ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

28 / 70
アイゼンTrapper(B)

 

 翌日。内浦の被害はかなり大きく、海の家は当分営業停止。手伝いがなくなってしまったAqoursだが、合宿自体は続行することとなる。

 しかし二日目の今日の午後、Aqoursと克海、功海はある理由で綾香に来ていた。

 

「……千歌の奴、大丈夫か? サルモーネ……いや、愛染に会いに行くなんて言いやがって」

「向こうも、まさか千歌に直接手を出すような真似はしないと思うが……」

 

 功海と克海は公園から、不安げにアルトアルベロタワーを見上げてつぶやいた。

 早朝、千歌はいきなり愛染に会いにアイゼンテックを訪問すると言い出した。当然克海たちはそろって反対したが、理由を言うことは出来ないので、強くは反対できず、押し切られてしまったのだった。その代わり、もしもの場合に備えて一緒に綾香までついてきたのである。

 

「千歌さん、大丈夫でしょうか……」

「まぁ、梨子さんと曜さんがついていっていますから、万一のことがあればすぐに連絡がありますわ」

 

 心配するルビィにダイヤが言い聞かせていると、克海と功海は彼女たちの方へ振り向く。

 

「千歌のことは別にしても、サルモーネは今日にでもまた悪事を働くかもしれない。まだ何も起こってない内に、連携の練習をしとこう」

「絶対奴をぶっ倒して、リングを取り返すぜ!」

「おぉー! ずら!」

「任せて克兄ぃ! 功兄ぃ!」

 

 千歌が戻るまでの間に、克海たち一同はオーブダーク打倒のためのチームワークを磨き始めた。

 

 

 

 その頃、梨子と曜は千歌が入っていったアイゼンテックの社長室の扉に密かに張りつき、中の会話に聞き耳を立てていた。

 

「あいつ、千歌ちゃんに何もしないよね。もしもの時は、すぐに踏み込めるようにしなきゃ……!」

「しっ。聞こえるわ」

 

 中の千歌に気づかれないように気を配りつつ、聴覚に意識をこらす二人。

 社長室では、千歌がサルモーネと面と向かって話をしている。

 

「それじゃあ……本当に、お兄ちゃんたちとは何もなかったんですか?」

「もちろんさぁ。強いて言えば、私がちょっとお節介を焼き過ぎたことかな」

 

 サルモーネも真実は口にせず、千歌にははぐらかしたことを返している。

 

「君のお兄さんとお友達のみんなは、とっても自立心が強いみたいだ。それで余計なことをしたって思われちゃったみたいだねぇ。いやぁ、彼らの気持ちを慮れなかいとはこの愛染正義もまだまだだ!」

「あ、愛染さんは悪くないですよ! ほんとにそうなら、あんなに怒ったお兄ちゃんたちが失礼だったんたし……ごめんなさい」

「いーよいーよ謝ってくれなくたって。それより……」

 

 頭を下げた千歌に、愛染が目を細めながら告げる。

 

「私は本当に君たちのことを買ってるんだ。だから、君から彼らのことを説得してくれないかな?」

「え?」

「!!」

 

 聞き耳を立てている梨子と曜の顔色が変わった。

 

「君だって行ってみたいだろう? ハリウッド。狭い田舎町で、何の指導者もなしにラブライブ優勝しようなんてとても大変なことだよ。本場ハリウッドで勉強すれば、将来はトップスターにだってなれることだろう! どうかな? 君から言ってくれれば、みんなも考え直してくれると思うんだけど」

 

 誘惑を掛けるサルモーネ。梨子と曜は、千歌が何と返答するものかとハラハラする。

 そして、肝心の千歌の回答は、

 

「……お気持ち、ありがとうございます」

「おお、ではッ!」

「ですけど……すみませんが、私もそのお話しはお断りさせてもらいます」

「……何ぃ?」

 

 梨子たちは驚いて、思わず顔を見合わせた。

 

