東方春命録   作:Poteto305

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香りはそれでも咲き誇る事を知り・玖符

「風見!向こうの向日葵にも水が来てるわよ!」

「分かってるわよ!貴方は鈴蘭畑を見てなさい!」

 

自然が荒れ狂う花畑で、風見幽香は奮闘していた。

 

「邪魔にもほどがあるわね…」

 

傘の一降りから放たれた一筋の光が、自然を切り裂く。

熱線が起こした風のみで、自然を押さえつけていた。

風の隙を見つけ、風見は花達を移動させる。

が、さらに自然はその隙をつき、横で必死に花達を守るメディスンに、岩を一投してきた。

 

「……っメディスン!後ろ!」

「…………え…!?」

 

メディスンの体ほどあるそれは、軽々とメディスンの体を砕くだろう。

 

「親愛『華人小娘』!」

 

だが、その危機は彼に防がれる。

突如現れた春良の一蹴りで、岩は石になって地面へと落ちた。

 

「い、戌井春良!?」

「メディスン、大丈夫か!?」

 

霊撃使用で、春良の体はぼろぼろだ。

親愛の符でさえも、一瞬で解けてしまうほどに。

 

「春良さん、無茶したらだめですよ!」

「……けど、ここを守らないと…!」

 

疲れで膝をつく春良の前に、疲労した上海とこあくまが立つ。

その二人は、一人は春良以上に疲れているだろうに、笑う。

 

「春良さんは休んでいて下さい」

「こあと上海は…?」

「上海さんの霊撃は燃費が良いみたいです。私は……」

 

ばっ、とこあくまは手を挙げ、その手に何かをつかむ。

 

「……助けを、もう呼んでいますから」

 

本だ。

いつしかの時のように、こあくまの周りをいくつかの本が飛び回っている。

 

「春良さんからいただいた力ですよっ」

「……はは…」

 

足手まといでも、邪魔でもない。

二人とも、横に並べるほどに、強くなりたいと願い、実現させていたのだ。

 

「発動します」

 

光が空から落ち、春良を囲む。

暖かいその光は、その見た目通り春良の体と心を癒していく。

 

「……これ、すごいな…」

「フォトシンセンス…、これはパチュリー様のお力です。傷と疲れを癒してくれます」

 

ニパッ、と笑うこあくまを見ると、自然と安心できる。

少しの間任せようと決めた春良は、その光の中で耐える事に決めた。

 

「あなた達……」

「手伝わせて下さい。いいですよね?」

「……勝手にしなさい」

 

冷たくあしらうような幽香の言葉に、こあくまと上海は笑みを見せる。

 

「行きますよ……っ!」

 

手を高々と挙げ、本に集中する。

それを邪魔するかのように岩が飛来してくるが、その邪魔者は上海の霊撃によって排除される。

 

「……顕現せしは、火日の灯火…」

 

ぽぅ、と小さな光の玉が空へとのぼっていく。

その様子に気づいた幽香はすぐさま花達を一カ所に集めた。

 

「……君在りし場所で輝けっ…!」

 

小さな明かりが、一瞬の収縮を見せたかと思うと、その直後ふくらむ。

 

「発動します! ……ロイヤルフレアっ!」

 

太陽と見間違うほどのそれは、煌めきと共に辺りを蹂躙する。

 

「…………ふぅん…?」

 

興味なさそうに幽香は花達だけを光から守り、息を漏らした。

 

「メディスン!こっちに!」

「う、うんっ!」

「頼む…、『霊撃』ッ!」

 

春良はメディスンの体を抱き、己を守る為の霊撃を拡散させる。

ほぼ連続で二度目は流石に辛いが、メディスンが居る以上、気を抜くことは許されない。

 

「……はぁ…はぁ…っ」

 

光の拡散が終わり、辺りには雲一つ見えなくなっていた。

 

「パチュリー様……、こんな魔法使ってたんですね……」

 

あまりに素直すぎる魔力の放出。

見合った結果は得られたが、これをいつも使って平然としているパチュリーが分からないこあくまだった。

 

「……疲れ、ました…」

 

そのまま濡れた地面に前のめりに倒れ、こあくまは動くことすら敵わない。

 

