光の、中。
春良は西行妖の前にいた。
(……?)
いつしかと同じような状況を、飲み込む事が出来ず、辺りを見まわすと。
「あらぁ、綺麗な桜ね~」
いつもと同じの笑みを見せる幽々子がそこにいた。
(幽々子さん!)
「けど、満開じゃないのが残念ねぇ」
やはり声は届かず、幽々子は西行妖を撫でる。
すると、
『満開、見たいかしら?』
「あら?どちら様?」
『満開が見たいのなら、春を集めて。そうすれば、華は開くわ』
「そうなの?それじゃぁ満開になったら一緒に宴会を開きましょぉ?」
全く臆さない幽々子に驚きつつ、春良はその状況を見つめる。
2つの声の行く末を。
(……ん…?)
『宴会?』
「そぉよ、宴会。皆で飲んだり騒いだりして、きっと面白いわぁ~」
声が、何故か2つに聞こえない。
同じ人が喋っているような感覚を、春良は感じていた。
『それはいいわね』
「えぇ。私も、この桜を満開にするから、まっててねぇ?」
『……待つわ』
「いいこいいこ~」
まさか、と春良は息を呑む。
幽々子の周りには、ふよふよと浮かぶ霊体がある。
つまり、今、幽々子は霊体だ。
「それじゃぁ、約束しましょ~」
『約束?』
「そうよ。私は頑張って春を集めるから、貴方は頑張ってこの桜を咲かせて欲しいの」
『…………』
「やくそくよ?」
『……うん。約束』
ならば、体はどこにある?
その精神が宿っていた肉体は、どこへ埋めた?
『でも、約束は意味がない』
「あら、どうしてぇ?」
『だって…』
西行寺家の人々が眠る桜の木の下。
ならば、幽々子の体は。
『貴方は、私だから――』
答えは、これだ。
その事実を把握した瞬間。
春良の意識は再び光へと消えた。
光から回帰した春良は、自分の体の変化に気がついた。
「傷が、消えてる…?」
『……?』
バッ、と立ち上がり、腹をまさぐるが、完全に傷が消えている。
まるで、奇跡でも起きたかのように。
「1回……残ってたっけか…」
忘れられていたストックが、完全に消えた。
早苗に、奇跡に感謝を。
『貴方とは、約束をしていない!』
「約束ですか?……ふざけたことを言わないでください!」
相手が幽々子ならば、敬語を使うべきだ。
例え、ただの肉体であっても。
「皆で!そう言ったじゃないですか!」
桜幽々子の体が、固まる。
『……!!』
そして、その体は姿を変え、大きな桜の巨人となる。
「逃げる気ですか…。こうなったら、嫌でも皆で宴会しますからね!」
この桜を崩して、宴会。
皆、文字通り皆を集めて、馬鹿騒ぎをすれば、きっと西行妖、もとい幽々子も落ち着く。
「弓符『サジタリウス』っ!」
そう信じ、春良は弓を引いた。
「……ふっ…!」
だが、解せない事がいくつもある。
今回の事が肉体と精神の約束によっての出来事なのなら、ここまでの大事になる必要がどこにあったのか。
「親愛…」
満開の西行妖、桜人達はきっと肉体の幽々子の力。
だが、それなら、妖夢が必死に止めようとした理由は?
「『華人……っ!?」
考えながらの戦闘だったせいか、桜巨人の手がすぐそこに迫っていたことに春良は気づけなかった。
大きく体を反らすが右手を払われ、親愛の符が宙に舞う。
「しまった!」
ひらひらとゆっくり落ちてくる符を見ながら、巨人の足を射る。
そんな攻撃では止まらない巨人の攻撃を、春良はとにかく走ってかわす。
「火力が全然足りないな…」
汗を拭い、巨人を睨みつける。
親愛の符は巨人の足元に落ち、取りに行くのは難しそうだ。
「なら、こいつでどうだ…?」
火力ならば、もう一枚の符がある。
「射法『弓道八節』」
攻撃されるが先か、するが先か。
ゆっくりと近づいてくる巨人との距離を、春良は慎重に測っている。
その姿を見ながら、春良は弓を持ち上げる。
「間に合え……」
ギリッ、と弓を引き絞る。
後は狙いを定め、会を持つだけ、と言うところで、
「っ!?」
巨人が、飛んだ。
「反、則、だろ……!」
狙いを大きく上に、光の矢を放つ。
風を巻き込みうねりを上げる特大の矢は、巨人の右足を容易く吹き飛ばした。
が、そんなことは関係無しに巨人は高く上がっていく。
「うぉぉ……っ!?」
巨人の体の範囲から逃げる事は出来ない。
親愛の符も使えない。
「サジタリウス×伍!!」
ドドドドドッ、と連続して的中する矢も、全く関係無しに巨人は最長点から一気に落ちてきた。
「――――!!」
目の前に広がる影と桜に、思わず春良は腕を目の前で交差させた。
「全く、貴方は危ない目に遭うのが得意なのかしら?」
ぴた、と巨人が宙で止まる。
「!?」
その次の瞬間には、驚きに包まれていた春良を、何かが押し飛ばす。
どこかで、何度も受けたことのあるようなこの突進は、
「……上海!?」
紅服の、上海人形だった。
上海はそのまま春良を巨人のプレス範囲から遠ざける。
安全な所まで来たところで、巨人が地面へと落ちた。
「な、なんでここに!?」
話を聞かずにとにかく抱きついてくる上海を引き離すと、誰かが春良の元へ歩いてくる。
その人物は、
「私が連れてきたのよ。……夜中に起こされて、肌荒れとかどうしてくれるのよ」
「……アリス!」
七色の人形遣い、アリス・マーガトロイド。
上海の生みの親だ。
「いろいろと聞きたいことはあるけど、まずはこの状況をなんとかするわよ」
「お、おう!」
あまりに、心強い味方を横に付け、春良はサジタリウスを手に取る。
「そういえば、どうやってこの中に…?」
「結解にしては外へ対しての密度が薄いのよ。紅白巫女のに比べたら簡単に開いたわ」
ひゅんっ、とアリスの回りを糸と人形が舞う。
ここから、反撃開始だ。