クラブ・ボランティア!   作:リル★

4 / 4
─ ─ あらすじ ─ ─


主人公の透はキツイ練習に嫌気が指し部活動を辞めた。部活動の代わりに、ボランティアをすることにした!そのボランティアは《部活動をボランティア》するクラブ・ボランティア、略してクラボラである。

次のボランティアは何と演劇部!そして、やるべき事はなんと主役で……
果たして無事演劇を終えることが出来るのか?


4 演劇のΨ能を魅せ付けろ!!  大 田 透 の Ψ 難

 体育館のステージは大掛かりな舞台装置が設置されている。

 

「ようこそ演劇部へ!大田くんには明日の本番に出て欲しいんだ」

 次のボランティアは演劇部のようだ。僕はスポーツしかしないのかなと思ってたから、意外だと思った。

 ただ、本番とはどういうことだろうか?その旨を聴くと、「野球部だっけ?それでいう大会みたいなものだよ」と返ってきた。つまり、演劇部にとって重要な用であるのだろう。

 僕は演劇は初めてだから心配ではあるが、何とか頑張ろうとは思った。けど、明日だからそんなに必要とされない役であるだろうが……

 ってか、ここで重要な役をやる羽目になったら大惨事を起こす気しかしない。まあ、そうなることも演劇部員達は分かっているだろう。だから重要な役にはならないと思っていた、、、のに……

 

「それじゃあ、大田くんには「主役」をやってもらおうかな」

 はい!?──今なんと?

 まさか本番は明日というだけでも大変なのに、重要過ぎる主役の役をやるなんて……いや無理だろ!

 

 

──── クラブ・ボランティア ────

 

 

 さて、まず主役をやるとしても何の劇で何を言って何をやればいいのか、を聴いた。

「ウチらは"優勝を目指す"に当たってメンバーと登場キャラが一番似ているような劇をすることにしているんだ。」

「それで……」

「そう『斉木楠雄のΨ難』をやるんだ!あの漫画雑誌JUMPに掲載されたこともあるそれの劇をやるんだ!」

 思ってたのと違った。いや違いすぎて混乱しそうだ。演劇部の劇はロメオとジュリエットみたいな昔に創られて今に残る誰もが知るような有名小説作品をやるのかと思っていた。

 僕は斉木楠雄のΨ難は聴いたことがあるぐらいで、あまり知らない。ロメオとジュリエットなんてものと比べたら、その漫画は悲しいことになる。というか小説でなく漫画を採用するその根性が凄いと思った。

 演劇部ってこんなんなの───?

「それって新しすぎません」

 あまりにも予想を超越していて思わず口から出てしまった。

「んなわけ!!もう完結したし、今のJUMPには載ってない!新しすぎるわけないじゃん」

 いや、そういうことではないんだが……

 

 まあその劇をするなら、確か映画化されていた気がするからそのストーリーとか最終回話とかかなと思った。

「そして、劇は()()()をやる予定でいる」

 いやいやいや──何で日常回なんだよw。普通、劇といったら重要回だろ!

 駄目だ、突っ込みがとめられない。

「ウチらが手間暇かけて創り出した新たな日常回だ!」

 もっと手間暇かけるところがあるはずだ。そもそも、漫画から離れればもっと表面は素晴らしいものと化すはずなのに。

 

「それで僕は何をすればいいんですか?」

「この劇の主役である斉木楠雄を演じてもらうよ!やることは本番の時にこの道具を耳に付けて、裏から司令を出すからそれに従うだけでいいよ」

 

 彼はコードレスイヤホンのようなものを取り出す。そこから彼が声を流し、僕はその通りに動けばいいようだ。

「劇中では絶対に声を一切出さないで。演じてもらう役は声を一切出さない役だから」

 僕は声を出さないようだ。良かった──。声を出さないことが、演じられる可能性を高めてくれる。流石に、台詞なんか言えと言われても硬直して片言になってしまう。

 

