猿と魔王の二重奏《タッグマッチ》 作:ジェリド・メサ
すみませんでした
助かりました
次もよろしく
「ぅおいッ!!なんで今の着地取れねぇんだよォ!」
「マジで馬鹿の一つ覚えみたいに特格に急速変形つけるのやめろって!!」
「横サブの誘導強スギィ!避けらんねえッ!」
「オマケにケルビーもあるんですからね……、あの機体ほんと壊れですよぉ……」
場所はいつものゲーセン。
リプレイモニターでさっきまで繰り広げられていた熱い戦いの映像を、今日たまたまここに集った4人の戦士達と鑑賞していた。ついでにお話も。
今日もしっかりと固定を楽しんだのでそこで流れ解散、というのが普段の流れなんだが、今日はそうもいかなかった。なにしろ重要な案件がまだ残っているのだからな。
それじゃぁ、今日ここに集まったイカれたメンバーを紹介するぜッ!
まずは一人目!PN『パンさん(人間)』、結構な頻度でこのゲーセンに出没している大学生。このゲーセンのトップ5の実力者でもある。ここのゲーセンのバイト面接で落とされた悲しい人。
続いて二人目だァ!PN『ひで・カスタム』、名前の通りジオン軍の白兵戦様モビルスーツのカスタム機をよく使っている。最近にして、ようやく弟子が出来たらしい。前から欲しいつってたからね……。ちなみにひでは本名。
えー、三人目。俺。終了。
そして四人目。このゲーセンが誇る紅一点、PN『聖堕天使あこ』――つまりはあこちゃんです。他にも色んなゲームをしているみたい、正直このゲームに引き摺り込んでしまった俺が言うのもアレだけど、このゲームには手を出さない方が良かったかもね……。
さて、そんな俺達の議題はと言えば、最近のアップデートによって追加された新機体の件だ。
「あれそもそもメインの火力もおかしない?」
「ホントですよぉ!打ち切りリロードなのが唯一の救いです……」
「いやいや、それよかあのサブやろ。あの武装アメキャンとかで降りれる機体じゃなきゃ相当きついぜ?」
「うん、それはあるね。あの格チャのゲロビもワンチャン火力があってなんでもある機体って感じだよな」
出るわ出るわの新機体への恨み辛み、それもそのはず。この4人で交代しながら固定を組んでいたのだけど、だいたいの組み合わせにその件の新機体が、オマケに高コストも超絶万能機OOだったり、横特鈍足サブ阿頼耶識チンパンだったりでほとんど確定していると来たのだ。
割とその2機体のせいで低コストが息をしない環境になり出していた所に、運営からの新たなる楔が打ち込まれる。それが今回の新機体である『ライトニングガンプラ』なのだ。
火力の出るメイン。
強誘導かつ強よろけでダウンまでしっかり取れるうえに、横入力の移動量もそこそこあるサブ。
試合をひっくり返せる力を持った打ち切り格チャ。
リロもそこそこ短く、ケルビーと曲げ撃ちゲロを撃ち分けられる特射。
迫り来る敵機から爆速で距離を離すことが出来る特格の急速変形。
変形時のサブと特射の誘導も相当きつい。
オマケに派生で火力が伸ばせる格闘。
これらが全て詰め込まれた上に、極めつけとして。
2500コストなのだ。
んん??ぶっ壊れかな?
「もぉ〜!なんでこの機体25なんですかぁ〜……!」
あこちゃんの甲高い悲鳴にも聞こえる嘆きが響いた。あこちゃんの言う事は最もだよ……。こんな見たらわかる強機体を勝率ガチ勢の奴らが使わないわけないでしょ?
