【完結】ソードアート・オンライン ~幼き癒し人~   作:ウルハーツ

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2017年 1月17日 構想開始

2019年 1月8日 【最終話】完成

2019年 1月11日 投稿開始

2019年 1月30日 【最終話】投稿予定


本編【全17話】
少女、求めた新世界へ


 世界初のVRMMORPG【ソードアート・オンライン】。仮想空間の中で現実の様なゲームを楽しめるそれはβテスト等の試験を経て1万と言う規定のユーザー数になる様に販売された。βテストに参加した1000人は勿論、残りの9000人がそのゲームを手に取る事が出来る様に。

 

 誰もが新たな技術に。現実とは違うゲームの世界に心を躍らせていた。しかしそれは開発者である茅場 晶彦によって一瞬で別の物へと姿を変えてしまう。仮想で有り乍ら現実と同じ様に、【ゲーム内の死は本物の死に直結する】と言うデスゲームに。そして解放される条件は100層も存在するゲームの舞台、アインクラッドの攻略……ゲームのクリアである。

 

 現実でもその事実は当然瞬く間に広がり、ゲームをしている者は皆一様に病院などへと運ばれる事となった。だが中にはゲームをする為に被るナーヴギアと呼ばれるそれを無理やり外され、死に落ちる者も存在した。そしてその出来事が【デスゲーム】と言う悪夢の様な現実を証明する事となってしまう。

 

 ある所に1人のまだ幼い少女が居た。その少女はデスゲームと化したゲーム、【ソードアート・オンライン】の存在をテレビ等で知りはしたものの何処か他人事であった。誰か知り合いや親族がそれに参加している訳でも、自分が巻き込まれている訳でも無い。だからこそ少女は唯純粋に【今の世界とは違う世界】に憧れを抱き、幼さ故にその世界に閉じ込められて今もクリアを目指しているのかも知れない人たちの事等考えもせずに思う。『私もその世界へ入りたい』と。

 

 ゲームをする為にはナーヴギアが必須であった。だがそれはまだ子供である少女が手に入れられるものでは無かった。ゲームのソフトも必要であり、少女はその世界に憧れはしても入れない事を理解していた。……その時が来るまでは。

 

「こんな物!」

 

「……」

 

 ランドセルを背に帰宅していた少女の目の前で、1人の大人がゴミを怒りから力任せに叩きつける姿があった。少女はそれを見つめており、見られていた大人は少女の存在に気付くと途端に嫌悪感を隠しもせずに見せ乍らその場を去って行く。相手が子供ならば気付かないとでも思っているのか、少女は去って行く大人の後姿を見送った後にそのゴミの場所へと近づき始める。……そこにあったのは変わった見た目のヘルメットと小さな四角い箱であった。そしてその箱に書かれているのはテレビで見た文字。

 

「ソードアート……オンライン」

 

 捨てた大人は購入したもののプレイする前だったのか、誰かが死んでしまったのか。それは定かでは無い。だが少女にそんな事はどうでも良かった。目の前にある2つを持ち帰り、ゲームを起動すれば最後。望んだ世界に入る事が出来る。もし家族が自分の状態に気付いても、起動してしまえば干渉など出来ない。

 

 どうやらヘルメット……ナーヴギアは叩きつけられたぐらいでは傷一つ付いておらず、少女は考え続けた後に意を決した様にそのナーブギアとソフトを持ち帰り始める。自分の手には大きいそれを少女は抱える様にして走り、帰宅してすぐに自室へと駆け込んだ。姉は帰って居らず、他に人の気配も無い事を確認した後に自分の部屋へと辿り着いた少女。ランドセルを放り、ソフトを開いて起動の仕方を必死に確認しながらやがて全ての準備を整えた時。少女は深呼吸をして、両手に持つナーヴギアを見つめる。

 

「これで、行ける」

 

 待ち望んだ現実とは違う新しい世界。少女はそれに今まで動きもしなかった顔の表情を僅かにだけ動かして、ナーヴギアを頭に被る。そしてまだ見える【今の現実】にさよならを告げ、これから来る【新しい現実】に入り込むための合言葉を呟いた。

