【完結】ソードアート・オンライン ~幼き癒し人~   作:ウルハーツ

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少女、お節介な女性と出会う

 少女は何日も何日も、唯只管にモンスターを狩り続けていた。今の世界から解放される事を望んでいない少女は永遠に今の世界に残るか、何処かで死する結末しか望んでいない。だからこそ、死ぬのならそこでお終い。死なぬ限り世界の存続の為に強くなる事を望み、何かに憑りつかれた様に戦い続けていた。

 

「……!」

 

 背後から迫る脅威に気付いた少女は着ていた顔から体全体までを隠すブカブカの黒いフード付きコートを大きく揺らし、持っていた剣を白く光らせ乍ら振り返り様に横一閃。振り切った刃は迫っていたモンスターの身体を綺麗に切り裂き、徐々に光を失う。モンスターは結晶が砕ける様にしてその姿を消滅させ、それを確認した少女は剣をしまって安心する様に息を吐いた。

 

 ゲームを開始してから数日。少女は今までゲームの様な娯楽を殆どプレイした事が無かったが、周りや状況に合わせて理解し適応していく能力は人一倍高かった。だからこそ既に新しい世界に染まり、今の生活を満喫していた。圏外で唯モンスターを狩り続けるだけの日々。だがそれでも何処か充実した感情を抱く事が出来ていた。……心から思えているのだ、『今が楽しい』と。

 

 道具のメニューからポーションを出現させた少女はその蓋を開けて中身を飲み始める。先程倒したモンスターで周りに居た危険要素は最後だった様で、自分のHPが回復した事を確認した少女はモンスターを探して歩き始める。

 

 ふと少女は足を止めると、闇雲に歩くのを止めて向かう場所を決める事にする。場所の条件は敵が出て来て強くなれる事。それを考えた時、少女は『迷宮区』と呼ばれる場所の存在を思い出す。各層にボスが存在するこの世界で、そのボスに通じる場所の事である。様々なトラップがある中、宝箱等の簡単には手に入らない物も存在しており、何よりボスへと続く道の途中には沢山のモンスターが徘徊して居る。故にその危険度は外よりも高い。が、代わりに貰える報酬も当然高かった。

 

 フードに隠されたその表情は何も変わらない。が、少女は向かう場所を自分の中で決定すると歩き始める。迷宮区までの道のりの途中には、またモンスターが存在して居るだろう。後ろ腰に差した剣の柄を手に、少女は道中のモンスターを倒しながら進む。そうして辿り着いた迷宮区を前に、少女は臆することなく足を進めるのであった。

 

「? あれは……子供? 何で……まさか」

 

 そんな自分の後ろ姿を見ている存在が居る事等、少女は知る由も無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少女の目の前には望んでいたモンスターが存在して居た。今まで戦ったモンスターは一様に猪の様な姿をした『フレイジーボア』。だが目の前に並ぶモンスターは明らかに違っており、蜂や鳥などを元にしたであろうその姿に少女は容赦なく剣を振り下ろす。

 

「凄い……」

 

 少女が振るう剣は少女が世界に来て数日、NPCから購入した何の変哲もない片手剣であった。だが振るう少女の背が低い為、その長さは身の丈に近い。それを意図も容易く振るうその姿は異様と言えるだろう。例えゲームの世界の偽物の身体であると分かっていても、それを見て居た者は驚かずにはいられなかった。しかしさも当然の様に少女は目の前のモンスターを倒した事で、剣をしまって歩き始める。

 

 子供の姿を確認した時、気になったのだろう。後を付けていたその存在は少女同様にフードを被りながらその後を追い始める。そして曲がり角を曲がった時、少し間を置いてそこを曲がろうとして……目の前に迫った刃に驚き、固まってしまう。

 

「何で、つけるの?」

 

「気付かれてたのね」

 

