『『はッ!』』
ロッソとブルの二人は、内浦の町内に出現したメカゴモラの正面に着地。威圧するようにビッと指を向けたが……メカゴモラは威嚇し返すどころか、一切の反応を見せずに突っ立ったままであった。
『「……全然動きませんね、あの怪獣……」』
想定外の事態に、呆気にとられる梨子。ロッソとブルも訝しんだ。
『様子が変だぞ』
『とりあえず牽制してみる?』
『よぉーし……!』
ロッソが右手を大きく振りかぶり、ストライクスフィアをメカゴモラに向かって投げつけた。火球はクリーンヒットして、メカゴモラの表面で大きく炸裂する。
『ストライーク!』
『よっしゃあッ!』
ぐっとガッツポーズを取るロッソ。しかし、メカゴモラは爆撃を食らったにも関わらず、相も変わらず棒立ちのまま。
『あれ? 反撃してこないぞ?』
『「見送りじゃないですか?」』
『まさか。ほんとの野球じゃあるまいし』
不可解なほどに動かないメカゴモラに、ロッソたちは頭に疑問符が浮かび続ける。
『電池切れかなぁ?』
『え? あいつ電池で動いてるの?』
『いや知らないけど』
『「でも、見たところロボットですし、何らかのトラブルがあったというのもありえない話じゃ……」』
と梨子が推測したその瞬間――メカゴモラから人間の声が発せられた。
[「その声……もしかして、梨子ちゃんですかぁ……?」]
「『『え!!?」』』
聞き覚えのある声に、梨子たちは驚愕。そして透視の超能力を発動してメカゴモラの額に注視すると――。
内部の空間に、ルビィが閉じ込められているのを発見した!
『「嘘でしょう!? な、何でルビィちゃんがあんなところに!?」』
『わ、分からん!』
『誰だ!? 誰があんなことしやがったんだッ!』
激しく狼狽するロッソとブル。メカゴモラの方は、それを合図とするように機体の各所が点灯して、起動を始めた。
[ギャオオオオオオオオ!]
動き出したメカゴモラは、左胸のランプから光線を発射してロッソとブルの立つ地点を薙ぎ払う。二人は咄嗟に跳び上がって回避した。
「きゃああああああ――――――――!!」
怪獣が出現していながら、動きが見られなかったことでこちらも訝しんでいた町民たちも、メカゴモラが攻撃を開始したことで一斉に悲鳴を上げて逃げ始めた。
『とにかく止めないと!』
『ああ!』
人々の身が危ないことでロッソたちも焦りを見せ、光線を発し続けるメカゴモラに後ろから飛び掛かって羽交い絞めにした。
『このッ!』
[ギャオオオオオオオオ!]
しかし左腕を捕らえるブルの手が、光線の加熱によって焼かれる。
『あちちッ!』
『熱には熱だ!』
ロッソが手の平に炎を宿してランプを抑えつけるが、光線は止まらない。
『くそッ、熱量を上げるぞ!』
『「ま、待って下さい!」』
ロッソがより強力な炎で抑えつけるのに、梨子が思わず制止の声を出した。ランプが熱で故障して光線が止まるが、そこでロッソはメカゴモラから離れる。
『そうだ、迂闊なことは出来ない……!』
『やりやがったな! うらぁッ!』
『待て功海ッ!』
発憤したブルが放ったアクアジェットブラストが命中し、メカゴモラが転倒した。
[「ぴぎぃぃぃっ!」]
しかしその際の衝撃が内部のルビィに伝わり、ルビィが悲鳴を上げた。
『「何するんですかっ! 中にルビィちゃんがいるんですよ!?」』
『あッ……! ご、ごめん!』
梨子に非難され、我に返ったブルが謝った。
浦の星女学院では、メカゴモラ出現により千歌たちが慌ただしく避難しようとしていた。
「怪獣だよ! 早く逃げないと!」
「だけど、ルビィちゃんがどこにもいないずら!」
「えぇーっ!?」
「わ、私たちも捜してくるね!」
曜と善子が部室を飛び出して、校舎内を駆け回る。
「ルビィちゃん、一体どこに……!」
『「曜ちゃん! 善子ちゃん!」』
「ヨハネよ! って、今の声は……!」
曜と善子の元に、ロッソから梨子の声がテレパシーとなって二人に伝わった。梨子が告げる。
『「大変なの! ルビィちゃんが、怪獣の中に囚われてるの!!」』
「えぇぇぇぇ―――――――――!?」
「れ、煉獄の虜囚!?」
曜と善子も、その報告に目が飛び出さんばかりに驚愕した。
アルトアルベロタワーでは、戻ってきた愛染がルビィを人質にしているメカゴモラと、そのために全力で戦うことが出来ず二の足を踏んでいるロッソとブルの様子を観察して、にんまりと笑んでいた。
「暴れる怪獣、その中に囚われたアイドル。果たして助け出すことが出来るのか……。いいシチュエーションだ」
[ギャオオオオオオオオ!]
