東方春命録   作:Poteto305

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運ばれた先の桜を眺め・肆符

その人の形は、あまりにハッキリとしすぎていた。

先ほど拝見したような、曲線形の人の形などではない。

 

「……弓符『サジタリウス』…」

 

春良の手に顕現する蒼弓。

それと同時に、桜が姿を変えた。

 

「……だよなぁ…」

 

人型に、何かを手にしている。

とても、見慣れたソレは明らかに、

 

「あいつ、どこからどうみても、俺だよなぁ…」

 

蒼弓、もとい桜弓、サジタリウスだ。

 

「悪いけど、先手必勝!」

 

何かをされる前に矢が3本桜の春良に駆ける。

桜はそれを横移動でかわした後、一気に近づいてきた。

 

「……なっ!?」

「…………」

 

ガッ、と弓の鍔迫り合い。

力押しで乗り切ろうとした瞬間、桜の後ろに5つほどの球体が浮かび上がった。

 

「弓引いてないだろ…っ!?」

 

ほぼ零距離からの射を後ろに飛んでかわす。

 

「親愛……!」

「……」

 

ババッ、と二人が同時に符を掲げる。

本物が負けるか。

その思いを、強く、強く。

 

「『華人小娘』ッ!」

 

弓を上に放り投げ、下、上、中、の三連蹴り。

全く同じ動きで、桜も足を合わせてきた。

 

「……ふっ…」

 

息を吐き、相手の足を取り、体を下にねじ込ませ一気に回る。

ドラゴンスクリュー。

拳法とは全く関係ない、奇策だ。

 

「……らぁッ!!」

 

バシン、と回せはしたが、受け身を取られ、逆に足だけで春良が回る。

背中を打ち付け、痛みを感じる前に大きく飛び上がった。

 

「サジタリウス……!」

 

投げた弓を取り空中から、

 

「……×伍(ファイブ)!」

 

ギャンッ、と空を駆ける星を、桜は弾き、逸らし、かわす。

かわされた事を確認した上で、春良は着地後即ダッシュ。

弓を使った顔狙いの連続突きを放った。

 

(……っ、当たらない…!)

 

かすりはするが、ダメージには繋がらない。

一瞬気が迷った隙に、弓を払い飛ばされてしまった。

 

「……がっ…!」

 

そこから、防御の上からの延髄蹴り。

威力を殺しきれず、春良の体は10メートルほど吹っ飛んだ。

 

「……本当に、ついてねぇなぁ…」

 

ゆっくりと立ち上がり、口を拭う。

そして、春良は『奥の手』を取り出した。

 

「……サジタリウス」

 

その一言で、遠くに横たわる弓を手に取る。

 

「壱、足踏み」

 

すっ、と弓を持ち、足を開く。

 

「弐、胴造り」

 

重心を体の真ん中に置き、

 

「参、弓構え」

 

弓を持つ手に力を込め、桜を見定める。

変なところで真面目なのか、姿勢は美鈴のまま、待ってくれている。

 

(いや、初めてだからか。向こうもこれはコピーできてないんだろ…)

「四、打越し」

 

ゆっくりと弓をもちあげ、

 

「伍、引分け」

 

ギリッ、と弓を引き、狙いを定めた後、

 

「六、会」

 

固め、ほんの少しの時間と鼓動の後。

 

「七、離れ」

 

ギャオッ!と一本の矢があり得ない速度で桜へと襲いかかる。

あまりにも速く、あまりにも大きく、あまりにも強いその矢を、桜は受けきることすらできず、

 

「八、残身(心)」

 

文字通り、『消し飛んだ』。

何秒かすると、周りを囲んでいた桜の壁が崩れ、夜空が映し出された。

 

「射法『弓道八節』。……思ってた以上に上手くいったな…」

 

いつしかパチュリーに貰った白紙のスペルカードは白紙ではなくなり、武器となった。

姿が綺麗であればあるほど、威力を増す一撃必殺のスペルカードだ。

 

「……時間掛かりすぎだけどなぁ…」

 

美しさを重視する弾幕ごっことしては正解なのだろうが。

正直、まともな実戦では使えそうにもなかった。

そして、流石に寝に入ろうかと歩み始めた直後。

 

『貴方じゃない』

 

声が響いた。

 

「……え…?」

 

夜空に反響しているかのような、脳に直接届いているかのような。

この桜の木が声を漏らしているような声だ。

 

『私が会いたいのは、貴方じゃない』

「……会いたい人…?」

 

一応、無駄だと分かっていながら辺りを注意深く見つめる。

 

『私は、その人と宴会を開くの』

「……だから、その人って…」

『ずっと、まってるの』

 

ブァッ!と風が舞う。

春良は思わず腕で顔を覆い、風が過ぎるのを待った。

 

「声が止んだ…。……というか…」

 

後ろを振り向き、桜の木を見上げる。

 

「満開じゃ、ない……?」

 

その大木は、怪しくも綺麗な桜を満開に咲かせていたはずだったが、今現在はほぼ葉しか見えない。

 

「……なんなんだ、ここ…」

 

冥界。

 

生命に終わりを見つけた者が立ち寄る場所。

ならば、生きている自分は何なのか。

半分霊体の妖夢。

完全に霊体の幽々子。

 

「……諏訪子。俺、帰りたい…」

 

聞こえるはずもない声を漏らし、春良はとぼとぼと歩き出した。

使命を、果たさなければならないから。

 

 

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