「それじゃあ、劇の紹介に行こうか」

「はい」

「まず、舞台はS県左脇腹町と、そこにあるPK学園という場所と主人公の家が主な舞台かな」

 まあ言われても分からないが分かっているように返した。

「で、世界観はこの日常的な世界で動いている」

 なるほど、勇者とかの異世界観ではなく、平凡な世界観ということか。

「ただし、主人公だけ有り得ない超能力者なんだ」

 一気に平凡な世界観を打ち壊してきたような気がした。

「主人公は超能力者で、それを知っているのは家族と一部の人だけ……。そう主人公は超能力を隠して生活するっていう漫画なんだけど、まあその主人公に個性的なキャラが寄り付いてギャグにするという漫画さ」

 分かるようで分からないような……。取り敢えず、主人公は超能力者ということをバレないように過ごしていることだけは分かった。

 

「じゃあ、登場キャラ紹介のついでに挨拶でもして回ろう。まずナレーション担当のウチ。よろしくな」

 いや、今頃"よろしく"とか。もうちょっと先に言う言葉だろうに。

 僕らは体育館の中を縦断していった。

 

「じゃあ、最初は『燃堂力』のカレ」

 紹介されたのはガタイがいい男の人だった。顔にはお面を重ねている。厳つい顔で片目には垂直に刻まれた傷跡が残り、ケツ顎が特徴的なお面だった。

「主人公は超能力によって人の心を読むことが出来るんだけど、燃堂に対してだけは心を読めないんだ」

「へぇ、どうしてですか」

「馬鹿でアホで悪タイプだから」

 答えになってない。

「いや全く分からないんですけど…」僕は突っ込む。

「要約すると、どんな時も何も考えてないから心の中を読まれないってことさ」

 なるほど、つまり心を読むとは考えを読むということ、その考えがないから心を読んでも何にも分からないということか。

 その前に、要約すらしてないよ。"何も考えてないから心の中を読まれない"って言葉は初耳だよ!

 

 僕らはステージに上がり、そこにいた美男美女の二人の紹介を聴いた。

「カレの方の役は『海藤瞬』でカノジョの方は『照橋心美』かな」

「海藤瞬の方は根は勇気があっていいやつなんだけど、厨二病を拗らせていて、いわゆる厨二病なんだ」

 うん厨二病を二回言ってる。それだけ、言い回しが思い浮かばないのだろう。

 その役をやる生徒は髪を軽い青に染めていた。普通に爽やかな感じがするが、手に巻かれた包帯を見る限りその役になりきっている感じが分かる。

「照橋心美の方は世界一の美女なんだ。だから、みんなから好かれているし自分の思い浮かべたように物事を進めれる。そして、照橋は主人公の斉木楠雄に恋を馳せている」

 

 僕らはステージを横断した。

「今度は一気に紹介しよう。右から順に『鈴宮陽衣』、『鳥束零太』、『相卜 命(あいうら みこと)』」

 まず鈴宮を演じる人は間近で見ると筋肉のある男の人だった。ただ、服装も女子高校生の制服で、見た目も女の子に似せている。

「鈴宮はとても不運(アンラッキー)なんだ。まさに超能力者級のね。だから、普段から身体を鍛えているカレにしか演じられないんだ」

 燃堂の紹介から思っていたのだが、演劇部ってそんなに鍛える必要性ってあるの?

「で、鳥束零太はまあ他人の背後霊を見ることが出来るんだ。女好きが行き過ぎていて、みんなの嫌われ者だ。もちろん主人公もクソ扱いしている」

 可哀想な役だと思った。

「最後の相卜は占い師で、対象の調べたいことが何でも分かるんだ。さらには、他人のオーラを見ることが出来る」

 

 舞台裏へと向かった。

「カレは主人公の声役」

「ん?どういうこと?」

 主人公は僕のはずだ。そして、僕の声を担当する……

 そこで閃いた。そうか、だから僕は声を出す必要がないのか。

「主人公は基本自分の考えていることが台詞となっていて、実際に喋るシーンはハブられているんだよ」

 

 二人の男女が近づいてきた。

「そして最後の紹介だね。『駄菓子屋のおばさん』と『天・バイヤー』だよ」

「どんなキャラなんですか?」

まず駄菓子屋のおばさんは、67歳の駄菓子屋を経営しているおばさんで、地元の子ども達を中心に定評があるんだ。おじいさんは他界していて、おじいさんとの子どもは今や大人。そして大人となったカレは子どもを産んだ。つまり、おばあさんには孫がいる。大人になった子は会社員務め、孫は小学校に通っている4年生で……(以下省略)(※この「」内の文章は飛ばして貰って構いません)」

 

 説明がながいわ!!

