家族仲良く過ごしたい。   作:ト——フ

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其之二十 (過去編) 2wei!。

「私たちの勝利だ」

 

「ぐっ、この……」

 

 夥しい数の悪魔達に押さえつけられ、身動きが取れない。

 そして四重加速(スクエアアクセル)は消え、二重加速(ダブルアクセル)にまで減少している。

 

 このままじゃ本当にマズイ!!

 

「さぁ、遂に長すぎた太陽の支配に終止符を打つ時……!!」

 

 そして、側近の悪魔より運ばれた宝石「ねむり姫」を兵器にセットする。

 

「さぁ、ねむり姫よ、その力を以て太陽を葬り去るのだ」

 

 ルシフェルが兵器の操作をし始める。

 すると、蒸気が吹き出し点滅をし始め、遂に太陽を破壊する光線を放つ準備が整ってしまった。

 

「ふふふ、準備は整った!さぁ、確と見るがいい。太陽の最後を」

 

 自らの勝ちを確信し、高笑いを上げるルシフェル。

 そして、勢いよく発射ボタンを押す。

 

 ——しかし

 

「……なんだ、一向に発射されない?」

 

 そう、発射ボタンを押しても反応が無い。

 

「——ッッな、何故だ!?こんなことが……いやまさか、この娘の膨大な生命エネルギーが許容範囲を超え、バグを!?」

 

「……様子を見るに、まだ、終わってはいないみたいだ」

 

 異常事態が起き、切嗣を押さえつけている悪魔達も狼狽えているのか力も弱まっている。

 

 ——仕掛けるなら今だ!

 

「はああああ!!」

 

「「「!!!???」」」

 

 身体中の気を四方に放出させ、悪魔達を吹き飛ばす。

 全力で兵器に備えてある扉に掛けて行き、イリヤを救出する為に扉を勢いよく引きちぎる。

 

 そして、中にいるイリヤを取り戻そうと、手を伸ばした瞬間——爆発が起きた——

 

「うおおおおおあああ!!!」

 

 兵器の近くにいたルシフェルは爆発が直撃し大きく吹き飛ばされる。

 

「——ぐッッ、イリヤァアア!!!」

 

 無論切嗣も爆発に巻き込まれるが、娘だけは守ろうと彼女の身体を抱き抱え吹き飛ばされる。

 

 そして爆発により辺り一面が煙に覆われた。

 

 —

 ——

 ———

 

 そうして煙が晴れた頃、爆発の直撃により僅かの間飛ばされた切嗣の意識が戻る。

 

 直ぐに慌てて、抱き抱えていた娘の安否を確認する。

 腕の中の二人とも脈は動いており、気を失っているだけだ。

 

 そう、〝二人〟とも

 

「……な!?」

 

 イリヤに姿形はそっくりだが、肌の色が綺麗な小麦色の少女がいた。

 

 そして、何やら焦点の合わない目で呟いている。

 

『こ……の身体……、……だい、、うちゅ………該当』

 

『い……すと、、、る………ロエ、、、ツベル……』

 

 そして、ぶつん、と機会が停止したかのように少女の瞳が閉じ、身体から力が抜ける。

 

「な、なんなんだ……このイリヤに似た子は……?」

 

「い、イリヤちゃんが二人!?」

 

「——ッ!アイリ!よかった無事だったか!」

 

「えぇ、バリアを張っていたから爆発の被害は免れたみたい……それにしても、その子は……?」

 

「いや、僕にも何が何だが」

 

 そう二人が話している内に、飛ばされたルシフェルが、遅れてズズっと、地面を這って戻ってくる。

 

(あのもう一人の少女……もしや———————彼女の生命エネルギーが半分に————いや、なら—————————

 ———————————)

 

 数瞬、考えるように頭を振り、

 

(仕方あるまい……アレが起きる前に記憶を弄らねば下手に命を絶たれても困るからな……この致命傷の身体でどこまで出来るか分からんが、記憶を弄らせてもらう。そして……封印を)

 

 そう、ルシフェルは思考し切嗣の腕の中に収まっている褐色の肌の少女に掌を向け、

 

(…………ッッ!、ぐっ、持てる力を、尽くして…取り敢えずは最低限、はできたか……加減を間違え、隣の銀髪の、少女…にもかか、ったが、まぁよかろ、う。

 ふは、は、願わくば……次に、三度目に遣わされる刺客で、この……我ら悪魔の悲願が達成することを……)

 

 そうして、ルシフェルは力を使い果たし気を失った。

 

 

「……はぁ、全く面倒なことになった。まさかルシフェル様が居ながらこんなことになるとは」

 

