怪獣を使い、自作自演のヒーロー劇を繰り広げるサルモーネ。克海と功海はその身勝手を許せず、Aqoursと力を合わせてその悪行をくじいた。――しかしその矢先にホロボロスが再度出現。しかも今度は変形して立ち上がった!
何かがおかしい。残り時間の猶予が少ないロッソとブルは、この事態を収拾することが出来るのか――。
「ウオオオオオ―――――ン!」
『どうなってんだよ……!』
『分からん……!』
二足で立ち上がり、雄叫びを上げるホロボロスにロッソとブルは狼狽。オーブダークも事態を呑み込めずにうろたえているが、その時に綾香の市民から声が上がる。
「昨日の怪獣だぁー!」
「助けてー! ウルトラマーン!」
これを耳にしたオーブダークが虚勢を張った。
『な、何が何だか理解が追いつかんが……みんなの期待に応えてこそヒーロー! オレに任せなさーいッ!』
ドンと胸を叩いてオーブダークカリバーを構えると、ホロボロスに肉薄して肩口に振り下ろした。
『でゅわぁッ!』
刃は肩の筋肉に止められるが、この隙に手の平を押し当てて停止信号を打ち込む。
『よぉし、これで……!』
安堵の息を吐くオーブダークだが――ホロボロスには何の反応がなかった。
『あれ?』
「ウオオオオオ―――――ン!」
ホロボロスはオーブダークカリバーを弾き飛ばすと、オーブダークの顔面をしたたかに引っかいた。
『でゅわぁぁーッ!?』
「ウオオオオオ―――――ン!」
張り倒されたオーブダークにホロボロスが馬乗りになって、連続で鉤爪を突き立てる!
『ぎ、ぎゃあああぁぁぁぁぁぁ――――――――!!』
『「何だか様子が変だよ!?」』
『お、おいッ!』
一方的に打ちのめされるオーブダークの姿にロッソたちも思わず焦り、止めに入ろうと身を乗り出したが、既に遅かった。
「ウオオオオオ―――――ン!」
ホロボロスはオーブダークの首根っこを掴んで無理矢理立たせると、反対の手の爪で腹部を貫通した!
『でゅわあああぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――ッ!!』
串刺しにされたオーブダークが断末魔を上げ、エネルギーが暴走。肉体が弾け飛んで消滅した。
『「じ、自分の怪獣にやられちゃったずら!」』
『どうなってんだよ一体!?』
まさかの展開に仰天しているブルたち。だがいつまでもじっとしていられそうになかった。
「ウオオオオオ―――――ン!」
オーブダークをなぶり殺しにしたホロボロスが振り向き、こちらを見たのだから……!
「ウオオオオオ―――――ン!」
ホロボロスは完全にロッソとブルを次の獲物に定め、爪を振りかざして走ってくる!
『やべぇよ! こっち来たッ!』
『時間がない! 早くあいつを倒さないとッ!』
ロッソがスプラッシュ・ボム、ブルが槍状の光線、ロックブラスターを発射して攻撃。
『はぁーッ!』
「ウオオオオオ―――――ン!」
二人の攻撃をその身に食らうホロボロスだが、勢いが緩んだのは一瞬だけ。すぐに飛びついてきて二人纏めて引きずり倒す。
『うわあぁぁぁぁッ!』
「ウオオオオオ―――――ン!」
それからホロボロスはすさまじい腕力で二人の首根っこを掴み、それぞれ片腕で吊るし上げる。苦痛で必死にもがくロッソたち。
『は、放せ……!』
『「う……うぅぅぅりゃあああっ!」』
『「やあああぁぁぁぁぁぁっ!」』
花丸と果南が力を振り絞ることでブルとロッソの力を引き上げ、どうにかホロボロスから逃れさせる。
『「あ、危なかったずら……でも……!」』
『「あいつ無茶苦茶だよ……!」』
汗でびっしょりの二人。ホロボロスの異常なフィジカルの強さには、果南ですら戦慄するほどであった。
しかもエネルギーを酷使したために、ロッソたちの体力も残されていない。
「ウオオオオオ―――――ン!」
『うわああぁぁぁぁッ!』
『「あああぁぁぁぁっ!」』
ホロボロスが爪を交差するよう振るい、二人の身体を切り裂く。防御しようとしたロッソたちだが防ぎ切れず、深いダメージを負って片膝を突いた。
「功海さん! 克海さんっ!」
「ずら丸ぅっ!」
「果南さんっ!!」
瞬く間に追いつめられるロッソたちのありさまに、ルビィたちも悲鳴を発する。
「ウオオオオオ―――――ン!」
更にホロボロスは両腕の爪から光刃を作り出し、それを飛ばしてくる!
『『うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!!』』
余力のないロッソとブルはかわすことも出来ず、派手に吹っ飛ばされた!
