東方春命録   作:Poteto305

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香りはそれでも咲き誇る事を知り・肆符

 

「種!?勘弁してくれ、私は待つのが嫌いなんだ」

「なら、自分で行ったら良かったよね?」

「まぁ、普通より早く芽吹くみたいだし、とりあえず育ててみたらどうだ?」

 

まったく、花妖怪はケチだな、とぼやく魔理沙に種袋を渡す。

 

「そんなに早く萌えるのか?」

「まぁ、そうだけど。その言い方はなんか違和感を感じるぞ」

「ふう…。待つのも魔法の内と思うか…」

 

そう言ってしゃがむ魔理沙。

すると、右腕が引っ張られる感触がした。

 

「帰ろっか、春良」

「ん、そうだな」

 

服の袖を引っ張っていた諏訪子におぶさる。

肩に乗る上海は、何故か不機嫌そうだ。

 

「さて、帰ったら早苗さんのご飯が待ってるぞ」

 

まだ昼真っ盛りだが、そう言いたくなってしまったのだから仕方がない。

笑顔の上海と諏訪子と共に、春良達は『家』に帰ることにした。

 

「お。おぉ?もう芽吹いてきたぞ?……って、でかっ!ちょっと、でかすぎだぜ!?あぁ、止めろ!私の家に巻き付こうとするな!」

 

とある魔法使いの『家』は大変なことになっていそうだが、気にせず、振り返らずに諏訪子は飛翔を続けた。

 

「ただいまー」

「どこかに行ってらっしゃったんですか?」

「ちょっと、雨を降らしにねぇ」

 

満足気にそう言う諏訪子に、早苗は小さく笑みを浮かべる。

その笑みは、年相応とは全く言えない、まさに母親のような笑みだ。

 

「うん。私もスッキリしたことだし、もうこれからはのんびりしてよっかなー」

 

ぐでーん、と畳の上でうつぶせに倒れる諏訪子。

何故か、上海が羨ましそうにそれを見ていたので、

 

「上海もしたらどうだ?」

 

と冗談ながら声をかけてみると、予想外にも上海は畳にダイブ。

そのままごろごろと畳の感触を味わっていた。

 

(上海も可愛いところがあるなー…)

 

ほのぼのとそれを見守り、ふと、外を見る。

 

「次はどこに行こうか、って顔ですね?」

「……早苗さん。まぁ、そうなんですけど…」

「気長に行きましょうよ。私達も、まだ戌井さんと一緒にいたいですし」

 

一瞬、胸が高鳴った。

いやいや勘違いはいけないとすぐさま春良は頭を振る。

そして、ふと、庭先の小さな花に目がいった。

 

「太陽の畑に行ってみようと思います」

「太陽の畑…。あそこには危険な妖怪がいると聞いたことがありますよ?」

「そんなこと…ありましたけど。まぁ、失礼なことをしなければ大丈夫ですよ、きっと」

 

ふーむ、と腕を組む早苗を見る。

なにしろこの外来人は幾度となく死にかけては、運に人に妖怪に魔法使いに神に救われているのだから。

心配は、当然だった。

 

「止めはしませんけど…。万が一の為に教えておきたい技があります」

「技ですか?」

「術とも言えますね。外へ来てくれますか?」

 

言われるがまま、春良は頷いて外へ出る早苗に続いた。

そして、境内。

 

「それでは、戌井さん。弾幕を」

「はい」

 

右手を横に伸ばし、符を紡ぐ。

顕現せしは、蒼の真弓。

 

「弓符『サジタリウス』!」

「まず手本を見せますので、遠慮なく撃ってきて下さい」

 

そういうことなら、と春良は弓を引く。

キュン、と春良の周りに矢玉が精製され、それは春良が弦を離すと同時に、

 

「サジタリウス×拾(テン)!」

 

放たれた。

十本の矢が光り、緑髪の現人神へと走る。

早苗は迫ってくる矢達を避けようとはせず、息を吸った。

 

「…………っは!」

「っ!?」

 

矢が、一瞬でかき消された。

早苗から目に見えるほどの何かが轟き、それが矢をかき消したのだ。

 

「……ふう」

 

早苗を中心に迸った何かは、やがて形をなくして消える。

額の汗を拭き、早苗がまた笑顔で春良を見た。

 

「これが『霊撃』です。身を守ると同時に攻撃の手段にもなる弾幕の一種です」

「『霊撃』……」

「霊夢さんと魔理沙さんが使っていました。なんでも、符の力を形ではなくそのまま放出させたものらしいです」

 

教えてもらったのはいいですけど、燃費が悪いですね、と早苗が困ったように言う。

 

「それを、俺にしろと…?」

「簡単です。符を通して力を解放するだけです」

「すいません。わかりません」

「習うより慣れろ、ですよ。戌井さん」

 

そう言うや否や、早苗が手を掲げる。

すると、星が一瞬輝く。

 

「奇跡『白昼の客星』」

 

昼間に輝くその星は、何個かに分裂して、流れ星のように降り注いできた。

今までも、出たとこ勝負だった。

 

(できるはずだ……!)

 

力なら、おあつらえの符がある。弓道『射法八節』。

見た目の綺麗さはこの際気にしない、ただ解放するためだけに春良はその符を取る。

 

「お、おぉぉぉぉおおおおおおおおおおッ!」

 

流れてくる星々に向かって、吠える。

その声が、実体を得たかのように、波打ち。

 

「『 霊 撃 』!」

 

目の前の星を、消し飛ばした。

 

「やっ…………た…?」

 

しかし、消すことができたのは目の前の星だけ。

その後ろから降ってきた星は、未だ春良に向かって突進している。

 

「戌井さん!気を抜いてはダメです!」

「う、うおぉぉおおおっ!?」

 

しかし、言われた後ではもう遅い。

それに、気を引き締めようにも、体が反抗期にでも入ったかのように動いてくれない。

棒立ちの体を射抜こうと星が迫る。

 

「…………!」

 

そこに、小さな体が割り込んだ。

その小さな存在が手を横へ開くと、春良の前に小さな霊撃の盾を展開。

星々の全てを、反らし防いだ。

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