【完結】ソードアート・オンライン ~幼き癒し人~ 作:ウルハーツ
「にしても本当、まさかあんたがアスナの探し人だったとはね~」
「……」
「むぅ~」
リズベット武具店には現在、3人の姿があった。1人は楽しそうに手を動かす武具店の主、リズベット。1人は今まで隠していた正体を明かし、何故かリズの膝に乗せられて頭を撫で続けられるアーク。そして彼女と共に今日リズベット武具店を訪れた、頬を膨らませて不機嫌そうなシリカである。アスナ経由でシリカは武具店に何度か来た事があり、リズとも数回顔を合わせた事のある所謂知り合いと呼べる間柄であった。今日アークがシリカと共にこの場所を訪れた理由は単純に武器の修理が目的だったからである。
最初は圏外に出る予定だった2人。だがシリカの使う武器の耐久度が減り始めていた事で急遽予定を変更。最初の出発時が
リズはやって来た2人を迎えた後、アークの身体を頭の先から足先まで見てから徐にその身体を持ち上げて今の体勢を作った。余りにも自然な動きに違和感を感じなかったシリカだが、アークが驚いた様子で降りようとしたのを見て手を貸そうとする。しかしシリカの手を借りて離れようとするアークへリズは囁く様に耳打ちした。
『この前壊した床の修理代、今すぐ払わせるわよ』
その言葉を聞いた途端、アークは抵抗を止めた。手を貸そうとしていたシリカに『大丈夫』とだけ答え、訳が分からなかったシリカはリズが何かしたのが明白故に余り良い顔をせずにその光景を見る事しか出来なかった。……それ以外にも嫉妬が膨れる原因の1つだが、アークはそんな事を知る由も無い。
「なる程ね。確かにアスナの言う通りだわ」
「何が?」
「いや、あんたが傍に居ると何と言うか……癒し効果があるのよね」
「分かります!」
頭を撫でるから抱きしめるに変換したリズの何気ない言葉にアークが聞き返した時、答えたリズに膨れていたシリカが身を乗り出して同意する。そして本人を置いて始まる楽しそうな2人の談議をリズの膝上でアークは詰まらなそうに聞き続けるのだった。
数時間後、アスナも合流してリズベット武具店は女子4人のたまり場の様になる。女3人寄れば姦しい等と言う言葉があるが、4人の場合はどうなのか。……余り喋らないアークを除いた3人がアーク関連で騒がしくなるだけである。2人が談議していた癒し効果についてアスナも賛同する様に話始め、リズよりも自然にアークを自分の膝へ移動。それを見てシリカも乗せたいと言い始め、アークは3人の話が終わるまで定期的に人形の様な扱いを受けるのだった。
「さ、今日はもう店じまいするわよ」
「……」
夜を迎え、リズベットは武具店を閉じる為に行動を始める。そしてそんな光景をアークは1人、眺めていた。アスナとシリカは既に武具店の何処にも居ない。何故なら2人は自分が夜を過ごす場所へ帰った為に。現在アークが寝泊りしているのはアスナの
「あんた、料理出来るんでしょ? こっちは忙しいから、何か作りなさい」
「私、客」
「今更何言ってんのよ? 働かざる者食うべからず、よ」
「……」
殆ど選ぶ権利も無くリズの家で泊まる事になったアークは彼女の言葉を聞いて目を細めるが、言い返された事で少し肩を落とす。そして武具店から繋がる家に入ると、アスナの家でやっている調理を始める事にした。適当な食材を選んで調理すれば、途中でリズが武具店を閉じ終えやって来る。彼女はアークの姿を眺めてから他の事を始め、後に2人はテーブルで向かい合う様に座った。
「へぇ、意外にちゃんと出来るのね」
「……」
「顔を見せても無口なのは変わらないか。さ、食べましょ!」
見た目美味しそうな料理に感想を言うが、相変わらず表情の変わらないアークの姿に1人呟いたリズ。空気を入れ替える様に両手を叩いて告げると、2人は食事を始める。そしてリズが最初の一口を食べた時、その目は大きく見開かれた。
「これ、ロールキャベツじゃない! しかもかなり美味しい!」
「ゆっくり……御代り、あるから」
「え、えぇ。そうね。……」
この世界に入る前、現実世界で食べた事のある味にリズは驚かずにはいられなかった。アスナが様々な調味料を研究しているのは知っていたが、料理に関してはまだ食べた事の無かったリズ。アスナを通して現在勉強中であるアークの料理は未熟とは思えない程に感動出来る味であり、自分よりも小さい姿ながら急いてしまったのを注意して御代わりまで用意してあると言う事実に思わず思ってしまう。……家に欲しいと。だが流石にそれはアスナも認めないだろう。アークが今日1日をここで過ごすのはあくまで
夕食を終えてお風呂も終え、後は寝るだけになった時。リズとアークは同じベッドへ横になった。最初からリズはそうするつもりであり、最初からアークはそうなるだろうと考えていた故に揉める事無く横になった2人。小さな身体は1人用のベッドに追加されても言う程狭くはならず、これまた自然にリズはアークの身体を抱き枕の様に抱いて眠り始めた。そしてその行為もまた、アークには予想通りであった。
そもそも女性同士と言えど過度な接触があればハラスメントコードと呼ばれる注意喚起が出現する。だがアークはそれを基本的に出ない様、切っていた。何故なら、付けておけば1日に何回出るか分かったものでは無いからである。危険な行為ではあるが、間違って自分に接触したアスナやシリカ、リズ等をこの世界の牢獄に送る訳にもいかない為に。
「……」
世界が世界故に戦いは何処にでもあり、起こりえる。だがそれでも1人で過ごして来た日々に比べて優しい今の日々を感じ、アークは思わず不思議な感情のままに溜息をついた。
平穏な日々を感じてから約5か月後。
「シェフ発見」
「……え?」
「?」
とある人物のお店へアスナに連れられて訪れたアークは、そこで偶然出会ったキリトにアスナ共々手を掴まれ告げられる。その手がまた自分を残酷な生と死の世界へ誘う事等、アークは知る由も無かった。