「この招待状を持つ者、更なる賑やかさのため、己の知り合いを誘うべし……?」
「と言う訳よ」
「いや、これじゃ適当すぎるでしょう。誰が来るか分かりませんよ?」
恐れ多くも忠告を入れると、吸血鬼はニッと笑った後、数多の蝙蝠に姿を変え、四散。
『その方が、面白いでしょう?』
図書館中に響いているかのような声と共に、レミリア・スカーレットは完全に姿を消した。
「……パーティーか…」
守矢神社の皆が待っている(はず)だというのに、自分だけのんびりしていて良い物なのだろうか。
「あ、あの…春良さん…」
「ん?あ、ごめん」
「え!?ご、ごめん……ですか…?」
「え、いや、何が?」
「その……さっきの、返事です…」
「ち、違う違う。このごめんは待たせてごめん、ってやつだからな?」
「あ、そう、ですか……」
あはは、あはは、と誰が見てもぎこちない笑いを振りまくと、春良が右手をゆっくりと差し出した。
「こあ、一緒にパーティーに行かないか?」
「……なんだか、誤魔化してませんか…?」
「いやいや、ただ誘ってるだけだから。……上海もな?」
コクコクっ、と力強く何度も頷く上海を撫でる。
正直、主のカリスマによって空気は完全に変わり、告白どころではない。
「……はい。宜しくお願いします」
こあくまは、嬉しかった。
「さて、諏訪子達は待ってくれるかな……」
「招待、しないんですか?」
招待状を貰ってすぐに、春良がこあくまの事を心配した。
「伝える手段がなぁ…。レミリアさんに頼むのも悪いし…」
そのことが嬉しくて、それ以外のことなんてどうでも良くなってしまったのだった。
そして、パーティー当日。
というかその日の夜。
「……で、ここまで多いとは私も思わなかったわよ」
「良いじゃない、いつもは私の神社なんだし。たまには」
「メイドー、肉が足りないぜーっ!」
ありえないほどに広い会場に、あり得ないほどの人(妖精、吸血鬼などなど)達がいた。
「魔理沙、来てたのか」
「おぉ、春良。霊夢からの誘いがあってな」
「霊夢さんも?」
「あら、春良じゃない。調子はどう?」
魔理沙も久々に見た霊夢さえも片手に大きなトレイと洋食を携えている。
お腹とか体重とかの心配を通り越して、命の心配をする春良だった。
「俺はこっちで5つほどやらないといけないことがあるらしいです」
「へぇ、もう何個か終わったの?」
「それが、まだ一つもなんですよね…」
「……ま、頑張りなさい。困ったことがあったら頼っても良いわよ」
「お、珍しいな。だらけるのが仕事の霊夢がそんなことを言うなんて」
五月蠅いわね、と二人は更なる食材を求めテーブルへと人を縫って進み、春良の視界から消えた。
「……あ、上海……?」
それと入れ替わりにふよふよと飛んできた人形が春良の前で制止する。
だが、いつもの上海と違う。
「……どちら様?」
「つまらないわね…。ひっかからないなんて」
ひゅんっ、と人形が飛んでいった方を見ると、
「あ、アリス
「人が多い所は、苦手なんだけど…」
七色の人形遣い、アリス・マーガトロイドとその横に照れ顔のいつもの上海がいた。
「この子の調子はどう?」
「全然大丈夫。ものすごく助かってるぞ」
「そう。良かったわね」
アリスが隣の上海を撫でる。
上海は人形とは思えないほどの笑顔を見せると、春良の肩に座った。
「それじゃ、帰るまでに返して頂戴」
「あ、どこ行くんだ?」
「図書館よ。ここには役に立つ本があるみたいだし」
「魔理沙が結構持ってると思うぞ?」
「魔理沙の家にある本は全て読んだわよ」
「……魔法使い同士、仲がいいんだな」
ぼそ、と呟くような声に、歩き出していたアリスが勢いよく振り返る。
「べ、別に、魔術の本があるから行くだけで、いつも魔理沙の家に行ってるわけじゃないわよ?」
「でも、仲良くないと全部読むほど行かないだろ…?」
一日で約30冊持って行くほどの大泥棒だ。
少ない日数で消費するのなら、明らかに速読すぎるだろう。
「ま、まぁ……そうね。仲、良いのかも知れないわね…」
「……?……顔、赤いぞ?アリス、大丈夫か?」
顔をのぞき込もうとすると、隠され、離れられる。
「貴方と話すのは疲れるわ。それじゃ!」
何体かの人形を連れて、人形よりも人形の様に美しい人は去っていった。
「俺、何か変なこと言ったか…?」
上海に聞くが、上海は察してあげてくださいと言うような視線と表情をするのみで、明確な答えは得られなかった。
「それにしても…。確かに人が多すぎるな…」
実のところ、こうなったのは春良本人のせいなのだが、本人は何故か気づいていない。
「上海、アリスの所行ってこいよ。久しぶりだろ?顔見たの」
「…………」
いいの?と首を傾げる上海に、いいよいいよと頭を撫でる。
嬉しそうに微笑んだ後、上海はアリスが消えた方へ飛んでいった。
「さ、て、と……」
アリスと同じで、春良も人混みが好きな方ではない。
ふう、と一息はいてから、春良は少し歩いたところにあるテラスへと足を伸ばした。
普通に言うとベランダ。
夜風が心地よい。
「……ふぅ…」
こちらに来てからもう何日も経つ。
最初こそとまどいはしたが、なんとかやっていけそうだと春良は直感で思っていた。
「ハールっ!」
「うぉっ!フラン!?」
背中の衝撃に軽く吹っ飛びながら、春良は金髪サイドテールの吸血鬼を見つめた。
「ど、どうした?フラン」
「え?呼んだの、ハルでしょ?」
「呼んだ?俺がか?」
「うん。昼間だったけど、その時はお姉様とかくれんぼしてたから…」
昼間、と言うと魔理沙と争っていた時間帯だろうか。
「いや、呼んだ覚えはないけど…」
「そうなの?じゃぁいいや」
「どこ行くんだ?」
「お姉様の所ー!」
パタパタと小さく羽ばたきながら姿を消したフラン。
春良はまた夜空を見上げ、息を吸う。
「……何をしてるんですか?」
カツ、と背後で誰かの足音が聞こえた。