろうか。

 それが気になっていたが、ふと目の前に六花達の姿が見えてきた。どうも二人して誰かと話しているようなので、早速駆け付けてみる。

 

「二人とも、何しているの?」

 

「おっ、裕太! いやさぁ、この子達がテレパシー使えるんだよ! 頭の中に響く言葉がめっちゃリアルでさ!」

 

 内海の前を覗いてみると、二人の少女が立っている。

 まるで昆虫の羽を折り畳んだような薄緑色の髪、幼い顔つきと低い身長。着ている民族衣装とボディペイントからして、彼女達もフツアという原住民で間違いない。

 

 どちらも容姿が似ている事から、恐らく双子か。

 

 ただよく見るともう一方が穏やかな目つきで、もう一方がやや険しい目つきと微妙な違いがある。

 

「テレパシー? まぁえっと、俺は響裕太。君達は?」

 

《……マイナ……》

 

《……ミアナ……》

 

「!? 声が直接脳内に!?」

 

 脳から言葉が発信される、そんな気分だった。

 内海が言っていたテレパシーはどうやら本当の事らしい。

 

「なっ、なっ!? すげぇだろこれ! ちょっともう一回やってくれないかな? 次は『ファミチキ下さ――」

 

「やめなよ、みっともない。ごめんね、友達の変な事に付き合わせちゃって」

 

「ううん……だいじょうぶ……」

 

 目つきが穏やかな女の子が、六花へと首を振る。その一方で内海が残念そうに項垂れていた。

 

 恐らく穏やかな目の方がミアナで、その隣の険しい方がマイナ。名前が分かって納得する裕太だが、一瞬自分の事に変だと思う。

 何でどっちがどっちの名前だと分かったのか。テレパシーから読み取るにしては情報不足、無意識の勘にしてはどこか妙だ。

 

「…………」

 

「……? ど、どうしたの?」

 

 そんな疑問を抱いていた時、マイナと思わしき少女が裕太を見つめてきた。

 てっきり睨まれているかと思ったが、そんな彼女が予想外の言葉を言い出す。

 

「……あなたのなか、かんじる……つよいちから……」

 

「……えっ?」

 

 強い力。該当する物と言えばグリッドマンだろうか。

 ただグリッドマンはジャンクの中にいて、そのジャンクが修理中である。マイナの言う強い力がグリッドマンの事なら、何故裕太の中から感じるのか。

 

 あるいはアクセスフラッシュで一体化しているので、そういう影響が裕太の中に残っているかもしれない。

 

 ひとまず彼はそういう事なんだと自己完結する事にした。

 

「ここにいたか」

 

「! サカキさん」

 

 裕太達の元にやってきたハルオ。

 

 未だに彼は最初会った時と同じ、鋭くも感情的な目つきをしている。そんな顔をしながら手に持っている物を差し出してきた。

 手のひらサイズのパック三個で、表面には「Water」と記してある。

 

「喉が乾いているだろう。味気ない物だけだが……」

 

「いえ、お構い無く……いただきます」

 

 ハルオからパックを受け取る。その後にマイナ達にも同様の物が渡された。

 それから何気なくパックを眺める祐太だが、そこにハルオが尋ねてくる。

 

「君達のいた世界、具体的にどんな所なんだ?」

 

「えっ? 具体的に……まぁ普通と言えば普通ですが……」

 

 実際は怪獣が現れ、街が勝手に修復される。果ては人間の記憶が操作されている節があるなど、とてもではないが普通ではない。

 ただ言っても信じてもらえないだろうと思い、裕太はあえてはぐらかした。

 

「そうか……家族はいるのか?」

 

「ええ、います。今は出張で出掛けてますが」

 

「私もいますね。ママは店をしているのに煎餅ばっか食べてますけど」

 

「……フッ、ぜひとも会ってみたいな。まぁ、そういう事なら家族は必ず大事にするんだ。いつまでも一緒にいる訳でもないからな」

 

 そう言って、ハルオが腕の機器から立体映像を取り出す。

 映像をいじっている間、祐太は彼の言葉が気掛かりだった。ただ尋ねようにもタイミングが分からない。

 

「……あの、サカキさんのご両親はどうしていますか?」

 

 考えていた事が同じだっただろうか。六花が尋ねようとした事を口にする。

 だがその瞬間、ハルオの手が急に止まる。もしかしたら地雷を踏んでしまったのではと、裕太に緊張が走ってしまう。

 

「俺が四歳の頃、目の前で焼かれてしまった」

 

「……えっ?」

 

 ただハルオの口から、ゆっくりと言葉が出てきた。

 悲しさや悔しさが滲んだような、そんな声音をしながら。

 

「一瞬だった。ほんの数分違ってたらそうはならなかったんだと、今でも思っている。あの時の光景をたまに夢で見るよ」

 

「…………」

 

 何が起こったのかは裕太には分からない。ただ彼が壮絶な出来事に見舞われたのだろうという事が、薄々感じてくる。

 ツツジ台において犠牲者は記憶から消される場合があるので、周りの人間が悲しむという事がなかった。しかしハルオの姿を見て、胸が苦しくなってくる。

 

 もし記憶が消される事がなかったら、今頃悲しむ人間が増えていたはず。

 

「……すまない。湿っぽい話をしてしまったな」

 

「……いえ、こちらこそすいません。事情を知らず……」

 

「いや……これは君のせいでは……」

 

 六花に言いかけたハルオだが、途端に口つぐむ。

 恐らく何を言えばいいのかと悩んでいるはず。裕太自身にもよくあるので、この心境にはすぐに察する事が出来た。

 

「ともあれ家族がいる君達はここにいるべきではない。1日も早く、元の世界に戻る事を祈る。ジャンクも早く直るといいな」

 

「……ありがとうございます、サカキさん」

 

 礼を口にする裕太。それを聞いたハルオが軽く頷き、その場から去ってしまう。

 

「……メカゴジラシティか……」

 

 ハルオ達の手を焼かせている超巨大都市メカゴジラシティ。

 

 あれを放っておけば地球その物が浸食されてしまうとされている。それを意味するのは、この世界全てがシティの一部になるという事。

 ツツジ台に襲い掛かる怪獣と同等……いや、それ以上の脅威だ。怪獣と戦っているグリッドマン同盟の一人として、裕太はこの事を他人事だと思えなかった。

 

「だったら――」

 

「ああ、皆まで言わなくてもいいよ。お前の考える事なんてテレパシーのように丸分かりだ。なぁ、六花?」

 

「……うん、響君なら放っておく訳がないもんね」

 

 口にしようとした矢先、内海と六花が分かっているとばかりに微笑んでくる。

 まだ言っていないのにこの対応。少し驚く裕太だが、同時に嬉しくもあった。

 

「ありがとう、二人とも。なら後はジャンクが直るのを待つだけだ」

 

「そうだな。後、その事で俺に考えがあるんだけど」

 

「ん、何?」

 

 何かを思いついたらしい内海に、裕太はひとまず耳を傾ける。

 その内容とは……。




 ハルオはマイナ達との掛け合いから、年下や非戦力に優しいのではと思っています。裕太達の対応はその考えに基づいて描きました。

 本文にある通り彼が六花ママに出会ったら色んな意味で涙しそう。
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