\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/
果南「大暴れする大怪獣ホロボロス! あきらめずに立ち向かう克兄ぃたちだけど、絶体絶命のピンチに……! その時に千歌が手にしてたオーブリングNEOが新しい力を与えて、遂にホロボロスをやっつけた!」
――『四つ角』で、千歌がぷくーと頬を膨らませてすねていた。
「……千歌、何であんな顔してるの?」
「それが……」
果南の問いかけに曜が苦笑いしながら答えようとするが、それより早く千歌が言う。
「お兄ちゃんたち、ひどいんだ~。みんなにはウルトラマンの秘密教えてたのに、チカにだけずっと黙ってたなんて。チカだけのけ者にしたんだ~」
「い、いや別に、そんなつもりはなかったんだぞ? ただ、結果的にそうなったってだけで……」
「そ、そうそう、なりゆきだって。だからそんな怒んなって」
克海と功海が焦りながら弁解するのを、若干呆れながらながめる果南たち。
千歌は二人の言い訳を聞くと、振り返ってこう頼んだ。
「許してほしかったらさ、私もウルトラマンに変身させてよ!」
「え?」
「もうみんなは変身したんでしょ? 私にもやらせて!」
「おいおい。ウルトラマンは遊びじゃ……」
「変身したいしたいぃ~! チカにもやらせて~!」
拒否しようとする克海に千歌はじたばたと駄々をこねる。それに肩をすくめる功海。
「しょーがねぇなぁ。一回だけだからな」
「ほんと!? ありがと功海お兄ちゃん!」
「おい功海……!」
「いいじゃん、一度だけなら。すぐ戻るからさ」
咎める克海に断りを入れて、功海は千歌と並んでルーブジャイロを取り出そうとする。
「じゃあ行くぞ。俺色に染め上げろ! ルー……!」
だがいつものようにジャイロを構えた瞬間――バチィッ! と激しいスパークが発生した。
「うおッ!?」
「きゃっ!?」
「だ、大丈夫ですかぁ!?」
スパークの衝撃ではね飛ばされる功海と千歌。周りで見ていたルビィたちは驚いて二人に駆け寄った。
「あ、ああ、大丈夫だ。けど……」
「え……えぇ~!? 何で変身できないの~!?」
ジャイロに拒絶されたことに千歌はガビンとショックを受けた。克海はジャイロを拾い上げて首をひねる。
「変だな……。こんな反応、今まで一度だってなかったのに」
「わたくしたちは皆、何の問題もありませんでしたわよね」
「どうしてチカっちだけ駄目なのかしら?」
「不思議ずらぁ~」
「もしや、天界の非情なる審判……!」
「千歌、ジャイロを怒らせるようなことでもしたんじゃね?」
「そ、そんなことないもん!」
功海の冗談にムキになった千歌は、ジャイロを力ずくで動かそうとする。だがレバーは石になったかのようにびくともしない。
「何かの間違いだよ今のは! う、動けぇ~……! うぎぎぎぎ……!」
「おいおいやめろって! 壊れたらどうすんだ!」
それでも無理矢理引っ張る千歌から功海がジャイロを取り上げた。
「うぅ~……何で私だけぇ……?」
「千歌ちゃん、元気出して……。気にすることないわよ……」
ガックリと落胆した千歌を励ます梨子。だが、不意にその眉間に皺が寄った。
彼女は、昨晩に千歌とある話をしていた――。
――後日、千歌たちは新幹線の綾香駅に集っていた。
「しっかりね!」
「お互いに」
千歌たちが見送りをしているのは、梨子。彼女はこれから、ピアノコンクール出場のために東京に向かうところであった。
同日のラブライブ予備予選のために、一度は見送ろうとした梨子。しかしこのことを偶然知った千歌に、彼女の最初の目的だったピアノをあきらめないでほしいと説得され、その結果出場を決意したのであった。
「梨子ちゃん、がんばルビィ!」
「東京に負けては駄目ですわよ!」
「チャオ♪ 梨子」
「気をつけて」
「ファイトずら!」
皆の声援を受ける梨子に、彼女らを送ってきた克海が声を掛ける。
「コンクール、頑張ってな。この綾香市から応援してるから」
「は、はい。ありがとうございます……」
頬を多少上気させながらお礼を言い、改札を通っていく梨子。その背中に、最後に千歌が呼び掛ける。
「梨子ちゃーん! 次は! 次のステージは、絶対みんなで歌おうねっ!」
「……もちろんっ!」
千歌に笑顔で応じて、梨子はホームへと駆けていった。それを見送り、ダイヤたちは踵を返す。
「さぁ、練習に戻りますわよ」
