園田海未ちゃんとの○○   作:AQUA BLUE

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高度な心理戦が繰り広げられます(大嘘)


4.園田海未ちゃんとのエアホッケー

 何気ないことだった。たまには外へ昼ご飯でもと街へ二人で出たとき、ふと目に留まったのである。

 

 

 ――ゲームセンター、の壁から透けているエアホッケーの台が。

 

 

『そういやさ、一緒にゲーセン入ったこと……ないよな』

『ええ』

『一勝負だけしてくか!』

『え、ちょっと!』

 

 

 ほんのちっぽけな好奇心だったのである。中学生の頃友達とやることで渦巻いたワクワク感を、久々に体感したいにすぎなかった。

 

そのはずが――

 

 

 

 

 

 

 

 風圧もれるまっしろフィールドで、縦横無尽に弾ける平べったい丸弾丸を血眼になる勢いで追っている。気を緩めようものなら……

 

 

「ふんっ!」

「あ」

 

 

 しまった、という言葉が喉から出るよりはやく、守護中の範囲を突破された音が抜けて。

 

 得点。

 

 海未渾身のショットが、加速したパックが、自分に過った一瞬の雑念を掻い潜ってしまった。

 

 

 

 

――激戦である。

 

 

 

 

 

「これで4-3(また私のリード)……ですね!」

 

 

 下部の機体口から出てきたパックを取り向き直ると……それはそれは満面にどやをたたえた海未が。

 

「まだ時間は残っているぜ」

「逆転を許すとでも思っているのですか?」

「さてね」

 

 不敵な笑みを返してやると、海未はますます無邪気に嗤った。さしずめ絶頂モードな彼女。負ける気がしないって言わんばかりだ。

 

「だがそこに付け入る隙があるというもの!」

 

 早口で叫ぶやいなや、スマッシャーを持つ腕をしならせ海未の自陣めがけてパックを打ち込む。脱力してこちらと対話していた海未は虚をつかれたか肩をピクリと跳ねさせたが、もう遅い。

 

 

 摩擦と慣性混じりの一撃はカコキンカコキンと鋭い衝突を繰り返して滑っていき――しまいに細き通気孔へ侵入した。

 

 

「必殺ッ『遮りスマッシュ』」

「卑怯な!?? しかもなんと捻りのない技名!?」

「そりゃ2秒クオリティだからね」

「と、とにかく今のはノーカウントです!」

 

 おかげで4-4(急襲込み)。

 掲げるVサインが単なる煽りになってしまうのは悲しいものである。

 

 

「おや、半ば不意打ちとはいえ同点は焦っちゃう?」

「なんですって……? って、乗りませんよ! ずるいものはずるいです!」

「ちっ」

 

 そしてそこには、相容れぬ大人たちの姿があった。流れを作り出したのはわたしサイドだが。エアホッケーの台を挟んだ先には、かなりしょうもないことに真剣な抗議をする海未。真面目な性分がそうさせるのだろうが、非常にムキになっているのがなんとも可愛い。

 

 

「ねーお父さん、あの二人なにやってるの?」

「あれは一種の聖戦だよ」

 

 なんか通りすがりの親子によりとんでもないことを称されたが一興でしょう。もう一度言う、この流れを作り出してしまったのはわたしだ。海未は悪くないたぶん。

 

「今のをカウントしてくれたらさ、昼食にデザートもつけた上でほむらまんじゅうおごるよ?」

「またそうやって……今回ばかりはだめです!」

「ほむまんが1こだけ、だなんていつ言ったよ? お望みとあらば2こだって……」

「っ! それは……魅力的な提案ですが……いいえ、私は屈しません!」

「3こ」

「さんっ……!? そっ、そこまで貪欲に得点を欲するというのなら……いいでしょう。呆れて言葉も出ないところではありますが、まあ! あえて餌付けされてあげます」

「まいどあり。ただ、あんま食べると太るよ?」

「あなたという人はーっ!! やっぱり今のなしです!」

 

 

 もう一度言う、作り出したのはわたしサイドだ。反省はしていない。

 

 

 

 

 

 

 

「ふふん……」

「くそっ。よかったね!」

「正義は勝つ、ですよ」

 

 激闘を経て。現在、鼻歌を奏でて歩く園田氏が隣にいる。負けた。残り何秒かというあたりで二点ほど追加されての敗北。すんでのところでこちらのガードをかわしての得点で、こいつがまた射られた矢のごとく鋭かった。

 

 

 まあ、嬉しそうでなによりということで。ご機嫌そのままにやっとこさ本来の目的、昼ご飯を食べにいく。遊び倒しているうちに結構経ってしまった、まずはと時計に目を落とす。

 

 

「げ」

 

 針の進みが信じがたく、つい変な声が出た。しかしこんなルンルン気分な彼女にこの事実を伝えろと? 神は残酷である。

 

 

「どうかしましたか?」

 

 不確かな上位存在に責任転嫁をしているうち、少しだけ前にいた海未が、のぞきこむようにこちらへ振り返る。髪がふわりと流れ、やがて彼女の素直に心配しているような面持ちがはっきり見える。言えない、言えやしない。

 

「夢中になりすぎた、ということだ」

「…………」

 

 それきり説明はしなかった。なにしろお昼時など、とうに過ぎていて。

 

「ほむまん買って帰るか」

「……はい」

 

 

 考えてみれば、総計10戦ほどしていては致し方なく。

真に勝利したのは、エアホッケー擁するゲームセンターだった。

 

 

 

 

 

 なお、帰宅後。海未はほむまんを夢中で頬張っていた。




もっとエアホッケーあるあるを反映させたかった。だが筆力が足りなかった許せ
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