『いいかい…今後キミのために一つだけ教えておくよ』
『いざというときに誰かが助けてくれると思ってはいけない』
ブラストにこう言われなければ私はまだ大人を信用できてたかもしれない
でも思い当たるふしがあって大人たちは私の超能力に利用価値があったから利用してただけで実際研究所の大人たちは私を助けてはくれなかった。
そのことをブラストの言葉で考えさせられそれを理解した時に思ったことがある
大事なものは自分で守るしかない
必ずしもブラストが助けてくれるわけじゃないから
自分自身とフブキのことを自分の力で守ろうって子供ながらにそう思った
「…」
タツマキがサイタマに攻撃を始めてからしばらくたつ
さっきまで何もない更地だった場所が今では変わり果てていた
ある場所では大きく地面が割れ、ある場所では底が見えないほどに地面が陥没し、ある場所では溶岩が地面から勢いよく沸き上がり小さな池をつくっていた
浮遊しながら自身のやった地面の惨状を眺めていたが急に眉をひそめてみせる
「服が燃えたじゃねえか」
溶岩を浴びて服を全焼させたハゲが何事もなく佇んでいたからだ
(どんだけ頑丈なのよコイツ)
瓦礫をぶつけ
体を叩きつけ
直接体に超能力をかけ
重力で押し潰し
溶岩を浴びせ
自分の思い付く限りの攻撃を試してみたが全部効果がなかった
フブキとの一件で交戦し確かにサイタマが強いのは認識してはいた
少なくとも複数都市を壊滅させられるそこらの災害レベル竜よりも強いとタツマキにしては珍しく高く評価していたのだ
だがその時の自分は病み上がりで全快ならば自分が勝つとそう思っていた
だが実際はどうだ
全快全力の自分の攻撃をたえ、ダメージを受けた様子もない。
(ふざけるんじゃないわよ。どうしてこんな…)
タツマキは負けたことがなかった。苦戦した経験すらもない、天性の超能力の運用と才能と出力を持っており超能力が通じなかったことは一度もない。
窮地に陥ったのは怪人協会との戦闘の時でタツマキにとって始めての経験だった。
(そう言えばあいつらも…)
怪人協会と戦ったときに自分の超能力に抵抗してみせた名前と存在事態が猥褻な怪人と怪人を自称したガロウのことを思い出す
(あいつらにも効かなかった)
ここ最近になって自分の超能力が効かないものたちが現れ始めた
そいつらも自分が全快なら勝てるとそう思っていたがそう思って戦ったサイタマを目の前にすると正体不明のモヤモヤした感情が込み上げてくる
こんなことで本当にフブキを守れるの?
「おい、黙ってるけどどうした?終わりにすんのか?」
声をかけられ意識をサイタマに戻す、
自分の絶対的自信が揺らぎ始めて久しぶりに抱いた不安
そんな時ブラストの言葉を思い出した
「…いざというときに誰かが助けてくれると思ってはいけない」
そう誰も助けてくれない。
だから自分が守れるようにならないといけない。
自分自身とフブキのことを
タツマキの頭の中で何かがキレる音がした
タツマキの全身が淡く緑色に発光し再び超能力を行使し始める
「お?」
サイタマは間の抜けた声をだし周りの異常に気付く
広い範囲で円をかくように淡く緑色が地面から遥か上空まで壁のように伸び始めサイタマを隔離するように周囲を円柱形の壁に覆われた
(おっ流れ星)
そんな状況をボーッと他人事のように眺めて沢山あるなあなどとタツマキのことよりも流れ星の方が気になり始めた。
今まで自分がみたことのある流れ星よりも鮮明で沢山あり大きい
そしてどんどん更に大きくなっていき頭上まで迫り
「マジか…」
そのままサイタマに直撃した。
ピンポイントでサイタマのいた場所に複数の隕石が落下し凄まじい轟音と衝撃波が発生する
タツマキは隕石を落下させた後あらかじめ張っていた円柱形のバリアに蓋をするように上面にバリアをはり最小限の被害に止めようとする
隕石の威力を抑えるというかなりの無茶苦茶に全身に超能力による負荷がかかり肉体が悲鳴をあげる
爆発も収まりようやくバリアを解いた
自分も地面におり一息つく、体調が悪い超能力の使い過ぎで頭痛がする
呼吸ができない多分鼻血がでてる
咳も酷い、口の中が血の味がする
サイタマの立っていた方向に目を向けた
明らかにやり過ぎだった。今後も自分の超能力が通じない相手が出てくるかもしれないと考えると頭が真っ白になりやってしまった
生きていて欲しいと思う反面生きてるわけがないと思う
朦朧とした意識でもうもうと立ち込める煙を眺め続けると煙の先で砂利の音が聞こえ一気に意識が覚醒する
煙が徐々に晴れていき、今日何度もみたハゲ頭が姿を表す
当然のように悠々と歩く姿
信じられないそれをみてタツマキも手をかざし超能力を使うと全身に激痛が走る
サイタマの動きを止めるためにかけた超能力は弱々しくまるで勢いを止められない
悔しい
自分の全身全霊もまるで通じないなんて悔しくて仕方ない
サイタマを止めることも出来ないのに自分が消耗するだけなのに自分の敗けが認められなくて悪あがきで超能力を使い続ける
疲労で顔があげられなくなりうつ向くと再び意識が霞んでいき視界がどんどん暗くなり聞こえる音も遠く体が寒くて仕方ない
凍えそうな全身から不意に腕に温かい感触が伝わり、体を動かせる程度にタツマキの意識が戻った
温かさの正体を探るために顔をあげると腕を掴んでいるサイタマと目が合う
「もうやめろって」
「…何よ。ま…終わっ…いわよ」
「滅茶苦茶血がでてんだろ…つーかまだ治ってなかったんだろ?」
どうやらタツマキが血を流してるのはまだ傷が完治してないからとサイタマは解釈したようだった
「いやよ…私…負けたくない」
「じゃあもうお前の勝ちでいいよ」
「舐めてんじゃないわよこのハゲ!!」ゲホッゴホッガハッ!?