結果として一時期、全国機体使用率が一時期、脅威の30%を超えていた時もあったのだ。単純に考えれば、敵味方合計4機の中に必ず1機はガンプラが紛れ込むという、ガチの戦争してきたMS乗りの方々からすれば溜まったものじゃないだろう。
その後は、立ち回りとかいろいろ談義した後で今日は解散ということになった。
今日はあこちゃんのバンド練も無かったようなので、少し商店街の方に寄り道しながら帰ることにした。元々はそのまま直帰する予定だったのだがそうせざるを得なくなってしまった、という方が正しい。
「たいぞーさん、これから時間ってありますか?」
「いや……、今日はバイトも無いから午後はフリーだよ」
「それじゃあ…!ご、午後はあことデートして下さいっ…!」
「うん、喜んで」
期待と不安が混在している顔から、デートのお誘いが来たらさ……。そういう期待に応えたくなるのは仕方の無い事だと思いませんか?そもそもゲーセン通いの俺にそんな女友達なんて出来たことなんか……、うん、無かったからなー。
「ホントですか〜!やったぁ〜!」
いや、あこちゃんのこんな屈託の無い笑顔が見られたってだけで、今回のお誘いを受けた価値があったってもんでしょ。
★ ☆ ★ ☆
あこちゃんと隣り合わせで商店街を練り歩く。
誘われたのが当日という事で何もプラン等は無い、行き当たりばったりのデートなんだけど、それでもあこちゃんはいつも以上の笑顔を向けてくれる。なんやこの子は……、天使か…?
「あ、そうだ!あこがいっつも行ってる喫茶店に行きませんか?」
いかにも楽しそうな顔を浮かべながら、そんな提案をしてくれる。人付き合いとかすっごい得意そうだよなあ。
「うん、じゃあそこ行こうか?……えっと、案内よろしくね?」
「はい!任せてください!」
さっきまでの隣り合わせの状態から、あこちゃんが半歩ほど前に出て歩き出す。その小さくとも頼れる背中を見つめながら、後ろにぴったりと着いていくと、『羽沢珈琲店』というパッと見レトロチックな喫茶店に行き着く。
「ここがあこちゃんの言ってた?」
「はい!ここって中がすっごく落ち着いた雰囲気で居心地がいいんですよー!」
「なるほど……。この店って前からあったの?」
「多分あこが産まれる前からありましたよっ」
「……そんな店を俺は知らなかったのか……」
「早く中に入りましょっ!」
「あぁうん、入ろうか」
店のドアを開ければ、当初の俺の予想通りにレトロっぽい内装。これは確かに落ち着いた雰囲気だなぁ……。
「あ、いらっしゃいませ!」
そう言って茶髪の活発そうな印象を持った女の子が、接客をしてくれる。
「おひとり様ですか?」
「あ、いや――」
もう一人います、と店員さんに言おうとした所で、後ろにいたこれまた元気な奴によって遮られる。
「つぐみさん、こんにちは!」
「あ、あこちゃん!うん、こんにちは」
やはりというかなんと言うか、この接客をしてくれている女の子とあこちゃんは知り合いらしい。二人とも笑顔で会話していて、こっちまで元気を貰えそうな感じ。
一通りの会話が終わったらしく、その店員さんの関心は続いてこちらへと向けられる。そりゃそうだよな、自分の知り合いが知らない人を連れてきたんなら、誰だろうと不思議になるのは普通のことだ。
「俺はあこちゃんの……友達?の吉崎泰三って言います。今後ともよろしく」
「これはご丁寧に……。えっと羽沢つぐみって言います!よろしくお願いします!」
羽沢つぐみさん、ね……。ん?それってもしかして……!
「羽沢って、この店の……?」
「はい、このお店は私の両親がやっているお店なんです」
「つぐみさんはね、自主的に店を手伝ってるんだよ!」
それは、なんて偉い子なんだろう……。家族の仕事を自分から手伝いに行くなんてなぁ、俺には絶対に出来ないな。一応俺も働いている人間だけど、バイトは自分の為だし。
そんなやり取りの途中だったのだが、続いて入口からやってくるお客様がいらっしゃった。それも4人も、だ。
先頭に立っているのは、黒髪に赤メッシュを入れたいかにも厳つそうな女の子。
その横からひょっこりと顔を出しているのは、灰色っぽい髪色でダルそうな顔をしている。当然、女の子。
その後ろにはピンクの髪ですっごいボディラインの女の子と、赤髪で面倒見が良さそうな女の子が。
しかもそれぞれ、何故かキツめの――というかあからさまに俺を睨んでいるような……。
「あ、おねーちゃんだ!」
「あこ、こいつは……、誰だ?」
赤髪の女の子から猛烈に凄い覇気が漏れ出ている……。めちゃくちゃに……、怖い……!なんか、問答無用で殺されそうな雰囲気だ。
あれ……?もしかして俺……、死ぬ?
えー、ごめんなさい。
色々あったんですよ。