ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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ウルトラマンDREAMER(B)

 

「お兄ちゃんたち、洞穴で何見つけたんだろ。教えてくれないなんて~……」

「まぁまぁ。克海さんたちにも色々あるのよ」

 

 克海と功海が洞穴で発見したクリスタルを調べている間、外で待たされている千歌が不満を抱いてうなっているのを梨子がなだめる。

 

「む~……ところで、曜ちゃんと善子ちゃん、まだ来ないのかな」

 

 千歌がふと、意識を曜と善子の方に向けた。

 

「ここ圏外だから、連絡するには下まで降りないと」

「だったらルビィが行ってきます。近くまで来てるかもしれませんし」

「マルも行くずら」

「ありがと!」

 

 ルビィと花丸が名乗り出て、電話と様子見のために下山していく。

 しかし偶龍璽王神社の長い石段の近くまで来たところで、誰かが騒いでいる声が聞こえてきた。

 

「放してっ! いい加減しつこいよ!?」

「スクールアイドルに復帰してくれるって約束するまで、絶対放さない~!」

「二人ともおやめなさい! ここは神域ですのよ!?」

「あれ? 今の、お姉ちゃんの声……」

「何か言い争いみたいずら」

 

 聞き馴染みのある声に、ルビィと花丸が顔を見合わせて、騒ぐ声のする方へと足を向ける。

 そして石段の途中の休憩場所で、果南の腰にしがみつく鞠莉と、引き離そうとする果南、揉み合いになっている二人を仲裁しようとしているダイヤの三人を発見した。

 

「お姉ちゃん!?」

「ルビィ! どうしてこんなところに?」

「お姉ちゃんこそ、どうして……」

「というか、何やってるんですか? こんなところで」

 

 揉み合う鞠莉と果南に手を焼いているダイヤは、ルビィと花丸に事情を説明した。

 

「実は鞠莉さんが、果南さんをスクールアイドルに戻らせようとつき纏って……果南さんが逃げようとしたら、鞠莉さんがしがみついてきて、こんなことになったそうですの。わたくしは二人が神社で騒いでいるなんて聞いたので駆けつけましたの。ほらお二人とも、一度落ち着きなさいな!」

 

 むしろ言い争いが過熱する果南と鞠莉の間に割って入ろうと四苦八苦するダイヤ。ルビィと花丸は呆然としながらその様子を見つめた。

 

「理事長さん、あそこまでやるなんて……」

「二人とも意地っ張りずら」

 

 などとつぶやいていたら、下から本来の目的である曜と善子が石段を息せき切って駆け上ってきた。

 

「おーい! ルビィちゃん、花丸ちゃーん!」

「あっ、曜さん! 善子ちゃん!」

「善子ちゃん遅いずら!」

「善子じゃなくてヨハネよ! ってそんなことより、功海たちはどこ!? こんな時に携帯つながらないし!」

 

 よほど急いで来たのか、ぜいぜい息を切らしながら善子が問うてきた。

 

「ど、どうしたの? そんな急いで……」

「大変! 大変なことが分かったんだよ! 早く功兄ぃと克兄ぃに知らせなくっちゃ!」

「オーブダーク! あいつは悪夢の道化師よ! 一昨日からの事故は、全てあいつが……!」

「わー! 待つずら待つずら!」

 

 口走る曜と善子を、花丸が慌てて止める。

 

「そこにダイヤさんたちがいるずらよ!」

「えっ!? あっ!!」

 

 曜たちは急ぐあまりに、すぐそこのダイヤら三人の姿が見えていなかった。口をつぐんでももう遅く、今の言葉は三人にしっかりと聞こえていた。

 

「……!」

 

 顔つきが一変した鞠莉は、果南の腰から離れると、ツカツカと曜と善子に歩み寄ってきて肩をがっしり掴んだ。

 

「――知ってること、全部話して!」

 

 

 

「サルモーネさんっ!」

 

 曜たちと別れた後の聖良と理亞は、アルトアルベロタワーの社長室に突撃し、サルモーネと面と向かっていた。

 