 ぬっ、と岩陰から姿を現わす一人の青年。

 

 見かけは真っ黒な髪と服、ツリ目気味な真っ赤な目と高圧的な印象を与えがちだが、その纏っている、どよんとした雰囲気に相殺されている。

 額にはツノ、閉じた口からは鋭利な八重歯が飛び出ている。

 

「ダーブラ様に念の為の保険として便利役のオレが遣わされたんだけど、はぁ……おっかない場所に送り込まれたもんだ。隠れて見守っていて正解だったな。

 戦闘力皆無なオレからしたらマジで死ぬかと思ったわ……」

 

 給料の割に合わんぞ、と心底うんざりといった風に呟く。

 こうなったら報告書の内容を盛ってやって、給料上げる為にダーブラ様に直談判してやるんだ……と半ばヤケクソ気味に吐き捨てる青年。

 

「はぁ、仕方ない。これも仕事か……。取り敢えず、そこらの転がってる奴でルシフェル様の死体を偽装して……

 兵器は爆風充満してる間に転送したから、後は虫の息のこの人だけか」

 

 そうしてルシフェルに近づく青年

 

「それにしても全滅するとは……結構前に地球に調査しに来た時は、あんな化け物みたいな奴ら居なかったのに」

 

 一体なにがあったのやら、という台詞を残し、ルシフェルと共にその場から消え去った。

 

 —

 ——

 ———

 

 ——暗黒魔界

 

「ダーブラ様、戻りました」

 

 がちゃ、と扉の開く音が王の部屋に響く。

 

「ん、あぁ、オセか。仕事は終わったのか?」

 

 机の上に山のように積まれた書類に目を通しながら、オセと呼ばれた青年に話を振る魔界の王。

 

「あー、まぁ終わったといえば終わったんですが。……ある意味終わったのは間違いないよな」

 

 煮え切らない態度で話す青年に、何かあったのかと訝しむ王。

 

「なんだ……?やけに渋るな、はっきりと言え」

 

 目線を彷徨わせ落ち着かない態度だった青年は、目の前の王の言葉に腹をくくることにした。

 

ま、まぁオレが悪いわけじゃないし、うん、オレ自分の仕事はちゃんとやったから、むしろやることやってるし

 

「……いいから早よ言わんかい」

 

 小声でなにやら呟いてるのに痺れを切らし催促する王。

 まだ仕事残ってんだから早よ報告しろや、と目に威圧感を持たせてジーッと睨む。

 

「——うっ、……えっ、えっ〜〜とですね、単刀直入に申しますと……ルシフェル様以外全滅しました」

 

「」

 

「あっ、勿論兵器の転送はしっかりとしましたよ!

 自分の仕事はきっちりこなしたんで!!」

 

 眉間に手を当てて、ふーーーっ、と長めの息を吐く王。

 その顔をチラッと伺うと、また面倒なことになったとでも考えているのであろうか、疲れを感じさせる表情をしている。

 

「……2回目だぞ。この案件2回目なんだぞ……。

 また地球に送りこむ奴雇わなならんのか……」

 

 また仕事が増えるのか……と我が国のトップが憂いているのを気まずそうにする青年。

 

「は、はは、いやぁ。……で、ですけど前に調査に行った時と比べ物にもならないくらい地球人の戦闘力上がってましたよ。

 この結果も当然のものだと私は思いました」

 

「そうか……それ程まで地球人が力をつけていたとはな。

 ルシフェルなら大丈夫だと踏んだが……また私の読みが甘かったわけか」

 

「それでは、私はこれにて失礼します。

 詳しいことは後で報告書に纏めて提出しますので、それでは」

 

 そう言い残して、青年はやや駆け足気味に部屋を出て行く。

 

「あいつ…この空気に耐えかねて早く帰ろうと……」

 

 扉の向こうからは、「あー、疲れた……。ったく、だからこんな報告すんの嫌だったんだよな。あんな空気の中長く居てられっか。はぁ、今回の仕事はマジで色々と割に合わねぇ……。う〜〜だぁー!もういい!頑張ったからご褒美に飲むぞ!!ト◯キで富豪するぞー!!」とタガが外れたのか大声で叫びながら廊下を走るバカの声がする。

 

「あのアホめ……はぁ、しかしあいつは見立てが良く毎回送られてくる報告は給料以上の働きに相当している。

 後はあの性格さえ改善されれば言うことはないんだがな」

 

 癖のある部下の評価をしながら、またもや溜め息をつく王。

 

「しかし、地球人か。3度目の正直とでも言うべきか……やむを得まい。これ以上被害を出す訳にはいかんからな。

 次は私が出るとしよう」

 