「これで予備予選で負ける訳にはいかなくなったね!」
「何か気合いが入りマース!」
「ねっ、千歌ちゃん!」
振り向きながら千歌に呼び掛ける曜だったが……千歌はまだ改札の前に留まって、梨子が消えたところを見つめていた。
「千歌ちゃん……」
その背中を、曜もまた見つめた――。
アルトアルベロタワー、社長室。
「くそぅ……ひどい目に遭った」
サルモーネは全身包帯でグルグル巻きの状態で、社長の椅子に座っていた。前回、ホロボロスにズタボロにされたことで重傷を負ったのである。
「何が起こったのかは分からんが、きっと全部あのぼんくら兄弟どものせいだ! リングもまた奪われてしまったし……何で私がこんな目に遭わなきゃならんのだ~!」
人のせいにしてジタバタと暴れるサルモーネだが、すぐ身体に激痛が走って悶える。
「あッたたた……! 滅茶苦茶痛い……!」
「社長、落ち着いて下さい。一か月は安静にしなければいけません」
苦痛にあえぐサルモーネを氷室が諫める。
「その間は、活動はどうかお控えを」
「うーむ、仕方ないか……。その代わりに!」
サルモーネはギプスをはめた手で氷室を指した。
「氷室君! 君が行ってリングを取り返してくるのだッ!」
「私が……ですか?」
「特別にAZジャイロ貸してあげるからさ! この私専用のッ! 君だから特別にだよッ!」
やたらと特別を強調するサルモーネに、氷室が冷めたような目を、デスクの上のジャイロに向ける。
「……これは我々で共同開発したものですが」
「あー、そうだったっけ? まぁ細かいことはいいじゃないか!」
軽くとぼけたサルモーネは、繰り返し氷室に命令した。
「ともかく、取り返してきてくれたまえ! 吉報を待ってるよ!」
「はぁ……」
若干気のない返事で、氷室がジャイロを手に取った。
夕方、功海は綾香市のバイブス波を観測しながら内浦をパトロールしていた。
「……異常はなし、か。サルモーネの奴も、あんだけの重態だから当面は大人しくするつもりかな」
独りごちながらコンビニの前を通りがかると、その敷地内で千歌と曜の二人を見かける。
「おッ、千歌たちだ。あんなとこで練習してんのか?」
千歌と曜はコンビニの横でダンスの練習をしている。が、途中で二人の肩と肩がぶつかってしまった。
「あたっ!」
「ごめん……!」
「ううん、私がいけないの。どうしても梨子ちゃんと練習してた歩幅で動いちゃって……」
と千歌が言うと、曜が一瞬複雑そうな顔となる。そこに近寄っていく功海。
「おーい千歌ー、よーう」
「あっ、功海お兄ちゃん」
「功兄ぃ」
振り返った二人に功海は言葉を掛ける。
「随分張り切ってんな。けど、その割には上手くいってねぇみたいだけど」
「あはは……。梨子ちゃんがいない分、立ち位置を変更したからね」
千歌は苦笑いしながらそう返した。
「梨子ちゃんのところに曜ちゃんに入ってもらったんだけど……歩幅が違うと間隔って大分変わってくるんだね。さっきからぶつかってばっかで。曜ちゃん、もう一度やってみよう!」
「うん。だけど……」
千歌の呼びかけに、曜がうなずきつつも提案する。
「千歌ちゃん。もう一度、梨子ちゃんと練習してた通りにやってみて」
「えっ、でも……」
「いいから。行くよ!」
戸惑う千歌を促しながら、曜が千歌と所定の位置に並んで立つ。
「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイト!」
拍を取りながら離れていた二人が近づいていってポーズ。最後に肩を寄せ合うタイミングで今までぶつかっていたが、今回は触れずにギリギリの距離で止まった。
「おぉ、出来たじゃねーか!」
「天界的合致!」
功海と、物陰から様子を見ていた善子たちが声を弾ませた。
「曜ちゃん!」
「これなら大丈夫でしょ?」
「う、うん! 流石曜ちゃん! すごいね……」
曜が千歌に笑いかけていると、千歌の携帯に電話が掛かってくる。
「あっ、梨子ちゃんからだ! もしもーし?」
千歌が電話に出ている間に、功海が曜に話しかける。
「悪りぃな、曜。千歌に合わせてくれたんだろ」
「うん、まぁ……」
「あいつ、なかなか人のこと考えないとこあるからなー。つき合ってて大変なことも少なくないだろ」
「あはは。それ功兄ぃが言う?」
「なにぃ~? お前言うようになったじゃねぇか曜~!」
「きゃ~♪ 功兄ぃがいじめる~♪」