 

「いやさっきまでの簡潔な説明はどうしたの!!」

「いやぁ、ウチらの作ったオリジナルキャラだからさぁ、ついつい頑張っちゃった」

「余計分からなくなったよ」

「ええ…、もう一回説明した方がいい?」

「いやいや。もう次の天・バイヤーの方いかない?」

「分かった。天・バイヤーもウチらの作ったオリジナルキャ(以下省略)───。─」

 

 

 キャラ説明が終わると「後は指示通りにしてくれればいいから。明日の日向コンサートホールに朝10時頃に来てね」と言い放たれた。

 そして、その日の練習はお開きとなり終わってしまった。

 

 不安だけが残る。果たして無事に終えることが出来るのだろうか。そしてそれは、僕の演技よりもここの演劇に対して思っていた。

 

 

 

 

 本番当日。約束の時間に約束の場所へとやって来た。

 劇の準備を始めた。僕は提供された制服を着て、何故か頭にキャンディーのようなものが二つあるカチューシャと伊達眼鏡を身に付けさせられた。

 

 傍らで他校の劇を眺めていた。

 昔からある小説で今にも残る有名な作品を題材にしたものの劇。そして、圧巻のクオリティを観ると凄く日向高校の演劇部が異端だということが分かる。

 逃げたいけど、もう逃げられない。もうやるしかないのだ。僕は劇を全力でやることを決心した。

 

 そして、僕らの出番。

 無事に劇が終わることを願い、表へと度立った。

 

 

 

 

 

 暗幕の中で舞台設置が進められる。

 その間、ナレーターがこの劇について説明する。その説明は定型文(テンプレ)を言っているだけだ。

 そのせいか突っ込みどころも満載だ。

 "この日のために、ずっと練習してきた"とナレーション。この劇の主役の僕は昨日今日劇に触れた。練習すらしてない。他にも突っ込みどころ満載なためいちいち突っ込めない。

 

ナレーション それでは、斉木楠雄のΨ難をお楽しみください。

 

 半分はどっと笑い出した。もう半分は冷ややかにこの劇を見定める。劇に出ることを承諾して後悔した自分がいた。

 

 暗幕が上がると劇場では崖が聳えていた。周りは暗く不穏な空気が流れている。

 一人だけ崖の上で仁王立ちをしている。その人は手を身体を剃り高笑いした。それに合わせて光る稲妻と鳴り響く雷鳴の音。音は鼓膜を突き通る。

 

天・バイヤー はあっはっはっはっ。我は天・バイヤー。限定品や人気商品を発売された時に買い占め高額な値段で売り飛ばす。そして、我はお金持ちになり世界征服も夢ではない。そんな転売で世界制服を企む我こそはぁ!!空前絶 ── ─

 

斉木楠雄の声 長い!

 

 暗転した。その間に崖を片付ける。もう崖の装置は使わないらしい。本当に崖は必要だったのだろうか。

 耳から司令がきた。"()()で椅子に座っていて!"というものだった。僕は劇に設置された椅子に座った。

 

 場面はよくある一般的な教室へとなった。そこにいるのは僕一人のみ。他は観客から見えない幕の内側で待機している。

 教室は明るく照らされている。

 

斉木楠雄の声 僕の名前は斉木楠雄。超能力者である。

 

 天の声が観客に響く。

 

斉木楠雄の声 ここは過去を変えて未だに連載が続いている世界である。

燃堂力 おっ

斉木楠雄の声 やれやれ、また厄介なのが集まってきた。

燃堂力 おーい相棒、ラーメン食いに行こうぜ!

