side優人
「篠ノ之博士一緒に来ていただけませんかませんか」
それが相手の要求だった。またそれに加えて
「おとなしく我々と来ていただければお連れの方に被害は加えません。」
という事らしい。しかし、
(ウソに決まっている。)どう考えても嘘としか考えられない。まず相手は非公式で束を拉致しに来ているのだ。そんな組織が一般人の目撃者を生かしておくわけがない。
(せめてこいつが何か喋ってくれたら……)
襲撃から黙っている束はうつむいたままだ。しかし、沈黙を破ったのは束だった。
「分かったよ、束さんが行ってあげるよ。その代り約束は守ってね。」
今日の彼女との会話で、自分の知っている篠ノ之束という人物の中で見たことのない真剣な顔だった。
彼女は俺のほうに顔を向け、
「ごめんね、束さんちょっとうかつだったみたいだよ。でも大丈夫ここで束さんがあっちに行けば君は助かるんだよ。なんたって束さんは世紀の大天才だからさ。」
そういって、彼女は一機のISと共に飛び立って行ってしまった。
俺は驚きで言葉が出てこない。俺の知っている彼女はこんなこととは無縁の非情で傲慢でわがままな女だったはずだ。決してこんな情にあふれた人ではない。
でも、彼女が俺を生かすために彼女にとって最善の手を出してくれたのは明らかなのだ。確かにあの約束はうそだろうここに残っているもう一機のISは俺を始末するために残っているはずだ。
「さてと目標が言ったことだし始めますか。」
やはり、と心の中で笑みを浮かべる。自分の考えていたことは正しかったのだ。
「まあ災難だったな。でも安心しな、私は優しいからお前を一撃で殺してやる。」
銃口が俺の頭に向けられる。これだったら楽に行けるかななんて場違いなことを考えてしまう。
『いいのか?』
突然頭の中に声が響く。それは自分の声、この世界と前の世界合わせて三十年以上聞き続ケてきた声。
そんなことを考えた瞬間俺がオーディンの槍で貫かれているあの光景がフラッシュバックしてくる。
(…そうか、おなじだ。同じなんだ。俺は何も変われていない。前世で自分の意思と関係なく殺されてンのに「しょうがない」なんて考えてて今は自分よりも強くてかなわないものが前にいるからって生を簡単に諦めようとしている。これじゃ何のための命だよ!俺は……生きてやる!!)
とっさに銃口から頭をよける。女は俺がよけるとも思っていなかったのかそのまま何もないところを撃ってしまう。
銃口から逃れた俺はすぐに距離をとり自分のバッグを手に取る。束の話が本当ならこの中のどれかがISなんだ。すぐに中を探し始める。しかしどれを触っても何も変化はない。
(やっぱり俺じゃISは動かせないのか?)
手立てがないことを再認識している俺に死の声がやってくる。
「せっかく楽に死なせてやろうとしたのに拒んだのはお前だからな。もう容赦しねえ。たっぷりいたぶって殺してやるぜえ!!」
手に持った拳銃を乱射して俺を打ち抜こうとする。だが、
「なんでだよ!なんで当たらないんだよ!!」
俺は「直感」によって紙一重へよけていく。
「銃が無理なら!」
女は手に持っていた拳銃を量子変換で消し、ブーストを吹かせながら接近してくる。
俺は姉によってよく殴りかかられていたためより精度の上がった「直感」で回避しようと右へ飛ぶが
「ぐはっ!!」
女の拳が俺のわきに当たり内側からよくない音が聞こえてくる。
「ははは!やっぱり接近戦になるとリーチのあるこっちが当たるよな。」
女の耳障りな笑い声が床にうちつけられ意識があいまいな俺の目を覚まさせる。急いで立ち上がろうとするが、
「ぐうっ!!」
骨折によって体に力が入らない。
「ここまでか……」
今度こそ訪れるであろう死に俺は目を閉じてしまう。
『まだだよ。』どこかで聞いたことのあるような少女の声が聞こえてくる。
『早く私達を呼び出して!』
ISのことを言っているのだろうか。
(悪いな、おれは男だからISは動かせないんだ)
幻聴かもしれないと考えつつも答える。
『違うよ。マスターは動かせる。私たちはマスターのために作られたんだから。』
マスターという呼び方、その声でやっと声の正体がわかる。
(これは幻聴じゃない!俺は動かせるんだ!)
急がず、ゆっくりと足に力を入れて立つ。女は俺が立ったのを見て笑う。
「おお、おおお!立った、立った!それでこそ男だよ。殴りがいがあるってもんだよ!」
俺は女の言葉を無視し、殴られたときに放り出され床に広がっている荷物の一つ、マフラーのもとまで歩く。そして拾い上げ首に巻く。
「なんだ?死ぬときに着けていたいってか?いい心意気だぞ坊主!」
「いやいやそんなことないよ。」
よくよく考えれば俺はずっとヒントをもらっていたんだ。この容姿、声、そしてマフラー。結構な数のものがあのfortissimoの世界と似ていたのは俺にこのことを気付かせる為だったのかもしれない。
女の言葉は待たない。ただ始まりの言葉を唱えるのみ。
「魔術兵装(ゲートオープン)!!」
直後、マフラーから眩い光が漏れ出し視界を埋め尽くすその間に頭の中にあらゆることが流れ込んでくる。武器や機体の動かし方などのこと。
(成功した……のか?)
「なんだと!?」
女の驚く声が聞こえる。目を開くと空間ディスプレイに機体の名前が映し出されていた。
機体名 フェンリルと。
どうもロキです。聖夜前を書いたら筆(指)が進み中も書き上げてしまいました。後は結構先になるかもしれません。
やっと機体を出せました。次回は本格的な戦闘です!張り切っていきたいと思います。
またヒロインについてですが前の投稿の後二件ほどご意見いただきました。迷う!ほんとに迷っています。なのでどうか皆様のお力をお貸しください!
ではまた次の投稿で会いましょう!