周りと同じように自由に生きてたら何故かヴィランになっていた   作:鰹節31

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ヴィラン

 速報、ホームレスの田中さんに服と靴を貰いました。ボロボロだけど無いよりかはマシなのである。田中さんと会った経緯としては高笑いしながら森の中を爆走してたら目の前にイノシシが出てきて、それを追いかけている田中さんと出会った。木を直角に曲げる方法でイノシシを倒したお礼に服と靴貰ったのだ。イノシシすげぇ怖かった。後、イノシシ旨かった。

 

「いよ~し。行ってみっかな街!」

 

 寝る場所は森で何とかなったとしてもご飯がなかったら生きてけない。田中さん曰わく街の裏路地だったら食べ物あるらしいし行くしかない。今はお腹いっぱいでもお腹空くからね。だから行くしかないんだ(使命感)

 

「爆走してやるぜハッハッハ!」

 

 そういや、田中さんから街が何処にあるか教えてもらってなかったなぁ。ま、なんとなくで着くでしょ。

 

────────────

 

 なんとなくで行った結果、まさか朝になってようやく着くだなんて思わなんだ。明るくなって周りが見えてきた頃にやっとね、自分が同じ所をグルグルしてることに気づいたからね。

 

「腹減ったなぁ。裏路地って所に行けばなんか食べれるらしいし、裏路地に行こうかなぁ」

 

 街を歩いていると色んな人から凄い見られる。まぁ、こんなボロボロの服着てれば見たくなる気持ちも分かるんだけど、全裸でいるよりかは全然マシじゃん。止めてよ見ないでよ。

 

「路地裏に急がねば」

 

 如何にも路地裏感満載な場所に逃げ込む。美味しそうな匂いなど一切しないけど、取り敢えずどんどん奥に進んでいく。

 

「おいおい兄ちゃん、ここらへんは俺達の縄張りだ。通りたかったら金置いてけや」

 

 進んでたらなんか囲まれてた。進みたいけどお金を置いてかないと駄目らしい。お金ないし、ボロボロの服置いてったら許してくれるかな。

 

「んじゃ、服置いてくな」

「いらねぇし!」

「そう? じゃあ、進みたいけどお金ないから引き返すわ」

「おい待て待て!」

「え~なんだよ~。引き返すんだからいいじゃん。見逃してくれよ~」

「取り敢えず金置いてけ。いや、暴れんなって。取り敢えず金置けよ、な?」

 

 囲んだ人達はお金目当てで色々言ってたみたいだ。だが、出せよと言われても出すものないし、渡せるのは本当にボロボロの服だけ。

 

「マジでお金ないんだって。田中さんがここ来たら飯食えるって言ってたからここに来たんだよ」

「田中さん? 誰だそれ?」

「服とかくれたホームレスの田中さん」

「兄貴、あいつじゃねぇか? 俺らの縄張りのゴミ漁って何か食ってたホームレス。ほら、兄貴が“個性”で山にほっぽりだしたじゃないですか」

「ああ、あのクソジジイか」

 

 今田中さんをクソジジイ呼ばわりしたのか? ボロボロだけど数少ない服を譲ってくれて、イノシシも料理して食わして貰ったあの田中さんに!

 

「おい……」

「あん?」

「田中さんをクソジジイ呼ばわりすんじゃねぇ…! 田中さんはすげぇ優しいんだ。正体不明の俺に服くれて、飯食わしてくれて。そんな優しい田中さんがホームレスだったとしても、行動がどうであっても田中さんを侮辱すんのは許さねぇ!」

 

 地面を触れて“個性”を使用。俺を囲んだ人達の地面から触手のようにウネウネとコンクリートが動き、拘束する。強いこの戦法強いぞ。アニメ専門店とかいう店の奥の方にあった『ドキドキダンジョン~触手の悲劇~』を見て良かった!

 

「クソッ! とんだ強“個性”じゃねぇか。ふざけやがって」

「ははは! アニメ専門店にあった『ドキドキダンジョン~触手の悲劇~』の触手戦法はどぉだぁ! このまま首を絞めてくれるわぁ!」

「なんだその名前! どう考えても18禁じゃねぇか!」

 

 少し時間を経つとビキビキという音は聞こえなくなり、俺を囲んだ人達は力なく頭を下げた。“個性”を解除してコンクリートを元に戻す。ドシャという音が裏路地に響いた。

 

「……やっちまった」

 

 人殺し。それを行ってしまった俺は“個性”を悪用し、法を破った悪者である(ヴィラン)になってしまったのでは? テレビで言ってたぞ(ヴィラン)の抑止力であるヒーローが(ヴィラン)を捕まえる為に巡回してるって。見つかったら終わりじゃん。

 

「君、こんな所で何をしている」

「ヒエッ!」

 

 声がした方に振り向けば、なんかマントとかつけてるムキムキな人が居た。あかん、この人多分ヒーローだ。

 

