東方春命録   作:Poteto305

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ようやく訪れた平穏を糧に・伍符

結局も結局、春良は諏訪子に背負われ、魔法の森上空を飛ぶこととなった。

隣を飛ぶこあくまが、時々こちらを指をくわえて見つめていた。

 

「それで、何を買うの?」

「メモには、晩御飯の材料と……もう一枚のメモは、……薬?」

「何の薬なんですか?」

「いや、バッテンされてる。頼もうとして止めたのか…?」

 

ふわふわと上海が春良の肩に座る。

風が気持ちいいのか、上海は春良の頬に体を預け、手を振っていた。

 

「じゃあ良いんじゃない?晩御飯だけで」

「だな、ぱっと済ませるか」

 

スピードを少し上げ、諏訪子達は空を駆ける。

 

「あの、春良さん」

「ん?どうした?こあ」

「……向こうには、人間が沢山いるんですよね?」

「まぁ、人里だしな……」

「ちょっと、怖いです…」

「……」

 

悪魔と人。

やはり、違いがある人種では、『何か』が起きてしまうものなのだろう。

その『何か』が、今のこあくまの表情を生み出している。

その事実が、春良には痛い程に把握できてしまった。

 

それでも、こあくまは春良と人里へ行くことを、楽しみだと言っていた。

 

「大丈夫だって、俺も諏訪子も、上海だっているからな」

「……はい!そうですね!」

 

それに偽りはないと、信じたい。

ふと、諏訪子の高度が下がる。

下を見ると、いわゆる昭和時代の町並を覗くことができる。

 

「ここが人里か?」

「そうだよ。いつもここで買い物していくんだけど」

「……行くか」

 

外と里中の、明確な境界はないが、春良は何となくここからが人里だという境界線を越した。

 

「……ここにも、結界が…?」

「あれ?わかるの?」

「なんとなくだけど…」

 

こう、薄いゼリーのような、されどべたつくことのない壁を通り越すような感覚だ。

それもかなり薄い感覚だが、確かに春良は何らかの力を感じた。

 

「それは里隠しの結界だ」

「……ん?」

 

ふと、人里の中の方から、誰かが歩いてきた。

ミニチュアの家のような形の帽子を頭に乗せている女性は、どこか退屈そうに息を吐いた。

 

「旅の方か?すまないが、こちらにこのくらいの女の子は来なかったか?」

 

自分の腰より少し上辺りに手をやる女性を見た後、諏訪子以外の三人が一斉に諏訪子を見つめる。

 

「わ、私はそんなに小さくない!」

「確かに、その子ではないな。申し遅れたが、私は上白沢慧音。寺子屋で教えを説いている者だ」

 

神妙そうに一礼する上白沢慧音(カミシラサワ ケイネ)に、春良も慌てて一礼を返した。

慧音は辺りを見まわし、目当ての少女は居ないことを悟ると、また春良に向き直った。

 

「ふむ…一体どこへいったのやら…」

「その子が、どうかしたんですか?」

 

差し出がましいとは分かっていても、春良は口を出さずにはられなかった。

 

「いや、少しばかり気むずかしい子で、寺子屋を飛び出してしまったんだ」

「……諏訪子」

「なんとなく言いたいことはわかるけど……何?」

「俺、その子捜すの手伝うわ」

 

はぁ、と諏訪子のため息が春良まで届いたが、春良はソレを気にすることは無かった。

 

「助かるが……貴方は貴方で用があるのではないか?」

「買い物は、三人にお願いして大丈夫か?」

「正直買い物は一人で十分だし、別に大丈夫……」

 

と、そこまで言って諏訪子が気づいたことが一つ。

いつのまにやらこあくまと上海が春良の隣にいる。

 

「ちょ、ちょっと、貴方も買い物を…」

「ひ、一人いれば大丈夫なんですよね?」

 

上海に任せるのは酷というもの。

となると、のこるは二人。

 

「「…………」」

 

何秒か空気が止まり、慧音が心配そうな顔をしだした瞬間。

二人は大きく手を振り上げた。

 

「「……じゃーんけーん!」」

 

 

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