あまりにも、強大。
自然界では到底ありえない輝きを放つ少女は、本当にただの人間なのか。
「どうした!二人がかりでこんな物なのか!?」
「……っ!」
彼女は、忘れている。
「春良さんっ!押し負けます、逃げて下さい!」
「こあ、大丈夫だ」
彼女も、忘れている。
「このまま、押し切らさせて……」
「魔理沙!」
「……ん?」
理不尽な力に押し切られそうになっていたその時、魔理沙の後ろに『何か』が飛来する。
「『3』対1だ!」
「…………っ!!」
バッ、と魔理沙は背後を睨む。
そこには、
「上海人形……っ!?」
申し訳なさそうに、弓、サジタリウスを小さく引ききる上海がいた。
「くっ……!」
「いけ!上海!」
完全なまでの、不意打ち。
ほぼ零距離で放たれた矢は一瞬で魔理沙の眼前に飛ぶ。
「まっ……だ、だぜっ!」
それさえも超反応で体を反らされ、帽子をかすめ取るだけに終わってしまう。
しかし、回避行動に気を向けたせいか、マスタースパークは霧散した。
それとほぼ同時に、春良達の魔術も消える。
「……あ…!」
「っ!上海!逃げろ!」
吠えるが、どちらも動かない。
ぱさっ、と少し傷ついた魔理沙の帽子が春良の足元に落ちた。
「……魔理沙…?」
「…………ははっ…。あっはっはっはっはっは!」
女性としてはあり得ない程の高笑いを振りまき、魔理沙は春良達に向き直った。
「私の負けだぜ!」
「……え?」
「帽子、落とされたからな!」
帽子がないと、魔女っぽくないだろ?と彼女は笑った。
魔女らしからぬ、可愛らしい笑顔で。
唖然とする春良立の前にゆっくりと降りてくる魔女。
「まさか上海人形が決め球だったとはな。驚いたぜ」
すとっ、と床に足を降ろし、帽子を拾い上げる。
「……まぁ、仲間だしな」
「そうか。良い答えだぜ」
「今日は、本。持って行かないんですか…?」
「あぁ、負けたしな。……でも」
パチンッ、と魔理沙が指を鳴らす。
すると、春良とこあくま、上海を囲むように何かが数個、宙に浮かんだ。
「あの……魔力、使い果たしたんじゃ…」
「私の魔力は無尽蔵だぜ。真に受けたのか?」
もう一度甲高い音が鳴ると、それらは全て消え去る。
安心した春良達を横目に、魔理沙は帽子をかぶりなおす。
「一応主人公だからな、完全敗北じゃないってだけは言っておくぜ」
「良く言うな……もともとから全力じゃなかったくせに……」
「ま、なかなか楽しかったぜ」
「……あぁ、こちらこそ」
握手を交わし、魔理沙は空へと飛ぶ。
館から出ようとし、止まる。
「小悪魔!」
「は、はい!?」
「春良のこと、『異変』呼ばわりなんかして、悪かったな!」
「い、いえ!お気になさらずに!」
「それ、俺の台詞だぞ…」
それだけ言うと、今度こそ魔女は飛び去っていった。
ご丁寧に、自分が割った窓とは違う窓を、また割って。