side優人
「話をしようよ、優人君。」
彼女はそう切り出した。相手は世界を変えた天才だ。しかも俺がアニメで見た彼女は黒幕のようなそぶりまで見せている。…って、
「なぜ、俺の名前を?」
たしかアニメでは「篠ノ之束は織斑姉弟と篠ノ之箒しか認識できない」と言われていたはずだ。その彼女が俺の名前を憶えているなんて意外すぎる。
「あ、そのこと知ってるんだ!ちーちゃんから聞いたんだね!そうだよ、大体あってるね。私はいっくんとほうきちゃんにちーちゃんしか認識できなかった。」
「できなかった。」というところを強調していってくる。
「でもね、今はなんとそれが三人から四人に増えたのでーす!それが優人君なんだよ!めんどいからゆうくんにするね。よろしく!ゆうくん!」
早い、早すぎて身構えることすらできなかった…。
「で、何の要件ですか?」
「固いな~ゆうくんは、そんなんじゃ女の子に嫌われちゃうよ?」
余計なことを言うな。
「まあ、いいよ。私も時間がないからさっさと話すね。」
「どうぞ。」
彼女らしい入り方だと思う。
「えっとね、ゆうくん、私にフェンリルを頂戴!」
「は?」
今コイツなんて言った?フェンリルが欲しいだって?
「あ、もちろんタダなんて言わないよ。ゆうくんが私にその子をくれたら私の作ったISを専用機としてあげるから!」
「えっと…」
つまりはフェンリルと束自作のISとのトレード。それは俺の持っているISがただの打鉄やラファール・リヴァイヴなら喜んでいた取引だったのだろう。しかし俺の持っているISはどうみても仕組まれていたかのような方法で手に入ったのだ。そしてそれが本当に神の行ったことならこんな分かりやすく仕込むわけがない。つまりこれが神が俺に気づかせようとして仕組んだのだとしたら…
「すいません。フェンリルを渡すことはできません。」
断るには十分だ。
「そっか…。うん、いいよ!ほんとは最初っから成功するなんて思ってなかったんだよ。よかったよ。これなら金を積まれただけで手放したりしないだろうしね。束さんは安心だよ。」
「そうですか。」
「うんうん!これで本題は片付いたからオッケーだね。それじゃ、今回は此処あたりでおしまいにしとくよ。ゆうくん、おやすみ~。」
ブチッと、音がして通話が切れる。まったく言いたいことだけ言ってすぐ消えるなんてやっぱり子供っぽいなあの人…。
電話をしまい、一息つく。やれやれ、あの人との電話で見に行こうかとも思っていた一夏と箒のラッキースケベが見れなかったよ。楽しみにしていたのにな。
「そういえば楯無さんずっと帰ってきてないな。」
なんだか思ったよりもすごい人だった。っていうか戦っただけでもすごいと分かったけどあの人の家自体が凄いところだったのか。
「まあいいや。風呂入ろうかな。」
とりあえずグータラするのはやめておく。俺は時間の大切さを知っているのさ。
風呂から出た後一時間ほど起きていたのだが楯無さんは帰ってこず、俺は出入り口に近いほうのベッドで寝ることにした。
side一夏
朝から箒が不機嫌だ。確かに昨日風呂上がりの彼女を見てしまったからと言ってここまで引きずられるとは思っていなかった。さっきも「いつまで怒っているんだよ」と聞いたら「怒ってなどいない」と「私怒ってます」ムード全開の顔で返された。
正直言ってきつい。ただでさえ女の子ばっかりの空間で唯一の幼馴染に口もきいてもらえないとなるとどうしていいのかわからなくなる。周りから聞こえてくるひそひそ話に耐えていると
「おはよう、一夏。あと篠ノ之さん。」
この学園にいるもう一人のISを動かせる男、優人がやってきた。
「おはよう、優人。」
俺は挨拶を返すのだが箒は返そうとしない。やっぱり怒っているよな。
「どうしたんだ?お二人さん仲悪そうだよ。」
「それは昨日…」
箒の風呂上がりの姿を見てしまったんだと言おうとしてやめる。せっかくできたこの学園での男友達に二日目早々に変態のレッテルを張られるのはごめんだ。
「昨日、どうしたんだ?」
なんだかにやにやしながら聞いてくる優人。こいつ、もしかして知っててきいているのか!?
「え、えっとなんでもないよ!あははは!」
何か、何か話題を別のものにそらさないと!