「私たちは、浦の星をなくさないようにがんばってます。今浦の星から離れちゃえば、私たちは有名になるかもしれませんけど、きっと浦の星に生徒を集めることは出来なくなっちゃうから……。だから、私たちだけが得する道は選べないんです。すみません、せっかく愛染さんが気に掛けてくれたのに……」

「……いやいいんだよ~。少ーし残念だけど、そういうことなら仕方ない。だけど、私だったらいつでも待ってるからね~」

「ありがとうございます。お話しはこれだけです。今日はありがとうございました」

「気をつけて帰ってね~」

 

 サルモーネにペコリと一礼して、社長室から退室する千歌。――その途端に、ダバーと感涙している梨子と曜に左右から抱きつかれた。

 

「千歌ちゃぁんっ!」

「わっ!? 二人とも、どうしてここにいるの!?」

「ラブライブ優勝しようねぇ! 絶対、絶対浦女を存続させようねぇ~!」

「う、うん……」

 

 やや気圧されながら、二人と一緒に社長室の前を離れていく千歌。それをニコニコと見送ったサルモーネだが――完全に姿が見えなくなると、その顔がしかめ面に一変した。

 

「けッ! 青っちろい小娘がカッコつけおって! 結局ぼんくら兄弟の妹もぼんくらかッ! 私の言うことを大人しく聞いてりゃあいいものを! あ~無駄な時間過ごしたッ!!」

 

 肩を怒らせながらデスクの前まで回っていくサルモーネ。

 

「もうあんな石ころのことなど忘れて、ダイヤの原石の研磨を始めるとしようか! この台本でッ!」

 

 と言って取り出したのは、表紙に『THE ULTRA M@STER ORB DARK NOIR BLACK SCHWARTZ』と書かれた台本だった。サルモーネの手作りだ。

 

「『夏休みのある日、アイゼンアイドルスクールのスクールアイドルたちが突如怪獣の魔の手に掴まってしまう! それを救うウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ! しかしアイドルたちは知ってしまう。その正体が愛と正義の伝道師、愛染正義であると! この出会いこそが、彼女たちがスクールアイドルなどというお遊びではない、真のウルトラマンと歩む真のアイドルの道を踏み出すスタ→トとなるのであった……』。うーむ我ながら完璧なシナリオだぁ!!」

[昨日出撃したばかりなのに、また戦闘するのですか?]

 

 自画自賛しているサルモーネに、ウッチェリーナが尋ねかける。

 

「この業界はスピード勝負だ。畳みかける大活躍で、私が真のヒーローだと印象づけるのだよ!」

[なるほどぉ! 流石社長!]

「それではぁ、よーいアクション!」

 

 サルモーネがAZジャイロに「毒」のクリスタルを嵌め込み、レバーを引き始めた。

 

「第三話ぁ! 『スタ→ト日和』! みんなで見ようッ!!」

 

 クリスタルから召喚された怪獣が、綾香の上空に解き放たれる!

 

 

 

 サルモーネに集められていた『特待生』の内、二つのリボンを結んだ娘と双子のスクールアイドル三人が、アイゼンアイドルスクールの正門前に集まっていた。

 

「理事長、こんなところに呼び出して何の用事なんだろ?」

 

 リボンの娘がぼやいていると、そこにサルモーネの召喚した虫型怪獣が空から急襲を掛ける!

 

「キイィィ―――!」

「え? きゃああああ―――――――!?」

 

 宇宙悪魔ベゼルブ! ベゼルブは手中にスクールアイドル三人を捕らえて浮上し、綾香の街を火炎弾で爆撃後に着地する。

 

「うわああぁぁぁぁ―――――――!」

「た、大変です! 女の子が三人、怪獣の手の中に捕まってます!」

「助けてぇーっ!!」

 

 街はたちまち大混乱。その光景をタワーから満悦気味に見下ろすサルモーネ。

 

「よしよし、ここまでシナリオ通り。それでは、主役の登場と行こうか……!」

 

 サルモーネは早速オーブリングNEOを使用し、変身を行う。サルモーネに手に取られたリングが闇に染まる。

 

「絆の力……お借りしまぁすッ!」

ウルトラマンオーブダーク!