 その刃の持ち主は先程まで追っていた子供であり、話しかけられた事で性別も判断出来たのだろう。危険にも関わらず、何処か安心した様に溜息を吐くとその人物は被っていたフードを取る。見える様になったのは明るい栗色の長髪と優しい微笑みを浮かべた綺麗な女性の顔であった。年は少女よりも明らかに上であり、ゆっくりと膝を折ると少女と同じ目線になって話しかけ始める。子供と視線を合わせる為のその行為で少女はすぐに目の前の人物がどうして自分を追って来たのかを理解した。が、それでも少女は剣を引かなかった。

 

「貴女、お名前は?」

 

「……」

 

「警戒、してるのね。こんな世界だから、仕方無いか。……私はアスナ。貴女が迷宮区に入って行くのを見て、気になったからこうして後をつけて来たの。疚しい気持ちは無いから安心して?」

 

 質問に無反応のまま何も動かない少女を見て、アスナと名乗ったその人物は1人何かに納得すると今こうしてこの場に居る理由を説明し始める。少女が危険地帯である迷宮区に入った事で心配になったのだろう。少女はしばらく構え続けているも、安心させる為に見せた笑みを見続けるとやがてその剣を降ろす。そして鞘に納め、歩き始めた。

 

「ねぇ、1人じゃ危ないよ? 私と一緒に」

 

「お節介。1人で良い」

 

「え……ま、待って!」

 

 去り始める少女の姿に声を掛けるが、少女は一度止まって答えるとそのまま奥へと進んで行ってしまう。断られた事にショックだったのか、一瞬固まってしまうアスナ。だがすぐに我に返ると、少女を追って奥へと進み始める。

 

「着いて、来ないで」

 

「放って置けないよ。だから、!?」

 

 追い掛けて来るアスナの姿に抗議する様に言いながら足を速めた少女と、それに返し乍ら後ろを歩き続けるアスナ。するとそんな2人の目の前に突然モンスターが出現し始める。前後に2匹ずつ、合計4匹。すぐに少女は片手剣を引き抜き、アスナも腰に刺していたレイピアを引き抜いて構える。……最初に動いたのは少女であった。

 

 前方に並ぶモンスターに突撃して剣を振るう少女。アスナもそれに続こうとするが、後ろに居たモンスターが攻撃を仕掛けて来た事でそれを諦めて攻撃を回避する。そして隙を突いて深く一突きすれば、それは相手の頭上に存在するHPゲージを減らす。

 

「!」

 

「はぁ!」

 

 少女が振るった剣と、アスナが追撃で放った突きがお互いに相手をしていたモンスターの身体に傷をつける。HPを失ったモンスターは消えて行き、少女は間を置かずに次のモンスターへ。アスナも背後に居たモンスターを倒すために動き始める。その僅か数秒後には戦闘が終了し、アスナは武器をしまって一安心しながら少女の無事を確認しようとする。しかし既にそこに少女の姿は残って居らず、アスナは驚愕の表情を浮かべた後に少女を探し始めた。

 

 一方、お節介なアスナからモンスターを倒すと同時に逃げ延びた少女は安心した様に息を吐くと奥へ進むために歩みを再開する。道中で現れるモンスターはやはり外のモンスターよりも強い分、経験値などの量も多い為に少女はHPに気を配りながら安全に。そして確実に経験値を稼ぎ続ける。……少女は迷宮区に入ったら最後、帰る事を殆ど考えていなかった。そもそも外で狩りをして居た時から外で夜を明かす準備は行っていたのだ。故に奥まで来たら最後、道具などの在庫が尽きるその時まで帰るつもりが無かった。

 

 目の前に現れるモンスター。その姿に少女は僅かに隠れたフードの中で口元を動かしながら、剣を抜く。攻略を行う者を邪魔するのなら、当然その相手よりも強く無くてはならない。そして強くなるためには、その分他のプレイヤーよりも危険に立ち向かう必要があった。だからこそ、目の前の危険を喜びと少女は感じて……狩りを続けるのであった。

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