斉木楠雄の声 まだ授業が残っている。

 

 燃堂は僕の顔をジロジロと覗く。それでも真顔を崩さなかった。

 

ナレーション 燃堂力。カレは斉木楠雄とは同じクラス。そして斉木楠雄のことを相棒と慕っている。

斉木楠雄の声 燃堂は非常に厄介だ。これ以上燃堂が増えたら超能力者の僕でも絶対に手に負えない。それぐらい危険な人物である。

 

 さらに、もう一人表舞台へと出てきた。

 右手に包帯を巻き、所々破れている服装を見るにまさに厨二病という存在だ。ただそれを演じているのが爽やかなイケメンのせいか厨二病感が和らいでいる気がする。

 

海藤瞬 よっ!盟友。最近、闇に染し売買師(リセールウィキッド)が町を騒がしているな

斉木楠雄の声 闇に染し売買師(リセールウィキッド)www

 

 天の声は笑いを堪えたような喋りをした。だが、僕は真顔でいた。厨二病に関して面白いというよりサムイと感じていたからだ。

 

燃堂力 あー、そうだよな

海藤瞬 貴様知っているのか、転売屋のこと

燃堂力 えっ、食べたら美味いやつだろ?

 

斉木楠雄の声 違う!!

 

 海藤と燃堂で僕を囲む。海藤は自信げに鼻をくくっていた。

 

ナレーション 海藤瞬。カレは厨二病。

 

 いや説明雑過ぎない?最高の劇を行うためにはそういう所もしっかりとする必要があると思うのは僕だけだろうか……

 

海藤瞬 転売屋とはな……。売られた物を買い占めて、その後ネットとかによって高額で売り飛ばすっていうものだよ!ほんと、買いたいものが余計高いお金をかけないと買えないなんて腹がたつよな

燃堂力 おっ、そうだな!

 

斉木楠雄の声 絶対理解してないな。

 

 男三人が劇で佇む。そこへ一人の少女が軽やかに現れた。スポットライトは彼女に向く。

 

照橋心美 世界一の美少女照橋心美の役を演じている武馬(ぶま) 文香(ふみか)です♪

 

 いや、本名の自己紹介をしては駄目だろ!!

 バンドではないんだし、演じてる役割を全うするでしょ普通……

 

 観客を含め、劇場の誰もが「おっふ」という謎の言葉を放つ。僕は言いそびれた。ってかまさか観客にもやるように仕組んでいたとは……

 その3文字を言えなかったけど大丈夫かな?まあ何も言われてないし大丈夫なんだろう。そう心に聞かせて、難を過ごそうとした。

 

ナレーション 照橋心美。カノジョは自他ともに認める世界一の美少女であり、神様でさえもカノジョに惚れているのか何事もカノジョの思い通りになることが多い。もしカノジョと道端で会ってしまったらその美しさに「おっふ」と吐いてしまうだろう。

 

 そうかだから「おっふ」なのか。ただ、僕は言いそびれたのでもう遅い。

 

燃堂力 そうだ、帰りにその転売屋というやつに寄って返って行こうぜ!

斉木楠雄の声 店でもない!

海藤瞬 店じゃないけど、会えるかもな。会って転売をやめさせよう

 

ナレーション こうして3人は転売屋を追うことになった。

 

 再び起こる暗転。それに合わせて裏の舞台装置が入れ替わる。

 耳から入る情報は"真顔でその場歩きしてくれ"というものだった。どんなに真顔なキャラなのだろうか。

 そして照明。場面は町中になっていた。車や人通りの少ない道路はガードレールも地面にある白い線もない。そして、積み重ねられた灰色のレンガブロックと高く聳える電柱が印象的だ。

 

 僕と燃堂と海藤でその場歩きをした。

 

燃堂力 まだかな。転売屋さんまでどれぐらいだ?

斉木楠雄の声 店じゃない。それに、そんな早く見つかるわけな……

 

天・バイヤー 今日も転売してやるぜ!

 

 最初に出てきた男が舞台の端に現れた。そして、劇の最初のシーンと同じポーズをとった。

 

斉木楠雄の声 見つかった!!

 

 天の声は衝撃的な声で言う。まあ都合が良すぎるから驚くのも無理がない。僕は驚きを越して呆れている。

 その前に天・バイヤーのキャラ付けが安価過ぎると感じるのは僕だけだろうか。それも僕を呆れてさせる要因の一つであった。

 

燃堂力 見つかったのか、どこだ?

海藤瞬 お前は節穴か?そこだそこ!

 

 海藤はバイヤーに向かって指を指した。

 

燃堂力 あ あれか!

