ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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HEROESの証明(A)

 

\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/

 

ダイヤ「浦の星女学院に統廃合の話が持ち上がり、Aqoursは学校存続に向けて活動を開始。ですがその矢先、怪獣の内部にルビィが監禁されるという事態に! ウルトラマンの活躍によって無事に救出されましたが、功海さんの様子が何やらおかしくて……」

 

 

 

 浦の星女学院のスクールアイドル部の部室で、窓際で団扇を扇いでいた千歌が振り返った。

 

「この前のPVが、50万再生も!?」

 

 パソコンの前では、入院中のルビィを除いたAqoursメンバーがPVの再生回数とコメントを確かめている。

 

「ほんとに!?」

 

 曜が聞き返すと、善子がコメントの内容をひと言で纏めた。

 

「ランタンが綺麗だって評判になったみたい。でも一番の要因は、怪獣の爆発に巻き込まれて生還した奇跡のスクールアイドルってマスコミに持ち上げられたのが話題を呼んだことみたいね」

 

 ルビィの件はすぐにマスコミが食らいつき、大々的にニュースなどで取り上げたことでAqoursの名前も一気に広まることとなった。ルビィの病室には連日記者が押しかけて人見知りの彼女を困らせ、姉のダイヤが見かねて取材拒否を言い渡したりもした。

 

「ランキングも……」

「18位!?」

「ずら!?」

 

 驚異的な順位の飛躍に梨子や花丸も驚嘆した。千歌も興奮を抑え切れない。

 

「すごい! それって、全国に5000以上もいるスクールアイドルの中でってことでしょ!?」

「ランキング上昇率では、断トツの一位よ!」

「一時的な盛り上がりってこともあるかもしれないけど、それでもすごいわね!」

「ルビィちゃんもきっと喜ぶずら!」

 

 舞い上がっているAqoursだが、そんな中で千歌が不意に笑顔に影を差してつぶやいた。

 

「だけど……ルビィちゃんがあんなことになったからっていうのは、ちょっと喜べないかな……」

「あっ……」

 

 千歌のひと言で、部室は一気にシンと静まり返った。

 が、その時にパソコンのメールアドレスに新着のメールが届く。

 

「? これ……」

「何なに?」

 

 曜がメールを開いて、内容を読み上げた。

 

「Aqoursの皆さん、東京スクールアイドルワールド運営委員会です……だって」

「東京って……あの東にある京の……」

「何の説明にもなってないけど……」

 

 そのまんまなことを述べる千歌に梨子が突っ込んだが、その一拍後に、話を呑み込んだ一同がパッと顔を輝かせた。

 

「東京のイベントの招待状!!」

 

 

 

『HEROESの証明』

 

 

 

『ワイドショットスラッガーッッ!』

 

 ブルの放った光刃が、メカゴモラを貫き爆発させる。

 

『いやああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 その爆発に、内部に囚われているルビィが呑み込まれていく――。

 

 

 

「――ルビィちゃんッ!」

 

 綾香大学の構内で、ベンチの上でうたた寝していた功海は、絶叫を発して悪夢から飛び起きた。

 ハァハァと脂汗まみれの額をぬぐいながら息を切らす功海。すると……。

 ドゴォォォンッ!

 

「!?」

 

 近くから爆音が発生し、功海が振り向くと、いつの間にか綾香市街に出現していた真っ赤な巨大生物が地面を揺らしながら大学に迫りつつあった。

 

「ギュオオォォ――――ン!」

 

 我先にと逃げていく学生たちの間を逆走しながら怪獣の容貌を視認した功海が驚きを見せる。

 

「グルジオじゃん! 前にぶっ倒したのに、何でまた……?」

 

 再び出現したグルジオボーンは、辺り一帯に向かって口から火炎を吐き出し、街を焼き払っていく。

 

「やべぇ!」

 

 功海はすぐにスマホを出し、克海へと電話を掛けた。

 

『もしもし功海? 今お客さんの相手してるんだけど……』

「何のんきなこと言ってんだよ克兄ぃ! 怪獣、怪獣!」

『何だよこんな時に……!』

 

 電話越しの克海は、困った声を出して功海に頼み込んできた。

 

『悪いけど先やってて。すぐ追っかけるから』

「はぁ!? しょうがねぇなぁ……十秒で片づけてやるわ!」

 

 大言を吐いた功海が電話を切り、ルーブジャイロに持ち替える。

 

「俺色に染め上げろ! ルーブ!!」

 

 功海のジャイロに気がついたように、グルジオボーンが攻撃を止めて彼をにらみつけた。

 が……。

 