面倒臭えと思いながら目の前の頑固者をどうにか病院に連れていこうと考えてみるが
(ああもうダメだ。わかんねえ!)
「…もう疲れたし引き分けってことにしない?」
「…アンタ疲れてるの?」
少し予想外の反応で面食らう
「…ああ。俺も疲れたしお前は病み上がりがまだ治ってないみたいだし、今日無理してやることはないと思うんだ。
だからお互い体調が万全な時にやり直した方がいいと俺は思う」
(やべえ…自分で言いてえことよくわかんねえわ)
「…わかったわよ。じゃあ今度にする」
内心心底ホッとする。後はタツマキを病院に連れていけばいいだけだ
「よし、じゃあ病院にいくとするか。動けそうか?」ミーンミーン
「それよりアンタそのまま全裸で病院いくつもり?」ミーンミーンミーン
「あ」ミーンミーン
タツマキの攻撃で服が全焼したのをすっかり忘れていた。
やべえどうしよう…て言うかミーンミーンってうるせえな何の声だ?
さっきから蝉の鳴き声のようなものが気になり辺りを見回してみると
空から何かが地上に降りて来た。着物を着て、針のような鋭く長い口に4本の腕に刀をもち2本足で全身虫のようなフォルムの怪人
「ミーン、ミーン俺は蝉の姿から新しい剣術を生み出そうとしたら蝉になってしまった怪人真剣蝉だあ!!その力災害レベル竜を優に越えるっ!でかい音がするから見に来てみればS級2位のタツマキが血を流して弱ってるではないか!ここでタツマキを八つ裂きにしゆくゆくはこの俺が世界を
「おっ?服見っけ」ぐぎゃあああああ!?」
真剣蝉推定災害レベル狼死亡
「よし、歩けるか?」
血塗れの着物を着てA市に戻る準備を整えタツマキの方を窺う
「馬鹿じゃないの?歩けるに決まってるじゃない。余裕よ」
そう言うと全身をガクガク震わせながら歩くタツマキ
亀のような遅さでノロノロと歩き始める姿をみてサイタマは深くため息をつくとタツマキの目の前まで来て背を向けた
「何よ?ちょっ!?」
姿勢を低くしてからタツマキの体を掴んでおんぶする
「無理すんなって、ほらいくぞ」
ギャーギャーと暴れていたが背中の温かさに気付くと静かになる。
考えてみるとおんぶなんて記憶にない。昔はされてたのかもしれないが物心つく頃はしてもらってなかった。
自分が小柄なのもあるが全身に暖かさを感じる、そう言えば正面からこの男に抱っこされたときも暖かかったのを思いだした
「悪くなかったわよ」
「何か言ったか?」
「頭眩しいっていったのよ」
「もう歩いてくれない?」
そう言ったサイタマの頭をペチペチと叩き始めた
血塗れのタツマキを背負い協会関係の病院まで俺はたどり着いた。道中静かになったと思ったらタツマキはどうやら眠っていたらしくどうやら俺が代わりに白衣を着た医者や協会関係者の黒服に説明しなければならないようだった
「A市に近辺に隕石が落ちたとの報告がありタツマキさんを探していたんですが…一体何があったんですか!?」
ちょっと待てよ?このまま正直に説明するとタツマキの怪我は俺の責任にならないか?
とすると俺は黒服と医者に色々と説明しなきゃならなくわけだ。うわー面倒臭そう。
「ええと…タツマキは」
「タツマキさんは?」
「蝉の怪人と戦って…」
その後協会に協会災害レベル判定竜、真剣蝉が隕石を落下させタツマキを苦戦させた怪人として正式に登録された