功海と曜がじゃれ合っていたら、梨子と通話していた千歌がスマホを曜に向けてきた。
「曜ちゃん! 梨子ちゃんに話しておくこと、ない?」
「え……」
曜は瞬く間に真顔になって、千歌へ振り返った。
「えっと……」
曜が何やら返答をためらっていると、千歌のスマホがピー、ピーと電子音を出す。
「あっ、ごめん! 電池切れそう……。またって言わないでよ~。まただけど……」
慌てて携帯を自分の耳にあてがう千歌。彼女の意識から外れた曜は、複雑そうに眉を寄せた。
梨子に謝りながら通話を終えた千歌は、立ち上がって曜に向き直る。
「じゃあ曜ちゃん、私たちももうちょっとだけがんばろっか!」
「……うん、そうだね!」
傍目からだと快活そうに応じた曜だが、かすかに歯切れが悪いことに功海が気づき、曜に視線を向けた。
「……」
その後、功海らと別れて一人帰宅するところだった曜は、道中で鞠莉と遭遇し、大型展望水門へ場所を移し、そこで話をしていた。
「……千歌ちゃんと?」
「ハイ! 上手くいってなかったでしょー?」
「あ……それなら大丈夫! あの後二人で練習して上手くいったから!」
「イーエ。ダンスではなく……チカっちを梨子に取られて、ちょっぴり、嫉妬ファイヤー♪ が、燃え上がってたんじゃナーイの?」
「し、嫉妬!?」
内心を見抜かれて動揺した曜に、鞠莉は己の経験を踏まえながら助言を与える。
「要はチカっちのことが大好きなんでしょ? なら、本音でぶつかった方がいいよ。大好きな友達に本音を言わずに、二年間も無駄にしてしまった私が言うんだから、間違いありません♪」
「あ……」
鞠莉の言葉で、それまで暗くなりがちだった曜の表情が、わずかにだが明るくなった。
「それじゃ、気をつけて帰ってね♪」
これで話は終わりとなって、鞠莉は曜の下から離れていこうとする。――その寸前に、
「――随分と熱心なのだな」
「え?」
「What’s?」
いつの間にか、二人の近くに一人の見知らぬ少女が立っていて、その子が急に話しかけてきた。
全身黒い、ゴシック調の洋装の少女。善子が好んで着るものよりは派手ではないが、少女自身の纏う雰囲気が妙に俗世離れしているため、ある意味ではこちらの方が堕天使らしく見える。そんな不思議な少女であった。
「……鞠莉ちゃん、知り合い?」
「いいえ。覚えはないけれど……」
記憶にない人物から突然話しかけられた二人は戸惑い気味だが、当の少女はお構いなしという風に質問してくる。
「どうしてあそこまで一生懸命になれる? 何もお前たちが、あそこまで身体を張る必要はないのではないか?」
少女の口ぶりに、自分たちスクールアイドルに興味のある子なのかなと考えた曜が返答する。
「ううん。誰かに任せてたら、結局何も変わらないかもしれないから。だから私たちがやるんだよ」
「だが、お前たちがやったところで何も変わらないかもしれない」
「そうかもしれないけど……だけどやらないで後悔するよりはいい。だから、どんなに大変でも苦しくても、頑張ることが出来るの!」
「……そうか」
曜の唱えたことに、黒衣の少女は短くつぶやいて、納得をしたのかは定かではないが、踵を返して曜たちの前からスタスタと立ち去っていった。
その後ろ姿を呆然と見送った曜が、鞠莉に振り返る。
「あの子、どこの子なんだろ。ここらじゃ見ない顔だったけど……。でも、私たちのファンなのかな? わざわざスクールアイドルのこと聞いてきて」
と言うと、鞠莉は考え込みながら首を振った。
「もしかしたら……スクールアイドルのことを聞いてたんじゃないのかも」
「え? それだったら、何のことを……」
一瞬唖然としたものの、答えに考えついた曜は、朗らかに笑い飛ばした。
「まっさかぁ。いくら何でも考えすぎだよ。あんな会ったこともない子が、ウルトラマンのこと知ってるはずないって。考えすぎだよ鞠莉ちゃん」
「ええ……まさかそんなはずはとは思うんだけれど。でも、普通じゃない子というのは確かだと思う」
曜に諭されても、鞠莉は少女の得体の知れない雰囲気によって沸き上がった胸騒ぎが収まらずに、眉間に皺を寄せた。
――曜と鞠莉がいる展望水門を、氷室が外から見上げていた。
「……」
彼は曜たちの姿を窓ガラス越しに確認すると、サルモーネから借り受けたAZジャイロと「恐」のクリスタルを取り出して、セットする。
[ハイパーゼットンデスサイス!]
そして無言のままにレバーを三回引き、充填したエネルギーを解放した――!