「んん? 聖良ちゃんたちじゃない。そんなに急いでどうしたの」

 

 フィットネスバイクを漕いでいるところであったサルモーネが聞き返すと、聖良たちは強張った顔で彼を問い詰めた。

 

「Aqoursの人たちから聞きました……。あなたが防いだ事故は――あなたが起こしたものなんですか!?」

「ええ?」

「昨日、風船を捕まえてもらった女の子が、その後であなたと会ってたところを見たと言ってました。……あれは、仕込みだったということですね……!?」

 

 険しい顔の二人とは反対に、サルモーネはひょうひょうとした態度のままバイクから下りる。

 

「あー、それ知っちゃったかー。意外と早かったねぇ」

「!? 認めるんですね……今までの人命救助は、自作自演だと!」

「どういうつもり!? 私たちは、あなたがこの世に正義と希望を見せるというから……!」

 

 怒鳴りかける理亞を制して、サルモーネが肩をすくめながら語り出す。

 

「まぁまぁ落ち着きたまえ。私は何も嘘は言ってないよ? これも世界中の人間に、愛と正義を伝導するためさ」

「は……? 何を言って……」

「いいかい? ウルトラマンは人々に希望を与える、正義の味方だ! しかし正義の味方には必要なものがある。それは活躍の場だよ! 何の事件もない場所では、どんな正義も昼行燈みたいなもの。世の人間が希望という光の尊さを知るには、必要なのだよ……絶望という暗闇がね」

 

 サルモーネの言わんとするところを察して、聖良と理亞はみるみる青ざめていく。

 

「……黒澤ルビィさんを怪獣に閉じ込めたのは、あの人たちを鍛えるためというから引き下がりましたが……今度は自分の活躍のために……!?」

「正気なの!? 他の人の命を危険に晒して、何でそんな平気な顔してるのっ!」

 

 非難をぶつける理亞であるが、サルモーネの表情はやはり崩れない。

 

「人聞き悪いなぁ~。私のやってることと、君らのやってることは、そうそう違わないだろう?」

「は……!?」

「アイドルだって無償で歌ったりしてる訳じゃあない。彼女たちの歌い踊る姿を見るために、人々はお金や時間などを代償に支払ってる訳だ。君らスクールアイドルにも、何人の人間が多額の投資をしているか。ああそれが悪いことだと言ってるんじゃないよ? 世の中ってそういう風にして回るんだから。つまりぃ、人がお金を出してアイドルのライブを楽しむのと、身の危険という代償と引き換えに正義と希望を知るのと、あんまり違わないだろう? って話」

 

 サルモーネの論法に、聖良たち姉妹は絶句。

 

「そもそも命の危険っていうけどさぁ、そんなものはないんだよ。最初から、この私に助けられるというのが決まってるんだから。ちょっとの間怖い思いをするだけで、彼らは大いなる希望をその身で感じられたんだ。何の問題がある?」

 

 二人がドン引きしていることも気づかずにスラスラ語り続けるサルモーネ。

 と、そこに、社長室の窓の外へと急速に向かってくる二つの飛行物体。――克海と功海が変身した、ウルトラマンロッソフレイムとブルアクアだ!

 

『サルモーネ! 全部聞いたぞ! お前のマッチポンプ!』

『今度という今度は許しておけねぇ! 表に出やがれ!』

 

 二人から挑戦を叩きつけられ、サルモーネはニヤリと嗤った。

 

「リターンマッチに来たか。返り討ちにしてくれよう! 聖良ちゃん、理亞ちゃん!」

 

 サルモーネはAZジャイロを取り出しながら聖良たちに変身を呼び掛けたが……。

 

「ふざけないで下さいっ!」

「あり?」

 

 返ってきたのは、激しい敵意だった。

 

「あなたがそんな人だったなんて……失望しました! 私たちは、そんな自己満足に協力するためにここに来たんじゃありませんっ!」

「あんたと一緒に戦うなんて……二度とごめんよっ!」

 

 二人に拒絶されたサルモーネだが、少しも応えた様子もなく唇をとがらすだけだった。

 

「ちぇ~、つれないなぁ。いいよいいよ、一人でやりますよ」

 

 まるで執着を見せることもなく、サルモーネはジャイロに剣のクリスタルをセットする。

 

[ウルトラマンオーブ!]

