主人公:大田 透
→冴えない主人公
ライバルかつ友達:白石 悠人
→まあうん、何でもない
幼なじみの友達:鵜飼 勇人
→運動神経も良い優等生
省略人物(いつかは説明がある。この回では軽く触れるためまだ名前不明)
野球部の顧問、担任の先生、学校名
学校へと続く一本道は桜散る姿で一層華奢に見える。普段は変哲のないただの道だと言うのに……。
使い慣れた制服を着てこの道を歩いていく。昨年は新品の慣れない服を着て、目を輝かせながら歩いたものだ。
期待を膨らませ、ときめいていた心は、今となってはもうない。一年が経つ間に綺麗な心はくすんでしまった。
あの頃は「新たな学校生活はどうなるんだろう」とか「どんな部活に入ろうかな」とかを考えていた。まさに輝かしいものだ。
しかし今は「どのような言い訳で部活をやめようか」と言い訳を考えるばかりだ。そこに輝かしいものなど微塵も感じられない。
桜散る美しき一本道でため息をつく自分がいた。これは、自分で決めたことだ、怒られるのも覚悟しよう。
僕は
僕は野球部に入っていたが、今日で退部する予定だ。
野球部はほぼ毎日練習があった。平日は朝早くから練習し、授業後は夕方になるまで練習した。休日は土日祝のうち一日は休みだったのでありがたいと感じていたが、練習のある日はほぼ一日練習の日がほとんどだった。
僕には耐えられなかった。
このまま野球部に居座り続けたら、レギュラーになれずに雑用を続けることは確実に決定していたと言ってもいい。
そこで、辛い思いをしてまでやるべきなのかを自分に問いかけた。そこで得た答えは「やる必要はない」だった。
僕はそこで退部することを決意したのだ。
僕は顧問にその意を伝えた。顧問は地域で名のある存在で、厳しいということで有名だった。皺を寄せた強面の顧問と僕は目と目を合わした。
「今までの努力は無駄になるけどいいか」
「はい」
「まあ、どうせレギュラーにはなれないのは分かりきっていたしな、俺の方はもういいよ!」
「ありがとうございます」
「ただ、俺がお前の退部を決定出来るわけじゃねぇ、ちゃんと担任にも言うんだぞ!」
「分かりました」
何とか最初の壁は乗り越えた。レギュラーじゃないことが幸をなした。
次に僕は、担任の先生と対話した。いつもは穏健な男性教師だが、怒ると少し怖い面を持つ。
「進学とか就職とかに支障が出るかもしれないが……。それでいいのか?」
「大丈夫です。何とかしますので」
「まっ、透がいいなら退部ということでいいよ」
「ありがとうございます」
担任は怒らなかったため、すんなりと会話が出来た。
そして、担任への直々の退部届けを提出し
これからのプランはなんにも考えていない。進学とか就職とかに支障が出ることに対して「大丈夫です」と答えたが、あれは《嘘》だ。
これからどうしようか…。新たな壁が目の前に現れた。
◆
噂の広がりは異常だ。それが、本当のことでも根も葉もない憶測のことでも学校中に広く知れ渡る。僕が部活をやめたことも学校中に広がっていた。
「お前、部活やめたのかよ」
友達の
まあ──友達であるだけマシか……
僕は窓越しに見える透き通った空を見ていた。ゆったりと流れる雲が、途方に暮れる僕とリンクする。これから、どうすればいいのか……
「お前!次はどの部活に入るんだ?」と悠人。
僕は幼い頃から多様なスポーツに触れていた。そして、少しだけ得意である野球以外のスポーツは、並一通りは出来た。そこに、優劣はない。
だからこそ困るのである。僕が次に入る部活の候補があまりにも多すぎる。全てが均衡しているせいで、選べないでいるのだ。
◆
帰宅部になってから何週間か経った。未だに帰宅部のままだ。選べないでうだうだしていたら、もう何週間か過ぎてしまった……。
何かの部活へと入部した方がいいのは分かってる。それが出来なくても何かで埋め合わせをするべきなのも分かっている。
しかし、その"何か"が分からないため行動を起こせないでいる。
──そんな自分が嫌になる。
僕は何も出来ない無気力な自分に嫌気がさし、負のオーラを醸し出していた。そんな時に、担任の先生が僕に話しかけてきた。
「お前、部活にも入ってないしボランティアとか、しないのか?」
そこから出てきた「ボランティア」というワードが、僕に強い衝撃を与えた。
先生は一枚の紙を見せた。その紙には様々なボランティアに関する情報が書かれていた。
"もしも"僕が野球部を続けていたら永遠の雑用係だったはずだ。それに比べたら、半日で終わる雑用は全く苦ではない。
僕はボランティアに参加することにした。僕は部活の代わりをボランティア活動によって補うことにしたのだ。
◆
薄桃色の木々の葉が緑黄色へと変色した。新入生のほとぼりも冷め始めて、狂騒から静寂へと移り変わった時期になった。
つまり、"5月"の中旬に入った──
僕はその間、ボランティアを二つ行った。川辺のゴミ拾いと児童館でのイベントの手伝いをした。
こんな短期間で二つもボランティアを行うのは多い方だといえる。そんな僕は、先生方からボランティア熱心な生徒と思われるようになった。
担任の先生がやって来た。多分、ボランティアについての話だろう。
「ボランティアについて話があるんだが……」