メカゴモラはロッソたちが全力で立ち向かうことが出来ないのをいいことに、二人をはね飛ばしながら内浦を我が物顔で突き進んでいく。
『こいつ、どこかに向かって進んでるぞ……!』
『「この方向って……まさかっ!」』
梨子がハッと青ざめて、メカゴモラの進行方向に首を向けると、その先に見えたのは……。
『「わ、私たちの学校!!」』
『何だってぇ!?』
『やばいッ!』
浦の星女学院に向かっていくことに気づいたロッソとブルが、メカゴモラにしがみついて食い止めようとする。が、メカゴモラは指先からミサイルを乱射して二人を振り払った。
その内の一発が校舎の近くに着弾し、爆発の衝撃で避難途中の生徒たちが絶叫した。
「きゃああああ――――――!」
『まずいぞ……下手に抵抗したら逆に学校が危ないッ!』
『「でも、止めないと学校が……だけど、あの中にはルビィちゃんが……!」』
梨子はどうしたらいいのか分からなくなり、パニック状態に陥っていた。
ロッソとブルの焦る様子に、愛染は笑みを深める。
「更に駄目押し。頑張らないとー、浦女が物理的に廃校になっちゃうぞー」
『今のままじゃどうにもならない! こうなったら、パワーは落ちるが……クリスタルチェンジだ! 功海!』
ロッソが指示を出したが、ブルはルビィが囚われているメカゴモラを前にして動揺しており、聞こえていない。
『功海ッ!』
『あ、ああ……!』
ロッソが強く呼び掛けることでようやく我に返り、クリスタルを交換する。
「『セレクト、クリスタル!」』
クリスタルを取り換えロッソアクア、ブルフレイムになると、ロッソがジャイアントスフィアを飛ばし、メカゴモラの上半身を包み込むことで時間を作った。
『功海、ルーブスラッガーで攻撃だ!』
『でも、そんなことしたらルビィちゃんが……!』
『イチかバチか、やるしかない! スラッガーなら、ルビィちゃんを無事に切り離せるかもしれない!』
希望的観測を抱くロッソが、梨子に呼び掛ける。
『梨子ちゃん!』
『「う、うん……! 頼みます、克海さんっ!」』
ロッソが角からルーブスラッガーを引き抜く。
「『ルーブスラッガーロッソ!!」』
双剣を手にしたロッソが、メカゴモラへと駆けていく。
『はぁぁぁッ!』
『克兄ぃ!』
それと同時にメカゴモラもジャイアントスフィアを破り、ロッソの剣戟を腕で受け止めた。
『はッ! やぁッ!』
しかしロッソは巧みに双剣を走らせ、関節部を狙って斬撃を見舞う。それで動きを封じようとするが思い通りにはならず、スラッガーを掴まれて放り捨てられた。
[ギャオオオオオオオオ!]
『うわぁッ!』
メカゴモラの角が生えたヘッドバットを胸に叩きつけられた上、メガ超振動波を叩き込まれる。
『うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
『「いやああああぁぁぁぁぁぁっ!!」』
強烈な衝撃が梨子まで襲い、ロッソが放物線を描いて弾き飛ばされた。
『克兄ぃ! 梨子! 大丈夫か!?』
大ダメージを食らって倒れたロッソに駆け寄って助け起こすブル。その時に、閉じ込められて意識が朦朧としているルビィがうわ言を発した。
[「ここ、どこですかぁ……? そろそろ、今日のトレーニングに行かないと……」]
[ギャオオオオオオオオ!]
メカゴモラは両手を射出し、ロケットパンチでロッソとブルを殴り飛ばす。
『『うわああぁぁぁぁ――――――――!!』』
チェーンを巻き上げて両手を戻すメカゴモラ。その足が少しずつ、女学院に迫る。
学校では、ダイヤが青ざめ切った顔で校舎を駆けずり回っていた。
「誰かっ! ルビィを見ませんでしたか!?」
「生徒会長! 早く逃げて下さいっ!」
「もうここにいたら危ないですっ!」
善子と曜がダイヤの両脇を抱えて引っ張っていこうとするが、ダイヤは暴れて抵抗する。
「放して下さい! ルビィがどこにもいないんですわ! こんな時には真っ先にわたくしのところに来るのに! 大事な妹を、置いていけませんっ!!」
ルビィはどこを捜してもいないのだということを説明することが出来ず、曜たちは必死なダイヤを前に歯がゆい思いをすることとなる。
女学院の前で仰向けに倒れたロッソの中で、梨子が力を振り絞る。
『「駄目……ここを、ルビィちゃんに壊させる訳にはいかない……! 私たちの、夢のスタートラインを……守らなくちゃ!!」』
梨子の発奮がロッソにも伝わり、カラータイマーが鳴りながらも起き上がって仁王立ちする。そして梨子がクリスタルホルダーを掴み取った。
『「セレクト、クリスタル!」』
風のクリスタルを取り出して二本角を出すと、ジャイロに新しくセットする。
[ウルトラマンティガ!]