「克海さぁんっ!!」
「功兄ぃーっ!!」
あまりのことに梨子と曜が、千歌がいることも忘れて絶叫した。
『うッ……! ぐッ……!』
『ぐあぁぁ……!』
光刃が致命傷となって、ロッソとブルが消え去り、後には倒れ伏した克海たちだけが残された。
「大変……!」
「助けに行かなきゃ!」
「あっ! 二人とも!」
血相を抱えた梨子と曜は脇目も降らずにその場所へと急いでいく。後に続こうとした千歌だが、そこに光る物体が飛んできたので思わず足を止めた。
「え……!?」
不自然な動きで飛んできた発光体は、光を収めるとその場に落下した。――それは、オーブダークが弾け飛んだ際に同時に吹っ飛ばされたオーブリングNEO。それがいやにゆっくりとした速度で、千歌の目の前に来たのであった。
「これって……功海お兄ちゃんが持ってた奴……」
リングを手に取った千歌は、すぐにそれが功海の持っていたものと同じであることに気づいた。
「じゃあ、お兄ちゃんたちが……!」
我に返った千歌は、リングをポーチに仕舞い込むと、急いで梨子たちの後を追いかけていった。
「みんな……!」
鞠莉たちと梨子、曜は息せき切って、ロッソたちが消えた地点へと駆けつけた。
そこで彼女たちが目にしたのは、アスファルトの上にぐったりと横たわる克海たち四人の姿。特にウルトラマンの本体の克海と功海の負傷具合は深刻であり、梨子たちは青ざめて息を呑み込む。
「克海さんっ! 功海さんっ!」
「功兄ぃ! 克兄ぃ! しっかりしてぇっ!」
「すぐに救急車を!」
側に駆け寄って必死に呼びかける曜たち。鞠莉は迅速な判断で病院に連絡する。
そこに、千歌も到着する。
「……みんな……!」
「ち、千歌ちゃん!」
千歌はこの光景を目の当たりにして、疑惑を確信へと変えた。
「ウオオオオオ―――――ン!」
オーブダーク、ロッソ、ブルを立て続けに打ち負かしたホロボロスは、身体を揺すって咆哮を上げる。――その近くに、召喚主の怪しい少女がやってくる。
「……」
少女が手を伸ばすと、ホロボロスはたちまち粒子に分解され、元のクリスタルに戻って少女の手の平の中に収まった。
「……」
少女はその後、克海たちを懸命に介抱するAqoursをしばし見下ろしていたが、やがて無言のままどこかへ立ち去っていった。
「……うッ……」
「うぅ……」
――意識を失っていた克海と功海が目を開くと、最初に見えたのは、『四つ角』のものではない白い天井だった。
「功兄ぃ! 克兄ぃ!」
「みんな! 克海さんと功海さんが目を覚ました!」
二人が覚醒すると、近くから曜と梨子の声が起こる。徐々に意識がはっきりしていくと、克海たちは自分らが病院のベッドに寝かされていたことを知る。
「功海さん! 克海さん!」
「よかった、無事に目を覚まして……」
ルビィとダイヤの安堵の声。二人のベッドの周りにはAqoursの八人が集まり、皆安心して胸を撫で下ろしていた。
「みんな……」
「あの後、どうなったんだ……?」
「もう一日経ってるわ。私たちで病院まで運んだの」
「ずっと起きないから、心配してたのよ……」
状況を把握できていない克海たちに、鞠莉と善子が告げた。
「そうか……。くッ、俺たちまたやられちまったって訳か……!」
「……ごめん。力になれなくて……」
悔やむ功海に、ひと足早く回復していた果南と花丸が申し訳なさそうに頭を下げた。
「いや、結局俺たちが力不足なせいだぜ……」
「こっちこそすまなかった。せっかくの合宿を、滅茶苦茶にして……」
「気にしないで下さい。それより……」
謝る克海に首を振った梨子が、非常に言いづらそうにしながらも告げる。
「実は……千歌ちゃんが……」
「千歌!?」
その瞬間に――今までにないほどに暗い表情の千歌が、克海と功海の前に進み出てきた。周りの曜たちは、気まずそうに沈黙する。
「……私、見ちゃったの。二人のウルトラマンが消えたところに、お兄ちゃんたちが倒れてたの……。だけど、みんなには何も聞いてないよ。お兄ちゃんたちの口から、直接聞きたいから……」
「……!」
「お兄ちゃん……本当のことを話してよ! お兄ちゃんたちが何をやってるのか! 何で私には何も話してくれなかったのか!」
千歌は真剣な眼差しで、克海と功海と向き合った。
アイゼンテックの飛行船が上空に巡回する綾香の雑踏の中を、謎の少女が歩いている。――彼女の脳裏にあるのは、倒れ伏した克海と功海の側に集い、二人を懸命に介抱していたAqoursの姿。
「……あの娘たち……」
ひと言つぶやいた少女は、周りに人がいない場所に滑り込んでいくと、そこでジャイロと獣のクリスタルを取り出す。
[ホロボロス!]
ジャイロのレバーを三回引いて、再びホロボロスを召喚する――!