やはり、僕の予想は的中していた。新たなボランティア情報だろう。
「この学校では、生徒の自主性を育むために[
ボランティアを創る?───
予想外だった。ボランティアを創るとはどういう意味なのだろうか?担任に聞いたら、このように返ってきた。
「透自身が、何のボランティアをするかを考えて、それを実行するんだ!」
分かるような分からないような返答だった。抽象的なためにあやふやだ。僕は具体的な例を訊ねてみた。
「例えば、川辺でのゴミ拾いを透自身で計画したとしよう。それに協力してくれる人を募って、その人達とともに、計画した日程、場所でゴミ拾いをやるんだよ!」
つまり、僕自身でボランティアを計画して実行する。言葉の上では簡単な話だが、実際にやってみるのは難しい。
まず、何のボランティアをするのか……
計画することが一番の壁である。《1から2にする》のと《0から1を創る》のは同じようで全く違う。《0から1を創る》のはとても困難なものだ。
そこで僕は家に帰ってから、
ボランティアとは、
自主的に公共福祉などの社会事業に参加し、
営利を目的としない活動に携わる人。
(明鏡国語辞典より参照)
という意味・定義を持つ。
これを見て思ったことは「"ボランティアの意味"って案外難しいんだね」という感想だ。
こんな感想でいいのか?いや、いいはずがない。ということで、その文から難しい意味を引いくことで理解することにした。
そこで、最初に
社会事業とは、
社会福祉全般の向上を目的に、公私の団体
が組織的に取り組む事業。社会福祉事業。
(これも明鏡国語辞典を参照)
という意味だった。
駄目だ、余計に分からなくなってしまった……。
このままでは埒が明かない。僕は自分で調べるのを諦めた。
明日、担任に聞いてみよう──
それで次の日、僕は担任にボランティアの意味を聞いてみた。
担任は満更でもなく以下のように返してきた。
「ボランティアって、利益を求めずに困ってる人を助けたら何でもいいんじゃないかな」
そんなわけない!!
もし横断歩道で困っているお婆さんがいるとしよう。そのお婆さんは重い荷物で上手く横断歩道を渡れない。そこに、僕が現れて無償で荷物を持ってあげる手伝いをした。
それがボランティアになるはずがない。それはただの助け合いであって、ボランティアという大掛かりなものにはならない。
なぜなら、ボランティアとは
だけど、担任の言うことも間違っている(部分がない)わけではない。どうせ埒が明かないのならば、いっそ担任の考えを採り入れよう。
僕は「
さて、次に襲いかかる強大な壁。
僕は何の組織を創ればいいのだろうか───
僕は再び悩み始めた。
◆
ある日のこと──。
僕はボランティのことを一旦頭の隅っこに置いて、日常的な学校生活を送ることにした。
授業と授業の合間の時間で、僕は友達の悠人と駄弁っていた。そこへ、幼なじみの友達である
彼は成績が良く運動も出来る優等生。しかも長身でモテる体質で、何をやっても冴えない僕とは真逆の存在である。
彼の凄い所は主に運動面であり、所属するサッカー部でエース、かつ部長の名誉を背負っている。それも、まだ二年生になりたてだと言うのに……
何故勇人が二年生になったばかりであるのにエースで部長なのか。それは、サッカー部には部員が全くいないからだ。
この原因はサッカー部だけに言えることはなかった。
──
───
────
昔この学校は沢山の生徒がいたが、過疎化が進んでいき生徒数は激減した。それなのに、未だに部活動の数は減ることはなかった。
この学校では男子では野球部、女子では吹奏楽部が人気である。
野球部を例に挙げると、在校生の男子生徒がほとんど入部する。そのせいで、僕のような退部までベンチ以下が生まれてくる。
その一方で、野球部や吹奏楽部以外の大半の部活動は人気がなく、部員が全くいない。そのせいで、廃部になりかけている部活動も少なくない。
生徒数が減ったのにも関わらず部活動の数が多いこと。そして、人気の部活動への過密化によるその他の部活動の過疎化が、廃部という危機的状況を作り出した。
部活動に所属するものの大半が
まさか勇人の登場によって、閃くとは想像していなかった。
僕は悠人や勇人に、部活動に対するボランティアの考えを述べた。
「面白そうだな!いいんじゃないか?」
二人は僕の考えに賛成の意を表した。僕はそのお陰で自信を貰った。
明日、僕は担任に今の考えを言おうと決めたのだった。
◆
「面白い案だな!透が実行出来るように組織化を頑張ってみるよ!!何日か待っててな」
次の日、担任に《部活動をボランティア》する案を言ったら、そのように返ってきた。
やはり、担任だけで決めれることではないらしく、学校全体で決めるのだろう。そのため、時間がかかる。
僕はその時間が待ちきれなかった───
◆
6月に入った。少しずつ雨が降り始める梅雨入りの季節。不幸の象徴である雨も綺麗な薄青紫の紫陽花が醸し出す幸運には勝てなかった。
僕の考えた《部活動をボランティア》の案は職員会議に通り、その後、組織化が決定した。
ついに、始動する。そう、部活動のボランティア、命名:クラブ・ボランティアが始動するんだ!
