東方春命録   作:Poteto305

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香りはそれでも咲き誇る事を知り・終符

 

空から、何かが落ちてきている。

 

(――――っ!)

 

小町の攻撃であろうそれを、春良は見据える。

何故か、恐怖は沸いてこない。

 

「……『見えた』みたいだね?」

 

ゴッ!と衝撃が春良を包み、小町の髪をたなびかせる。

霧のように辺りを砂煙が包み、春良の姿を確認することすらできなくなっていた。

 

「うん。やっぱりお前さんに頼んで良かったよ」

 

笑う小町の手にあった蒼い鎌が霧散して散らばった。

小町の後ろで、砂煙が拡散する。

鎌を大きく振りかぶった春良が、背後からの強襲を仕掛けた。

 

「……らっ!」

「甘い!」

 

振り向きざまに、小町が鎌を振るう。

ガキン、と刃と刃がぶつかり合い甲高い音を響かせる。

いつ吹き飛ばされてもおかしくはない、そんな状況な中、春良は小町に声をかける。

 

「いろいろと、わかりました」

「へぇ?それで、どう思ったんだい?」

「……正直、小町さんの事をよく思っていなかったんですけど、改めます。すいませんでした」

「おぉ。そいつは光栄だねぇ。…………で?」

 

にぃ、と笑う小町に、春良も顔をゆがませる。

そして、高々と、吠えた。

 

 

「それとこれとは、話が違いますッ!!」

「そうだ!それでいいんだよ外来人!!」

 

 

再び、甲高い音が響き始めた。

 

「映姫さんを、悲しませてどうするんですか!」

 

横降りの鎌を、小町は縦振りの鎌で地面にたたきつける。

動きが一瞬止まった春良に一歩近づき、鎌を振るう。

 

「何よりも、大切にしなければならないものがあるだろう!?それが命だ!」

 

体を大きく曲げ、鎌をかすらせるだけにとどめた春良は、バックステップで距離を取る。

 

「限りある時間を、大切にしようとは思わないんですか!」

「あたしは、映姫様に生きていて欲しいんだ!できることなら、この命を差し出しても良い!」

「それが貴方の願いですか! そんなことを、神にすがってまでやろうとしたんですか!!」

「ああそうさ! 何が悪い! 好きな人が生きる事を願うことの、何が悪い!!」

「何も悪くないですよ! でも違う、やり方が間違ってるんですよ!! それで映姫さんが喜ぶと、本当に思っているんですかッ!!」

 

十字に鎌を振り、カマイタチを飛ばす。

 

「…………っ…」

「じゃぁ、あのプレゼントはなんですか!何故一緒に出かける約束をしたんですか!」

 

小町の鎌が真空を切り裂く。

能力で距離を詰め、上段から鎌を思い切り振り下ろした。

 

「耐え切れなかったんでしょう!? 今を楽しみたい気持ちを!」

「しゃ、喋るなっ!!」

「死神が迷うはずがない!?心を持つ小町さんが、迷うのは当然でしょう!?」

「――っ!」

 

あまりに大降りすぎるその一降りを、春良は横に少し移動してかわす。

 

「迷って、くだらない正義で正当化して、それで何が変わるのか知りませんけど!」

 

カンッ、と地面に突き立った鎌を大きく払い、小町の体制を崩す。

 

「自分に!嘘を吐かないで下さい!!」

 

いつしかの、鬼のように。

動揺した小町の体を、数多のカマイタチが切り刻んだ。

 

「………………っ…!」

 

ザザッ、と大きく後退するが、小町は倒れない。

被弾した体には、少々の切り傷が見えた。

 

「……はぁ……はぁ…っ!」

「……やっぱり、こうびしっと言われると身に染みるねぇ」

「……どうするんですか…?」

 

手放してしまった鎌を拾い、小町は笑う。

その笑みには、確かな暖かさが見えた。

 

「勿論、今までのことを全て伝える。なんてことはしないさ」

 

映姫様は、きっと気にするだろうからねぇ、と小町は困ったように春良を見つめる。

 

「でも…」

「でもだ。プレゼントはきっちり渡す。サボリも……まぁ、少しは減らすよう努力するよ」

「じゃ、じゃぁ…!」

「あぁ。お前さんの言ってくれた事は、間違っちゃぁいないからね」

 

あっはっは、と豪快に笑う小町は、どこか鬼に似ていた。

表面はおおらかで、内の奥底に、悲しさを秘めていたあの鬼に。

 

「んで、戌井春良」

「は、はい?」

「一応なんだけど、決着はつけさせてもらうよ?」

「…………へ?」

 

弾幕勝負で、負けただなんて言われたら嫌だからね、と小町は鎌を振りかぶる。

 

「構えな、外来人。それごと吹き飛ばすから」

「……れ、『霊撃』ッ!!」

 

一瞬後。

ただの一降りから生まれた数多の衝撃が、完全防御に入った春良の体をいとも簡単に吹き飛ばした。

 

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