「もう一度です……!」
「あーもう降参。海未の勝ち!」
「シャッフルしますね」
「ナイスルーだこと」
お腹が空いたまま始まった激戦から早二時間近く。トランプを握る挑戦者と辟易な勝利者の図に逆転は未だない。
「休憩を要求しまーす!」
「……もうこんな時間なんですね」
「なんなら良い子はお昼寝タイムってくらいさ……オーケー?」
「仕方ありませんね。一時休戦です!!」
「終わったとは言わないとこほんとさすがな」
(また後でやることになるだろうが)ようやく中断に成功した。まだ闘志をみなぎらせてる海未、例えるなら強キャラの風格だ。
「一度だって勝利を収めてはいませんから……しかしながら、腹が減っては戦ができぬといいます」
「そもそもババ抜き始まった原因それだかんな?」
「ハッ……そうでした、勝った暁にはしっかり忘れてもらいますからね!?」
「……その前にな? たった今、リベンジャーによる当の目的忘却が露呈したわけだがどうよ?」
手にあるトランプの向きを揃えるのと同時進行で、丁寧に散らばったものも回収していく海未。どさくさ紛れて間違えた形を混ぜてやるという悪行も、彼女のまめさの前には仕組んだことすら気付かず修正される。
今日も絶好調だなという意味を込めてしらーっとした視線を送れば、受け止めた海未は何か顔についていますかなんて、実に生真面目なことを問いかけてくる。
「園田さんや。今後もそのピュアさを忘れないでくれたまえ」
「……いったいなんの話を?」
「ラブリーエンジェルだってこと」
「どこか打ったんですか」
「かもしれんな」
歯の浮くような台詞からの自虐にも、深読みして心配してくる彼女が愛おしかった、お片付けタイム――。
というわけで、所変わってリビング。何を食べるか会議した結果、海未の
「じゃあ、作りますから座っててください。チャーハンでいいですか?」
「ハンバーグ希望」
普段なら特に異論はない……ないのだが、早朝に食べたのが最後で腹ペコすぎる以上、もう少しだけボリュームあるものを口にしたい欲が浮上してきていた。ゆえに反逆という名の我が儘をかましてみる。気分は好物をねだる駄々っ子さ。
「夜までとっておきなさい」
「待ちな。『作ることを仄めかしてのおあずけ』ってのはだいたいが果たされないというアレを知らないとでも……ああいやチャーハンでお願いしやす」
「助かります」
海未には勝てなかったよ……。鬼、悪魔である。もっとも作ってくれるだけで天使ではあるが。
「……明日、必ず作りますからね」
なんてひとり苦笑いしていたら、海未から小声の耳打ち。兎のように軽やかに離れ、すっと三角巾に手をかける彼女には……もっと勝てる気がしなかった。
「やっぱ手伝おうかな」
「いえいえ、ソファーで楽にしていてください」
「んなこと言わず、愛の共同作業といこうや」
「あ、愛って……もう」
と思えばこちらのマヌケな申し出にちょっともじついて、赤みの差した頬っぺたを斜めに逸らそうとする。
まったく。
くえるのか、くえないのかわかったもんじゃない。
実は調理する海未ちゃんを書きたかった。だが何故かボツにする流れになっちまった許せ