バトルを前にもう一つルールが追加された。このバトルにおいて一匹のポケモンが使える技を公式戦と同じく4つまでとした。さらに選んだ4つに加えてバトル中一度だけ使用できるという条件付きで5つ目の技も選択しておく事にもなった。
「公式戦で一匹のポケモンが使える技が4つまでなのは、その数がポケモンとトレーナーにとって確実に覚えやすくて使いこなしやすいからよ。あなたたちは公式戦の舞台に立つことはないかもしれないけど、普段からこういうトレーニングをしておけばより効率よく技を使えるようになると思うわ。そして5つ目の技を選ばせた理由だけど、さっきもいった通りほとんどのトレーナーは技を4つにしてバトルをするわ、だから公式戦以外でも『相手も技を4つしか使ってこない』と思い込んでいる事が多い。そんな時に不意をつく意味でも5つ目の技を用意しておくの、いかに相手の予想を欺けるかが大事よ」
というのが追加ルールの理由だ。そしてバトルは始まった。始まって早々にミモザたち四人は驚かされた。
リョウがくり出したのはサカキとの修行の後で進化させたヤドキング。一方ナツメがくり出したのはヤドランだったのだが…
「んん!!??」
その姿に四人は目を見開いた。本来尻尾に噛みついているはずのシェルダーがなんとヤドランの左腕に噛みついていた。しかも頭頂部と手・尻尾の先が毒々しい紫色に変色している。
「ナ、ナツメ様!?それはヤドランなんですか??」
「えぇそうよ」
「そんなヤドラン見たことないの!」
「まさか遺伝子操作…?」
様々な憶測が飛び交うのを面白そうに眺めていたナツメだがいつまでもそうしているわけにはいかないので答えを教える。
「これはヤドランの『リージョンフォーム』よ」
「えぇ!?」
「で、でもアローラのパンフには普通のヤドランしか描いてなかったですよ!?」
「まさか新種ですか!?」
元部下たちの的はずれな見解に可笑しそうにクスクス笑うナツメ、そこにミモザが一つの憶測を唱えた。
「…ここ以外の別の地方の『リージョンフォーム』?」
「あら、正解よ」
ぱちぱちと拍手を送ったナツメはゲットした時の状況を説明した。
「私が映画の撮影で〈ガラル地方〉にあるとある島に行った時にたまたま進化の瞬間に居合わせたの。初めて見る姿だったから捕まえたのよ、その後でその島で道場を営んでいたマスタードという人に教えてもらったの」
「へぇ~」
興味津々に聞き入る四人ナツメは困ったように笑う。
「ミモザはともかく、あなたたちそこまで勉強熱心だっかしら?さぁ!始めるわよ!!」
「は、はい!!」
返事をした分リョウの初動が遅れてしまう。
「ヤドラン!“シャドーボール”」
ヤドランがシェルダーの先端をヤドキングに向けるとその先に黒く蠢く黒球が現れ放たれる。
「しまった!ヤドキング!“パワー…”」
リョウの指示が耳に入った瞬間ヤドキングは動いていた。ヤドキングの周囲に高エネルギーの塊が形成され“シャドーボール”に向けて放たれる。
ヤドキングは頭に噛みついたシェルダーの毒素によりノーベル賞受賞者並みの知性を手にいれている。つまりかなりの切れ者になっているのだ。
ヤドキングが放った“パワージェム”は“シャドーボール”に当たり威力を削りはしたが打ち消すには至らずヤドキングにヒットする。しかし威力はそこまでではなかった。
「ヤドラン、攻撃を続けなさい」
ヤドランは“シャドーボール”を連続で放つ。複数発の“シャドーボール”がヤドキングに迫る。リョウがある技の組み合わせを思い付く。
「ヤドキング!“パワー…”」
「ヤァド!!」
ヤドキングはいち早くトレーナーの考えを認識するためにバトル中は常にリョウの頭の中を覗いている(リョウは気づいていない)。ヤドキングは先程のように“パワージェム”を出し同時に“サイコキネシス”を発動、“パワージェム”でいくつかの塊を作り“シャドーボール”に当ててすべて相殺した。そして残った一発をヤドランに挑発の意味を込めて高速で飛ばした。ヤドランはボーッとしたまま動かなかったが、顔のすぐ横を“パワージェム”が飛び過ぎた。頬が少し切れた。ヤドランはシェルダーに噛まれていない方の手で頬をさする。傷ができたことを確認したヤドランの目付きが変わり咆哮する。
