東方春命録   作:Poteto305

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「君、お使いかい?偉いねぇ」

「…………」

「お嬢ちゃん可愛いからこれサービスだよ!」

「……ありがとう…」

「あんまり遅くなると親が心配するから、早く帰りなさいねぇ」

「……うん」

「迷子?お母さんとお父さんはどこにいるの?」

「……いないし、迷子じゃない」

「こらこら、子どもが無理しちゃだめだよ」

「……私、神様なんだけど」

「あぁ、そうか、神様ごっこならお家にかえってお母さんと…」

「あぁ、もう!私が何百年生きてると思ってるの!これだから一人はいやなのよっ!!」




少年は、永遠の月を眺める
少年は、永遠の月を眺める・壱符


「…………」

 

あれから5分ほどしか時間は経っていないはずなのに、春良達の周りは全く違う景色に変わっていた。

 

「……妹紅さん。ここは…?」

「迷いの竹林。ここの道を把握してるのはあたしぐらいなんだよ」

「……詳しいんですか?」

「まぁ、ここに何年もいるからな」

 

上海とこあくまはこういう雰囲気が苦手なのか、春良の左腕にしがみついている。

そして、もう一人。

 

「チルノ、大丈夫か?」

「な、何いってんのよ!サイキョーのあたいが怖いわけないじゃない!」

 

罪悪感からなのか、チルノもこの一行に加わっていた。

どう考えても歩きづらい上に、右腕の感覚が少しずつ無くなっていっている。

 

「……っ」

 

ときおり来る痛み。

最初は指先が動かない程度だったのが、今では手首まで凍ってきている。

 

「……一応言っておくケド」

「は、はい?」

「これから連れて行くところ、永遠亭の奴らには、あたしに案内されたって言うなよ」

「……わ、わかりました」

 

妹紅の少し仏頂面な顔を見て、春良は体を強張らせる。

心底嫌がるわけでもないが、仕方がないな程度の表情だ。

 

「あれだ」

「あれが、永遠亭…?」

 

いきなり竹林が消えたかと思うと、目の前には白玉楼とはまた違う日本風の家が堂々と存在していた。

 

「それじゃ、あたしは帰る。後は自分で何とかしろよ」

「あ、はい。ありがとうございました」

 

妹紅は春良とすれ違い、竹林へと歩き出したかと思うと、ボゥ、と火の粉になって消えてしまった。

 

「よ、妖怪だったのか…?」

「い、いえ、人間の気でしたけど…」

 

春良の疑問をすぐにこあくまが解いてくれる。

それと同時に、人間の定義が良く分からなくなってきた春良だった。

 

「……行こう」

「お先っ!」

「あ、こらチルノ!」

 

竹林を越えて怖さが消えたのか、お調子者が一人門を飛び越え永遠亭へ飛んでいった。

 

「俺達も行こう!上海、こあ!」

「はい!」

 

失礼をして治療を断られるわけにもいかない。

春良達は永遠亭の門を開いた。

 

「失礼しまー……」

「春良さん!」

 

その瞬間、何故か、本当に何故か小さめの丸太が春良に向かって転がってきた。

しかし、それに対しての上海の反応は素早く、丸太を弾幕で破壊した。

 

「あ、ありがとう。上海」

「あれ!?レイセンじゃないウサ!?」

 

続いて聞こえてきた声に視線を向けると、そこには兎がいた。

 

「もしかして客人ウサ…?こ、これはまずいことしたウサ…」

 

丸いモコモコ兎耳に、兎の尻尾を生やした、兎の娘がそこにいた。

 

「もしかして今の、君が…?」

 

春良が恐る恐る聞くと、兎の子はビクッと震えてこちらを向いた。

 

「い、いや?知らないウサ」

「そっか、ならいいんだ。俺ここにいる医者に用があるんだけど…」

「い、いいんですか?明らかにその子の仕業だと思いますけど…」

 

こあくまの指摘に春良は、でも違うかも知れないだろ?と笑顔を見せた。

呆れつつも、こあくまと上海は兎の子に視線を送った。

 

