東方春命録   作:Poteto305

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『使命』とは何かを悟り・伍符

(今のが奇跡か……!)

 

確かに感じた。

斬られた。燃やされた。

その感覚を覆い隠すかのように、暖かいなにかを、春良は感じた。

 

(本当にありがとう……早苗さん!)

 

胸の奥で、何かのストックが消えた感覚。

と言うことは、確実に今のは早苗による物だったのだろう。

 

「……避けられた…」

 

呆然と立ちつくすフランの視界から脱出し、上海を肩にのせる。

すぐに弓を引き、狙いを定めるが、フランの様子がどこかおかしい。

 

「……ハル、人間だよね?」

「勿論。正真正銘人間だな」

「すっごい!」

「え?」

 

炎の剣を携えたまま、フランは見た目相応のキラキラした瞳を春良に向けた。

 

「じゃぁ、これは?これは?」

 

きゃっきゃと嬉しがりながら放たれる弾幕は、先ほどの物とは比べものにならない多さだ。

 

「……っ!」

 

無理だ。

もともと手抜きでいっぱいいっぱいだというのに、増えた弾幕に対応できるはずかない。

 

(……ん…?)

 

ポーチから、何か紙が飛び出している。

まさかと思い、手に取ると、やはりそれは創作用白紙スペルカードだった。

 

「きたっ……!」

 

すぐ、すぐ思いつけ。

この状況を打開できるスペルを。

 

(…………っ駄目だ……!)

 

血が上った頭で、思考回路が上手く回るわけがない。

仕方なく避けにはいるが、さっき述べたとおり、避けきれる物ではなかった。

 

「……った…!」

 

右足に被弾。

それによって体勢を崩した春良に、紅い雨が横から降り注いだ。

 

「…………!」

「上海っ!?」

 

追撃をもらう瞬間、肩の上海が春良を突き飛ばした。

当然、庇った上海は、春良の変わりに雨に身を打たれた。

小さいのが功を奏したか、上海の傷は少ない。

しかし、それでももう動けないだろう事は、一度弾をもらった春良が一番良く分かっていた。

 

「せっかく…スペルカードもあるのに…!

「お人形、壊れちゃった?」

 

弾幕よりも、守れる力が欲しい。

 

(せめて、美鈴さん並の身体能力があれば……!)

 

自分は、守られてばっかりだ。

守ろうとした結果、守られ、助けようとした結果、失敗し、助けられる。

 

(そんな自分に、嫌気が差す…!)

 

そんな思いを反映したかのように、カードが輝く。

 

「弾幕ごっこ中って、カード追加はだめだった気もするけど…いいや、私もカード見せてないし」

「許可ありがとう!」

 

この符が、どんな効果を持つのかさえ、今の自分にはわからない。

けど、ただ、守りたい。

幼神を、人形を、自分の友達を。

その思いが、春良に符を叫ばせた。

 

 

 

「あと少し……!」

(諏訪子様がこんなに活発に動いてるなんて、いつぶりでしょう…)

 

風を切り飛ぶ現人神は、子の成長を見るかのような眼差しで諏訪子を見つめた。

 

「早苗!奇跡は!?」

「あっ、はい。……今、二つめの奇跡が起きました!」

「どんな奇跡なの!?」

「一度目は、命に関わる奇跡だったみたいですけど……」

 

今回の奇跡は、違う。

早苗は自分でも良く分からない力の流れに、驚きつつも集中し、探る。

 

「これは、能力の開花…?」

「ってことは、春良もう元の世界に戻れないの?」

 

幻想郷で能力に目覚めると言うことは、幻想の住人になってしまったと言うこと。

つまり、幻想から抜け出ることが出来なくなってしまう。

その事を知っている諏訪子は、心配しつつも、どこか嬉しそうにそう言った。

 

「多分、そうだと思いますけど……」

「なんでもいいや!急ごう!」

「は、はい!」

 

さらに加速する神を追いかける早苗。

紅魔館はもう目と鼻の先だ。

 

 

 

「親愛『華人小娘』!」

 

唱えた瞬間、春良は自分の体が軽くなった感覚を覚えた。

いける。

目の前に迫る弾幕を見て、何故かそう思えていた。

 

「体が……、軽いっ…!」

 

ひゅんっ、と頬ギリギリを通っていく弾幕を見ても、恐怖が出てこない。

むしろ楽しいくらいだ。

 

「め、めーりん…?」

「美鈴さん、がどうかしたのか?」

 

第一波をかわしきり、フランが美鈴の名前を呟いた。

春良も、弓を片手に立ち止まり、何とも言えない高揚感に包まれていた。

 

「めーりんみたいな動きだったよ!ハル!」

「美鈴さん?俺が…?」

 

美鈴の身体能力。

たしかに欲しいと思っていたが、簡単に手に入って良い物ではない。

 

(スペルカードって、そんなこともできるのか…)

 

たたん、とステップを踏んで、弓を引く。

まだまだ、春良もフランも遊べそうだ。

 

 

 

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