「ヤアアァァァ!!!」
「な、なんだぁ!?」
ヤドランらしからぬ雰囲気にリョウをはじめその場の全員が驚いた。ナツメだけはどうなっているのかわかっているのでほくそえんだ。
「この子はスロースターターなのよね、あなたのことを“強敵”だと認識したみたいよ」
ヤドランがヤドキングに突進していった。ヤドキングは“わるだくみ”しながらタイプ相性も考え、再び“パワージェム”を放つ。威力を重視したため放たれた数は先程よりも少ない。ヤドランはそれらを一瞥すると左手のシェルダーを構えた。それを見てナツメは技を指示する。
「“シェルアームズ”」
構えたシェルダーの先端から毒の弾丸が放たれ“パワージェム”を打ち落とした。その一発を皮切りにヤドランとは思えないスピードで次々に毒の弾丸を発射しついには“パワージェム”をすべて打ち落とした。きらめき散らばる“パワージェム”の中を歩くヤドランの姿はまるで凄腕のガンマンのようだった。
「なんなんだよあのヤドランは!!」
「あの攻撃は毒タイプみたいなの。どう思うハリー?」
「あぁ、確実に毒タイプだな。でも初めて見る技だ、あの様子だとあのリージョンフォームヤドランの固有技かもしれないぞ」
「普通のヤドランのタイプはみず・エスパーなの。じゃああのヤドランはどく・エスパー?」
「みずっぽくはないしな」
「だったら5番目の技で試してやる!ヤドキング!“くさむすび”!」
向かってくるヤドランの足元に草が生え足を引っ掻ける。
「ヤァァブ!!」
前のめりに激しく転倒する。だがダメージはリョウが予想していたよりもはるかに少ないようだった。
「くさタイプの攻撃がほとんど効いてねぇな、ミモザたちが言うようにどくタイプは確定かな?よし、ヤドキング!“サイコキ…”」
「ヤドラン、こちらも“サイコキネシス”」
“サイコキネシス”を発動するヤドキング。すぐに立ち上がり同じ技をぶつけるヤドラン。しかし、徐々にヤドランが押されはじめる。
「エスパーにエスパーを返してきた。もしみずタイプならみずタイプもちならナツメ様ならみずタイプの技を使うよな」
「エスパータイプのエキスパートだからエスパータイプは入ってるよな」
「エスパータイプの技で押し負けてるのも妙だ」
「どくタイプが影響している可能性があるの」
仲間の考察を聞きリョウは最後の“試し”を実行することにした。
「ヤドキング!“ねっとう”!」
熱々の熱湯がヤドランを襲った。
「ヤドォ!?」
あまりの熱さで手足をばたつかせるヤドランに大きな隙ができた。
「“パワージェム”!」
何枚ものエネルギーの塊が再びヤドランを襲う。ヤドランはゆっくりと立ち上がり口を大きく開けて閉じた後シェルダーを構えた。その間“パワージェム”が当たる。しかしヤドランは持ち前の耐久力を生かし攻撃を受け止めながら“シェルアームズ”でいくつかを打ち落とす。そしてすべての“パワージェム”を耐えきった。
「まじか!!」
この時、たくさんの“パワージェム”が当たったにも関わらずヤドランには一つとして急所に当たらなかった。実は先程の“シェルアームズ”は攻撃ではなく急所に当たりそうな攻撃だけを打ち落としていたのだ。
そんなことには気付かないリョウ、しかし状況的に有利なのはリョウだった。
「“サイ…」
技を言いきる前に発動するヤドキング。今度はエスパーパワーMAXの“サイコキネシス”で完全にヤドランを押さえ込んだ。ヤドランはうつ伏せに近い状態で地面に押さえ込まれる。左手のシェルダーの牙が食い込みはじめる。完全に有利だと思っているリョウはすでに勝った気でいる。
「ナツメ様、完全に押さえ込みましたよ!」
一方のナツメは余裕の表情をしている。
「さて、どうかしら?」
「強がりですか?ヤドキング!そのままいけぇ!」
ヤドキングの“サイコキネシス”がさらに強くなる。ヤドランの腕のシェルダーがどんどん食い込み痛みとうずきでヤドランの顔つきが変わっていく。それを確認したナツメはニヤリと笑った。
「さぁ、“あばれなさい”」
