東方春命録   作:Poteto305

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香りはそれでも咲き誇る事を知り ・弐符

 

「しかし、これは『風雨』じゃなくないか?」

「そっちが好みならそうするけど…。全盛期ならこの森消えるよ?」

「全盛期?」

 

魔理沙の不思議そうな声に、諏訪子は小さくうなずいた。

 

「うん。信仰が集まってるときの事。神様の力なんて信仰ありきだからね」

「ということは、賽銭がないと弱くなるのか?」

「ま、まぁ、極端な話そういうことかな…」

 

なら、霊夢のとこの神様は人以下だな、となかなかに失礼なことを言う魔理沙。

 

「まぁ、どちらにしても助かったぜ。これで茸も…………、あ」

「……どうした?魔理沙」

「……いや、マジックアイテムを作るのに必要な材料は茸だけじゃなかったぜ…」

 

面倒だ…。とぐったりうなだれる魔理沙は、どこか助けたくなるような風貌だった。

そして、勿論この男はそうする。

 

「な、何が必要なんだ?」

「あの、背の高い太陽によく似たやつだ」

「太陽?なにそれ。向日葵?」

「そう、それだ。どうしても必要なんだが、私は茸の様子を見とかないといけないしなぁ…」

 

困ったように箒をつかむ魔理沙。

春良と諏訪子は、少し目を見合うと、小さなため息と共に口を開いた。

 

『太陽の畑って所にたくさん咲いてるはずだ。頼んだぜ』

 

「……なんで私がこんな事を…」

「ま、まぁ、たまにはいいだろ?」

「……はぁ、春良がいなかったらもう帰ってるからね?」

 

春良はその言葉の意味がわからず、諏訪子に背負われたまま首をかしげる。

 

「太陽の畑ねぇ…。名前くらいしか聞いたことないけど」

「誰かが作ってるところなのか?」

「わかんない。……ここだよ」

 

ふと諏訪子の飛翔が止まる。

下を見ると、そこには信じられない光景が広がっていた。

 

「おぉ……」

 

見渡す限りに咲き誇る花々。

その全てが太陽へと顔を向け、鮮やかな色彩を誇っていた。

 

「向日葵は、あれか」

 

地におり、春良よりも大きな向日葵の横に立つ。

 

「なんか、ここまででかいと一輪とは言いたくないな…」

「一本、だね。とりあえず、持って行こうよ」

「あぁ…。でも、いいのか?明らかに誰かのだと思うけど」

「いいのいいの。一本くらいなら怒らないって」

 

ぴょんぴょんと軽くスキップを踏みながら向日葵へ手を伸ばす。

そして、その手が触れるか否かのところで、

 

「……何かご用かしら?」

 

女性の声が聞こえた。

声に振り向く。

そこには、閉じられた傘を杖のように扱う一人の女性がいた。

 

「お客さんなんて久しぶりね。見学かしら?」

 

綺麗な女性だ。

にこやかな笑顔、おしとやかな佇まい、その気品。

まさに花のような女性だ。

 

「え?ちょっと一本もらっていこうかな、って、思って……」

「……そう」

 

ふっ、と儚く笑う女性は、もう何も言わなくなった。

そして、それを了承と取った諏訪子は、再度花へ手を伸ばす。

 

「それじゃ、もらってく……」

 

パシン。

伸ばした手が、女性の持つ傘によって払われた。

 

「触れないでくれるかしら?その子がかわいそうだわ」

「む。その子って、こんな花一本に……」

 

光った。

 

「ッ…………!?」

 

轟!と傘の先から放たれた光が諏訪子を飲み込み、轟いた。

勢いやまない光は、されど花を傷つけることなくどこかの岩壁を壊し、消えた。

 

「……花は一『輪』よ。間違えないでちょうだい」

「す、諏訪子っ!!」

「貴方も、この子を殺そうとするのかしら?」

 

チャキ、と傘が春良に向けられる。

魔理沙のマスタースパークを思わせるほどの力を放つその傘は、凶器以外の何でもなかった。

 

「い、いや、俺たちは、ちょっと向日葵を譲ってもらいたくて…」

「……そう」

 

ポーチの中の符に触れつつ、声を返すと、女性は先ほどからずっと笑顔のその顔のまま、告げた。

 

「……却下よ」

 

キュンッ、と傘の先端に光が集まる。

 

「……ッ、親愛…!」

「……!」

 

それを見た上海が、春良をかばおうと間に入った。

 

「……人形?メディスンの…?」

 

すると、なぜだかはわからないが、女性の表情が一瞬固まる。

そして、

 

「土着神『七つの石と七つの木』」

 

突如、地から生えた七つの柱と空から落ちてきた七つの大岩が女性の周りを囲んだ。

 

「へぇ、まだ生きてたのね」

「私に喧嘩売ったんなら、買わせてもらうけど…?」

 

ぴょこん、と諏訪子が無傷のまま地面から飛び出してきた。

その周りは、黒い気がうごめいている。

対する女性も、あわてる様子がない。

 

(これは……、まずいんじゃないか…?)

 

ごくり、と。

自分の生唾を飲む音が、妙に大きく聞こえた。

 

「……あなた達にどんな理由があろうと、この子達は一輪たりともあげられないわね」

 

ゴガン、と七つの石と木が粉砕される。傘を振るうだけでその威力。

鬼ほどではないのかもしれないが、それでも冷や汗を垂らさせるには十分な力だ。

 

「春良、下がって」

「……諏訪子、悪いのは俺らだし、ここは謝って逃げた方が良いんじゃないか?」

 

そう提案する春良の前で、諏訪子が手を広げる。

その動作を行った瞬間、もう一度傘から光が迸った。

 

「……私は喧嘩売られたんだよ」

 

パァン、といつの間にか握られていた鉄輪で、それをはじき飛ばす。

 

「ここで逃げたら、私(ミシャグジ)の威厳に関わるの!」

 

両手に握った鉄輪を高速で回しながら、女性に向かって突進する諏訪子。

 

「どうでもいいけど、花だけは傷つけないでほしいわね」

 

女性が手を空中で泳がせると、辺りの花が全て横へどいた。

意図して作られた戦場に、二人と一柱と人形が残される。

 

「どうでも良くなんか、ない!」

 

鉄輪と傘と言う色物武器がぶつかり合う音が響く。

援護するべきな否か、迷う春良の後ろで、小さな足音が聞こえた。

 

「……えぇっと、これは、どうなってんの…?」

 

不思議そうな声に春良が振り返ると、そこには人形のような少女がいた。

 

 

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