【完結】ソードアート・オンライン ~幼き癒し人~   作:ウルハーツ

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少女、友達と遊んだ後に○○される

 アークはユウキと共に街の中を歩き、ショッピングを楽しんでいた。

 

 ALOの世界における自分の身体を着飾れる様々な装飾品や服の数々。時にユウキがアークの身体を見てから服を選んで試し着をして欲しいとお願いすれば、アークも同じ様にユウキの姿を見て似合いそうな服を選ぶ。その光景は仲の良い友達の様であり、インプ同士である事から姉妹に見えなくも無かった。

 

「このスカートとか、アークが付けたら可愛いかも!」

 

「短い」

 

「それが良いんだよ!」

 

 ユウキが見せるのは、彼女が付けているスカート状の物をかなり短くしたミニスカート。膝よりも上で布は途切れ、下手に前屈みになれば後ろから下着が見えそうな程だ。そんな物を着用すれば、家でアスナ達がどんな行動に出るか……アークは想像して、首を横に振る。だが、ユウキは諦めなかった。

 

「それじゃあ、試着だけ!」

 

「……」

 

 何時の間にか他の服も手に上下一式を揃えたユウキがアークにそれを差し出しながらお願いする。家で着れば面倒な事になるのは明らかだが、この場でなら問題は無い。そう思ったアークは友達の頼み事という事もあり、了承する。

 

 ゲームの世界といえど、服を着替える時には一度今着用している物を脱ぐ必要がある。その為に試着室も存在しており、アークはその中へ入って着ていた服を荷物(インベントリ)にしまう。そして渡されたそれにあった『試着』を選べば、彼女の姿は全く違う装いとなった。

 

「……どう?」

 

「っ! すっごく可愛い!」

 

 胸にはプレート。肩を出して腕には守るアームネック。短めのスカートに赤い線が入り、殆どの布は紫色。……それはユウキの服装と酷似しており、違う点を挙げるならば身長や髪色。スカートの長さといったところだろう。

 

「ねぇねぇ、並んで写真撮っても良い?」

 

「ん……」

 

 まるで本当の姉妹の様に並び、ユウキはアークと並んで写真を撮る。そしてそのままアークの着ている服の支払いを本人が何か言う前に済ませてしまった。購入してしまえばもう、それは購入者の物。ユウキからプレゼントと称して贈呈されてしまえば、アークは断れない。

 

「コル」

 

「大丈夫大丈夫! その代わり、今日はそれで一緒に過ごそうよ!」

 

「試着だけ……そう言った」

 

「えぇ~。良いじゃん、お礼って事でさ! ね?」

 

 殆ど押し付けの様ではあったが、結果的に服を貰ってしまった手前、先程と同じ様にアークは断るに断れなかった。やがて少し悩んでから受け入れれば、ユウキは嬉しさを隠す気も無く喜んでから手を差し出す。自然とその手を握った時、2人は服屋を後にした。

 

 

 一方、服屋の外からはアスナ、シリカ、リーファ、シノンの4人がその光景を眺めていた。

 

「アークちゃんのミニスカっ!」

 

「バッチリ収めました!」

 

「今度、私の服も着てもらわないと……姉妹の座は譲らないわ」

 

「……」

 

 興奮するリーファにシリカが写真を収めたと告げる中、姉妹の座に危機感を感じて呟き続けるシノン。そんな中、アスナは信じられないものを見る様な目で2人の姿を……ユウキを見ていた。

 

「何で、ユウキが……」

 

「アークちゃんと一緒に居る人、アスナさんは知ってるんですか?」

 

「う、うん。アークちゃんが視線を感じるっていうから、守って貰える様にお願いしたんだけど……」

 

「なるほど。……一緒に居れば守れるって事でしょうか?」

 

「あんな堂々と傍に居て守るなら、別に私達でも良いじゃない」

 

 シリカの質問に答えたアスナは店を出て遠くなる2人の姿に気付いて歩き始める。彼女と共に他の3人も歩き始め……そんな彼女達を後ろからキリトとリズベット。そしてキリトの肩に乗ったユイが眺めていた。

 

「確かに、彼女ならどんな相手が来てもアークを守れるだろうな」

 

「キリトも知ってるのね。あんたが言うんだから、相当強いって事ね」

 

「あぁ。たとえ今戦ったとして、俺が勝てるか分からない」

 

「……マジ?」

 

「頼もしい用心棒さんですね!」

 

 キリトの言葉にリズベットが驚き、ユイは安心した様子で続ける。そんな中、キリトは先程まで見ていた2人の……アークの様子が気掛かりだった。

 

「(アークはユウキを友達と言っていた。だが、ユウキへ向ける目。何か少し、違う気がする)」

 

