東方春命録   作:Poteto305

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夜の後の朝を眩しげに見つめて・参符

 

「紅茶、飲みますか?」

「そんな綺麗なのはいらないよ。私はこれで十分だし」

 

萃香は瓢箪を傾け、喉を鳴らす。

あの中身は一体どうなっているのだろうか、と春良は興味を示すが、聞くのもなんだった。

 

「そういや、人間?」

「なんだ?」

「お前の能力、何かを集める能力だったりする?」

「……いや?」

「……あっれぇ…?なんかバラバラな何かが集まってるから、そうかなと思ったんだけど」

 

バラバラな何か。

おそらくそれは春良が無意識に借りている誰かの力なのだろう。

最も、それに気づくのは萃香ぐらいだったが。

 

「そっちの能力はどんなのなんだ?」

「私のは『密と疎を操る程度の能力』。集めたりばらけさせたりが主かなぁ」

「私は、『一度見たものを忘れない程度の能力』です」

 

やはり、能力というのは個性豊かなものばかりだな、と春良は思っていた。

自分のは、どこかずるい気がするが。

 

「……あ、私そろそろ出ますね」

「ん?何か用事?」

「はい。薬草を採りに行くんです」

「薬草?……萃(アツ)めようか?」

「いえ、私が採りに行かないと、受け取って貰えないかもしれませんし、お二人はここで待っててください」

 

すぐ戻りますから、そう言って阿求は伏間の向こう側へと姿を消した。

また、誰かがこける音がしたが、気にしてはいけないんだと思う。

そこからしばらくの間無言が続き、萃香が上海をいじり始めた頃、

 

「萃香って、どう阿求と知り合ったんだ?」

「お、気になる?」

「ま、まぁ……」

 

瓢箪を置き、上海を抱きかかえると、萃香は畳に転がって口を開いた。

 

「私は地上にいる数少ない鬼でね。……正直、忘れられた存在になってたんだよ」

「……うん」

「結構寂しくてね。ある日我慢出来なくてここにきたんだけど、すぐ鬼だってばれちゃったんだよね」

 

いや、あれは妖怪を見る目だったなぁ、と萃香は困り顔で語る。

 

「かなり、避けられて、周囲の視線の痛いこと。やっぱり止めておけば良かった。って思ったね」

「…………」

「そこで出会ったのが稗田だったんだよ。阿求よりも前の稗田だったけど」

 

自分の長い角をいじりながら、上海のリボンをぺしぺしと叩く。

 

「んで、いろいろあって楽しくなって、友達になったって訳」

「ちょい!?大事な所飛ばしただろ!?」

「ちょっと、こっ恥ずかしいんだよねぇ…。ま、とにかく、稗田一族は良いやつばかりだよ」

 

良い風に締め切られて、どこか不完全燃焼だったが、話したくないなら無理には聞くこともない。

そう思い、少し冷えた紅茶をすすろうとカップに手を添えると同時、風が吹いた。

 

シュザンッ、と春良達の目の前の庭に降り立った誰かは、息を切らしてこちらを向いた。

その人物を、春良は知っていた。

 

「……射命丸さん…?」

「鴉天狗?」

「良かった、人がいた……!」

 

バサッ、と大きく羽を羽ばたかせどこかへしまう。

縁側に手を置き、天狗は言った。

 

「お願いします。妖怪の山まで来てください」

「……いきなりだね。私達、人待ってるんだけど?」

「その人とは、阿求の事ですか?」

「……そうですけど…」

 

やっぱり、と息を呑む射命丸は、相当に焦っている。

初対面の時と比べて、余裕が全く見えないのだ。

 

「阿求が…妖怪の山へ入ってしまって…。本人は説明すればどうにかなると思っていたんでしょうけど…」

「……どうにかならなかった、ってわけ?」

「……はい。天狗は排他的な種族ですから、侵入を許した時点で、敵とみなされてしまうんです」

「だから、天狗じゃない私達に助けを求めてる…ってこと?」

「お、お願いします…!阿求は体が弱くて、何かがあったら…!」

 

そこまで言うと、急に射命丸が咳き込み、倒れた。

 

「ごほっ……! く、こんな、時に私は……!」

 

その顔はとても赤く、健康とは全く言えそうになかった。

 

「射命丸さん!?」

「……はっ……はぁ…!」

 

息も荒く、ふらふらと立ち上がる姿は、見ていて痛々しかった。

 

「もしかして、阿求の友達って…」

 

つじつまは、合う。

射命丸と阿求が友達で、阿求は体調を崩した射命丸のために妖怪の山へ赴(オモム)いた。

 

「阿求、幻想郷縁起を書いてるわりに、不用意だからねぇ…」

「……射命丸さん。俺が行きます」

 

その言葉に、萃香以外が目を開いた。

上海はそんな危ないところへ行くのはもう止めて欲しいと思ってだが、射命丸は、まさか人間が行ってくれると思っていなかったのだろう。

 

「あ、ありがとうございます…」

「辛いかもしれませんけど、妖怪の山まで運んでくれませんか?」

「はい。大丈夫です…」

 

靴を履いて外へ出て、射命丸の手を握る。

 

「上海は……」

 

ここにいろ。

そう言おうとしたが、上海の顔を見て、止めた。

 

「……一緒に、来てくれるか?」

 

その言葉に、上海は大きく頷いてくれた。

 

「待って待って、私も行く」

「萃香、いいのか?」

「いやぁ、楽しそうじゃん?」

「……」

 

まぁ、それでいいのならとてもありがたい。

万が一と言うこともあるし、頼もしい限りだ。

そして、全員が射命丸の体を掴んだことを確認すると、射命丸は大きく符を掲げた。

 

 

「……疾風、『風神少女』っ!」

 

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