 一人、そう決意するのだった。

 

 それから数日後。

 提出された報告書に記載されている「太陽破壊光線砲」の爆発の件の項目を読み、またしても溜め息を吐くのであった。

 

「碌なことがないな……今夜は飲むか」

 

 飲まずにやってられるか、とボヤいた後、あのアホでも誘ってトリ◯に行くか、と案外庶民じみた部分もある王様は今夜の予定を立てるのであった。

 

 —

 ——

 ———

 

——地球

 

 あの後、連絡が行っていたのか駆けつけてくれた武天老師様に仙豆を頂いて体力を回復。事情を話すも一旦家に帰ることにした。

 

 それから1日が経過し、イリヤと謎の少女が起きると奇妙な事態に。

 

「おはよーおとうさん」

 

「あぁ、おはようイリヤ。体調は大丈夫かい?」

 

「ほぇ?なんのこと?私何かしたっけ?」

 

「なにって……覚えてないのかい?」

 

 あれだけのことがあったのにどうして……と、困惑していると、横から武天老師様が深刻な面持ちで語りかける。

 

「切嗣、お前たちの会話を聞いていて何か引っかかる部分があったから、イリヤの記憶を覗いてみたんじゃが……この子は…記憶を弄られている」

 

「——ッッ!?な、それは」

 

「具体的に言うとな、軽いものでメイドのセラの名前の誤認じゃが……一番深刻なのは……」

 

「あっ!そういえばクロは!?てんにゅう?の手続きが終わったから今日からクロも一緒の幼稚園に通うんだよね!私、妹と一緒に登校するの憧れてたんだー」

 

「!?い、イリヤ? 誰のことを言ってるんだい?クロっていうのは」

 

「どうしたのおとうさん?クロはクロじゃない。私とそっくりな女の子。大切な妹だよ」

 

「……」

 

「そう——あの謎の少女のことをイリヤは双子の妹と誤認している」

 

 —

 ——

 ———

 

 それから、件の「クロ」も目を覚ましたんだが……

 

「お、おはようクロ……ちゃん?」

 

「おはよーママー……ってもう8時半じゃない!?

 折角の幼稚園初日から遅刻なんて嫌よ私!!

 もう〜〜セラったら、なんでもっと早くに起こしてくれなかったのーー!!」

 

「な、なぁクロ……?ちょっといいかい?」

 

「え、なによパパ私急いでるんだけど」

 

「——クッ!つ、冷たい反応に思わずダメージが……いや、あのね急いでる所悪いんだけど、生憎今日は幼稚園の都合が悪くて休園日になっちゃってね」

 

「えぇ!?そんな……それならそうと前日にでも連絡入れるのが筋ってもんでしょーが」ぶつぶつ

 

 勿論この少女の転入手続きなど、何一つしていないのだ。

 なにしろ、つい先ほどイリヤから聞いたばかりである。

 この状態で行ってもお互いに混乱を招くだけだろう。

 

「わ、悪いけど今日は家でゆっくりとしといてね」

 

「分かった……はぁ、折角妹と登校出来ると思ったのに」

 

「……妹?」

 

 —

 ——

 ———

 

「そう——あのクロという少女もイリヤのことを双子の妹と誤認しておる」

 

「なんでこんなややこしい事態に……」

 

「まぁ、他にはある程度読み取った限り、あのクロという少女の本名はクロロ。クロロ・フォン・アインツベルン。

 幼い頃は身体が弱かったが、最近になって容体が良くなり晴れて幼稚園に通えることになった、と記憶から読み取った」

 

「記憶の改竄……ですか」

 

「なんていうことなの……」

 

「うむ……じゃから正体や本当の名前はなんなのか……今のままじゃ、てんで分からんのぉ」

 

「はぁ……全く、一体どうしたら」

 

「だかな、切嗣、そしてアイリよ。

 彼女はお主たちを本当の父と母と認識している。

 何か彼女について分かるまででもいい……どうかクロには親として接してあげてくれんか……?」

 

 頭を下げる武天老師様に慌てて

 

「そ、そんな!どうか頭をお上げください!!」

 

「そ、そうですお爺様!」

 

 彼女が何者かは分からない。

 唐突に現れたイリヤと酷似した少女で、僕のことを父親のようにパパと呼ぶ……パパ、か。ふむ、悪くない響きだ。

 そして何故か彼女には父性が刺激される……不思議なことに。まるで父親として接するのが自然かのような、そんな心地よさが感じられる。

 本当に不思議な少女だな。

 

 まぁ、とにかく彼女の処遇については、家族として接する、というもので問題ないだろう。

 様子見として暫くは僕も家に居なきゃいけなくなるが。

 