 

 燃堂は走って向かって行った…と思ったらバイヤーを通り過ぎていった。

 取り敢えず、おバカキャラだから仕方ないことではありそうだ。

 

海藤瞬 馬鹿はほっといて、俺達で追いかけるぞ

斉木楠雄の声 そうだな。

 

 僕と海藤が横一列に並び、先頭を走るバイヤーと平行してその場歩きをしていた。

 少し歩くと前方から駄菓子屋が現れた。

 劇の舞台背景の横半分が駄菓子屋になった。そして、そこには駄菓子屋のおばさんとバイヤーが話している。だが、口パクだったのか何を話しているか舞台からでも聴こえなかった。

 それを僕らが変わらなかった背景で見ていた。

 

海藤瞬 あの駄菓子屋の商品を買い占めるつもりか。くそっ、あのおばさん優しいから絶対に騙されている。早く転売屋を止めなければ!!

 

 海藤がそう言った後にバイヤーが駄菓子屋から出てきた演技をした。手には何かの大きな荷物がある。もうすでに買い占めたのだろう。

 

海藤瞬 くそっ、間に合わなかった…

 

 焦り始める海藤は額の汗を右手で拭った。

 駄菓子屋のおばさんは転売屋を追いかけてきた。そして、その転売屋と面と面を向けた。何かを話そうとしている。

 

駄菓子屋のおばさん バイヤー!ちゃんとここの転売で稼いだ利益の半分はここに振り込むんだよ!!

天・バイヤー もちろんですよ!また入金しに来ますね

駄菓子屋のおばさん これからもいい関係を保ってくれよ

天・バイヤー もちろんです。毎回転売の際に助けられてます。ありがとうございます。

 

 そういい駄菓子屋のおばさんは店に戻り、バイヤーは先に進んでいった。

 それを見ていた海藤はショックからか立膝をついて四つん這いとなった。

 

海藤瞬 まさか転売屋とあの優しい駄菓子屋おばさんが提携者(グル)だったなんて──

 

 海藤は石にでもなったかのように動かなくなった。

 

斉木楠雄の声 仕方ない、置いてくか……

 

 僕は再び歩き始めた。

 駄菓子屋は再び町の一角へと変わる。バイヤーは既に舞台裏へと行ってしまったが、僕は未だに歩いている。

 

 僕が劇場の上で一人歩いていると、鈴宮がやって来た。少し小走りで急いでいるようだ。

 

ナレーション 今小走りのカノジョは鈴宮陽衣。超能力者並の不運(アンラッキー)を持ってい……

 

 突如鳴り響く車のクラクション。数秒後に車との衝突音が鳴り響く。

 車と衝突したのは鈴宮で、鈴宮はバク転を駆使して遠くへと吹き飛ばされたように魅せた。そして、地面に身体が着きそうになった時、再び衝撃音が鳴り響く。

 巨大な図体を持った真っ黒な身体。先端が丸く尖っていて、背後はジェットのようなものになっている。足はなく飛んで進んでいる。図体の割に小さな白い腕。先頭を向く目。そう──()()()()()()()だ。

 吹き飛んだ鈴宮は今度は飛んできたマグナムキラーにぶつかり吹き飛ばされた。

 鈴宮はまた大胆な吹き飛ばされた演技をした。

 

斉木楠雄の声 何故マ〇オブラザーズのキャラが飛んでくるんだ !!?

 

 その通りだ。これは斉木楠雄のΨ難であってマリオブラザーズではない。その二つは全く関係ないものだ。マリオのキャラが斉木楠雄の出るなんてシナリオが狂っていると思った。

 

 そして、吹き飛ばされて地面に寝そべった鈴宮。そこへ隕石が衝突した。鈴宮は隕石に押し潰され顔を隕石の外へと出している。

 

斉木楠雄の声 まさか隕石が落ちてくるとは……

 

 そして、動けなくなった鈴宮の頭を通りかかった野良猫が踏んでいった。

 

斉木楠雄の声 いや、最後のはいらないだろ

 

 まあ車、マグナムキラー、隕石ときて猫とはあまりにも規模が違い過ぎる。

 耳から入る司令。"その場を歩け"というものだったので再び僕は歩き始めた。それと同時に鈴宮は横這いで僕の方向へと動く。そうすることで、動いていくこの場所で鈴宮は動いていないようにみえる。