「最近このあたりの不良が迷惑行為をしていると報告があってな。不良達は“自由に生きてるだけ”と主張しているが、周りが困っているし補導しようときたのだ。危ないから君は直ぐにここから離れた方がいい……む?」

 

 多分その不良達って俺が殺しちゃった人達だよね? カッとなったんだからしょうがないじゃん。“個性”使わないで死んだあの人達もどうかと思うんだよ俺。

 

「死体だと……! まだ温かい。死んでから時間が経っていたないということは……まさか君が」

「イエ、チ、チガイマスヨ?」

「そうか。だが、この状況を説明してもらおう。何があったんだ?」

「……」

 

 いや、詰んだ。何だよ何だよ自由に生きたらヒーローの敵なのかよ。おかしいじゃんそんな何かに縛られないと生きていけないんだなんて。俺は田中さんや不良達みたいに自由に生きるだけなのに。少ない人間の意見に聞く耳持たずで悪と決めつけるのはオカシイヨネ?

 

「悪いけど、始末させてもらう」

「なに!?」

 

 コンクリートの触手を俺の横に四本出現させ、ヒーローを拘束させるために伸ばす。ヒーローは驚いて硬直するが直ぐに構え、コンクリートの触手を殴って破壊した。

 

「は……?」

「侮ったな(ヴィラン)。俺の“個性”は増強型。そう簡単にはやられんぞ」

 

 マズい、コンクリートを殴って壊すとか頭おかしいだろ。あんなんで殴られたらお陀仏確定だわ。何度もコンクリート触手伸ばしても、どんなに死角から攻めても変態的な動きで避けて壊す。マジであかん、こっちに徐々に来てっから!

 

「同じ事をしても無駄だぞ(ヴィラン)!」

「んじゃあ、こんなんはどうよ!」

 

 横に建ってる建物から針を無数に伸ばす。ヒーローは最初は避けていたが、数が多くなるにつれて避けれるスペースがなくなり顔をしかめる。針を壊しても直ぐに修復されるから逃げ場は確保出来ない。針の間にコンクリートの触手を潜らせ四苦八苦してるヒーローを拘束した。

 

「なっ!? ぐっ……!」

「勝負ありってところだな。残念だけど死んでもらうよ」

「……私もまだまだ未熟だったな。サイドキックの言葉を無視した罰か。最期に君の名前を教えてもらえないか?」

「敵に名前名乗るってなぁ……。ま、殺すんだから構わないか。俺の名前は翡翠! 自由に生きる人間だ!」

 

 俺の言葉の後にグサッとコンクリートの針がヒーローの胸を貫く。ポタポタと滴る赤黒い血液。それを見たら多分気持ち悪い筈なのに、俺は何も感じない。それはいけない事なのに俺は罪悪感を覚えない。

 

「ははは……人造人間ってのは要らない感情とかも消せんのかねぇ」

 

 だとするなら、俺は人じゃないのだろうか? 人の顔を被ったバケモノ。ああ、それは嫌だな。

 

「証拠隠滅出来てねぇし。まぁ、俺が(ヴィラン)ってバレるのは暫く時間掛かるか。よし! 不良達とヒーローから服とお金を奪うぞぉ!」

 

 金品を奪い、血が着いてない服に着替え、コンクリートの針を戻していると路地裏の奥から足音が聞こえた。

 

「初めまして翡翠君」

「……誰だ」

 

 路地裏の奥から出てきた人物は口だけの人間。いや、人間と言えないような不気味なオーラを纏っている。少なくともこいつは会ったら駄目系な奴だ。

 

「お前、人間じゃねぇな」

「僕の顔を見れば誰もが言うかもね。だけど、君にだってそれは該当するじゃないか翡翠君。君だって本当の人間じゃないだろう?」

「言うねぇ……まぁそうだけど、さ!」

 

 壁から針を伸ばして不気味な人間を串刺しにする。筈だった。

 

「っ!?」

 

 横からコンクリート針が伸びてきて俺の目の前を通り過ぎる。有り得ない何があったら攻撃がこっちにくるんだ。

 

「これは失礼。急いでしまいましたので眼前にだしてしまいました」

 

 そう声がした瞬間、不気味な人間の横に黒い靄が現れた。あれが喋ったのか? うっそだろおい。

 

「ワープロってやつか……やだなぁ」

「ワープです」

 

 苦笑いしながら頬を伝う汗を拭う。四本のコンクリートの触手を俺の近くで伸ばし、触手の先を二人の人物に向ける。

 

「効かないと分かっていて来るのかい? 君はまだ若いね。それは勇気ではなくて無謀だよ」

「若くて結構、無謀で結構! 俺は俺のやり方で勝つ!」

「“個性”が素晴らしくても、僕と君には歴戦の差があるということを知った方がいいね」

「どうだろうなぁ?」

 

 コンクリートの触手を二人の人物に伸ばす。その瞬間目の前が真っ暗になった。

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