 彼が抱いた気掛かりを解消出来るものは今、この場には存在しない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから暫くの間、アークとユウキは手を繋いだままで街を歩き続けていた。しかし何時までもその時間が続く訳ではない。

 

「ユウキ」

 

「ん? どうしたの?」

 

「最後に……行きたい場所、ある」

 

「うん。それじゃあ、そこに行って今日はお別れにしよっか?」

 

 ユウキの了承を得てアークが向かった場所。そこは花が咲き乱れるとても幻想的で綺麗な場所であった。アークにとっては嘗てのSAOでシリカと共に行ったフラワーガーデンを思い出させる様な場所であり、あの頃と同じ様なカップルの姿もあるが……2人はその場所から少し外れた人気の無い場所へ。そこでアークはユウキと向かい合う。

 

「今日は、楽しかった」

 

「僕もだよ。クエストも良いけど、偶にはまた一緒にこうして遊ぼうね!」

 

「……」

 

「アーク?」

 

 アークはユウキの言葉に頷かず、俯いていた。友達として良い返事が返って来ると思っていたユウキはその事実に驚き、アークの名前を呼ぶ。

 

 やがてゆっくりと顔を上げたアーク。その瞳には微かな不安と決意が籠っていた。

 

「ユウキが、助けてくれた時。……確かに初対面、だけど……違う」

 

「どういう事?」

 

「恍けないで。……最初は気のせい。そう、思った。でも、ユウキの目……私は知ってる」

 

「……」

 

 語り続けるアークの声は最終的に微かな震えを伴う声音となっていた。それは友達であり、楽しかった時間がこれからの時間で全て台無しになってしまうかもしれないという恐怖。知らないままで居れば幸せかもしれないと思いながらも、アークは真実を知る為にユウキへ告げる。

 

 初めて出会った際にアークが感じた違和感。それはユウキの視線であった。最初は一瞬の違和感で済んだものの、以降感じる視線とユウキを前に話をする時に彼女から感じる視線が同じ事にアークは気付いた。そして彼女と共に居る時は謎の何処からともなく向けられる視線が無くなり、代わりに至近距離で同じものを感じたのが何よりの決め手であった。

 

「私を見てた人の、目。……ユウキの目と、同じ。……どうして私、を……?」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

 

「…………なぁんだ。アーク、気付いてたんだ」

 

「!」

 

 ユウキの真っ赤な瞳が妖しく光ると共に、僅かにその目が細められる。そして浮かべる笑みもまた妖しく、アークは雰囲気が一変したユウキの姿に戦慄する。

 

「そうだよ。僕はね、アークの事を今までずっと見てたんだ。数日前にアスナから君を守ってって頼まれるよりも、ずっと、ずぅーっと前から」

 

「ユウ、キ……」

 

「最初に見たのは何時だったかな? もう覚えてないや。君がお姉さんとシルフの人と一緒に居る時だった気がする。身体が小さいのに、大きな剣を持ってるのを見て凄いなぁって思ったんだ」

 

 そう言って笑うユウキの姿は何時と同じ様に見えて、少しだけ雰囲気が違う。アークはそんな彼女の顔を見て何故か動く事が出来ず、続けられる言葉を聞くしかなかった。

 

「ある日、街で見かけて気付いたら目で追ってたんだ。ケットシーの子に『お姉ちゃん』って呼んで欲しがられても、毅然として自分を貫く君を見てまた凄いなぁって思ったよ」

 

 その真っ赤な目がアークには何処か黒く染まっている様にも見える。そしてゆっくりと一歩ずつ足を踏み出して近づき始めるユウキを前に、アークは未だ動けない。

 

「その次も、その次も、見掛ける度に君の事が気になって見ちゃうんだ。気付いたら君を探して街に向かって、何をするのか眺めるのが当たり前になってた」

 

 その手が伸びてアークの身体に触れる。腕を掴んで物理的に離れられなくした上で、ユウキは言葉を続けた。そしてそんな彼女の背後で全てを聞いていたアスナ達が動き始める。

 

「アスナに頼まれて君を見守る理由が出来た時は嬉しかった。君が危ない時に助けて、フレンド登録が出来た日は夜に飛び上がったよ。君と友達になれて、一緒に過ごす事が出来る時間が最高に幸せに感じられたんだ。だからさ、アーク……」

 

「ユウキ! そこまでだよ!」

 

「アークちゃんを離して!」

 

 

 

 

 

「僕と、結婚してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ぇ」

 

 茜色に染まる空の下、吹き抜ける風で舞い上がる花弁を背に……その日、アークは告白された。




常時掲載

【Fantia】にて、オリジナルの小説を投稿しています。
また、一部先行公開や没作の公開もしています。
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