 

 変身したオーブダークが肩にオーブダークカリバーを担ぎながら、ベゼルブの正面に着地した。その背後に飛行船が旋回する。

 

『銀河の光がオレも呼ぶ! 我は、ウルトラマンオーブダークノワールブラックシュバルツ!!』

「キイィィ―――!」

 

 ベゼルブとにらみ合うオーブダークに、綾香の市民が口々に声援を送る。

 

「ウルトラマーン! がんばれー!」

「女の子たちを助けてー!」

 

 これを受けたサルモーネがにんまりとほくそ笑む。

 

『うむうむ! 全てオレに任せておきなさい! ハッハッハッ!』

 

 ベゼルブはスクールアイドルたちを手中に捕らえたまま、火炎弾を吐き出してオーブダークに攻撃。それを切り払ったオーブダークは、ベゼルブに文句を飛ばした。

 

『こらこらぁッ! いきなり派手な技を使うんじゃない! 最初は強めに当たって、後は流れだッ!』

 

 その場に剣を突き刺すと、ベゼルブに駆け寄って素手による格闘戦を始める。

 

『でゅわぁッ!』

「キイィィ―――!」

 

 ベゼルブの腹部に前蹴りを入れ、頭突きを決めるオーブダーク。痛がって悶えるベゼルブを叱りつける。

 

『ボサッとすんな! 次はお前の番だ! ほら、ここにドンとッ!』

「キイィィ―――!」

 

 自分の胸を殴らせるオーブダーク。捕まっているスクールアイドルたちは、ベゼルブに振り回されて悲鳴を発する。

 

「きゃああぁぁぁ――――――――っ!」

 

 ――その声を聞きつけ、克海たちが戦闘の現場の付近まで駆けつけてきた。

 

「関係のない子たちに、あんな危険な思いをさせるなんて……!」

 

 スクールアイドル三人に注視し、怒りを覚える鞠莉。功海は花丸に振り向く。

 

「もうあいつの好きにはさせねぇ! 行こうぜ、花丸!」

「うん! マルたちで、あの人たちを救うずら!」

「しっかりやりなさいよ、ずら丸!」

 

 応援する善子。克海は果南の方へと振り向いた。

 

「果南ちゃん、君は初めての実戦になるが、頼んだぞ! この戦いには、絶対負けられない!」

「もちろん! これ以上街の人たちを巻き込ませないんだから!」

「お願いしますわ、果南さん!」

 

 人一倍張り切る果南。そして兄弟がルーブジャイロを構える!

 

「「俺たち色に染め上げろ! ルーブ!!」」

 

 克海と功海がそれぞれ、両腕を胸の前に広げるよう伸ばす果南と、祈るように手を握る花丸を後ろにしながらクリスタルを選択する。

 

「「セレクト、クリスタル!」」

 

 火と水のクリスタルがジャイロにセットされ、タロウとギンガのビジョンが現れた。

 

[ウルトラマンタロウ!]

[ウルトラマンギンガ!]

「纏うは火! 紅蓮の炎!!」

「纏うは水! 紺碧の海!!」

 

 レバーを三回引いて、四人がウルトラマンに変身!

 

[ウルトラマンロッソ! フレイム!!]

[ウルトラマンブル! アクア!!]

