周りと同じように自由に生きてたら何故かヴィランになっていた   作:鰹節31

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森の中

 身体の痛みで目を覚ます。暗い世界、初めて目が覚めた場所よりかはまだ明るいけどそれでも周りは見えづらい。でも一つ分かったとするならば此処、森である。

 

「うぉい、まっじかぁ~」

 

 変な声を出しながら立ち上がる。全身痛い。立ったらすげぇ痛い。あ、俺裸やん。

 

「見たこともないけど分かるぐらいある程度の知識があるからびっくりだよなぁ」

 

 お爺ちゃんは幸せに、自由に生きてと言ったけどこの先どうすればええの? 自由に生きるのは良いんだけど食べ物とか服とか。裸で山から降りてきた奴とかただのド変態やん。

 

「う~ん。わかんね」

 

 自由に生きて良いならその辺に人がいたらその人の服ひっぺはがしていいんだろうか? 道徳的には駄目なんでしょうけどそんなもん知りません。

 

「歩いたら痛いし靴ほしい」

 

 確か俺の“個性”とやらは干渉。お爺ちゃん曰わく、全てに干渉して意のままに操るらしい。……いや、どうしろと?

 

「触ったりとかかなぁ」

 

 試しに木に触ってみたけど特に何ともない。干渉の使い方が違うのだろうか。触った時に木が直角に曲がれば面白いのに。

 

「うおっ!?」

 

 俺がそう思った瞬間俺の周りにある木が直角に曲がった。元に戻ったらいいのにと思ったら周りにある木は元に戻った。やべぇ、面白い。

 

「多分触ったやつなら操れるのかな? この木しか触ってないのに他の木も操れてるから、一回触れば触ったやつと同じ種類の奴は操れんのか」

 

 干渉マジ便利。木を直角に曲げたやつの上歩けば足痛くないのでは?

 

「よぉし、やってみよう」

 

 俺の見える直線上の木を直角に曲げる。ちゃんと指定すればその範囲だけ操れる。俺は木の上に立ち、走った。

 

「葉っぱ危な! 痛たたた! うわぁ、全身葉っぱだらけだ」

 

 直角に曲げた木の上を走る作戦は大失敗。前から迫り来る葉っぱに突っ込んだ俺は地面に転がりながら全身に葉っぱをくっつける羽目になった。良い案だと思ったけどダメだった。

 

「どうやって移動すっかなぁ」

 

 歩くの痛いからいっそのこと地面動いてくれればいいのに。そうすれば立ってるだけで移動できる。この発想もしかしたら出来るんじゃないか……?

 

「地面を触って、俺が立ってるところだけ動く感じ。波の上に立つ的なあれですな」

 

 口に出した瞬間、俺の足下の地面が隆起し、前進し始める。やっべぇ、これ快適過ぎる。

 

「人間やれば出来るじゃん。俺が人間かどうかは置いといて」

 

 アッハッハッと笑いながら俺は地面と共に森の中を爆走した。

 

────────────

 

 無機質な機械音が鳴り響く暗い部屋。部屋に設置されたイスに腰掛け、点滴をしながら目の前にあるスクリーンを見ているその男の容姿は誰が見ても人とはいえないだろう。毛髪がなく、目の部分が皮膚で覆われた小さなくぼみになっている。口だけがあるというのっぺらぼうの亜種のようである。

 

 そんな奇妙な男に用があるのかガチャリと部屋のドアが開かれる。男は振り返らず、少し笑みを浮かべて口を開いた。

 

「やぁ、ドクター。調べものは終わったのかい?」

「研究所は爆発で木っ端微塵だ。調べれるもんも調べれんよ」

「それは残念だ」

 

 だが、とドクターと呼ばれた人物は手に持っていた所々焼かれた資料を見始める。

 

「一つだけ資料があったな。所々焼かれて読みにくいが、脳無を越える人造人間を造っていたそうだ」

「人造人間? 随分と面白いものを造っていたんだね。完成する前に研究所は爆発しちゃったのかな?」

「それは分からんよ。もし完成して生きているなら研究所から遠くには行っておらんだろ」

 

 男は笑い、口角を上げる。

 

「……少し楽しみが増えちゃったなぁ。その子の名前はなんて言うのかな?」

「名前は翡翠という。あの大馬鹿者が付けそうな名前だ」

「翡翠……か。是非あの子に欲しいね。きっと役に立ってくれるだろうなぁ」

 

 男は上を見る。自分が育てている次なる自分。大切な生徒を思い浮かべながら。

 

「君なら上手く使いこなせるさ。ねぇ、死柄木弔」

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