「……あれ?」

 

 いくら待っても、ジャイロが何の反応も示さない。訝しんだ功海がジャイロを引き寄せて、グルジオボーンに手の平を向けた。

 

「ちょっと待っててー」

 

 言葉が通じたのかは定かではないが、グルジオボーンが律儀に待っている間にジャイロを確認する功海。

 

「あれ? どうしたんだ……」

 

 しかし元々出自すら不明のアイテムであり、見ただけではどこがどうなっているのかも分からない。

 そうこうしている間に、待ち切れなくなったかグルジオボーンが火炎を吐き出そうとする。

 

「うわッ!? ちょっと待っててって!」

 

 窮地の功海。だがその瞬間に、飛んできたロッソがグルジオボーンに飛び蹴りを決めて火炎発射を阻止した。

 

『はぁッ!』

「克兄ぃ……!」

 

 功海を救ったロッソは、彼に振り向いて詰問する。

 

『功海、何やってる! 十秒で片づけるんじゃなかったのか?』

「だって変身できないんだもん!」

 

 功海がジャイロを見せつけながら言い訳した。

 

『何!? 変身できない!?』

「克兄ぃこそ何遅れてきてんだよ!」

『お客さんをほっぽり出す訳にはいかないだろ!』

「店と人命とどっちが大事なんだよ!」

『おいそんな言い方ずるいだろ! 店の経営がどれだけ大変なのか分かってるのかお前!』

 

 ロッソと功海が言い争っていると――蹴り倒されたグルジオボーンが起き上がって、後ろからロッソの肩をポンポン叩いた。

 

「克兄ぃ後ろ!?」

『ちょっと待って! 今大事な話を……!』

 

 その手を振り払おうとしたロッソだったが……振り返った瞬間に、グルジオボーンからバチーン! と強烈なビンタを頬にかまされた。

 

『痛ってぇぇぇ~!?』

「えッ……ビンタ?」

 

 呆気にとられる功海。

 一方、ロッソを張り倒したグルジオボーンは、ぶっきらぼうに踵を返すと、肩を怒らせながら功海たちに背を向けてドスドス立ち去っていく。

 

「は……?」

 

 急に戦う気をなくして去っていくグルジオボーンの背中を、功海は呆然としたまま見送った。

 ――そのグルジオボーンは、適当なところまで進んでいくと突然肉体が消滅していき……側のビルの屋上に、ジャイロを抱えた愛染が着地した。

 愛染はいら立ちを顔にありありと表し、一人で怒号を上げた。

 

「ラブライブ運営委員長の誕生パーティーをキャンセルしてまで私自ら出撃したというのに……あのぼんくら兄弟めぇ~! 私を無視して兄弟喧嘩だとぉぉぉ~!? ふざけるなぁぁぁッ!!」

[何で戦いを放棄したんですか?]

 

 喚き散らす愛染の側にウッチェリーナが飛んでくる。

 

[変身アイテムを奪い、兄弟を変身不能に追い込むチャンスでしたのに]

 

 進言するウッチェリーナに、愛染は大仰に肩をすくめた。

 

「分かってないなぁウッチェリーナ君」

[え?]

「それは自分の力に自信のない卑劣な宇宙人がよくやる作戦だ。私は違う!」

 

 自信満々に言い放ちながら、握っていた右の手を開く愛染。

 

「真っ向から勝負を挑み、力を証明してみせる」

 

 その手の中には、錆びついた剣のクリスタルが収められていた。

 

「だから私をガッカリさせないでくれぇ。この試練をどう乗り越えるのか、とくと見届けさせてもらおう」

 

 

 

 『四つ角』に帰ってきた克海と功海は縁側で、曜、梨子、善子の三人を相手に今日のことを話した。

 

「えぇっ!? 功兄ぃが変身できなかったって!?」

 

 吃驚する曜たち。梨子は克海の、ビンタされて赤く腫れ上がった頬を気遣う。

 

「克海さん、ほっぺた大丈夫ですか? すごく赤くなってますけど……」

「ああ、どうにかな。ありがとう。それより功海のことだ」

 

 克海に目を向けられた功海は、自分と克海のジャイロを見比べている。

 

「克兄ぃは変身できんのに何で俺だけ……?」

「グレムリンの悪戯……ジャイロが故障したんじゃないかしら」

 

 善子がそう推測すると、曜が眉間に皺を寄せた。

 

「それってまずくない? そもそもジャイロって何なのかもさっぱり分かってないのに……壊れたら直せるの?」

「そんなこと、このヨハネにだって分からないわよ」

 

