「それじゃ、あそぼ!ハル」
「おぉし、何して遊ぶ?」
上海の震えに気づかず、春良は一歩フランドールに近寄る。
その時だった。
「……ん?」
何かを、踏んだ。
春良はそれを拾い上げ、見つめる。
白い、棒みたいな……。
「…………っつ!?」
骨だ。
「えぇっとね、それじゃぁ…」
思わずソレを放り投げ、春良はフランドールに向き直る。
「弾幕ごっこしよ!」
フランドールが、笑った。
さきほどの様な子どもの可愛らしい笑いではなく。
姉の様な笑いだ。
「お、おぉ、弾幕ごっこか。でも俺、あんまし強くな…」
ドゴン、と春良の足元の何かが砕けた。
砕いたのはフランドールの放った弾幕。
砕けたのは、紛れもない白い棒だ。
「――――!」
身の危険を感じ、大きく後退する。
「この前の『お人形』はすぐ『壊れちゃった』から…」
いまさら慣れてきた目に、フランドールの姿がはっきりと見えた。
ブロンドヘアに、紅い灼眼。
「ハルは、簡単に壊れないよね?」
背中から突き出る細い木の棒のようなものに、水晶体のような色鮮やかな宝石がぶら下がっている翼。
「弓符『サジタリウス』…」
「スペルカードも持ってるんだ!やったぁ!」
弓を持ち、フランドールに対してやや斜め向きに構える。
忘れていたが、
「……それじゃ、いくよ?」
この子も吸血鬼なのには、変わりないのだ。
「上海……」
肩にしがみつき、ガタガタと震える上海。
今回、上海は参加出来なそうだ。
「よし!遊ぼうぜ!フランドール!」
「フランで良いよ!ハル!」
半ばやけくそに、春良は弓を引いた。
「上海、部屋の隅に隠れてろ」
春良の呟きに、上海は首を振って肩にしがみついた。
なんとなく気持ちが伝わるその行動に、状況関係なく笑みがこぼれてしまった。
「何、笑ってるのっ!」
「…………っと…!」
飛び交う紅い弾幕を避け、フランに狙いを定める。
諏訪子の時も、子どもに向かって弓を引くのは抵抗があるが、弾幕ごっこでは死にはしないらしい。
「……ぁがっ!!」
もちろん、死にはしないだけだと、諏訪子に教わった。
右肩に被弾、激痛が春良を襲った。
「っ、上海!」
その衝撃で上海が離れてしまう。
すぐに上海も避けにはいるが、互いに被弾するのは時間の問題だった。
「上海!今そっちに……!」
上海の元へ走ろうとした瞬間。
壁を反射した弾が、春良の腹部に突き刺さった。
「……っ、かっ…!」
固い床をバウンドして転がる。
バスケットボールほどの弾一つで、妖怪の攻撃並の力だった。
「まだ、壊れないでね?」
壁に背中を打ち、息が止まった状態の春良に、フランが飛ぶ。
手を開いて、唱える。
「禁忌『レーヴァテイン』」
フランの手に、燃える剣のような物が握られ、それを躊躇なく振りかぶり、
(……ちょっ…と、待て…!)
「あはははははははははははっ!」
無邪気に笑いながら、振り下ろす。
ゴァッ、と熱風と破砕音が辺りを包み、上海は飛ぶことすら敵わなかった。
「……あれ?」
「……あ?」
にも関わらず、春良は無傷だ。
春良自身、斬りかかったフラン自身でさえも、驚きで体が止まる。
春良は、今自分に起きたのは何だったのかを、一瞬で考えた。
「……諏訪子様…!」
「何?早苗」
山の上の神社で、巫女、早苗は自分の力を感じ、諏訪子に声をかけた。
「今、紅魔館で『奇跡』がおきましたよ!」
「こ、紅魔館で!?春良、なにしてるの!?」
「分かりませんよ!と、とにかく…」
「うん!」
風と共に二人の体が浮き、一瞬後に早苗と諏訪子は紅魔館に向けて疾走した。
「あ、あれ?どこ行くんだい?二人ともー…」
一人残された神奈子は、飛んでいく二人の姿を見ながら、ため息をもらす。
「なんだい……。私ここの神様なのに…」
ばたーんと畳に倒れ込み、ばたばたと手足を叩きつけて、やがて疲れたように静かになった。
くぅぅぅ、と自分の腹の音に若干顔を紅くしながら、神奈子はまたばたばたと小さく暴れる。
「お腹、空いたねぇ……」
昨日、今日と口にしたのは酒のみで、神のお腹はカラだった。