「ねぇ、貴方」

「……は、はい…?」

 

そんなこあくまに、一歩、笑顔の風見幽香が近づいてきた。

 

「もしかして、花の事を考えずにあの力を使ったんじゃ、ないわよね…?」

「……ひっ…!?」

 

背筋を氷で撫でられるかのような感覚。

 

「燃えてしまう所だったのだけれど…?」

「すっ、すすすすいませっ…!夢中で…!き、気づかなくて…っ!」

「気づかない……?この可愛い子達が…?」

 

あぁ、これは何を言ってもダメだ。

小さな諦めと大きな絶望がこあくまの精神を満たした。

 

「それ相応の罰は受けてもらうわね…?大丈夫よ、痛いのは最初だけだから…」

「ま、待って、まってくださっ!は、春良さんっ!助けて下さいぃぃいぃぃいいっ!!」

「あぁなった風見は怖いわよ…」

「あぁ、遠目で分かる…」

 

メディスンと密着したまま、春良は家の中へと連れて行かれるこあくまに手を合わせる。

すると、正面から上海がふよふよと飛んできた。

 

「お、上海。お疲れ様」

「……!?」

「ん?ど、どうした?なんでそんなに怒ってるんだ?」

 

二人の密着具合を目の前にした上海は、とりあえず春良をぽかぽかと叩く。

それからメディスンをひと睨みすると、メディスンの方がようやくその意味に気づいた。

 

「……っな、なんでくっついてるのよっ!」

「え、あ、悪い。守るのに必死だったから…」

「……ま、まぁ、別に悪かったわけじゃないけど…」

「そか。怪我とかないか?」

「……うん。あ、ありがとう…」

 

どういたしまして、と何度目かのやりとりを終えると、上海がいつも通り肩に乗ってきた。

 

「そう言えば、幽香さんって花を操る能力なのか?」

「ん。100パーセント当たり。『花を操る程度の能力』だよ」

 

通りでこの不自然な花の移動。

一体どういう仕組みなのかは分からないが、ぴったりな能力だ。

 

「あ、出てきた」

「……は、春良さん…」

 

家からでてきたこあくまは何故かかなり憔悴している。

倒れるように春良に抱きつき、小さく涙をこぼしていた。

 

「わ、わたっ、私、もうお嫁に行けません……」

「こ、こあくま、大丈夫か?」

「もしいけなかったら、も、もらってくれますか…?」

 

いけなかったらなー、と全くそんな事態は考えていない春良は、かなり適当に答えた。

 

「まぁ、ありがとうとだけ言っておくわよ」

 

ぶっきらぼうにそう言う幽香を、メディスンは笑って見つめる。

これで、この一連の出来事も終わりを告げた、と思っていたが。

 

「……いや、あと一つか」

「映姫さんと小町さんですね?」

「そだな。気になるけど、確かめることも……」

 

できない。

そう言おうとした瞬間だった。

 

「……直接、教えてくれるみたいよ?」

 

キュン、といつしかの時のように、目の前に鎌をもった小野塚小町が姿を現す。

 

「こ、小町さん?」

「さっきぶりだね、面解屋」

「……どうしてここに?」

「ちょっとばかし、頼みたいことがあってねぇ」

 

緩やかな動きと共に鎌が回転する。

その回転した鎌が、動きに従って地面に浅く突き刺さった瞬間、一瞬の光を見せ、

 

「面倒事、解決してはくれないかい?」

 

刹那。

すぐ後ろに居たはずのこあくま、上海、果ては幽香とメディスンまでもが、視界から消えた。

 

「……!? こあ! 上海!?」

「心配はいらないよ。少しばかりあたし達との距離を広げただけだから」

「小町さん……! 何が目的なんですか…?」

「目的…とは違うけど、『どうしてこんな事をするのか』、気になっていただろう?」

 

ガッ、と小町は鎌を背に構え、短い髪を揺らし、春良を笑みと共ににらみつける。

 

「あたしが直接教えてあげようと思ってさ!!」

「――――!」

 

まさに強襲。

三途の渡し船頭が、春良に斬りかかってきた。

 

 

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