【完結】ソードアート・オンライン ~幼き癒し人~ 作:ウルハーツ
「お姉ちゃん!」
家の中に姿を現したアークさん。ううん、お姉ちゃん。思わずパパの背中から飛び出してその身体に飛びつけば、お姉ちゃんは私の身体を受け止めてから抱き締め返してくれます。それが心地良くて、幸せで、私はお姉ちゃんの身体に顔を埋めてしまいます。ママが「良いなぁ~」って羨ましそうだけど、これは私の特権だから譲れません。1度私の真似をする様にママがお姉ちゃんに抱き締めて貰おうとした事はありましたけど、お姉ちゃんはしませんでした。ママとお姉ちゃんの体格差からしても大変ですし、お姉ちゃんは私にしかしませんから。はい、
「あぁ、女の子同士の抱擁。良いよ! もっとやって!」
そんな私達の姿を興奮した様子で見つめる人が居ます。金色の髪を1つに束ねたポニーテールと呼ばれる髪型にした女の人。名前はリーファさんと言って、何と現実世界でパパの妹さんらしいです。パパはリーファさんの事を『ゆりずき』と偶に言っていて、リーファさんは私達が抱き合う度にああして喜んでいます。唯、私とお姉ちゃんだからでは無いみたいです。お姉ちゃんが他の誰かと一緒に居てもあんな感じになります。
「禁断の姉妹愛。もう、最高!」
「勝手に姉妹を増やさないで貰えるかしら?」
「あ、シノンさん。こんにちは! 何ならアークちゃんとシノンさんでも私は大歓迎ですよ!」
少し遅れてリーファさんの傍に現れたのは、お姉ちゃんのお姉さんであるシノンさんです。少し冷たい印象を受ける人なのですが、頭に生えたケットシー特有の猫耳がその雰囲気を緩和している気がします。因みにお姉ちゃんの種族はインプです。少し明るめの長い黒髪とケットシーでは無いのにシリカさんよりも低めな身長は現実に居る皆さん曰く、殆どそのまんまらしいです。それはつまり、お姉ちゃんが現実でも私以外を抱きしめる事は無いって事です!
「さて。今日はどうする? 特に特別なクエストの情報も無いんだが」
「私はアスナと話があるから何かあっても今日はパスよ。今日こそ諦めさせてやるんだから」
「私はアークちゃんに付いて行くつもりだよ。何か良いものが見れそうだからね」
「何も、決めて無い」
パパの言葉でシノンさん、リーファさん、お姉ちゃんの順にこの後の事を話し合います。パパがお姉ちゃんから離れてしまうと、パパのナビゲーション・ピクシーである私も離れる必要があります。毎日こうして会ってはいますが、離れ離れになると明日まで会えない可能性も高いです。今の内にお姉ちゃんを感じておかないと。
「? ユイ?」
「お姉ちゃん。もう少し、良いですか?」
「……分かった」
少し強くした力に気付いたお姉ちゃん。私がお願いすれば、一緒にソファへ移動して改めて抱きしめてくれます。傍で鼻を押さえるリーファさんと不満げにこちらを見つめるシノンさんの姿も見えますが、私からお姉ちゃんを引き剥がしたりはしません。お姉ちゃんはSAOに居た頃、自分よりも年下の人と出会った事が無かったそうです。だから私と出会って妹になって、嬉しかったと再会した後に教えてくれました。私もお姉ちゃんと一緒に居られて嬉しいですから、こういうのを役得と言うのかも知れません。
この後、遅れてやって来たママとシノンさんは家を出て何処かへ行ってしまいました。何時もなら顔を出すシリカさんはお姉ちゃん曰く、リズベットさんと約束してクエストに向かったそうです。つまりこの家にやって来る人の殆どがもう居るか用事で来ないと言う事。もしかすると、このまま今日は1日中お姉ちゃんと一緒に居られる可能性もあります!
「リーファ。少し良いか?」
「何? お兄ちゃん」
パパがリーファさんを連れて離れ始めます。家の中からは出ないみたいなので、私はお姉ちゃんから離れる必要がありません。……! 今この部屋には私とお姉ちゃんの2人だけ。もしかすると、この前の様なスキンシップが出来るかも知れません。お願いしてみましょう!
