土砂降り、
どんより曇天と攻撃的雨粒による弊害は如実にテンションへ影響してくる。
「すごい雨……」
およそ半分くらいは海未も同じ感想らしい。物憂げにカーテン越しを眺めて、眉を曲げた。
「開き直って散歩とかしてみる?」
「さすがにびしょ濡れですよ」
「相合傘すれば心はホット」
「そんなことだろうと思いました」
普段からこちらのアホさ加減にお呆れになっている園田氏、一段と塩対応である。やはり悪は憎き雨。てめぇのせいだ、逆恨みだけど。
「すんごいアウトドアってわけじゃないから別にいいんだけどさ、コンビニ行きたいときとかだるすぎる」
「しょうがないじゃないですか。人間、自然には逆らえませんし」
おっしゃる通り、現状を打開したいと考えたところで覆せない。海未は海未で本を読み始めたし、構っていただけない変態野郎は変態野郎なりに羽をのばすとする。籠る時期も必要かと受け入れておこう。ただ――
「二人で一緒に出掛けたりできねえのが、一番辛いなあ」
「……でも、私はずっとあなたの隣にいます」
「さらっとかっこよすぎやしませんかね?」
ぽっと出の陳腐なる我が口説きに、本に目を落とすまま彼女は返してきた。表情ひとつ変えず実にナチュラルに。
……いや、どうやら本人にとって、うっかり口をついて出たものらしい。証拠に彼女の視線がページの中心から右下に逸れていっている。
「ふ、ふふ……誉めても何も出ませんよ?」
なにやら笑ってごまかしにかかっている。とことんポーカーフェイスに向いてないガール代表園田は、堂々やり過ごすつもりのようだ。
「ったく、ますます惚れちゃうね」
ならば、こちらに悪戯心はいらない。さながら女神のような彼女を立てるのみである。
「なっ……」
次をめくろうと動かした海未が硬直する。
園田海未ぞっこん太郎は曇りなき、シンプルな本心を告げたまでなのである。ええ。いつもみたく反応を楽しもうなんて、邪な感情はまるでない。
「元気出てきた。空は暗く阻まれているのに、心はすっかりカンカン照りだ」
「い、いや、そんな……私は恋人としてとっ……当然の励ましをですね――」
パサリ、と海未の手から本が床へ落ちる。両の手をぶんぶん振る先に見切れる耳は本人の体温上昇を知らせていた。
園田海未さんが放つピュアっぷりにはつい照れそうになるものの、今押し黙ってしまってはかえって気まずい。
彼女の座る椅子まで、いいや顔と顔がぶつかりそうな所まで――接近する。
「海未」
「は、はい」
映り込んで、光彩と光彩が溶けた。
雨の音がより強く聴こえるのは、気のせいではないだろう。窓は雨垂れの露が沈黙が流れて、滲む湿度は詰めた距離からか濃く肌を刺激する。
「――っ、散歩行ってくるわ」
離れ、無意識に閉鎖していた呼気を開放する。
やべえ危なかった。乗った雰囲気にかこつけてかっこつけようとしたのに、海未と向かい合ったら色々吹き飛びそうになった。今のヘタれは正解だと、強く思う。
「わ、私も行きます」
「いやいいよ濡れるから!」
「傘を共有すればいいじゃないですか!」
「さっきと言ってること逆ゥー!」
「あなたこそしゃんとしてください! ほら、いつまでも照れてないで!」
「照れてねーし! あー寄るな!! 今はマジで近寄るんじゃないぞいいなァ……」
「嫌ですくっつきますー!」
結局はギャーギャー揉めるというのに。湿気にあてられるばっかりに熱極まってしまう。
これだから、しっとりする日は苦手なんだ。
園田海未ちゃんと相合傘どころか雨自体空気だった許せ
ここらで、たまには珍しく真面目な後書きを。
一度でも目を通してくださった方々、お気に入りまでして読んでくださっている皆様、あるいは後書きの部分まで見逃さない物好きなそこのあなた様。いつもありがとうございます。欲望丸出しで綴り始めた今作ですが、続けてこれたのは園田海未という素晴らしすぎる女の子と、皆様のおかげであります。
ご挨拶もほどほどに、単刀直入申し上げます。「園田海未ちゃんとの○○」、今話をもちましてとりあえず終了にしよう思っております。少なくとも本編は。元々一話完結式の二次創作なので完結もクソもないのですが。
今後は他海未キチ作者たちが織り成していくであろう何かを、ニヤニヤ拝読する海未キチに戻ろうかと。もしくはボツネタとかを、番外編とかいってぶん投げる……かもしれないくらいです。
理由はシンプルで、今回が9話目にあたるからです。μ'sもちょうど9人ですし、終了するならばこの辺がちょうどいいかなと少し前から考えておりました。
あとは……園田海未を表現したかったが筆力不足だった許せ、という毎度の文句を用いさせていただきます。
ではまたどこかで。園田海未に、数多の海未キチらに、ありがとう。