綺麗な花には毒がある   作:羽沢ちゅぐみ

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えーとぅぜえーとぅーぜてーんかーをー


滲み出す毒素

〇年◽︎月△日

 

目を覚ました。

 

懐かしい匂い、青臭い草の匂いが鼻につく。

 

俺は仰向けに寝ていて目の前に広がるのは雲一つない青空、太陽の光が全身に降り注いで気持ちいい。

 

身体を起こす、草原の真ん中で寝ていたようだ。左手には森が見える。

 

何をしていたのかは覚えてない。名前は......そうだ、三ノ輪修。

ここはどこだろうか?知ってる場所じゃない。そもそもどこにいたんだっけ......?

 

分からない、何も覚えてないのだ。

とにかく誰か人を探してみよう......

俺は立ち上がって近くの探索を始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

目を覚ました。

 

私はガバッと身体を起こして辺りを見回す。どうやら廃墟のようなボロボロに崩れた壁や古びてなんとか原型をとどめた家具が乱雑に散らかった部屋に寝ていたようだ。

 

(何...?これ...)

 

外へ出ると、そこにはまさに世界の終わりのような光景。まるで爆弾でも落とされた後のような街の様子、人は生きている気配はない。

 

(記憶は...無い...!?名前は...わかる、モカ達のことも...)

 

思い出そうとしても何かモヤがかかったかのように記憶が遮断される。何か思い起こせる鍵になるような建物がないか見渡すが、どの建物も崩れているし見覚えのない建物ばかりでそのようなものはなかった。

 

(そういえばみんなは...?)

 

モカやつぐみ達はどこだろう?そもそもこの辺りにいるのかすら分からない。

私は皆を探すために、とぼとぼと歩き始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

少し探索してわかったことは、どうやらここは普通の世界では無いということだ。

俺は木陰に隠れ、息を潜める。視線の先には真っ赤で俺の数倍は大きな見たことも無い蟻の大群が行進していた。あんなのに踏み潰されたり見つかったりしたらひとたまりもないだろう、俺は見つからないよう必死に息を殺す。

 

しばらく経って蟻達は全て通り過ぎて行った、とりあえずは一安心だ。息をふーっと吐いて気持ちを落ちつける。そういえば格好は学校の制服だがポケットの中には何も無い、財布も無ければ携帯も無い。このままではこんなわけのわからない場所で野垂れ死んでしまう。

 

俺は更に探索を進めるも人のいそうな場所すら見つかりそうになく、とりあえず森の中にあった小さな洞窟で夜を凌ぐことにした。

食べられそうな木の実を取ってきて大きめの葉に包み洞窟に持ってくる。木の実は甘い物や酸っぱいものがあって毒は特に入ってるものは無かった。

 

夜は冷え込みが激しく、俺はブルブルと震える身体を縮こませて寒さに耐える。布団も毛布もあるわけがなく、ただ時間が経つまで我慢するしかなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「ともえー!!蘭ー!!つぐー!!モカー!!みんなどおこぉ〜!」

 

見知らぬ森の中でただ1人、ひまりは皆を探し回っていた。

目覚めたらそこは深い森、何も覚えてないし持ち物も持ち歩いてたバッグやらも全て無い。とにかく怖くて、早く誰かと会いたくて森をさまよっていた。

 

「うぅ...皆どこぉ......」

 

半べそをかきながら必死に探す。しかしいけどもいけども人を見つけるどころか森から出ることが出来ない。

 

「怖いよぉー!寂しいよぉー!」

 

ひまりはずっと歩いていた疲れと一人でいることの恐怖でその場にへたりこんでしまった。子どものように泣きじゃくる声が森に虚しく響く。

 

「キシャアアア!!!」

「ひっ!?!?」

 

突然、木の影から巨大な黒い蛇が姿を現した。ひまりなんかよりもずっと大きな体躯、明らかに敵意を向けていて突然のことでひまりは動くことが出来ない。逃げようにも腰を抜かしてしまって必死に足をもがく。

 

「いや....!いやぁ!!」

 

恐怖に顔が歪む、心の中で必死に祈るが蛇はどんどんこちらに近づいてくる。

 

「キシャアアア!!!!」

 

大口を開けて丸呑みにしようと襲ってきた。もうダメだと目をつむった......しかし、何も起こらない。ドスン、と重たいものが落ちたような衝撃で地面が揺れる、ひまりは恐る恐る目を開けるとその蛇は頭と胴体部分が切断されて死んでいた。

 

「危ない危ない、君、大丈夫だったか?」

 

上空から黒い羽の生えた女の子が降りてきた。髪は水色でひまりと同じくらいの歳に見える、地面に降り立つと羽はサッと消えてしまった。

 

「は....はぃ......う、うえええええええええぇぇぇん!!!」

「え!?ちょっ......!?」

 

やっと人に会えたということと助かった安心感からひまりはその女の子に抱きついて泣き出した。女の子は困ったような声をあげる。

 

「とりあえず、ここは危ないから俺達の村に来ないか?見たところ俺と同じ転生者......いや、召喚者になるのか?まあどっちでもいいか」

「行くぅ〜!ふええぇぇぇぇん!!」

「わかった、ただ先に泣き止んでくれ......」

 

ひまりは涙を拭くとその女の子の言う村へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

辺境の地、闇に覆われた土地にある城で轟音が鳴り響いた。

 

「ここまでの力を持っているとは......」

 

血塗れの男はその言葉を最期に二度と動かなくなった。その男の前に佇む一人の女の子、つぐみはその死体から心臓を抉り出すと別の部屋へと移動する。

 

「モカちゃん、お待たせ」

 

部屋には十字架に磔にされた青葉モカの姿。腕や足は切り傷だらけで痛々しい姿、息はあるがほぼ虫の息だ。

 

「つぐ......はな、して......」

「ダメだよ、モカちゃんには私の手足になってもらわなきゃ。まさか異世界に来ちゃうなんて思わなかったけど逆に好都合だったよ、この世界なら魔法もあるみたいだし使えるものは利用しないとね」

 

つぐみは呪文を唱えながらその手に持った魔王の心臓をモカの胸に押し込んだ。魔法陣が展開され、モカの身体から黒い霧が出てくる。その黒い霧はモカの体を包み込み、彼女を別の種族へと変化させていく。

 

「ふふふ、モカちゃんは私と同じ魔女として蘭ちゃんを、この世界を壊すの。そして...三ノ輪くんに最も美しい死をもたらすんだよ!」

 

嬉々とした嬉しさに満ちたその顔は、魔女とは思えないほどの純粋さを感じさせる。

 

モカを包んだ霧が静かに消滅した。姿を現した彼女は、わずか数分前とは見違う姿だった。

白髪は銀色に染まり短髪から腰元まで伸びる長髪、顔はあまり変わらないが左目が潰れていて右眼も赤く染まっている。身に纏うのは黒のロングコート、赤い稲妻のようなラインが仄かな光を宿していて不気味に感じる。一見しただけでは男と間違うだろう。

 

「どう?モカちゃん、魔女...んー、魔王って呼んだ方が正しいのかな?魔王に生まれ変わった気分は」

「......悪くないよ、ただちょっと違和感」

「大丈夫、すぐに慣れるよ」

 

城の周りに黒い雲が立ち込める。不穏な空気が世界に流れ始めていた。




えーとぅぜえーとぅーぜとーりーまーす

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