「そ、そうだ優人!なんでお前って建物の中なのにいつもマフラーなんて巻いてるんだ?」
「え、これか?」
俺が聞くと優人は「ああ」という感じに納得して話し出す。
「これは俺の専用機なんだ。」
「専用機?」
千冬姉に渡された本に書いてあったような気がする。
「ああ、代表候補性や国家代表が国からもらったりする個人のISだ。確かお前にも専用機があてられるはずだから楽しみにしておけよ。」
言い残して教室へと歩いていく優人。なるほどISだったのか。あんな待機状態のヤツもあるんだな。一人で納得していると千冬姉が食事を催促してきた。俺も教室へ行くか。また出席簿でたたかれたくないし。
side優人
さあやってきた。アニメでも印象的なクラス代表決めの時間だ。もう前では織斑先生によるクラス代表についての説明が始まっている。あと30秒もすれば一夏が推薦されているだろう。そして一夏はセシリアと決闘を行うことになり紆余曲折のあった後見事(笑)クラス代表となる。
しかしそれはこの世界に俺という存在がいない場合だ。今ここには俺というもう一人のISを動かせる男がいる。このクラスのなかにはきっと男だからという理由で推薦してくる女子が一人はいることだろう。さて、ここからが問題。俺はこのクラス代表戦でどのように結果を残すかだ。
正直言おう。全然わからない(泣)。
だって仕方がないじゃないか!俺がこの世界の原作を知っているからと言ってもその世界とこの世界とは全く違うんだ!
「自薦他薦は問わない。誰かいないか?」
あああ!もう始まってる!どうしよう?
「はい!私は織斑君を推薦します!」
「じゃあ、私は十六夜君を推薦します!」
もう推薦された!くそ!どうする?
あわてて周りを見回す。織斑先生は弟が推薦されているからか心なしか嬉しそうに見える。一夏はというと「俺!?」なんて言って困った顔、セシリアは不満そうでこのままいくと原作通りの展開になるだろう。
「他にはいないのか?いないのならこの二人で投票を行いクラス代表を決定するぞ。」
「ちょ、ちょっと待った!俺はそんなのやりたくないから十六夜n「納得がいきませんわ!」?」
「始まっちまった(泣き声で)」ボソリ
「そのような選出は認められません!男がクラス代表なんていい恥さらしですわ!このセシリア・オルコットにそのような屈辱を三年間も味わえと言うのですか!?大体!文化としても後進的な国に暮らさなくてはいけないこと自体私にとっては耐え難い苦痛でd「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理で何年覇者だよ」
もうだめだ。決められない。絶望している俺に構わず時は進んでいく。
「なっ!?おいしい料理なら沢山ありますわ!あなた、私の祖国を侮辱しますの!?」
「…」
「……」
静まり返る教室。この静寂を破るのはセシリア…のはずだった。
「とりあえず一夏、お前はオルコットさんにイギリスを馬鹿にしたことを謝れ。」
静寂を破ったのは、俺。本来この世界にいないはずの転生者。
「なんでだよ、優人!こいつは俺たちと俺たちの国を馬鹿にしてきたんだぞ!」
「彼女が悪いと思うならそれと同じことをしたお前も悪い。」
この状況になってやっとわかった。
「あとオルコットもそれぐらいにしておけ。大体クラス代表が俺たちになるのが嫌なんだったら、はじめっから自薦して候補になっておけばよかったんだよ。」
「うっ。」
原作なんて関係ない。物語なんて関係ない。神様だって言っていたんだ。「好きに生きろっ。」って。
「それと、『男がクラス代表だなんていい恥さらし』だったか?どの部分が恥さらしなのかはわからないがもしそれが実力面での話だったとしたら…」
だったら俺は筋を通す。このISによって歪められた世界で俺のいるところだけでも筋を通してやる。
「これはクラスの代表を決める話だ。先入観で決めるのは無しにしようぜ。決めるのはやり合ってからにしよう。」
「それは決闘の申し込みと受け取ってもよろしいのですわよね?」
セシリアの顔が好戦的な物へと変わる。
「ああ、そうだ。あってるぜ。」
「俺もだ。俺もやるぜ、優人。」
黙っていた一夏が話に入ってくる。それを見て納得したのか織斑先生も話し出す。
「話はまとまったな。それでは勝負は次の月曜、第三アリーナで行う。オルコットと十六夜、織斑はそれぞれ準備をしておくように。」
「「「絶対に勝つ(勝ちます)」」」
三人の声が重なる。とりあえずこの歪んだ価値観とプライドに縛られたこの女の目を覚ますところから始めるか。
前から時間がたってしまった更新。気付いたらお気に入り件数が100を超えていました!有難うございます!すいませんがここから下は作者の愚痴です。ごめんなさい。
はじめは優人君を結構達観したキャラにしたかったのですが今回で修復不可能になってしまったかも。一応本人は今回で吹っ切れて学生らしく生きるつもりです。なんだか最後のほうでかなりかっこつけているようになった彼ですがどうか温かく見守ってやってください。
ところで段々一人称が書いててきつくなっておりもしかすると三人称で書くことがあるかもしれません。正直言うと「一人称の書き方」っていうものがよくわかっていないのでよければ文の改善点や書き方を教えて頂ければ嬉しいです。
さてやらかしてしまった十六夜君ですが戦闘は次の次になるかもしれません。できるだけ頑張ろうと思います。
それでは次の更新でお会いしましょう!
(こんなグダグダな後書きでいいんだろうか汗)