ナツメが呟いた瞬間ヤドランが左腕を思い切り振り上げた。それを皮切りに暴れ始めた。シェルダーが噛みついた腕をメチャクチャに振り回し暴れる。ヤドキングは何とかかわしているが徐々に避けるのが難しくなる。
「な、なんだ?普通の“あばれる”とは違う!?ヤドキング!絶対に“サイコキネシス”を解くな!」
ヤドキングはわかっているとばかりに首を縦にふる。…が急に動きが鈍くなった。
「どうした!?」
リョウの方を振り返ったヤドキングの顔はなんだか眠たいのを必死に我慢しているようだった。
「効いてきたみたいね」
「え?」
そうこうしているうちにヤドキングはどんどん眠りに落ちていき、ヤドランの暴走ともとれる“あばれる”がどんどんヒートアップしていく。状況が理解できずリョウは焦る。
「ヤ、ヤドキング!これは、どうなってるんだ??」
「わかった!“あくび”なの!!」
後ろで見ていたミモザが気づいて叫ぶ。“あくび”は対象を時間差で眠りにおとす技だ。
「正解よ、ミモザちゃんはさすがね」
「で、でもいつ?」
「多分二回目の“パワージェム”の後なの」
「そういえば口を開けたような記憶がある…って!そんな場合じゃない!」
ヤドキングはヤドランの猛攻に何とか耐えているもののふらふらしている。あと少しで倒れそうになったが寸前でヤドランが疲れはてて混乱した。
「よっしゃ!今がチャンスだ!“パワージェム”!」
何とか眠る前に決着をつけようと残った力を振り絞り最大火力の“パワージェム”を準備するヤドキングの目の前にヤドランの左腕が向けられた。
「え?」
ヤドランー見ると何かを食べている。それが何か気づいたリョウは思わず叫んだ。
「《ラムのみ》か!!」
「“シェルアームズ”」
ヤドキングの動きよりも早くヤドランの左手のシェルダーの先端から毒の弾丸が放たれた。顔面にもろに食らったヤドキングは
「ヤッドッ……!?…」
何が起こったのかわからないまま戦闘不能になった。
「ヤドキングー!?」
「勝負あったわね」
ナツメはヤドランをボールに戻しリョウに近寄った。
「昔に比べれば強くはなっているようだけど、未知の存在にであった時にかなり動揺するみたいね」
「面目ありません…」
うなだれるリョウにナツメは優しく語りかける。
「そこまで落ち込むことはないわ。さっきも言ったけど強くはなっているし、ヤドキングとの信頼関係もちゃんと築けているようだしね」
「ナツメ様ぁ!!」
ナツメの部下だった当時は絶対にかけてもらえなかったような優しい言葉をかけられ飛びつくリョウをサッとかわしナツメは他の三人の方を向いた。
「さあ、次は誰かしら?」
「俺が行きます」
前に出たのはケンだ。
「あなたはマチスについていたのよね?フフッどんな成長をしたのかしら?」
ナツメがもとの場所に戻ろうとした時ミモザが呼び止めた。
「あ、あの、質問してもいいなの?」
「なにかしら?」
「さっきのバトルの中で何度かヤドランがかなり早く動く瞬間がいくつかあったの、リョウのヤドキングの方がすばやいはずなのに」
「本当にあなたは目のつけどころがいいわね、私がまだR団ならあなたをぜひ部下に欲しいわ」
「そんな、ナツメ様~」
不満そうな声をあげるリョウを無視しナツメはミモザの問いに答える。
「それはね、ガラルヤドランの特性の『クイックドロウ』》の効果よ」
「初めて聞く特性なの」
「現時点ではガラルヤドランにしか確認されていない特性だからね、一定確率で相手より早く行動できるのよ」
そのおかけで何度かかなりの素早さで動いていたようだ。フムフムと頷くミモザをナツメが覗き込んだ。
「納得したかしら?」
「あ、はいなの!」
間近で見たナツメのあまりの綺麗さにドキッとしてしまうミモザだった。改めてナツメとケンが位置につく。
「それじゃ、始めましょうか」
二人の手からボールが放たれ第二バトルが始まった。「」
ガラルヤドランの見た目に一目惚れし、即座にいれてみました。情報があまりない状態で想像をいれながら書いたのでゲーム内の性能と異なる点も多くあると思います。
あと話の中にバトルルールに「五つ目の技」というのをいれたのですが、あんまりうまく使えてません。次はうまく使えるように精進します。