 

 ベゼルブと戦っていたオーブダークは、剣の元に戻って地面から引き抜く。

 

『そろそろクライマックス……!』

『はぁッ!』

 

 オーブダークカリバーを構えようとしたオーブダークに、ロッソの飛び蹴りが命中する。

 

『いでぇッ!? いきなり何す……!』

『はぁーッ!』

 

 顔を上げたオーブダークに、今度はブルの蹴りが炸裂して地面に転がった。

 

『ぐへあぁッ!? 『一男蹴って、また二男』んッ!?』

 

 オーブダークとベゼルブの間に割り込んだロッソとブルは、背中合わせになってそれぞれとにらみ合う態勢となる。

 オーブダークは自分をにらむブルに切っ先を向けた。

 

『おいッ!? 何故邪魔しに来たぁッ! もう二度と変身しちゃダメだって言ったろ!!』

 

 地団太を踏むオーブダークに、ロッソが振り返る。そこを狙ってベゼルブが背後から飛び掛かろうとする。

 

「キイィィ―――!」

『『うるさいッ!』』

 

 が、顔面に二人からの肘が刺さって返り討ちにされた。

 ぶっ倒れるベゼルブを尻目に、ロッソがオーブダークに宣告。

 

『自分で仕組んだヒーローごっこはやめてもらう!』

『「こんな茶番劇はおしまいなんだから!」』

 

 ブルとタッチしたロッソが起き上がるベゼルブに掴みかかっていき、ブルはオーブダークに指を向けた。

 

『綾香市は俺たちが守る!』

『「悪いことするあなたは、マルたちがやっつけるずら!」』

 

 堂々と宣言し、ブルがルーブスラッガーを角から引き抜いた!

 

「『ルーブスラッガーブル!!」』

 

 オーブダークに肉薄し、鍔迫り合いを行うブル。彼が抑えている間に、ロッソがベゼルブから人質を奪還しようと肉弾戦を繰り広げる。

 

『「その子たちを放しなさいっ!」』

「キイィィ―――!」

 

 膝蹴りでベゼルブの手の力を弱めようとするロッソ。ブルはスラッガーで振り回されるオーブダークカリバーを弾き返している。

 

『えぇい邪魔だぁッ!』

『「邪魔してるんだから当たり前ずらっ!」』

 

 ブルとオーブダークが激しく切り結ぶ姿に、市民たちは困惑した。

 

「ウルトラマン同士で戦ってるぞ!?」

「仲間なんじゃないのか!?」

 

 ロッソはベゼルブの右腕を掴んで、その手の中のスクールアイドルたちを解放しようとするも、ベゼルブは羽を広げて飛び上がり抵抗。

 

「キイィィ―――!」

 

 空に逃れて火球弾で反撃してくるベゼルブ。ロッソはそれを腕で全て打ち払った。

 

『はッ! 待てッ!』

 

 飛び回るベゼルブを追うロッソ。ブルはオーブダークと、刃と刃をぶつけ合って火花を散らす。

 

『てあぁッ!』

『ぬぅッ!』

 

 オーブダークを押し返すと、ブルの背中にロッソが背中を合わせた。

 

『あいつ速いな!』

『「功兄ぃ! クリスタルチェンジだよ!」』

『オッケー!』

『「行くずら!」』

 

 花丸が果南へと水のクリスタルを投げ渡し、自分は土のクリスタルを選び取る。

 

『「「セレクト、クリスタル!」」』

 

 クリスタルをジャイロにセットして、果南と花丸がレバーを引いていく。

 

『纏うは水! 紺碧の海!!』

『纏うは土! 琥珀の大地!!』

『「ハグしよっ!」』

『「お花ーまるっ!」』

 

 ロッソアクアとブルグランドに変身すると、ロッソがアンダースローでスプラッシュ・ボムを飛ばした。

 

『これならどうだぁッ!』

 

 水球はベゼルブの羽に纏わりついて羽ばたきを阻害し、浮力を失ったベゼルブが墜落していく。

 

「キイィィ―――!」

「きゃああああああああっ!!」

 

 そこに駆けていくロッソ。手の平に水球を作り、落下するベゼルブとすれ違う。

 

『はッ!』

 

 ロッソは水球をクッションにしてスクールアイドル三人を奪い返した。ベゼルブはそのまま頭から地面に激突。

 