 鈴宮は無事舞台裏へとゆくことが出来た。

 

 ただ……何しに来たんだ?鈴宮は───

 

 そんなことを考えながら歩いていたら目の前にバイヤーが現れた。そして、僕の後ろ側から二つの影が迫っていた。

 

鳥束零太 見つけたっすよ。斉木さん

相卜命 って、あそこにいるのって最近悪い意味でこの町を賑わせちゃってる転売屋じゃん

斉木楠雄の声 改心させようと追っていた

鳥束零太 どうやって改心させるんすか?

斉木楠雄の声 まあ見てろ

 

 耳から"真顔で右手をバイヤーに向かってかざせ!"ときたので僕はその通りにした。

 

鳥束零太 何したんすか?

斉木楠雄の声 天使と悪魔を呼び出したんだ

鳥束零太 ああ、よくある天使と悪魔の対立を可視化したんっすね

 

 つまりいいことを促す天使と悪いことを促す悪魔を見えるようにしたということだ。

 そして、二人のコスプレをした登場人物が現れた。照橋心美と燃堂力だった。

 

天使 照橋 私は天使

悪魔 燃堂 おっ、悪魔だべ

 

天・バイヤー な…何なんだね。君たちは!

 

 ちょっと待って、バイヤーの口調変わりすぎじゃない?ちゃんとした設定作ってないでしょ、コレ!

 

天使 照橋 私はあなたの転売を止めにきたの。もう転売には足を洗いましょう

天・バイヤー いや、我はもう転売しか道はない

天使 照橋 いいえ、まだ間に合います。転売は沢山の人を困らせる悪徳なもの。つまり悪いことをしているのです。悪いことはいずれ自分を苦しめる。さあ、辞めるなら今です

天・バイヤー いいや、我は我は……

悪魔 燃堂 おい!

天・バイヤー 悪魔……なんだい

 

 バイヤーは悪魔により縋ろうとしているのが丸見えだった。

 

悪魔 燃堂 天使の照橋の言ってることが全て正しいぜ!天使の言う通りにしよう。さあ、辞めるなら今だ

 

斉木楠雄の声 悪魔が天使の味方してどうする !!!

 

 悪魔が仕事をしてない上か、逆に批判すべき天使の味方をした。

 

斉木楠雄の声 そう言えば、燃堂も照橋の虜となっていたから、こうなるのも仕方ないのか

 

 そういう問題なの?いやこんな方法でバイヤーが改心するなんて何か嫌だよ!

 

天・バイヤー それでも我は転売屋を続けるんだ!こうなったら、悪魔諸共吸収してやる!!

 

 劇の上でフラッシュが起こる。眩い点滅が観客を襲う。

 その間に、燃堂は表舞台から姿を消した。

 

斉木楠雄の声 !!?

 

 "驚く表情をして!"ときたので僕は迫真の演技で驚きを表した。

 

鳥束零太 うわあ、背後霊が変わりましたっすよ!あれはまさに燃堂(あくま)そのもの

相卜命 オーラも変わってるわ。マジで燃堂(あくま)じゃん……

 

天・バイヤー おっ!?

 

 まさか、この終わり方は───

 

斉木楠雄の声 嘘だろ!

天・バイヤー なんか既視感(デジャヴ)を感じる

 

 バイヤーは僕に近づく。

 バイヤーは和らいた表情で僕に話しかけた。何か嫌な終わりを向かいそうな気がする。

 

天・バイヤー 何か気が合いそうだな、今度から俺の相棒だ!

斉木楠雄の声 マジデスカ…

 

 僕は冷や汗をかいていた。こんなにも最悪のシナリオだとは思いもしなかったからだ。

 

ナレーション 天・バイヤーは今後転売に手を染めることはなかった。代わりに──

 

 背景は変わらず街角の一角で、僕と燃堂とバイヤーが観客席に向かってその場歩きをしていた。

 

燃堂力 相棒!ラーメン食いにいこうぜ!

天・バイヤー 相棒!ラーメン食いにいこうぜ!

