東方春命録   作:Poteto305

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少年は、それを行うべく駆ける・拾壱符

 

「よっ、また借りにきたぜ!」

 

そこには、いつも通りの笑顔を見せる白黒魔法使いがいた。

 

「……え?」

「こあ、大丈夫か?」

 

春良に手を引かれ、立ち上がる。

ふとついさっきまで自分がいた所を見ると、何かがぶつかったようにひび割れていた。

 

「もう少し気づくのが遅かったら危なかったな…」

「…………っ!」

 

ただ、魔理沙の攻撃から、守ってくれただけ。

ただそれだけなのに、何を自分は妄想していたのだろう。

 

「怪我とか……」

「こっち、見ないでください……」

「ぁ……おう」

 

真っ赤な顔を両手でおさえてぶんぶんと振る。

そして、切り替える。

 

「今日こそは一冊も渡しませんよ。魔理沙さん」

「渡す必要はないぜ。貸してくれるだけでいいんだ」

「……貴方に『渡す』のと『貸す』のは同義なのよ」

「死んだら返すって何度も言ってるだろ?」

「だから、それが駄目なんだって…」

「あっはっは。とりあえず…」

 

ピリッ、と空気が変わる。

三人(+一人形)は広がり、空からくるであろう、波に備える。

 

「今日も実力行使(パワー)でいくぜ!」

 

何度目かの、星が瞬いた。

 

「弓符『サジタリウス』、親愛『華人小娘』!」

 

各々が流れ星を避ける。

そして、前回同様、春良は空へ上海と飛んだ。

 

「援護は任せて下さい!」

「二度も同じ手は食わないぜ!」

 

こあくまの放つ弾幕をかわし、魔理沙は超速で春良の元へ飛来した。

 

「っ!」

 

空で避けきれる訳もなく、ゴッ、と鈍い音と共に春良が墜落。

本棚に突っ込み、埃が舞う。

 

「春良さんっ!」

「……いって…」

「どうした?パチュリー。全然攻めてこないな」

「……あいにく、今日の私は魔力切れなのよ」

 

二日連続で来るなんて思わなかったわ、とため息をつき、パチュリーは図書館から姿を消してしまった。

 

「ぱ、パチュリー様!?」

「三人か……。大分キツイな…」

 

本をどかし、なんとか立ち上がる。

これでは勝てない。

それが分かっていたからこそ、春良は符を取り出した。

 

「…………ふぅ…」

 

親愛の符。

 

『じゃぁ、ハル私のも使えるんじゃない?』

『……わからないな…』

 

とある日の言葉。

あの日、春良はすぐに符をなおし、会話を変えようとした。

 

(うん……失礼だったな…)

 

フランの力を借りる。

一度、自分が殺されかけたあの力を。

 

(どうであれ……精神は子どもだし…)

 

だから、フランの力を借りることに、少し躊躇があった。

 

『えー。ハルは私の事きらい?』

『ち、違う違う』

 

だから、言葉を濁した。

あんなに、純粋なのに。

 

(俺と、あんなに遊びたがってた子を、怖がるなんてな…)

 

だから、距離を置こうとした。

 

「親愛……」

 

だから。

 

 

「…………『悪魔の妹』!」

 

 

戌井春良は、その言葉をためらわなかった。

春良を中心に風が吹き荒れ、埃と煙が小さな台風を作る。

 

「おいおい……」

 

舞い散る埃を手で塞ぎつつ、霧雨魔理沙は冷や汗を垂らしてその中心を見つめた。

 

「春良……。それは反則なんじゃないか…?」

 

埃が、晴れる。

その中から現れた『人間』は、明らかに『人間』ではなかった。

 

「…………うぁ…っ!」

 

痛々しく背から突き出る木の棒のような羽骨。

それにぶら下がる色鮮やかな宝石達。

 

「は、春良さん……?」

「……っぐ…!」

 

先がハート型の尻尾。

紅い、灼眼。

 

「……あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁああぁあ!!」

「!?」

 

突然叫びだした春良に、とっさに八卦炉を向ける魔理沙。

 

「恋符……」

「禁忌……」

 

春良の口が、意志に反して動く。

そして、

 

「『マスタースパーク』!」

「『レーヴァテイン』!」

 

炎と光が、真正面から交わった。

 

(本物そっくりだが、威力が若干低いぜ!)

 

現在進行形でぶつかり合う炎の剣と光の波動。

光の波動を操る魔理沙は、更に手に力を込めた。

 

「驚いたが、ここまでだぜ!春良!」

 

まさに『弾幕は火力』。

完全に炎を飲み込んだ光は、床一面を粉塵で包んだ。

 

「は、春良さん!」

 

その粉塵に向かってこあくまが叫ぶ。

だが、返事はない。

 

「さて、次は小悪魔、お前の番……」

 

そう言って、魔理沙が八卦炉をこあくまに向けた瞬間。

 

「お、あぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!」

「……っ、ぅぉお!?」

 

突如粉塵を切り裂き、高速で春良が魔理沙の元へ飛来する。

その手には、今だ燃えさかる剣が握られている。

 

「これは、ちょっとまずいぜ……!」

 

横薙に一閃。

確実に当たるコースだった炎を魔理沙は箒を軸にしてぐるんと回る事で回避する。

 

「なんとかして時間稼ぎを……!」

 

箒の軌跡から生まれた星々が春良を床へたたき落としていく。

 

「よし……。とっておきをお見舞いしてやるぜ!」

 

春良が床に足を着くのと同時。

魔理沙が高らかに叫んだ。

 

(やばい……やばいやばいやばい!)

 

戌井春良は、炎の剣をにぎりつつ、何度も体を押さえようとする。

しかし、狂気に飲み込まれる。

 

(フランは……コレをずっと……!?)

 

全て、どうでも良いような。

全て、破壊してしまいそうな。

自分さえも、壊したくなるような。

 

「ぁ、が、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」

 

意志を全く考慮しないその狂気は、逆らう事すら許さない。

ただ、無駄に冴える意識の中、春良は宝石の羽を羽ばたかせ飛んだ。

 

「終わりだ、春良!」

 

空でそう叫ぶ魔理沙が、何かを唱えようとする。

 

(…………っ!!)

「魔砲……!」

 

駄目だ。

 

「『ファイナル――!」

 

あれは、射程範囲内にいてはいけない。

 

「――マスター――!」

 

理性と勘が叫ぶが、それ以上に本能と狂気が上回る。

結果。

 

「――ス、パァァァァァアク』!」

 

春良は、意識すら出来なくなる程の光と星の渦に、飛び込んだ。

 

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