「あの、お姉ちゃん」
「?」
「もっと、その……甘えたい、です」
「……」
お姉ちゃんは私の言葉に見えなくなったパパ達の方へ視線を向けて、他に誰も居ないか確認する様に周囲を見回します。前にお願いしたスキンシップ。それは私がネットの海で姉妹のスキンシップがどんな物なのかを知りたくて調べた時に、『どうじんし』と呼ばれる作品に載っていた方法でした。小さな妖精の女の子が人間の女の子に甘えるお話で、そこで行われたスキンシップは私とお姉ちゃんの間でするのにピッタリの内容でした。
「……おいで」
「はい!」
お姉ちゃんの許しを得て、私は身体を手の平に乗れる程のサイズに変えます。そしてお姉ちゃんが自分で開けてくれた胸元に入り込みます。私が見たのはリーファさんみたいに胸が大きい人の谷間に入る妖精さん。お姉ちゃんは最近徐々に大きくなって来ているそうですが、小さくなった私を挟める訳ではありません。それでもお姉ちゃんの服と身体に前後を挟まれ、左右を僅かに挟まれるこの空間はとても幸せです。
「お姉ちゃん」
「んっ……ユイ」
「ぶふぁ! ぁ」
「スグ!? あ、悪い! 覗くつもりは無かったんだ! 取りあえず様子を見て来る!」
突然聞こえて来る声に振り返れば、顔を抑えたリーファさんが私達を見てログアウトする姿がありました。いえ、あれは多分現実で付けているアミュスフィアの安全装置が装着者の危険を感じて強制的にログアウトさせたのかも知れません。パパはリーファさんが消える姿に驚いた後、気まずそうに私達に告げてログアウトします。私はパパのナビゲーション・ピクシーですが、パパがログアウトしても消える訳ではありません。ログアウトしたその周囲からは余り離れられませんが……今は何も問題無いですので、このまましばらく甘え続けたいと思います。
お姉ちゃんの胸で甘える事数十分。ママとシノンさんが戻って来ました。まだパパとリーファさんは戻って来ていません。流石に2人だけの時間はもう終わりみたいです。御二人には気付かれない様にお姉ちゃんの胸元から出て、今度は服の上から抱き着きます。そうしたらまたお姉ちゃんは私を抱きしめてくれて、またママが羨ましそうな声を出しました。シノンさんも無言でジッと此方を見続けて、正直怖いです。
「うぅ、アークちゃんもお願いしてくれないかな。お姉さん、頑なにお泊り会を許してくれないの」
「例えアークの頼みでも聞けないわよ。……私が耐えられないもの」
ママが私達の隣に座って泣きつく様に話し始めます。ですがシノンさんは腕を組んでお姉ちゃんが何かを言う前に答えました。最後の小声は私にしか聞こえなかったみたいです。私と同じ様にお姉ちゃんの身体にママが抱き着けば、お姉ちゃんは表情を変えずに。でも仕方無さそうにママの頭を撫で始めました。途端にママの顔は緩み始めます。お姉ちゃんの身体となでなでには不思議な力があるのかも知れません。あ、シノンさんがもっと怖くなりました。
「もう夕飯時ね。一度落ちましょうか」
「ん。ユイ、アスナ……また、後で」
時間を確認すればもう夕方は過ぎて18時を過ぎていました。それに気付いたシノンさんの言葉にお姉ちゃんは頷いて、私とママを遠ざけます。シノンさんと一緒にメニューを開き始めれば、本当に居なくなってしまうのが分かって寂しくなって。でもそれに気付いたみたいにお姉ちゃんは小さな私の頭を人差し指で撫でてくれました。
「後で……また、しても良い」
「! はい! お願いします!」
ママやシノンさんが首を傾げる中、私だけがその意味を理解出来ました。だから思わず綻ぶ笑顔のままでお願いして、お姉ちゃんとシノンさんがログアウトする姿を見送りました。
「ユイちゃん、何をお願いしたの?」
「えへへ。内緒です♪」