「あ団結ッ! あ団結ッ! オールフォーワーンッ!!」

 

 ジャイロのグリップを三回引いて、オーブリングNEOを召喚。掴んだその手からリングが闇に染まり、中央のボタンが押された。

 

「絆の力……お借りしまぁすッ!!」

 

 オーブリングNEOの力で、サルモーネが再び闇のウルトラマンに変身する!

 

ウルトラマンオーブダーク!

『でゅわッ!』

 

 先に人のいない山地に向かって飛んでいたロッソとブルだが、その間を変身したサルモーネが高速で突き抜けて追い越していった。

 

『でゅわぁッ!』

 

 格好つけながら着地したサルモーネのウルトラマンは、振り向きざまにカリバースラッシャーを繰り出す。

 

『うわッ!』

 

 不意打ちを食らったロッソとブルは空中から地面へと墜落させられた。

 

『フハハハハ! 今日は無印のウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツだぁーッ!』

 

 無印と言いながらそれでも長い名前を口走るウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツに対して、ロッソとブルは立ち上がりながら詰問した。

 

『自分でヘリを落としたんだよなぁ!?』

『バスもお前の仕業なんだな!? ヒーローになりたくて、事故をでっち上げたのかよッ!』

 

 怒るロッソたちとは対照的に、サルモーネはやはり悪びれた様子が欠片もない。

 

『それの何が悪い? オレは人々が求めているものを与えただけだ。愚かで弱い民衆を導く、希望の光をな。……と、油断させてる隙に……!』

 

 ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツが密かにオーブダークカリバーのリングを「氷」に合わせ、剣を一気に振り上げる。

 

『闇を抱いてひがみとなれッ! オーブダークアイスカリバーッッ!』

 

 冷気に覆われた刀身から、氷の荒波が発せられてロッソとブルに襲い来る!

 が、ロッソとブルはバク転で氷を回避。同時にクリスタルチェンジしてロッソアクアとブルフレイムに変わった。

 

『ほぉう? 少しは動けるようになったみたいだな。しかし、ひがみを超えて闇を斬ることが出来るかなぁ!?』

 

 手招きして挑発するウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ。ロッソとブルはルーブスラッガーを抜き、一気呵成に斬りかかっていく!

 

『はぁぁッ!』

 

 振るわれるロッソの双剣を、かいくぐってかわすウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ。

 

『ぬわッはッはッ遅いッ! その程度でよくまぁリベンジなど』

『てやぁぁぁぁーッ!』

 

 大笑いするウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツだが、その後ろからブルがジャンプしながら長剣を振り下ろし、肩を切り裂いた。

 

『ぬあぁぁぁぁッ!? 何だとぅ!?』

 

 背後からとはいえ反応できなかったウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツが驚愕。それからもブルが剣を縦横無尽に走らせるのを、防ぐので手いっぱいであった。

 

『せぇぇぇぇいッ!』

 

 一回転したブルの水平斬りが、ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツの腹部に叩き込まれる。

 

『ぐぇぇッ! な、何だこいつ!? 一日二日鍛えただけで、こんな太刀筋になるとは思えんぞ!? まさかッ!』

 

 ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツは、よく目を凝らしてブルのインナースペースにいる人物を確かめた。そこにいるのは、

 

『「――がんばルビィ!」』

 

 ルビィだ!

