東方春命録   作:Poteto305

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萃められた人々は早々に散り・終符

「気をつかわれたよな…?」

 

去り際の永琳の笑顔を思い出し、少し申し訳なくなる。

サジタリウスを符に戻し、もう一度神社を見る。

 

「結構騒がしくしたけど皆起きないもんだな…」

 

それこそが幻想郷の特徴とも言える。

それが薄々と春良にも身についていっているあたり、春良も幻想郷に馴染んだということだろうか。

 

「どうかしら?使命の方は」

 

ふと、声が聞こえた。

賽銭箱の近く、小さな蝙蝠羽がパタパタと揺れる。

 

「あ、レミリアさん。……起こしましたか?」

「まぁ、少しばかり外に来たくなっただけよ」

「……はぁ。それで、なんで屋根の外へは出ないんですか?」

「お嬢様は吸血鬼ですので、日の光は毒なんです」

 

突如、レミリアの隣に日傘持ちの咲夜が現れる。

日光を防げて満足なのか、レミリアは一歩『外』へと歩き出した。

 

「まぁ、使命が無理そうになったらこっちに来てくれてもいいわよ。フランが喜びそうだし」

「……か、考えときます」

 

その言葉で会話は終了だと思われたのか、レミリアと咲夜は小さく空を飛ぶ。

 

「それじゃ、また」

「はい。よろしくお願いします」

 

ふわ、と数多の蝙蝠になって散らばったレミリアに、少々驚いた顔の咲夜が慌てて日傘を届けに行った。

 

「……大変そうだなぁ…」

 

使命を果たす自分とどっちが大変だろうか、と考えるが、一瞬でメイドの方が大変そうだと結論付けた。

日数が全く違うのだから、当たり前だが。

 

「あらぁ、早いのね?」

「幽々子さん。……起こしましたか?」

「いえ、私が起こしたんです。ほおっておくと、起きることがないでしょうから」

 

少々疲れた様子の妖夢が幽々子の後ろから現れる。

言いすぎよぉ、とにこやかに笑う幽々子に、春良は苦笑いで答える。

 

(本当に起きなそうだなぁ…)

 

失礼なので、もちろん口に出しては答えないが。

 

「ところで、あなたも出てきたらぁ?」

 

くるり、と優雅にその場で半回転し、幽々子は後ろを見る。

春良も習って見ると、そこにはおずおずとした『幽々子』がいた。

 

「……あ、桜の…」

「……そ、その節は、ありがとう」

 

小さくこちらへと歩み寄り、小さく頭を下げる『幽々子』は、とても隣にいる幽々子と同一人物だとは思えない。

 

「……その…」

「はい?」

「……今度、うちでも宴会をするから…来てくれる…?」

「えぇ、もちろん」

「――――!!」

 

できるかぎりの笑顔で言うと、『幽々子』は息をのみ、がっと妖夢にしがみついた。

 

「きて……来てくれるって、ようむ…!」

「あー、はいはい。良かったですね…」

「前も言ったけど、なるだけ大きなものにしたいから、もう少しかかりそうなのよぉ」

「……間があるときだけでも、手伝いに行きましょうか?」

 

社交辞令のような提案をすると、妖夢にしがみつく『幽々子』はまた息をのんだ。

 

「て、てつ、手伝いに、来るって……!」

「あー、はいはい。良かったですね…」

「大丈夫よぉ。お客様には、お楽しみにしておきたいし」

「それじゃ、楽しみにしてます」

 

軽く交わされた言葉に、春良は頷き、幽々子は笑い、『幽々子』は落胆し、妖夢は呆れた。

 

「それじゃ、またその時に~」

 

バッ、と扇が開かれたかと思うと、春良以外の三人を蝶が包み込む。

そして、その隙間から、

 

「あの……!」

「は、はい?」

「助けてくれて、あ、ありがとう…!」

 

『幽々子』が顔を出して言う。

正直、喋るまでどっちかわからないのが難点だ。

 

「いつか、私と一緒に、お花見――」

 

シュン、と言葉の途中で蝶が消える。

残ったのは、桜の花びらと、ほのかな香りだけだった。

 

「……戌井さん…。どなたかいらっしゃったんですか…?」

「あ、阿求。大丈夫だから、寝といた方がいいぞ?」

「いえ…、もう、だいぶ良くなりましたから…」

 

「どーも!文々。新聞ですっ!」

 

シュザン、とその手に一部新聞をもった烏天狗が風と共に舞い降りた。

 

「射命丸さん。大丈夫でしたか?」

「えぇ、まったくもって大丈夫ですよ。ありがとうございます」

「……文さん…?その新聞は…?」

「あ、これ?見てよ、阿求。春良さんも」

 

新聞を受け取り、広げる。

『鬼と人の大喧嘩!崩山!怪力乱神!』と書かれた見出しがまず目に入る。

そして、その下に『女殺しの外来人、戌井春良襲来!』とも書いてあった。

いつの間に撮ったのか、以前早苗と一緒に写ったものに加えて、数々のツーショット付きだ。

だがまだ記事は出来ていないようで、写真だけだ。

 

「…………射命丸さん…?」

「はい?あ、それですか?良い写真ですよね。自分でも良い感じに撮れたと思うん――」

「弓符『サジタリウス』ッ!」

「――『風神少女』!」

 

一陣の風となった射命丸は、一瞬でその場に何枚かの羽だけを残して消えた。

相変わらずの最速だ。

 

「……はぁ…。いったいいつの間にこんな写真を…」

「…………」

「……阿求?どうかしたのか?」

「え、あ、いえっ!なんでもありませんよ?」

 

新聞に載っている写真を眺め、ふと意識を奪われる。

 

(この写真、焼き増しとかできないんでしょうか…)

「できるよ?欲しい?阿求」

「わ、あぁ!?ああ文さん!?」

「今度持ってくるわよー」

 

まさに嵐のように現れては消える射命丸。

その姿に、阿求も春良もため息しか出なかった。

 

「……それじゃ、手伝いに行くか」

「あ、ありがとうございます…」

 

一夜分の遅れを取り戻すため、春良達は新聞を置いて歩き出した。

そこに写っている春良の写真。

それは、春良だけではなく、まだ足りない『皆』での宴会写真だった。

思い出として、欲しいと思うのは当然の一枚だ。

 

何時撮られたのかは、天狗のみぞ知る。

 

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