 善子が肩をすくめていると、功海が思いついたように立ち上がった。

 

「そうだ! 分解して中調べてみよう。ついでに克兄ぃの方メンテナンスしてやるよ」

「いややめろ! 何でも分解すりゃいいってもんじゃないだろ」

 

 克海は慌てて功海から自分のジャイロを取り上げた。それを奪い返そうとする功海。

 

「いいじゃんか! 一回中どうなってるか見させてくれよ!」

「駄目だ! 俺まで変身できなくなったらどうする!?」

 

 揉め合いになる兄弟の間に曜が割って入って仲裁する。

 

「功兄ぃも克兄ぃも落ち着いて! それより功兄ぃ……最近変じゃない?」

「え? 俺が変って、何で?」

 

 克海から引き離された功海が聞き返すと、曜たちが口々に告げる。

 

「だって、最近ボーッとしてばっかだし……」

「確かに、心ここにあらずという感じよね。何か悩みでもあるなら、ヨハネが占ってあげるわよ」

「俺が悩み? ある訳ねーじゃんそんなの」

 

 笑い飛ばす功海であるが、梨子たちの視線はそんな彼の足元に注がれていた。

 

「でも……さっきから言おうか言うまいか迷ってたんですが……それ、千歌ちゃんのですよね? 何で履いてるんですか?」

「え?」

 

 功海が足元に目を落とすと――自分が、千歌のふわふわもこもこのスリッパを履いていることに今更気がついた。

 克海が腕を組んで眉間を寄せる。

 

「こいつ、ずっとこれ履いてたんだぞ。周りが笑ってるのにも気づいてないし……。もしかして功海、この間の戦いのことまだ……」

「何にもないっつってんじゃん! 克兄ぃはほんとお節介だよなぁ」

 

 心配する克海の胸を、功海は軽い調子でポンと叩いた。そこに千歌がトコトコとやってくる。

 

「ねーお兄ちゃーん、私のスリッパ知らない? って、あぁ~!? 功海お兄ちゃん、何やってるのぉ!?」

 

 功海が自分のスリッパを履いて土に足を着けているに気づいた千歌が彼に詰め寄った。

 

「こんなに汚しちゃってぇ~! 私のお気に入りなのに~! 功海お兄ちゃん、ひどいよ~!」

 

 涙目で怒る千歌に、家に上がってスリッパを突き返した功海は、ふらふらしながら家の奥に引っ込んでいく。

 

「晩飯いらねー。寝る」

 

 そう言い残して自分の部屋に向かっていく功海の後ろ姿を、千歌が愕然と見送った。

 

「そんな……今夜はすき焼きなのに……! 功海お兄ちゃんの大好物のしいたけもたっぷり買ってあるのに……!」

「くぅ~ん……」

 

 犬のしいたけも心配そうな鳴き声を上げた。

 

「夏なのに家ですき焼き食べるんだ……」

 

 しいたけから隠れる梨子のつぶやきはともかく、克海たちも功海のことを案じて顔をしかめていた。

 

「功海……」

 

 

 

 翌日、克海と千歌、花丸はルビィのお見舞いに行く途中、同じくお見舞いに来た果南とばったり出くわして一緒に病室を目指していた。

 

「えぇ? 功兄ぃがそんなことに……」

 

 千歌から功海の様子のことを聞いた果南も驚きを見せた。

 

「確かに最近元気なさそうだったけど……人のスリッパ履いて外を出歩くなんて、重症じゃないかな……」

「うん……私も心配なの。せっかく東京のイベントに招待されたのに、これじゃ落ち着いて行けないよ……」

 

 ため息を吐く千歌。克海も頭を悩ませながら、四人はルビィの病室の前まで来た。

 

「ルビィちゃーん、入るずらー」

 

 花丸がひと声かけて扉を開くと……病室には先客がいた。

 

「正解はー……秋葉原UTD屋上でしたぁ!」

「あーそっちだったかぁ~! いやぁ~流石ッ! 詳しいねぇルビィ君! いや先生!」

「えへへ……それほどでもないですよぉ」

 

 ルビィと談笑しているのは、愛染であった。

 

「愛染さん!」

「おおー君たちッ!」

 

 克海たちが声を上げると、気づいた愛染が振り向く。――彼の顔を見て、果南は表情を強張らせた。

 

「怪獣被害に巻き込まれたスクールアイドルを放っておけず、お見舞いに参上しました。ささッこっち座って。おやその子も新しいメンバー?」

「いえ、彼女は俺たちの知り合いの松浦果南です」

「どうも……」

 

