――――――――――――――――。
「…………?」
不思議な、感覚がした。
何気ない言葉を言っただけだが、頭の奥で、何かが引っかかった様な、そんな感覚。
その感覚の元を感じ取った春良は、納得したように笑った。
「なかなか面白いわね、人間にしては」
こういうことは初めてなのか、こあくまと咲夜は勝手が悪いように紅茶をすすった。
「ハルはね、優しいんだよね!」
「いやいや、買いかぶりすぎだ」
「それじゃ、話を続けていいかしら?」
仕切り直しするようにレミリアがティーカップを置く。
お願いします、と春良も手を下ろした。
「貴方の能力の元は、そのスペルカードね」
「……やっぱり、能力なんですかね?これ」
『親愛』の符をテーブルに出し、春良は表情を曇らせる。
「十中八九そう。……嫌なの?」
「いや、そうじゃないです」
続けて下さい、と手を出すと、レミリアは頷いて口を開く。
「ぶっちゃけて言うわ」
「……はぁ」
「幻想郷風に言うと、貴方の能力は『落とした相手の力を借りる程度の能力』って所ね」
「…………ぶふっ!」
「は、春良さん!?大丈夫ですか!?」
レミリアの言葉に再び飲もうとした紅茶が口から吹き出る。
すぐにこあくまが布巾で拭き取ってくれた。
「ちょ、ちょっとまってください……」
「言い方が悪いかしら。『信頼を力に変える程度の能力』。これでいきましょ」
「お願いします……」
拭き終わりましたよ、とこあくまがにっこりと笑う。
「貴方は自分に心を許している相手の力を、そのスペルカードを通して使うことができる」
「はぁ。…………はぁ!?」
「ようは好かれれば力を分けてもらえる……、どうかしたかしら?」
「え?じゃぁ、美鈴さん、は……?」
「へぇ、うちの門番とそんな関係なのね」
茶化す様に横からパチュリーがニィッとふくみ笑い。
「じゃぁ、ハル私のも使えるんじゃない?」
ぱたぱたと羽を揺らし、フランが問う。
どうも恥ずかしいはずのことを、フランは気にしていないようだ。
「……わからないな…」
「えー。ハルは私の事きらい?」
「ち、違う違う」
手を振りながら、春良は符をポーチになおす。
すぐ隣の上海とこあくまが、何故か不満げな表情で春良を見つめていた。
「今の所、わかるのはそれぐらいね」
「い、いや、ありがとうございます」
そう言うと、パチュリーと咲夜が同時に立ち上がる。
どうやら食べ終わった様だ。ご馳走様、とパチュリーは手を合わせて退室してしまった。
「それでは、お嬢様。仕事に戻ります」
「えぇ、頼むわ」
そう言うと、咲夜の姿が消える。
時を止めての瞬間移動、実に便利な能力である。
「ご馳走様」
「私ももういいわ」
「ごちそーさま!」
「あ、私もです」
その声と共にテーブル上の食器が消える。
咲夜の仕業だろうが、一体どこから見ているのだろう。
「それで、これからどうするのかしら?春良」
「とりあえず、図書館の片づけをします」
「あ、ありがとうございます」
「またあの神が来ないよう私が連絡してあげるわよ?」
「え?なんてですか」
「何日か借りる、と」
何日か。
つまり、その時間は春良がここでできることを終わらせるまでだろう。
そのことを把握した春良はため息をつき、上海に撫でられた。
バタン、と閉じられた扉の外側。
春良、上海、こあくま、フランはなんとなしに背伸びをした。
「あ~……、なんか緊張したな…」
「本当ですよぉ…。春良さんが急にあんなこと言い出すんですから」
「い、嫌だったか?」
「……ふふっ」
含む様に笑うこあくまを見つめると、こあくまは可愛らしく首を傾げ、
「……嬉しかったです。ありがとうございます」
ぺこっと一礼。
「そ、そっか。なら良かった」
「ハールー。遊ぼーよー」
ぐいぐいと服を引っ張り、フランがつまらなそうに唇を突き出している。
「んー。三日も待たせたしな……。よし、遊ぶか」
「やったぁ!何する?何する?」
ぴょんぴょんと跳ねるフランの頭を軽く撫で、春良は周りを見まわした。
「弾幕は危ないしなぁ……」
そう呟いた瞬間。
カシャン、といつしかの破砕音が小さく聞こえた。
「……!?」
「あー、また魔理沙さんです…」
「……まじか…」
なにが起きたか分からないような顔のフランの顔の高さまでしゃがみ、春良は頬を掻きながら、
「ごめん、フラン。遊ぶのはまた今度でいいか?」
「えー……?」
「絶対遊ぶから、な?」
「…………ん…」
こくん、と羽を頼りなく垂らしたフランの姿に胸が痛んだが、春良はその怒りを原因に向けることにした。
「……そろそろ度が過ぎるぞ、魔理沙」
「は、春良さん!?」
一気に駆け出した春良をこあくまが追いかける。
残されたフランは、ぐすっ、と鼻をすすった。
「…………つまんなぃ…」
そのまましゃがみこんだフランの頭を、一つの小さな手が撫でる。
「……?」
「何がしたいかしら?フラン」
「お、お姉、様……?」
「まったく、情けない顔をしない。かくれんぼするわよ、私が鬼」
「え、え……?」
「はい、後30秒!」
パン、とこ気味良い音と共にレミリアが笑う。
一瞬固まったフランだったが、すぐに立ち上がり、
「……うん!」
と走り出した。
「…………ふぅ…」
その背中を見つめ、安堵したような息を漏らす。
カウントダウン。
「いーち、にー、さーん、しー……」