東方春命録   作:Poteto305

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ようやく訪れた平穏を糧に・終符

「……すまないが、そっちの方を頼む。見つけたら合図を」

「はい!わかりました!」

「了解です」

 

かなり、とてつもなくかなり納得いかない顔して買い物へ行った諏訪子を頭に残しながら、春良は人里を駆けた。

 

「それじゃ、こあはそっち頼んだ」

「はい。気を付けて下さい」

 

慧音の話を聞くと、少女は青い服に、氷の翼、そして、極めつけはとても頭の悪い子だと言う。

最後のはただの悪評だと思うが、とりあえず春良は青色を中心に捜すことにした。

 

「…………いや、違うだろ」

 

すると、家と家の間の路地裏。

大きな木樽から、逆さに足が二本生えている。

 

「……いやいやいや、それはさすがに馬鹿すぎるって…」

 

上海が春良の肩で息を呑む。

隠れているつもりなら、頭隠して尻(足)隠さずになってしまっている。

ないないない、と言いながら春良はその足を掴む。

 

「失礼!」

 

ばっと引き抜くと、中から出てきたのは、小さな女の子だった。

氷の翼、青い服、水色の髪。

まさに、としか言いようのない女の子だった。

 

「だ、だ、誰よアンタ!はなしなさい!」

「もしかして……君がチルノって子?」

「あ、アンタ、あたいの事知ってるの!?」

 

とりあえず、慧音が捜していたチルノという少女を降ろし、春良はチルノの視線に合わせ、しゃがみ込んだ。

 

「慧音さんが君の事を捜してたんだ。寺子屋に戻ろう」

「やだね!だってあたい、天才だもん!」

「……弓符『サジタリウス』」

 

春良は蒼弓を手に取ると、空へと一本矢を射る。

これで慧音とこあが来てくれるはずだ。

 

「な、なによ!このあたいとやろうっての!?」

「え?いや、そんなつもりは…」

 

手を前に出して誤解を解こうとするが、チルノはそれよりも早く手を出した。

ヒョォ、と空気が一瞬冷えたかと思うと、春良の足元に氷柱が突き刺さった。

 

「!?」

 

氷の翼からしてもしやと思っていたが、正解らしい。

チルノは氷を扱う事ができるようだ。

 

「かっこよくてきれいな、あたいの弾幕をくらいな!」

「……っ!」

 

氷が飛び交う。

周りに人がいないのが幸いか、傷つけられるのは家の壁のみだった。

 

(というか、この弾幕、規則性がない…?)

 

乱れ撃ちというか、乱射というか。

まさに、頭の悪い子の攻撃の仕方だ。

 

「な、なんであたらないのよ!」

 

危ないとはいっても、これでも春良は強敵と戦ってきた。

このくらいの薄さの弾幕であれば、なんとか気合いで避けることができた。

 

「凍符『パーフェクトフリーズ』っ!」

 

バララ、と乱れ撃ちされる弾幕。

先ほどより厚い弾幕だが、春良は同じように避ける。

が、

 

「……止まった…?」

 

ピタ、と空中で弾幕が固定される。

弾幕に周りを包まれて動けない春良に、チルノは大きく笑った。

 

「びっくりしてるわね!これは止まった後にバラバラに動き出すって言うあたいの最強技なのよ!」

(なるほど……、これは凍ってるのか)

 

自分からベラベラと解説をする辺り、相当のバカなのだろう。

良いスペルなのに、残念だ。

 

(動き出した瞬間に、一気に攻めてみるか…?)

「いっけぇ!!」

 

キン、と弾幕がそれ以前の進行方向を完璧に無視して散開し始める。

春良はその密集地帯からなんとか抜けだし、チルノの腕を掴んだ。

 

「捕まえた!」

「は、離しなさいよ!」

「春良さん!」

 

戦闘終了というナイスタイミングで、こあくまが慧音を連れてやってきた。

そして、春良がチルノの腕をつかんでいる姿を見て、慧音が息を飲む。

 

「離しなさいって、言ってんでしょ!!」

「旅の方!手を離せ!」

「え?…………っ!?」

 

カキン、と空気が凍る音がした。

チルノを掴んでいたはずの春良の右手が、手首までにかけて紫色に変色している。

 

「ぐっ……!?」

 

同時に襲いかかる刺すような激痛。

凍傷のようだが、手は動かないし、明らかにそれ以上の重態だ。

 

「チルノ!何て事をするんだ!」

「あ、あたいは悪くないわよ!コイツが悪いの!」

 

こあくまが駆け寄って手を握ってくれるが、あいにく、それを感じることすらできなかった。

 

「……まずいな…」

 

あれから数分。

慧音が教師をしているという寺子屋まで連れてこられた春良とこあくま、上海は、慧音の診察を受けていた。

 

「手が丸ごと凍っている。チルノの力だったら、このまま腕をもっていかれるな…」

「ど、どうにかならないんですか!?」

「手を活性化させることができれば……。……しかし…」

「方法がないんですかね…?」

 

もう痛みも消えた手をぶら下げながら、春良は慧音に尋ねる。

すると、慧音はなんとも言いにくそうな表情で。

 

「無いことは無いんだが…。それだと妹紅が…」

「あたしがどうかしたのか?」

 

がたん、と部屋の扉が開かれる。

皆がその人物を見ると、本人はなんとも苦い表情をした。

 

「……っと、来客中だったのか?こりゃ失礼したな」

「妹紅、ちょっと頼みがあるんだが……」

「ん?どうした?改まって」

 

慧音がその女性に耳打ちすると、女性はとてつもないほどに嫌な顔になった。

なんでアイツの所に、だとか案内だけでいいんだ、だとか口論が微かに聞こえる。

 

「……そこの人間、名前は?」

「い、戌井春良です。外来人で、こっちのはこあくまと上海です」

「そうか。あたしは藤原妹紅。……黙ってあたしについてきてくれ。医者まで連れて行く」

「あ、ありがとうございます!」

 

長い白髪に、白のシャツに紅く大きめの肩下げ吊し付きズボン。

ズボンには御札のようなものが何枚も貼ってある。

それからすぐに出て行った藤原妹紅(フジワラ ノ モコウ)に、春良達は慌ててついていった。

 

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