 克海に紹介された果南が控えめに頭を下げる。

 

「へぇ~そう。どっかで見た気もするけど……あれ? いつも陽気な弟君の姿が見当たらないが?」

「まぁ……ちょっと色々ありまして」

 

 聞かれた克海がお茶を濁すと、愛染は大袈裟に泡を食った。

 

「まさか、兄弟喧嘩!? 感心しないな~。君たちには期待しているんだ。早く仲直りしたまえ」

「はぁ……」

「では、あとはお若い人たちだけで。兄弟の愛と絆を信じる男、愛染正義でした」

 

 克海に言いつけた愛染はハートマークのポーズを取って、揚々と病室を後にしていく。

 ――その一瞬、果南は愛染の笑顔が急速に消え失せてしかめ面になったのを目撃して、思わず息を呑んだ。

 

「ルビィちゃん、男の人苦手なのに、いつの間に愛染さんと仲良くなったずら?」

「ついさっき。初めはちょっと怖かったけど、話してたら結構楽しかったし……」

「そっかぁ良かった。あっそうそう。何と私たちAqours、東京のスクールアイドルのイベントのお誘いを受けたのですっ!」

「えぇ~!? 東京のですかぁ!?」

「そう、あの東京! 開催される時にはルビィちゃんも退院できてるはずだし、一緒に行こうね」

 

 花丸と千歌がルビィと談笑する傍らで、果南は克海にそっと囁きかけた。

 

「克兄ぃ……あの愛染って人、何て言うか……信用していいの?」

「えッ? 何でそんなこと……この綾香の名士だぞ? 千歌たちだってお世話になってるし……」

「いや、その……」

 

 聞き返された果南は、盗聴器のことなどをどう説明したらいいか分からずに言葉を濁した。

 

 

 

 綾香病院の外のベンチでは、ここまで来ながらもルビィの元まで足を運ぶことが出来ないでいる功海が力なく座り込んでいた。そこに、曜たち三人が彼の近くまでやってくる。

 

「功兄ぃ、こんなとこにいた」

「!」

 

 しかし功海は曜たちに気づくと、すぐ立ち上がって逃げようとする。

 

「功海さん!? ちょっと待って……!」

「逃げてどうするというのよ!」

 

 呼び止める梨子と善子だが、功海の足は止まらず。しかしその前に克海が回り込んだ。

 

「待て功海! どうして何も話してくれないんだ……」

「克兄ぃ……!」

 

 問いかけた克海に、功海は内心を吐露し出した。

 

「俺……怖いんだ。あの時、もし克兄ぃたちがいなかったら……ルビィちゃんの命を奪ってたかもしれない……。そう思うと戦うのが怖い……! ウルトラマンになるのが怖い……! 俺は……ヒーロー失格なんだ……!」

 

 本心にある恐怖を打ち明けた功海に、曜たちは言葉を掛けることが出来なかった。

 

「……功海が、あんなことを思ってたなんて……」

「うん……。いつも、怖いものなんてないって調子なのに……」

 

 思わずつぶやく善子と梨子に、曜が小声で告げた。

 

「功兄ぃ、小さい頃は泣き虫だったんだよ。いつも克兄ぃの後ろについて回って……。だけど、私や果南ちゃんと一緒にいる内に今のようになっていったんだよね……。だから本当の功兄ぃは、小さい時のままで怖がりなのかも……」

 

 曜たちと同じように、克海も功海に掛ける言葉がなく、ただじっと彼のことを見つめていた。

 

 

 

 しかし、今の功海の様子にいら立ちを募らせる者が一人いた。

 

「ぬあぁぁ~! そんなことでいちいち悩むなぁ~!」

 

 愛染である。帰ったと見せかけた彼は近くの建物の屋上から、密かに功海たちの様子を監視していたのだ。

 

「そんなこと悩んだところで、答えなんか出る訳ないだろッ! あぁ~じれったいッ!!」

 

 自社の飛行船をバックにしながら一人で地団駄を踏んだ愛染が、ピタッと足を止めて吐き捨てる。

 

「『一寸先は悩んでもしかたない』だ! おぉ~……!」

 

 そして左手にジャイロ、右手に「魔」のクリスタルを握り、両腕を下から頭上へ大きく回してからクリスタルをジャイロにセットした。

 

グルジオボーン!

 

 愛染は奇声を上げながらレバーを引いていく。

 

「愛染正義はぁーッ! どんな時もぉーッ! ン悩まなぁーいッ!!」

 

 腕を天高くに掲げた愛染の肉体が、怪しい光に包まれて怪獣のものに変化していく――!

 

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