 

「リンク……スタート」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初にアバターを決める工程へ入る事になった少女。どうしようか迷った挙句、自分と似た様で少し違う存在を作り上げる事にする。少し短めに黒い髪を設定し、憧れから少し高い身長に。Nameは苗字と名前の頭文字を繋げ、その間に伸ばし棒を入れて完成。そうして『Welcome to Sword Art Online !』と言う文字が出た時、少女の視界は光に包まれ……目を開けばそこには見た事の無い世界が広がっていた。

 

「……」

 

 何も言う事無く唯目を輝かせていた少女はまず最初に移動でも無ければ情報収集でも無く、ログアウトが無いかの確認を行う。説明書にはあると書かれていたそこにログアウトのメニューは存在せず、少女はそれに笑みを浮かべた後にアイテムを開く。と、その中には手鏡が存在していた。作り上げたばかりの自分の身体だ、確認したくもなるだろう。少女はそれを出現させ覗きこむ……と同時に自分の身体が突然光り始めてしまう。

 

「……意味無い」

 

 光が収まった時、少女は鏡の中に映る宝石の様に綺麗な碧眼の少女と目が合った。伸ばした筈の身長が元に戻り、黒い髪も腰元まで。完璧に本来の姿に戻ってしまった事に内心少女は落胆しながら、その手鏡をしまう。そしてもう1度周りを見渡し、少女は何をしようか悩み始める。ゲームの内容については説明書で色々と読んだ為、敵を倒せばお金が入る事や宿等がある事は把握済み。これからこの世界で生きて行く以上、少女は最初に眠れる場所を作る事を決める。

 

「お金……稼がなきゃ」

 

 本来の子供なら考えるべきでは無い事だが、既に新しい世界で1人になってしまった現状。自分の分は自分で稼がなければいけない。少女はそれを理解し、初期装備として用意されていた武器を確認した後外へと出る事にした。そしてその先で待つモンスターを相手に狩りを始める事にする。中々見つからないが、それでも偶に存在するモンスター。少女は必要最大級の安全を確認しながら、それと戦い始める。

 

 戦闘はすぐに終了する。序盤の敵故に強さは殆ど無く、最初故に必要経験値が少ない。一気に経験値が手に入った事に少女は無表情のまま、それでも微かに口元を動かして次のモンスターを探し始める。

 

 しばらく時間が経った時、少女は手持ちの道具などを確認しながら自分の行動による報酬を感じ、これからについて考える。モンスターが居て、剣がある。ならやる事は1つ。世界の有り方に従って戦い、この世界で生きてこの世界で死んでいくのだと。そしてその目的を達成しようとした時、存在する大きな障害。……それはゲームのクリアである。

 

 閉じ込められてしまったプレイヤーの内、どれくらいの人がゲームクリアを目指しているのかは分からない。だがもしもクリアされてしまえば、少女はこの世界から解放されてしまう。そしてそれを嫌がった少女は、自分がこの世界で生きる上での大きな目的を決める。

 

「強くなる……そして、止める」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女が現実から離れて数時間。帰って来た少女の姉は最初、妹の部屋を見て辛そうに表情を伏せながらも話しかける事も入る事も無く自分の部屋に籠ってしまった。だがその時間も夕飯に呼ばれた事で終わりを告げ、中に居るであろう妹に伝える為に扉越しに告げる。だが普段なら少しして開く扉が開く事は無く、それを不審に思った姉は恐る恐るその扉を開く。……そしてそれを見てしまった。

 

「そん、な…………嫌……嫌ぁ! どうして! 駄目ぇ! 久遠(くおん)!」

 

 テレビでナーヴギアを付けたまま目覚めない人の映像は何度も放送されていた。だが、姉の目の前に映ったのは画面越しでも無ければ知らない人でも無い。自分の妹が死んだら本当に死んでしまうデスゲームの中に入ってしまったと言う事実に姉は絶望し、駆け寄る。……しかし既に新しい世界に入ってしまった妹をそこから出す方法は、何も存在しなかった。

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