「医者…。あ、お師匠様ウサか」

「えっと、案内してくれるかな?」

「仕方がないウサね」

 

てぽてぽと歩いていく兎の子についていき、永遠亭へと入る。

まさに日本というか、説明するほどでもない感じの家だ。

 

「俺、外来人の戌井春良。こっちがこあくまで、こっちが上海」

「わっちはてゐウサ。ここにいる兎達をまとめてるウサ」

 

兎のリーダー、てゐ(テイ)はふり返らず廊下を歩きつつ返答する。

背の高さはチルノと同じくらいだろうか。

 

「そういえば、ここに女の子がこなかったか?羽が氷でできてる子なんだけど…」

「チルノウサか?あいつだったら見てないウサ」

「そっか…」

 

ぴた、とてゐが止まる。

目の前に、大きな四枚伏間があった。

 

「ここに居るウサよ」

 

春良の心の準備も待たず、てゐは伏間を開いた。

 

「お師匠様、お客ウサ」

「あら、ありがとう。てゐ」

 

その伏間の奥。

椅子に座る一人の女性の姿が目に入った。

 

「……診察希望かしら?」

 

振り向いたその人は、兎に角美しかった。

赤と青の二色で彩られた服に十字つきの帽子。

なるほど、見た目だけで信用できそうなのが分かった。

 

「あ、は、はい。お願いします」

 

言うと同時に、春良は右手を差し出す。

右手を手に取り、ほんの少しだけ眺めると、薬師はにっこりと笑って、

 

「このままだと、もげるわよ」

「「もげる!?」」

 

こあくまと春良の声が重なる。

にっこりとした笑顔のまま薬師は淡々と告げる。

 

「今後の状態と言っては、まず凍って、腐る間もなく砕けもげるわね」

「砕けもげる……」

 

げんなりする春良をこあくまが優しく包む。

顔を上げたこあくまが、薬師に問いただす。

 

「ち、治療法は…ないんですか?」

「あるわよ?」

「あるんですか。良かったぁ…」

「そんなもの、私が作った薬に掛かれば一網打尽よ」

 

腕もろとも一網打尽にしないかは心配だが、そこまでの自信なら大丈夫そうだ。

そう思った春良は、若干明るい声で告げた。

 

「じゃ、じゃぁ、その薬、頂いても宜しいですか?」

「無理よ」

「無理なんですか!?」

「薬を作る材料が足りないわ」

 

さっきはあるような口ぶりだったのに、今度は心配になってくる。

 

「そ、その材料は…?」

「分からないわ」

「……えと、それでどんな薬を?」

「主に腕を蘇生する薬ね。作ったことがないから、レシピもこれからだけど」

 

調合はレシピにおさめるのだろうか、と春良は疑問に思うが、それよりもたくさんの疑問が浮かぶ。

 

「つ、作れるんですか?」

「ええ、だってそれができるのが私だもの」

 

足を組み、薬師は更に淡々と告げる。

 

「この八意永琳、『あらゆる薬を作る程度の能力』の持ち主と言われているくらいだから」

 

自信満々に、足を組み替える八意永琳(ヤゴコロ エイリン)その人は、すぐに机へと向かう。

おそらく、調合書を書いているのだろう。

 

「その腕も明後日までは持つはずよ。今日はとにかく待ちなさい、明日になったら材料を揃えるから」

 

そう言った永琳の背中を眺め、じゃぁ今日は帰るか?てきな雰囲気になった瞬間、廊下から騒がしい音が聞こえてきた。

音はだんだん近づいてきて、伏間を開いた。

 

「師匠!てゐはどこですか!?」

「優曇華、騒がしいわよ?」

 

それだけなら良かった。

伏間を開いて入ってきた子は春良と同じくらいの年頃の女の子で、てゐとは違った長いウサ耳を装着していた。

 

「ぁ…………」

 

それだけなら良かった。

そのウサ耳の子は、なぜかスカート一枚で上半身裸だったのだ。

 

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