東方春命録   作:Poteto305

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『使命』とは何かを悟り・終符

 

 

「あ、貴方がアリスさんですか?」

「そうだけど、貴方は?」

「俺は戌井春良、外来人です。上海を直して欲しいんです!」

 

そう言って上海を手のひらに載せる。

それを見てふーん、と一息つくと、アリスは春良達を通り過ぎ、家のドアを開いた。

 

「とりあえず、入りなさい。外でもなんだし」

「あ、はい」

 

アリスの家の中は、どこぞの魔法使いの家と比べ、かなり整頓されていた。

奥の方の棚には、数多くの人形が見える。

 

(あれが、上海の元なのか…?)

「春良、上海を貸しなさい」

「ど、どうぞ」

「…………」

 

上海を差し出すが、アリスは受け取ろうとはせず春良の顔を難しそうに見つめる。

 

「ど、どうかしましたか?」

「敬語、使わなくて良いわよ」

「え?」

「慣れないのよ。そういうしゃべり方」

「あ、は……おう。わかった」

 

よろしい、と一言いって微笑むアリスの顔に、不覚にもときめいた春良だったが、口には出さないでおいた。

 

「どうなの?その人形直りそう?」

「直らないはずないじゃない」

 

アリスの頼もしい言葉に安心し、春良はその場にへたりこんだ。

 

「上海はアリスの人形なんだろ?どうやって動いてるんだ?」

「元々私の人形は全て私が動かしてるんだけどね。この赤服の上海は魔力と簡単な命令で半自立的に行動できるのよ」

「へぇ……」

 

正直、魔力と言われてもピンとこないが、上海は半自立人形だと言うことは分かった。

 

(なるほど、それで向こうのは青色の服なのか)

 

失敗作とは言えない。

それも完成された人形に変わりはないのだから。

 

「キノコ採りをさせてたら帰ってこなくなるし、心配したのよ」

「妖怪に襲われてたぞ?」

「あら、そうなの?」

 

簡単に返され、沈黙が降りた瞬間、ベッドで足をばたばたと動かしていた諏訪子がふと体を起こした。

 

「春良、暇」

「暇ってなぁ、いつもなんじゃないのか?」

「弾幕遊びしようよ」

「手加減してくれるならな」

「するからするから」

「ごめん、アリス。上海頼んだ」

「はいはい、分かったわよ」

 

アリスの声を聞きつつドアノブに手を掛ける。

絆創膏の準備を、言い忘れていた。

 

「それじゃ、行くよ!」

 

ブワッ、と襲い来る弾幕を前に、春良は手を掲げる。

 

「弓符『サジタリウス』!」

 

その声と共に淡い青色の弓が春良の手に、

 

「……はれ?」

 

握られない。

 

「な……、ちょっと、ま…!」

 

二度目三度目と唱えるが、何も効果は無い。

 

「な、なんでだぁぁぁぁぁぁあ!?」

 

無情にも、春良は弾幕に飲み込まれていった。

 

「は、春良!?」

 

仰向けに倒れる春良に諏訪子が駆け寄る。

 

「ゆ、弓が、出ない……」

「弓って、スペルカード?符はあるの?」

「ある…」

 

何も変わりない符を見て、春良はふと思い出す。

紅魔館での出来事だ。

 

「俺、弓、壊されたんだっけか……」

 

フランに粉々にされた弓。

よく辺りを見まわすと、確かに若干蒼い砂のようなものが舞っていた。

 

「……本当に、ついてねぇなぁ…」

「だ、大丈夫だよ。すぐ戻るって」

「どうやってだよ…」

 

せっかく手に入れた力が壊れる。

その事実は、春良にとって辛い物でしかなかった。

 

「……サジタリウス…」

 

小さな風と共に集まった蒼い砂を掴み、大きくため息をつくと、アリスの家のドアが開いた。

 

「あら、もう終わったの?」

「いや、俺が弾幕撃てなくなってさ…」

「……撃てなくなった?」

 

アリスに続いて出てきた上海は、初めて出会ったときよりも綺麗になっていた。

 

「ふぅん……。弾幕を出す弓が壊れて、もう撃てないと」

 

事の経緯を話すと、アリスは腕を組んで唸り始めた。

 

「フランって吸血鬼の妹にやられてな…」

「……紅魔館に行ったの?」

「ん?おぉ」

「良く生きてるわね……人間なのに」

 

感心したように言うが、微妙に嬉しくはない。

今はそれよりもショックなことがあるから。

 

「で?なんで撃てないの?」

「いや、今言ったとおりで…」

 

だーかーらー、とアリスはため息をついて春良の手に握られている弓だった物を指さした。

 

「それはあくまでイメージ体でしょう?なら、形は素直に変わるはずよ」

「……言ってる意味が良く…」

「とにかく、撃ってみなさいって」

 

強引な言葉に春良は立ち上がり、構える。

弓道始めの頃は、こうして型を教えてもらった物だ。

 

「…………?」

 

パチッ、と型を始めると手に違和感を覚える。

何かを、感じる。

 

「ほら、できたじゃない」

 

弓を引くポーズまで持ってきたとき、春良の手にはいつもと変わらない蒼弓が握られていた。

 

「お、おぉ!」

 

感動したのもつかの間、声を上げた瞬間、弓と矢が塵に変わった。

 

「ま、その代わり壊れるほうも素直になったってことね」

 

つまり、前よりも扱いが困難になったというわけだ。

 

「ついてねぇなぁ……」

 

また出てきた言葉に、春良は自分でため息をついてみせた。

 

「どうするの?上海はこの通り、綺麗になったわけだけど」

「お、本当だ。綺麗になったな」

 

春良がそう言うと、紅服の上海は嬉しそうに抱きついてきた。

 

「連れて行くのかしら?」

「や、これ以上迷惑掛けるのもなんだし、アリスのだろ?」

「そうして欲しいのは山々なんだけど、上海が…」

 

そう言われ、上海に目を向けると、本人は春良の肩に座り、離れないようしっかりと掴んでいた。

 

「ある程度意志のある人形を作れたのは初めてなのよ。ちょくちょく報告に来てくれればそれで良いわ」

「ありがとな。上海も」

 

軽く撫で、顔をほころばせる上海に和む。

あははうふふと笑い合い、意気込んで振り向くと、

 

「……私には感謝しないんだ」

 

体育座りの諏訪子がいた。

 

「あ、いや。諏訪子にも助けられたし、ほんとにありがとな」

「なんか後付っぽいなぁ…」

「んなことないって」

 

後ろから頬を軽くつまみ子どもをあやすように接すると、すぐに変化は訪れた。

 

「ま、まぁ、別にいいけどさ」

「それじゃ、また神社まで頼むな」

 

片足を上げ、諏訪子におぶさる。

 

「情けないわね……」

「分かってるから言わないでくれ」

 

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