 

『いつもの奴じゃないッ! お前はあの時の、ふざけた名前の小娘ッ!』

『ふざけてるのはお前のやってることだろッ!』

 

 ブルが振るったスラッガーから、光刃が放たれる。

 

『ぬえいッ!』

 

 それをどうにか受け流したウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツだが、その先にロッソが回り込んで、光刃を更に重ねて打ち返す。

 

『うりゃあッ!』

『ぐわああぁぁぁぁーッ!』

 

 交差した光刃をまともに食らって膝を突くウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ。それを見下ろすのは、ロッソのインナースペースにいる人物。

 

『「愛染正義! いいえ、サルモーネ・グリルド! あなたの悪行三昧、ここで成敗して差し上げますわ!」』

 

 ダイヤである!

 

『誰だお前!?』

 

 ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツが目を見張った。

 今のロッソとブルと変身しているのは、ダイヤとルビィの姉妹。兄弟と姉妹のダブルコンビネーションが、偽善のウルトラマン打倒に燃えているのだ!

 

 

 

 克海と功海は報せを受け、千歌のことを梨子に任せて曜たちの元へ駆けつけていた。

 

『何だって!? 本当なのか!』

『うん! 確かにこの目で見たの! あいつの不正!』

『道理で奴に都合のいいことばかり起こると思った……!』

 

 曜たちからサルモーネのマッチポンプを聞かされた克海たちは、怒りに打ち震える。果南もまたギリッ……! と奥歯を軋ませた。

 

『許せないっ……! ダイヤの妹だけじゃなく、鞠莉にまで……!』

『果南……!』

 

 散々袖にされていた鞠莉は、少し驚いて果南の顔に振り返った。

 克海と功海は互いに顔を見合わせる。

 

『もうあいつの好きにはさせておけない! 功海ッ!』

『おうよッ! ぶっ飛ばしてやる!』

『私も行くよ! 今度こそやっつけるんだから!』

『いいえ、ヨハネにやらせて! 堕天使の裁きを与えてやるわ!』

 

 曜と善子が先を争うように名乗り出たが、それを制したのがルビィであった。

 

『待って下さい! ルビィに、戦わせて下さい!』

『ルビィちゃん!?』

 

 曜たちは驚愕してルビィに振り向いた。

 

『何言ってるか分かってる!? すごく危険なんだよ!?』

『そんなに自分への仕打ちに怒ってるの?』

『ううん、恨んでるとかじゃない。だけど……!』

 

 ルビィは強い意志を瞳に込めて、思いの丈を打ち明けた。

 

『もう誰も、ルビィみたいな怖い思いをする人は出させたくない! あの人の身勝手で苦しめられる人たちを、助けたいっ!』

『ルビィ……!』

 

 ルビィの熱い眼差しを一身に浴びる功海。

 

『それなら、私だって……!』

 

 果南が身を乗り出しかけたが、ダイヤがその前に腕を差し込んだ。

 

『いいえ! あの男に引導を渡すなら、わたくしが先ですわ!』

『ダイヤ!』

 

 ダイヤの瞳には激しい激情の炎が灯っていた。

 

『克海さんたちの真実、この綾香市で起きていること、驚きました。しかしそれ以上に、わたくしの大事なルビィと鞠莉を殺しかけておいて、のうのうとしているあの男への怒りを感じています! 晴らさないことには、どうにかなってしまいそうですわ!』

 

 それぞれ激しい感情を抱える黒澤姉妹を前にして、克海と功海は目と目を合わせ、そしてうなずき合った。

 

 

 

 そして二人とともにウルトラマンに変身し、ここにいるのだ。

 

『俺たちはヒーローになりたいんじゃない!』

『俺たちが戦うのは、悲鳴を上げる人がいるからだ!』

 

 ロッソとブルはウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツに対して、はっきりと言い放つ。

 

『その人たちのために戦うんだ!』

『それがウルトラマンってもんだろ!』

『だから俺たちは、ウルトラマンの名の下に!』

『『お前を倒す!!』』

 

 宣言したロッソとブルに、ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツは激昂。

 

『ウルトラマンの名の下にだぁぁぁ―――――!? ひよっこどもが知った口聞きやがってぇぇッ! 身の程を知れぇぇぇいッ!』

 

 魔剣をブンブン振り回して二人に斬りかかるウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ。ブルが剣をかわし、ロッソが双剣で鍔迫り合いをする。

