東方春命録   作:Poteto305

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少年は、それを行うべく駆ける・拾参符

 

大図書館。

空を見上げ、春良はこあくまを抱きかかえていた。

 

「お疲れ、こあ」

「は、春良さん……。大丈夫なんですか…?」

「あぁ、時間。ありがとな」

 

嘘だ。

体はあり得ないくらいに痛いし、呼吸もままならない。

 

「人間にしては、随分タフだな、春良」

「そりゃどーも」

 

こあくまを床におろし、見つめる。

 

「ど、どうかしましたか…?」

「こあ」

「はい…?」

「力、貸してくれないか?」

「……え、え!?」

 

春良に力を貸す。

と言うことは、つまり。

 

「し、親愛の、符ですか…?」

「……駄目か?」

 

遠回しな、告白と同じである。

 

「……い、いいですよ……」

「……ありがとう」

 

顔を真っ赤にしたこあくまが頷くのを見て、春良は符を取り出す。

 

「今度こそ、終わりだぜ。春良!」

 

空の魔理沙が吠える。

その声を聞き流すかのように、春良はその手を、力を掲げた。

 

 

「――――――親愛――――――」

 

 

 

改名され、『信頼を力に変える程度の能力』と命名された春良の能力は、完璧に他人任せの能力である。

 

だが春良は考えていた。信頼を力に変えるということはその人との『仲の良さ』が重要なのではないかと。

 

スペルカードも使えるが、フランのように無邪気な心との繋がりならば力は借りることは出来ても、魔理沙の言った通り弱くなってしまうのではないかと。

 

しかし、逆転の発想。

 

 

 

「――『紅魔の小さな悪魔』!」

 

限りなく精神的に近しい相手ならば。

その相手が自分のことを心から好いてくれている存在との発動ならば。

 

「…………っ!?」

 

その力は、何倍にもふくれあがるのではないか。

 

「私の、羽……」

 

息を飲むこあくまの前には、背中に2つ、頭に2つの蝙蝠羽を付けた春良が立っていた。

 

「……こあ」

 

そして、その手には、『親愛』の符が変わって生まれた一枚の符。

 

「……これ…?」

「こあの符だ。……読んでくれ」

「わ、私の…?」

「させないぜ!」

 

星が瞬く。

綺麗な流れ星をバックに、符を見つめ、こあくまは口を動かした。

 

「…あ、悪魔『形ある知識』!」

 

唱え、符が輝いたのを確認した瞬間、春良はこあくまを抱えて跳躍。

即座に星の破壊範囲から脱出した。

 

「勝つぞ、こあ」

「……はい」

「……なんだ?一体何をしたんだ?」

 

思った以上に衝撃が無かったのか、魔理沙はきょとんとした目でこあくまと春良を見つめる。

変化は、徐々に訪れた。

 

「……ん?……本、か?」

 

本棚から、少しずつ本が抜き取られ、春良とこあくまの周りを衛星のようにゆっくりと回る。

 

(……フランの時はどうしたら良かったのか分からなかったけど…)

 

これが、信頼の差なのか。

頭の奥で、こあくまの力の使い方を完璧に理解する自分がいた。

 

「魔理沙!」

「ん?」

「手加減、しないからな!」

 

パシン、と回る本を一冊ずつ二人で手に取る。

その本を開いた瞬間、魔理沙は今までで一番の笑顔を見せた。

 

「それは、こっちの台詞だぜ!」

 

星が再び降り注ぐ。

こあくまを庇うように春良は一歩前に出た。

 

「……発、動!」

 

本が輝き、目の前を亀の甲羅のような模様の壁、シールドが展開される。

危なっかしい盾だったが、なんとか星を防ぐことができた。

 

「ま、魔法!?」

「発動です」

 

こあくまが本を開くと、次は数多の炎が魔理沙に向かって飛来した。

 

「おいおい、これはパチュリーの魔法だろ…っ!」

 

当たりはしないが、相当焦っているらしく箒の扱いが雑になっている。

 

「もいっこ、発動!」

 

そこを衝くかのように春良が別の本を開くと、次は地面から間欠泉のように水が吹き出した。

 

「……がぼっ…!」

「こあ!」

「はい!……発動します!」

 

一閃の細いレーザーが水の中の魔理沙に一直線に駆ける。

が、寸前で回避されてしまう。

 

「魔法で、私に勝てると思わないことだぜっ!」

 

ばらっ、とばらまかれる金平糖のような大きさと形の何か。

一体それがどのようか物なのか、確認しようとした瞬間。

 

「……っ!こあ!」

「は、発動です!」

 

美味しそうなそれは、一つ残らず輝いたかと思うと、その全てが爆発を起こした。

 

「何が魔法だ……完璧科学物だろ…!」

「失敬だな。ちゃんと魔力で起爆させてるんだぜ」

 

こあくまを囲むように、全方位型のシールドが展開され、春良はその中にいたおかげで傷を負うことはなかった。

 

「春良さん、大丈夫でしたか?」

「あぁ。ありがとな」

「……さて…」

 

すっ、と魔理沙が八卦炉を取り出す。

 

「……正直魔力が少なくなっててな。これで終わりにさせてもらうぜ」

「望むところだ。こあ」

「はい。大丈夫です」

 

二人で、本を手に取る。

魔術書を解読し、発動するこのスペルは、燃費が大変悪い。

正直、こちら側も限界だった。

 

「……恋符…」

「……魔砲じゃなくていいのか?」

「言っただろ?魔力が足りないって」

「……なるほど」

 

地上から見上げ、空から見下ろす。

ほんの一瞬、視線が絡まった後、

 

「恋符『マスタースパーク』!」

「……発動っ!」

「発動ですっ!」

 

激動が、図書館を揺らした。

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