『「盗塁成功!」』

『おいゴラァッ! 勝手に助けるなぁッ!』

 

 切れたオーブダークがロッソに後ろから斬りかかろうとするのを、ブルのパンチが押し返した。

 

『ぶッ!』

『お前こそ、勝手なこと言うんじゃねぇ!』

『「あの人たちには手を出させないずら!」』

 

 ロッソは今の内にスクールアイドルたちを安全な場所まで移し、そっと地面に下ろした。

 

『「さぁ、早く逃げて!」』

 

 クイッと顎でしゃくって避難を促すロッソ。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 三人はそれに従って、タタタタッと走り去っていった。

 

『く、くっそぉー! こうなったら怪獣だけでもぉ!』

『そうはさせるかッ!』

 

 あきらめ悪く、ベゼルブにとどめを刺そうとするオーブダークに反転したロッソが飛び掛かって剣を受け止めた。彼と位置を交代したブルはベゼルブに狙いを定め、両腕にエネルギーを込める。

 

「『アースブリンガー!!」』

 

 地面に叩き込んだエネルギーが地表伝てに走っていき、おきあがったところのベゼルブを呑み込む!

 

「キイィィ―――!!」

 

 ベゼルブは一撃で、木端微塵に消し飛んだ!

 

『うわああぁぁぁぁぁああああああああ――――――――!! 台無しだぁぁぁああああああああ―――――――――――!!』

 

 怪獣へのとどめも奪われたサルモーネは、台本をビリビリに破り捨てながら慟哭。膝を突いてドンドン道路を殴り、激しく悔しがる。

 

『そんなにか……』

『「呆れ果てた……」』

 

 ドン引きのロッソの下に駆け寄るブル。――その時に、千歌が梨子、曜とともにロッソたちの様子が一望できる場所まで走ってくる。

 

「戦いは終わった……のかな……?」

「やったんだね、克海さんたち……!」

「うん……! あいつにひと泡吹かせてやったね……!」

 

 千歌に気づかれないよう顔を背けながら、こそっと喜び合う梨子と曜。――そのため、ロッソとブルが拳を打ち合わせてタッチするのを千歌が目撃したことには気づかなかった。

 

「! 今のって……」

 

 千歌にはそのポーズと――克海と功海の姿が重なって見えた。

 健闘を称え合ったロッソとブルだが、そこにオーブダークが不穏な様子でゆらりと起き上がる。

 

『よくも! よくもッ! よぉぉぉぉくもぉッ!! もー許さんッ!! 消え失せろにせウルトラマンどもぉぉぉぉぉぉぉッ!!』

 

 目を血走らせたオーブダークが、二人へ全力で剣を振り下ろした! 咄嗟に左右に分かれてかわすロッソとブル。

 

『許さないはこっちの台詞だ!』

『偽物はお前だろッ!』

『「みんなに迷惑ばっかり掛けて!」』

『「お仕置きずら!!」』

 

 とうとう我慢がならなくなったロッソたちが、オーブダークを捕まえて締め上げる。

 

『「えいえい! 善子ちゃん直伝、コブラツイストずら!」』「堕天龍鳳凰縛よ!」

『「さぁ! 降参しなさいっ!」』

『だ、誰が降参など……いででででででッ!』

 

 ブルが拘束し、ロッソがオーブダークカリバーを奪い取ろうとする。――その時に、少し離れた場所のビルの屋上に、黒い服装の怪しい雰囲気の少女が上ってきた。

 少女は右手に奇怪な模様が走るジャイロを、左手に――ウッチェリーナより先に回収した獣のクリスタルを取り出し、クリスタルをジャイロに嵌め込む。

 

ホロボロス!

 

 少女は小脇でジャイロのレバーを二回引き、三回目に正面に回してチャージしたエネルギーを解放する――!