 ロッソとにらみ合うウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツに、ダイヤが怒りを込めた言葉をぶつける。

 

『「偽りの希望で、人々を導くですって!? ルビィも鞠莉も自分の玩具にして、偉そうなことをベラベラと! 恥を知りなさいっ!」』

『うるさぁいッ! 思い出したぞ~! お前は二年前、東京で歌うことすら出来ずに尻尾を巻いて逃げ帰ったスクールアイドル崩れだなぁ!? そんなガラクタが、ガラクタどもを玩具にされて成敗などと、片腹痛いわぁッ!』

『「ルビィも、鞠莉も、誰もガラクタなどではありませんわっ!」』

『ハァッ! 学校を舞台にアイドルとか、お遊びでアイドルやってるガキどもがガラクタ以外の何だと言うのだッ! Saint Snowだってそうだ! 大人しくオレに従ってりゃあアイドルの頂に立てるというのに! あんな一時の感情に流されるようなケツの青いアマチュアがぁ、このオレの力なくして真のアイドルになどなれるはずがなぁいッ! どいつもこいつもアホばっかりだぁッ!!』

『「っ!」』

 

 ロッソがウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツを押し返し、ダイヤが目元に力を込めてにらみつけた。

 

『「わたくしは、あなたには絶対に負ける訳にはいかなくなりました! スクールアイドルを――いいえ、アイドルそのものを馬鹿にしているあなたには!!」』

『なぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいッッ!!?』

 

 サルモーネはビキビキと血管が浮き上がるほどに発憤。

 

『この(アイドル)正義(ウルトラマン)の伝道師に向かって、何たる言い草だぁぁぁぁッ! 許さぁぁぁぁあああああああ―――――――――――んッッ!!』

 

 怒り狂ったウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツが、リングのスイッチを押してダークストビュームダイナマイトを発動。空中に浮かび上がる。

 

『紅にぃぃッ! 全て燃えて灰になれぇぇぇぇぇぇッ!!』

 

 上空からロッソへと突撃を掛けようとするウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ。

 

『今だッ!』

『「ええ!」』

 

 だがその瞬間に、ダイヤがクリスタルホルダーに手を伸ばした。

 

『「セレクト、クリスタル!」』

 

 ホルダーから取り出したのは、先ほど克海たちが手に入れたばかりの土のクリスタル。それを指で弾いて、二本角を出してルーブジャイロにセットする。

 

[ウルトラマンビクトリー!]

 

 ダイヤの背後でVの字のカラータイマーを持つウルトラ戦士のビジョンが胸を張り、土が弾けた。

 

『纏うは土! 琥珀の大地!!』

 

 ロッソの合図の下に、ダイヤがジャイロのグリップを引いていく。

 

『「ダイヤッホー!」』

 

 高らかに叫んで三回目を引くと、ダイヤの周囲が渦巻く土で覆われた。

 

[ウルトラマンロッソ! グランド!!]

 

 土の力をその身に宿した琥珀色のロッソが、大地を砕いて立ち上がった!

 

『でゅわあぁぁ――――!』

 

 新たな姿となったロッソの中で、ダイヤは静かに向かってくるウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツを見据える。

 そして十分な距離まで引きつけてから、足元の地面を拳で叩いた!

 

「『グラビティホールド!!」』

 

 土が噴き上がってウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツを取り囲むと――その黒い肉体を、空中でビタッと止めて静止させた。

 

『う、動けな……!?』

『おおおぉぉぉぉりゃあああああッ!!』

 

 更にロッソが両の拳を振り下ろすと、高重力で身動きを封じられたオーブダークが土ごと地面に叩きつけられた!