「……警戒を解くことは出来ませんが、それでも彼女には出来るだけ娘として接するようにします」

 

「えぇ、私も。我が子として接するわ。

 ……不思議なんだけどね、何故か、クロちゃんを見てると母性が刺激されるというか、イリヤちゃんと同じくらい愛おしく思うのよね」

 

「アイリもかい……?」

 

「え、あなたも?」

 

 同じ感覚を夫婦同士で抱き困惑しながらお互いを見やる。

 

「まぁ、これなら心配なさそうじゃの」

 

 それから、クロとの生活が始まった。

 メイドたちには都合を合わせるように言い、当初は怪しまれたが、クロと触れ合う内に段々と慣れていったようだ。

 

 

 そうして、クロと出会ってから6年の歳月が流れる。

 当初は警戒していたが、もう今では僕もアイリも一人の娘として愛情を注ぐ対象となっている。

 

 そしてある日、例の少年がやって来た訳だ。

 彼は度々別荘に訪れてクロとなにやら仲良くしていた。

 それからの行動は早かった。大切な娘のことだからね。

 彼が天下一武道会に出るということで、僕もエントリーして決勝戦でぶつかることに。

 

 まぁ、その前にやたらに強いダーブラとかいう奴が現れて、殺し合いになり勝ったのはいいが、殆どの力を出し尽くしてしまっていてね。

 ロコン君との勝負は正直辛かった。

 

 そして、彼は僕に向かってクロのことを諦めない旨をぶつけてきた。

 それからの彼の勢いは凄まじく、幾ら叩いても立ち上がってくる並ではないタフさだった。

 しかも、三倍まで使ってきたからね。

 見たところ、かなり無理していたようだが。

 

 それから僕も応戦したが、最終的には相打ちのような形になり、辛うじて僕の勝利となる。

 

 そこで僕は思った。彼なら、どんなに叩いても諦めず、必死に食らいつく闘志を宿した強かな彼ならば、娘を……まだ分かっていない謎を抱える彼女を支えてあげれるんじゃないか、と。

 

 —

 ——

 ———

 

「——ッ!……なんだ、長い夢を見ていたようだ」

 

 腕を動かすと、じゃら、と拘束具の音が鳴る。

 そうか、今もまだ僕の気を吸い取っている訳だ。

 睡眠で回復出来た気も吸い取られていてるので、どうしようもない。

 

「まぁ、あのエセ神父なら、性格はあれだが上手くやるだろう」

 

 だから、大丈夫。

 きっと助けは来る。

 彼に拘束具さえ外して貰いさえすれば、僕は命を賭して戦うことが出来る。

 

 男は希望を胸に再びねむりに就いた。




これにて過去編は終了です!長かったー!
お付き合い頂いた皆様ありがとうございました!!

それでは、またしても設定解説です⬇︎

この作品のダーブラ様の戦闘力は下げてます。
 原作じゃバビディに潜在能力を限界以上に引き出され、セル以上の戦闘力を誇っているのですが、この作品では某ウルクの王様の如く魔界の仕事に追われ過ぎて修行する暇が無く、潜在能力は凄いけどあまり戦闘力は無いって感じになってます。

 ですんで、素の戦闘力120万ちょっとくらいってことになってます。
 切嗣は戦闘力40万くらいですが四重加速(スクエアアクセル)を使い、めちゃくちゃ頑張って倒しました。



鳥◯族いいですよね。作者は大好きです。
なんせダーブラ様達筆頭に多くの悪魔の支持を得ている訳ですから。えぇ。

ちなみにこの店にまつわる小ネタですが、ダーブラ様がまだ王ではなかった時、下積みの時によく先輩に奢ってもらってたそうな……。そういう思い出とか、愛着とか、舌が店の味を求めているとかそんな理由で、今でも常連さんでよく訪れてるそうです。

それと鳥貴◯は魔界での歴史が長く、コスパの良さから学生、社会人と幅広い層に人気のあるチェーン店。
魔界では一駅に一店あるのが常識なくらいで、よく繁盛してるんだとか。

と、自分のやりたい放題書いてたらこの作品の魔界のイメージがこんなことにwww原作崩壊がすぎるwww
めちゃくちゃ親近感湧くようになってしまったww
まぁ、取り敢えず魔界の設定はこんな感じで行くんでよろしくです。苦手な方はブラウザバック推奨します。

癖のある部下を苦労しながらも従え、部下からの信頼も厚い仕事人間のダーブラ様。
愛着わいてしまった。なんとか復活させてあげたいなぁ。
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