千歌に問い詰められる克海と功海だったが、何も答えずに沈黙だけが流れる。兄妹の周りを囲む梨子たち八人は、一切口を挟むことが出来ずにただ見守るしか出来ないでいた。
しかし何かの動きが起こる前に、病院の外から轟音と震動が発生した。
「! 今のは……!」
鞠莉のつぶやきとともに聞こえるサイレン。直後に病室の扉が開かれて、医者が克海たちへ叫ぶ。
「怪獣が出ました! 指示に従って避難して下さい!」
果南が咄嗟にカーテンを開いて窓を開けると、街のど真ん中で暴れ狂うホロボロスの姿を一同が目撃した。
「ウオオオオオ―――――ン!」
「またあいつ……!」
歯ぎしりする善子。自分たちを二度も負かした怪獣が、今また出現して猛威を振るっているのだ。
「ウオオオオオ―――――ン!」
ホロボロスは剛力でビルを根元から引っこ抜き、投げ捨てて綾香の街を破壊していく。これを捨て置けない克海と功海は、すぐに普段着に着替えて出動しようとする。
「行くぞ功海……!」
「おう……!」
その後に続こうとする曜たちであったが――兄弟の前を、千歌が腕を広げて立ちふさいだ。
「行かないで!!」
「千歌ちゃん……!」
克海と功海の足がピタリと止まった。曜たちもまたその場で立ち止まる。
「そんな身体で戦いに行くなんて無茶だよ! 死んじゃうかもしれないんだよ!?」
「……」
訴えかける千歌に、梨子たちは向ける言葉がなく、兄妹の対面をひたすらに見守るばかりであった。
「何で……何でお兄ちゃんたちなの? どうして、お兄ちゃんたちがこんな危険なことをしなくちゃいけないの……?」
涙を目尻に浮かべる千歌に、克海が口を開く。
「黙ってたのは悪かった。やるべきことが終わったら、全部話す! だから今は行かせてくれ!」
「嫌っ!」
だが千歌は頑なに拒絶。
「もしもお兄ちゃんたちがいなくなったら……チカ、怖いの……」
身体が震える千歌に、功海と克海が優しく説く。
「この手で綾香市を守らなきゃなんねぇ。みんなが生きるこの街を」
「千歌たちがこれからスクールアイドルとして羽ばたく場所なんだ。壊される訳にはいかない」
「……」
二人の説得で、千歌がゆっくりと腕を下ろしていった。克海と功海はその肩にポンと手を置いてから、脇を通り抜けていく。
「千歌ちゃん、私たちも克海さんたちに力を貸すから……!」
「絶対、戻ってくるからね!」
梨子と曜も、千歌に約束する。そして克海たちを追いかけていこうとする寸前、千歌が病室から飛び出して兄弟の背中に叫んだ。
「克海お兄ちゃんっ! 功海お兄ちゃーん!」
振り返った二人は、千歌にそっと微笑みかけた。
「心配するな。俺たちは」
「「ウルトラマンだ!!」」
その言葉を最後に病院から飛び出していく克海と功海。その後を追いかけて走っていく梨子と曜。
「千歌さん……」
「……わたくしたちは、安全なところで克海さんたちの勝利を祈りましょう。きっと、気持ちは届きます!」
残ったルビィたちは、千歌を連れて避難していく。
外に出た克海、功海、梨子、曜の四人は、今もなお暴れ回るホロボロスを視界に捉えた。
「千歌ちゃんにはああ言ったけど、何か倒す手立てがないと結果は同じだよ……!」
「あのスピードが厄介なんです。動きを封じ込めることが出来れば……」
曜と梨子の言葉に、功海が作戦を提案する。
「じゃあ、縄文土器作戦ってのはどうだ」
「縄文土器?」
「克兄ぃたちは土の技で奴を泥で包んでくれ。俺たちは火の技を仕掛けて、その泥を固める」
「土は火で熱すると固くなるか……! よしッ!」
うなずき合った克海と功海がパンと手を叩き、ルーブジャイロを取り出した。
「「俺たち色に染め上げろ! ルーブ!!」
梨子と曜を後ろに控えさせ、克海と功海が土と火のクリスタルを選択する。
「「セレクト、クリスタル!」」
クリスタルから角を出してジャイロにセット。
[ウルトラマンビクトリー!]
[ウルトラマンタロウ!]
「纏うは土! 琥珀の大地!!」
「纏うは火! 紅蓮の炎!!」
克海と梨子、功海と曜を土と火の柱が覆い、ウルトラマンへと変身させていく!
[ウルトラマンロッソ! グランド!!]
[ウルトラマンブル! フレイム!!]
ロッソグランドとブルフレイムが空を飛んでホロボロスに向かっていくのを、避難していく花丸たちが見上げた。
「功海さんたち……がんばってずら……!」
固唾を呑む一同。――その時に、千歌は腰に違和感を覚える。
「……? ポーチが、光ってる……?」
「え?」
皆が振り向く中、千歌はポーチを開いて光を放つ元を取り出した。
「! それって……!」
「どうして、チカっちが……?」
千歌が取り出したのは、オーブリングNEO。それが、淡い光を発しているのであった――。