 

 二人は僕に向かって話しかけてきた。

 

斉木楠雄の声 まさか燃堂が二人になるなんて予想していなかった。一人でも厄介で手を焼いてるのに二人になると大変極まりない。

 

 まさかこんな結末になるとは。こんな終わり方なら、天使に改心されて終わった方が良かったじゃないか。

 僕を相棒と呼ぶ二人は同時に口を揃えた──

ラーメン食いに行くので決定だな

 

 

斉木楠雄の声 やれやれ

 

 

 その一声が放たれた後に幕が降りた。そう、日向高校の劇が終わったのだ。

 

 

◆◆

 

「お疲れ様でした」と響いた。

 僕らの演劇は終わり、ホールの外で終了の挨拶を終えた。

 結果は最下位(ドベ)から数えた方が早い程度。これでも、前回よりも評価が格段良くなったようだ。今回の劇よりも酷いその劇を観てみたい気がする。

 それと、何故か僕は演劇が上手いとされ持て囃された。正直なんにもやってはなかったけど……

 

 

 演劇部の代表でナレーション役だった生徒が僕に近づいた。

「今回は急な依頼なのにやってくれてありがとう。いやぁ、まさか元々斉木楠雄の役をやる予定だった奴がさ……」

 そうか、急に欠席を余儀なくされたから代わりに僕に出てもらうことになったのか。

「友達と遊ぶ約束をして来れなくなって主人公の役が急に空いちゃった所に来てくれたお陰で助かったよ!」

 

 いや友達との遊びの約束ぐらい断れよ !!!

 

 もう嫌だ。何でこの演劇部は変なんだ。再び演劇部の依頼なんて承諾しない!と心に誓った。

 僕は色々な意味で疲れた。その疲れた身体を引き摺りながら帰路を辿っていった。

 

 

 

 

 次の日、僕の演劇での活躍は学校中に拡散された。そこから、様々な憶測が加わり噂となる。だが、人の噂も七十五日、すぐにその噂は消えた。

 いや、そんなことに費やすよりもやるべき事が現れたのだ。

 

 日向高校ではテスト週間に入った。

 部活動はその間は行われない。つまり、ボランティア活動は必然的にその間休業となる。

 僕はそのゆったりした時間を自分の時間に充てようと考えていた。

 

 ある日の午後──

 僕宛にLINEが入った。昴からだ。

『こんちゃ、透。今週の土曜日は暇だよね?テスト週間のはずだからボランティアも無いはずだし 17:48』

 そのような文字が打たれていた。

 取り敢えず、その文字通り暇ではある。ただ、その日はゆっくり身体を癒したいと思っていた。

『どうしたの? 17:59』既読

 僕は様子見することにした。

 素早く既読してくる昴。そんなに暇なのだろうか。

『それで?暇なの? 17:59』

 強引に聞いてきた。埒が明かない。数分考えたが、張り合うとは非効率だと思い僕の心は簡単に折れた。

『まあ暇だけど… 18:13』既読

『それじゃあ、その日開けておいて!! 18:14』

『何するの? 18:18』既読

『決闘を申し込む! 18:18』

 決闘───。ますます分からなくなってきた。

『その日の正午、銀魂駅で集合な! 18:18』

『何か話が急過ぎない? 18:21』既読

 

『「壮大な勝負」を行おう(*`Д´)っ乂c(`Д´*) 18:22』

 

『詳しくは当日に話す!急でごめんな! 18:22』

 そう述べるとさようならを示すスタンプを送ってこの会話が終わった。

 

 本当に何だろう。壮大な勝負は僕と初めてあった日に言った言葉だった。

 だが、僕にも予想がつかない。

 その当日は確実に迫り、ついに土曜日となった。

 

行ってきます!

 

 勝負のコングが準備された。ついに昴との決闘?が始まろうとしていた────

 

 

to be continued




個名紹介

学校名:日向高校

 主人公の通う高校。野球部と吹奏楽部に人数が偏り他の部活動は圧倒的に部員が少ない状態にある。実は野球部よりもバレー部の方が強い。日向(翔陽)だし。


おすすめ回

このssの根源となる回→1話
友情に重きを置いた回→2話
熱血に重きを置いた回→3話
笑いに重きを置いた回→4話
一つ目のおすすめの回→5話
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