 

『ぐはぁッ!? し、省略するなと……うおおおぉぉぉぉぉ!?』

 

 地面に押さえつけられるオーブダークは、最早顔を上げることすら出来ない。

 

『「克海さん! お姉ちゃん! すごい!」』

『全てをつなぎ止め、支え、守る。これが大地の力だ』

 

 ロッソが唱えると、ダイヤが固くうなずく。

 

『「わたくしたち人間も同じですわ。誰も一人で生きているのではない。互いに支え合いながら、明日を生きていく! 一人が集まり、皆で進む未来!」』

 

 ダイヤとルビィが声をそろえて、高々と謳った。

 

『「「ワンフォーオール!!」」』

『な、何を小癪な……ぬああぁぁぁぁッ!!』

 

 その場から一歩たりとも動けないオーブダークに、ブルがとどめの攻撃の準備をする。

 

『終わりにしようぜ!』

『「うんっ!」』

 

 ルビィが風のクリスタルから一本角を出して、ルーブスラッガーにセットした。

 

[ウルトラマンティガ!]

 

 ブルがX字に剣を振るい、交差した光刃に炎を乗せて撃ち出す!

 

「『ブリンガーフラッシュ!!」』

 

 オーブダークカリバーを杖にしてようやく立ち上がったオーブダークだが、その時には既に遅い。

 三枚の風と炎の刃が、オーブダークにぶち当たって回転し、偽りの光を引き裂いていく!

 

『ぐわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――ッッ!!!』

 

 オーブダークの肉体が粉々に砕け散って爆発し、宙を舞った魔剣がブルたちの背後に突き刺さり、そして消え失せていった。

 

 

 

「ぐッ……うぅぅ……!」

 

 オーブダークの身体を砕かれ、愛染の姿に戻されたサルモーネは、立ち上がることも出来ない状態ながら地面の上を這いずり、落としたオーブリングNEOを手に取ろうと腕を伸ばす。

 

「あ、あと少し……!」

 

 もう数センチで指が掛かる――その時に、克海の手がリングを掴んでサルモーネから遠ざけた。

 克海とともに、功海や黒澤姉妹、現場に駆けつけた曜たちも倒れたままのサルモーネを見下ろす。

 

「これでウルトラマンに……!」

「なッ!? か、返せぇッ! 私のリング……!」

 

 血相抱えて克海の足に腕を伸ばすサルモーネだが、その手の甲を、ガッ! と果南の踵が踏みつけた。

 

「ぐあぁッ!?」

「……」

「ひッ!?」

 

 果南から計り知れないまでの怒気をぶつけられ、怖気づくサルモーネ。だが果南は何の言葉も浴びせずに、唾棄するようにサルモーネから背を向けた。

 克海たちはリングを取り上げ、サルモーネの前から立ち去っていく。

 

「こいつは俺たちが預かる」

「もう二度と使わせねぇ」

「ま、待てぇ……!」

 

 サルモーネには彼らを追いかける力すら残っていない。

 そこに、克海たちと代わるように、聖良と理亞もやってくる。

 

「……私たちは、函館に帰ります。短い間でしたが、お世話になりました」

 

 聖良がペコリと頭を下げると――アイゼンアイドルスクールへの転入手続きの書類を、ビリビリに破ってサルモーネの目の前に投げ捨てた。

 理亞は、サルモーネを一顧だにもしなかった。

 

「――うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――!!」

 

 正義(リング)も、(アイドル)も一辺に失ったサルモーネの絶叫が、野原に響き渡った。

 

 

 

 数日後、綾香市の夏祭り。

 克海と功海は岸部から、海上に設置されたステージで歌い始めるAqoursを見つめている。

 

(♪未熟DREAMER)

 

「いや~、まぁ色々あったけどさぁ、終わり良ければ全て良しって感じだな。何もかも、丸く収まったじゃん」

 

 功海が快活に笑いながら、舞台上の『九人』に目を向ける。

 

「ああ。Aqoursは、これで本当の姿になったと言えるな」

 

 克海が温かい目で見つめるのは、舞台の中央の、鞠莉、ダイヤ、そして果南。

 

