「クーベル様、それ以上暴れられますとカトル様にご迷惑・・『キャラウェイは黙っておれ!!』・が・・・」
カトルに抱きついたままじたばたする姿を見かねたキャラウェイがクーベルを宥めようとするが逆効果になってしまった。
依然としてじたばたするクーベルにカトルは一言。
「クー?キャラウェイの言う事は聞いてくれと言っただろう。それとも、見習い領主様は我が儘が通ると思って兄との約束を忘れてしまったのかい」
「うっ!?」
カトルの一言の刹那、クーベルの動きが止まり鳩が豆鉄砲をくらったような姿になった。
うんうんと何か言いたそうなのを抑えながらカトルは彼女を床に下ろすとその幼い頭を撫でた。
そこには年相応の可愛らしい少女が自身の兄に笑顔を見せながら微笑んでおり、その隣ではそんな二人を微笑ましく見つめるキャラウェイの姿があるのだった。
「さて・・僕の仕事もさっき終わったわけだし。クー、これから今回の旅の報告をしたいのだけれど領主様として対応して貰えるかな?」
「もちろん!!お兄ぃの頼みを聞かないわけにはいかんじゃろ。ウチはなんたってこのパスティヤージュの領主なんじゃからな!!」
「ふふっ、ありがとう。・・キャラウェイ、悪いがリーシャ達も呼んで来て貰えるかな?」
「かしこまりました」
両手を広げながら自慢げに話すクーベルの姿を横目にカトルはキャラウェイにそう伝えた。
そう、彼は周辺各国を旅しながら自身の腕を磨き、晶術中心の戦興業から剣術中心へと流れを変えようとしているのだ。
パスティヤージュもビスコッティやガレットと同じで領主は基本、公女が務めることになっている。
なのでカトルは長男ではあるものの、領主として振る舞うことが出来ないのである。
そこで自国の騎士団の技術力向上を目的に彼自身が旅をし、身に付けた技術を騎士団の訓練に活かすようにしてきたのであった。
現在、晶術訓練を基本としながらキャラウェイと彼に選抜された数名が試験運用という形でカトルの訓練を行っているのである。
本来、晶術を扱う間は無防備に近い。
その為、ブランシールに跨りながら晶術を扱うのが教科書通りなのだがカトルはその基本ですら剣術の習得によって覆したのだった。
晶術剣---
晶術と剣術を組み合わせたまったく新しい発想によって瞬間的に生まれる攻撃力は、あのレオ閣下ですら凌駕できると考えられている。
無論、それだけの攻撃力を生み出すのだから反動も大きい。技の出力に耐えられる身体能力と同時に二つのことを行う技術的センスが不可欠。
なので、まだ正式に晶術剣というものが存在するわけでもないし、扱えきれる人物はカトルただ一人なのである。
「お兄ぃぃぃぃぃ!!さっさと広間へ行くのじゃ。みんなが待ってるからのう」
「はいはい」
いつの間にか自分より前にいるクーベルに呼ばれてカトルは苦笑いしながら手を上下に振った。
そんなこんなでそんな凄い人物であろうとなかろうと、妹であるクーベルにはとことん弱い兄上なのであった。
=訂正履歴=
2012/9/9 主人公の名前を変更