現れたティガのビジョンが風に代わって、インナースペースに満ち溢れた。
『纏うは風! 紫電の疾風!!』
ロッソの合図で梨子がジャイロのレバーを三回引く。
[ウルトラマンロッソ! ウインド!!]
竜巻がロッソを包み込み、紫色のロッソウインドが右腕を天高く振り上げた。
『「この風の力で……あれを押し返しますっ!」』
接近してくるメカゴモラを見据え、気合いを入れる梨子。ロッソは両手を握り締めると、拳に風を纏わりつかせた。
「『ストームフリッカー!!」』
ロッソが拳を突き出す度に、球状の風が飛んでメカゴモラの身体に当たり、風圧で後ろに押し出していく。
[ギャオオオオオオオオ!]
踏ん張って抗うメカゴモラだが、ロッソが風を重ねていくことで、超重量の機体もズルズルと下げられて学校から引き離されていった。
『ふッ! ふあッ!』
[ギャオオオオオオオオ!]
このまま学校から十分な距離を離すことが出来ると思われたが……メカゴモラは両手を地面に向かって飛ばし、突き刺すことでアンカーの代わりとしてその場から下がらなくなった。
『「なっ……!?」』
[ギャオオオオオオオオ!]
更にメガ超振動波で風を弾き飛ばし、腕を戻す。状況まで振り出しに戻ってしまった。
[ギャオオオオオオオオ!]
『うわッ!』
メカゴモラの右手が三度飛び、ロッソの首を鷲掴みにして背後に投げ飛ばす。
『わあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』
地面の上に叩きつけられるロッソ。彼が投げ捨てられたことで学校が無防備となり、メカゴモラがそちらに迫っていく。
『克兄ぃ! 梨子! いい加減にしろぉぉぉぉぉッ!』
メカゴモラの暴挙の数々にブルは怒り心頭し、間に割って入ってルーブスラッガーブルを抜いた。
そして「刃」のクリスタルを取り出し、一本角を出してスラッガーの柄の部分に装着した。
[ウルトラセブン!]
スラッガーの刀身が白く輝き、ブルが正眼に構える。
息を荒げながらブルがメカゴモラと向かい合っていると、迫るメカゴモラからルビィの声がし続けた。
[「ルビィががんばって、ランキング上げていったら……お姉ちゃん、またスクールアイドル好きになってくれるかなぁ……」]
[「前みたいに、一緒に歌ったり踊ったりしたい……」]
[「あんなに好きだったのに、今は見たくもないなんて……そんなの悲しいよ……」]
[「えへへ……お姉ちゃんのためにも、スクールアイドル、がんばルビィ……」]
『……ッ!』
ルビィの声に、ブルは剣を握る手が震えるものの――何もかもを振り払うような絶叫を上げながら、腕を振り上げた。
『わああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――!!』
そして炎を纏わせた巨大光刃を、振り下ろしたスラッガーから繰り出す。
『ワイドショットスラッガーッッ!』
それを見た梨子が、反射的に手を伸ばした。
『「――っ!」』
ブルが飛ばした光刃がメカゴモラの胴体を貫き、宙返りして再び貫通。×の字に胴体を裂かれたメカゴモラが、大爆発を起こした。
「や……やったぁぁっ!」
「ウルトラマンさんが、学校を守ってくれたずら!」
千歌や花丸は歓声を上げたが、曜と善子はブルが手を下したことに、顔面蒼白となっていた。
そして他ならぬブルが、がくりと両膝を突いて首を垂らした。
『ごめん、ルビィちゃん……千歌……みんな……! 俺……俺が……ルビィちゃんを……ッ!』
自責の念に駆られるブルだったが――かすかに風の音が聞こえたことで、顔を上げた。
見ると、渦巻く風が硝煙を払い――ルビィの身体をゆっくり地上に下ろしていくのを、ブルの目に映し込んだ。
『ルビィちゃん……!』
ルビィの胸は上下している。呼吸している――生きている証拠をブルに見せつけていた。
彼女を守る風は、倒れたままのロッソの手の平から放たれていた。
『功海、ナイスプレイ……』
『「大丈夫です……みんな、無事ですよ……!」』
梨子が汗だくになりながら、にっこりとブルに笑いかけた。
「ルビィ……!? あんなところに!?」
ルビィがそっと地上に横たえられたのをダイヤたちも目撃して、脇目もふらずにルビィの元へと走っていった。