今一度、このクラブ・ボランティアについての説明を思い返す。
目的は部員が少なく危機的状況に陥っていて困っている部活動を助けるボランティアだ。取り敢えず「
ひとまず、僕がある時期まで所属していた野球部からはSOSが来ないだろう。もし、そこにボランティアしに行くのはとても気まずい。一度そこから逃げた人間が、違う形で同等に接するのだ。僕も残っている部員らもお互いに接しにくいし、嫌なオーラも出てくる。
まあ、僕は野球部が困ることなどないだろうと踏んでいるから安心している。
次に活動方法だ。このボランティアは困っている部活動の依頼を受けてから行う。そうでないと、こちら側が勝手に困らせる可能性が高いからだ。
そして、主な仕事内容は<雑用>と<補佐>だ!
部員が少ないと、雑用の範囲も多くなる。
バレーボール部の場合を例に挙げると、ボールを使用する練習を行うと必然的にボール拾いという雑用が生まれる。部員が多ければ、そのボールを拾う役割が出てくる。が、少なければ、練習を行いながらボール拾いを同時に行わなければならず、余計に疲労してしまう。時には、非効率的でもある。
そのため、僕が雑用をするということは、非効率的な疲労を解消するということになる。そこに、ボランティアをする価値が生まれてくるのだ!
補佐活動は、雑用と同じ効果をもたらす。
補佐というと分かりにくいが、
先ほどと同様バレーボール部を例に挙げると、
ざっとクラブ・ボランティアというものを振り返った。
ついに始まると思うと、最初の活動が楽しみでしょうがない。最初の活動は僕自身の性格とクラブ・ボランティアの今後を左右する大きな出来事なので気を抜けない。
休むなんて論外だ!だからこそ、風邪をひかないようにしなければ……
6月10日のこと、担任の先生がやって来た。
「最初のボランティア活動の依頼が入ったよ!」
ついに活動が始まるんだ。僕は期待で胸を膨らませた。
◇
「最初の活動は明後日6/12日で、行ってもらう部活動は……」と担任は続けた。
刹那の静寂───
僕は固唾を飲み込んだ。
「「野球部」からの依頼だね」
一瞬にして期待が絶望に変わってしまった。最初の活動のせいで休むわけにはいかない。その日に雨が降ることを願うばかりだ。
だが、何故部員も多い野球部からの依頼が来るんだ?何の手伝いをするんだ?僕は疑問を感じるばかりだ。
正直、野球部のメンバーとの人間関係は悪いはずだ。僕は彼らを裏切って逃げ出したのだから……
後先考えるととても憂鬱になり、身体が重くなっていく。
絶望感で満たされた僕は、虚ろげな瞳で空を見た。眩い太陽の陽射しが僕を包み込む。太陽は不安定な雲を吹き飛ばし晴天を作り上げていた。
梅雨なのに、何故か今日は清々しいな……。絶望が"諦め"という気持ちによって身体から抜けていく。
今度は諦めの感情によって満たされた。そんな僕は、白くて蒼い空を見ながら独り言を呟いた……
to be continued…
人物紹介欄
【大田 透】
冴えない主人公で、どこでもいそうな感じ。いわゆる平均的な普通の生徒。とりま、バランスが良い(色んなの競技/活動においても)という利点がある。
名前の由来は、大
※透は"とおる"だけでなく、"すけ(る)"とも読めます
身長:男子高校二年生の平均的な身長
体重: 〃 体重
趣味:音楽を聴くことやゲームをすることなど一般的なもの
髪色・髪質:黒髪で一般的なやつ
見た目:主人公じゃなければ100%モブだったはず