「けど果南が頑固にスクールアイドルを拒んでたのが、鞠莉のためだったなんてなぁ。克兄ぃも初めから言ってあげりゃよかったのに」

「あくまで部外者の俺が口を挟んだら、余計に話がこじれるかもしれないだろ? 果南ちゃんたち、かなりの意地っ張りだからな」

「それもそうかもな。でも、スクールアイドルのために留学の話を次々蹴ってた鞠莉のことを気に病んで、東京のイベントを口実に強引に活動打ち切るとか……三年生組は、色々とやることが極端だな。そのせいでめんどくさいことになるとか」

「まぁな……。だけど、やっとみんな素直になれたんだ。今までの分も取り戻すほど、みんな飛躍していくだろう」

 

 安堵の眼差しでAqoursの活躍を見守る克海。そこに功海がもう一つ尋ねかける。

 

「ところでさ、果南たちの元々のグループの名前もAqoursだったんだって? これって偶然なのか?」

「まさか。千歌たちが名前を決める時に、砂浜にいつの間のか書かれてたって名前……書いたの誰だと思う?」

「え? その時の果南の訳ないし、鞠莉も砂浜にはいなかったろうし……あッ、まさか!」

 

 ダイヤを見やる功海。克海はフッと破顔した。

 

「一番反対してるように見せかけて、一番応援してた訳だ。ダイヤちゃんは」

 

 

 

 ――アルトアルベロタワーの隠し部屋。サルモーネはクリスタルホルダーを前にして、プルプルと震えている。

 

「ワンフォーオールだとぉ……!? ちっくしょぉぉぉぉッ!!」

 

 怒りのままにクリスタルを弾き飛ばして八つ当たりしたサルモーネ。だがすぐに我に返ると、慌てて床に散らばった怪獣クリスタルを拾っていく。

 

「あぁぁぁごめんねごめんねッ!」

 

 クリスタルにペコペコ謝るサルモーネ。その背後から氷室が近寄り、彼に一枚のクリスタルを差し出す。

 

「社長、これを」

 

 氷室から、「獣」と書かれたクリスタルを受け取ったサルモーネの顔が、ニタリと歪む。

 

「そうだ……まだこいつがあった……!」

 

 ククク、とほくそ笑むサルモーネの背後で、氷室は眼鏡のレンズを怪しく光らせていた――。

 

 

 

『Aqoursのウルトラソングナビ!』

 

千歌「かんかんみかん! 今回紹介するのは『ウルトラマンビクトリーの歌』だよ!」

千歌「この歌は以前紹介した『ウルトラマンギンガの歌』と同じで挿入歌なの! タイトルの通り、ビクトリーさんが活躍してる場面で流されてたね」

千歌「だけど劇中で使用されたのは四回だけ。それも前半に集中してたから、「ギンガの歌」よりは印象に残ってないって人も多いんじゃないかな? でもシェパードンセイバーの初登場を盛り上げてくれたよ!」

千歌「歌詞は王道的なヒーローソング! それとビクトリーさんが地底人のビクトリアンのウルトラマンだから、大地とか地球とか、土に関する言葉がサビに使われてるね。ビクトリーさんのイメージにピッタリだね!」

克海「そして今回のラブライブ!サンシャイン!!の歌は『未熟DREAMER』だ!」

功海「第一期第九話の特殊エンディングとして使用された歌だな! アニメ版において、初めて九人がそろったAqoursの初ライブ曲という大事な場面を飾った曲だぞ!」

克海「千歌たちは大きな壁にぶち当たったばかりで、三年生たちも未熟だった。それでも夢に向かって進んでいく決意をしたことを象徴する一曲だ!」

千歌「それじゃあ、また次回でね!」

 




果南「オーブダークを破って、克兄ぃたちも私たちも新しい一歩を踏み出した! だけどその矢先に、また大きな壁が! あなたは何者!?」
鞠莉「違う宇宙から来た!? ウルトラマンを知ってる!? 一体誰なんですかー!?」
果南「克兄ぃたちが負けたら、ジャイロを没収するって!? 何が目的なの!?」
鞠莉「次回、『彼らのSTART:DASHはまちがっているのか。』!」
果南「次回も、ハグしよっ!」
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