壮絶な戦闘があった翌日、克海たちは綾香総合病院へとやってきた。
その病室の一つに入院したルビィのお見舞いである。
「それにしても、不幸中の幸いってこういうことを言うんだろうね。怪獣と一緒に爆発したのに、ほとんど怪我がなかったなんて!」
ベッドの上のルビィを囲みながら、千歌が安堵しながらそう言った。ルビィはベッドに寝かされてはいるものの、包帯すら巻いておらず、入院も検査の意味合いが大きい。
「ほんと、無事で何よりずら~。一時はどうなることかと思ったずら」
「これもルビィちゃんの日頃の行いがいいからだよ! それにかわいいし!」
「千歌ちゃん、かわいいは関係ないでしょ」
「えへへ……それに、ウルトラマンさんが助けてくれたお陰です」
曜が千歌に突っ込んでいると、ルビィははにかみながら述べた。千歌たちの輪の外で、克海が梨子に密かに囁きかける。
「ルビィちゃんが無事なのは、あのとき梨子ちゃんが全力を出し切って守ったからこそだ。ありがとう」
「いいえ、そんな……。チームの仲間のためだから、がむしゃらだっただけです」
謙遜する梨子。しかし、彼女が変身を解いた後に疲労困憊で倒れるほどに風を操ったからこそルビィが助かったというのは事実である。
千歌たちがルビィと笑い合っていると、善子がやや慎重にルビィに問いかけた。
「ところで……どうして怪獣の中なんかにいたのか、それと閉じ込められてた間のことは、本当に覚えてないのね?」
「うん。最後に覚えてるのは、クラスのみんなのところまで行こうとしてた途中だったのまでで、そこからは何も……」
つまり、ルビィが克海たちのことも覚えていないということに善子や梨子、曜はほっと息を吐いた。
「あっ、でも……功海さんが何か叫んでたような気がします」
「えっ、功海お兄ちゃんが?」
今のひと言に、誰より功海がギクッと肩を震わせた。
「何だか、すごく必死だったような……。気のせいかもしれませんけど……」
「いや、えっと、それは……」
言葉に詰まる功海の代わりのように、千歌がケラケラと笑った。
「あはは。功海お兄ちゃんったら、変なことばっかするし変な声もよくあげるから、どこかで聞いたのが耳に残ってただけだよきっと」
「おい千歌ぁ~? 兄に向かって二回も変だとはご挨拶だなぁ! 奇行なら人のこと言えた立場じゃないだろぉ!?」
「あ~ん、ごめんなさいお兄ちゃ~ん」
功海に手荒にじゃれつかれ、千歌が眉間を寄せながらも愉快そうに笑った。その様子に、周りの克海たちも思わず破顔させられた。
――しかし、功海の表情の片隅には暗い雰囲気が残り続けていた……。
『Aqoursのウルトラソングナビ!』
ダイヤ「ダイヤッホー! 今回ご紹介しますのは、『ウルトラセブンの歌』ですわ!」
ダイヤ「この曲を歌ったのはみすず児童合唱団とジ・エコーズです。ジ・エコーズはコーラスグループのワンダースの変名でして、メンバーであった尾崎紀世彦さんももちろん歌われてますわ」
ダイヤ「尾崎さんの声は冒頭のコーラスの三番目のものですわ。今からして見れば、非常に贅沢な起用といえるでしょう」
ダイヤ「ちなみに『セブンの歌』はバージョン違いのものがありますわ。主題歌に採用されなかった方は本来没になるのですけれど、満田かずほ監督がこれを惜しみ、自身の監督回で使用されていますので、皆さまにも覚えていらっしゃる方がいることと思いますわ」
克海「そして今回のラブライブ!サンシャイン!!の歌は『Guilty Night, Guilty Kiss!』だ!」
功海「Aqoursのミニユニットの一つ、Guilty Kissが歌った曲の一つだな! ロックやメタルを基とした、硬派な感じが特徴的だぜ!」
克海「Guilty Kissはそんなビターなイメージの歌をよく手掛けてるぞ」
ダイヤ「それでは、また次回でお会い致しましょう」
善子「終末の鐘!? 功海がウルトラマンに変身できなくなってしまったわ! ジャイロが故障でもしたというの?」
ダイヤ「功海さん、そんなにルビィのことを気に掛けてどうなさったんですか? 何かルビィに負い目でも……」
善子「功海、堕ちた翼はまた飛び上がるのでしょう?」
ダイヤ「次回、『HEROESの証明』!」
善子「次回もまた、堕天降臨!」