 

『ん?』

 

 ロッソたちがオーブダークと乱闘している、その頭上に空間の穴が開き、三人が思わず見上げた。

 直後に穴から巨大な光球が降ってきて、咄嗟に身を引いてかわした。

 

『な、何だ!?』

『「まさか、新手!?」』

 

 警戒する果南だが、オーブダークも困惑している。

 光球が弾けると、その中から出てきたのはホロボロスであった。

 

『またお前の仕業か……!』

『汚ねぇぞッ!』

『「この期に及んで、潔くないずら!」』

 

 花丸たちに糾弾されたオーブダークはブンブン手を振る。

 

『違う違う違う違う! オレ知らないよ!?』

『「つまらない嘘吐かないでよ! あんた以外に、誰がいるの!」』

『ホントなんだってば! ほら、今変身してるし!』

 

 オーブダークが虚言を弄しているようには見えないので、ロッソたちは戸惑う。

 

『どういうことだ?』

『どっちにしたって倒すしかないっしょ!』

『待てッ!』

 

 攻撃を仕掛けようとするブルを、ホロボロスの様子がおかしいことに気づいたロッソが押しとどめた。

 ホロボロスは突然全身からスパークを発して、黄色い眼を赤く染め上げると、肉体をゴキゴキと変形させ始めた!

 

『「な、何事ずらぁ!?」』

『「どうなってるの……!?」』

 

 目を見張る花丸たちの前で――ホロボロスの爪がバックリ開いてベアークローのようになり、背筋が伸びて二本足で立ち上がった。

 

「ウオオオオオ―――――ン!」

『た、たたたたたッ! 立った!?』

『何が起きてるんだ……!』

 

 事態の急変についていけないロッソたちだが、時間が経ち過ぎていることで、カラータイマーが点滅を始めた。

 

「え!? え!? どういうこと!?」

「戦いは、もう終わったんじゃ……!」

 

 戦闘を見守っていた鞠莉たちや、曜、梨子も混乱している。

 そして千歌も――ホロボロスを召喚した少女も、事態の流れをじっと見つめていた。

 

 

 

『Aqoursのウルトラソングナビ!』

 

花丸「お花ーまるっ! 今回紹介するのは『ULTRAMAN ORB』ずら!」

花丸「この曲はタイトル通り、『ウルトラマンオーブ』の主題歌……じゃなくて、そのスピオンオフ作品の『THE ORIGIN SAGA』の主題歌ずら! アマゾンプライムで独占配信されてる、『オーブ』の前日譚ずらよ!」

花丸「歌うのは浅倉大介さんと、あのつるの剛士さんずら! 言うまでもないことかもしれないけど、つるのさんは『ウルトラマンダイナ』の主人公アスカ・シン役を務めた役者さんで、『THE ORIGIN SAGA』にもアスカ役で出演してるずらよ」

花丸「『ORIGIN SAGA』はオーブがウルトラマンになってすぐの事件を描いた作品だから、テレビ本編と比べて未熟なところが多いずら。その部分が歌詞にも反映されてて、ちょっと重い雰囲気の歌になってるずら」

克海「そして今回のラブライブ!サンシャイン!!の曲は『Strawberry Trapper』だ!」

功海「以前も紹介したGuilty Kissの歌った曲だな! 過激な意味の言葉が次々出てくる、アダルチックなイメージの歌だぞ!」

克海「Guilty Kissを構成する鞠莉ちゃん、梨子ちゃん、善子ちゃんもAqoursで比較的クールなイメージの三人だな」

花丸「それじゃ、また次回ずら!」

 




克海「ホロボロス……こいつは今までの怪獣とはひと味違うぜ……!」
功海「こんな奴、どうやって倒せばいいんだよ!」
千歌「お兄ちゃん! 私信じてる! だから負けないで!!」
克海&功海「千歌!!」
克海「次回、『俺たちの想いよひとつになれ』!」
克海&功海「俺たち色に染め上げろ! ルーブ!!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。