見知らぬ少女に急に話しかけられて、微妙な空気になったりもしたが、曜と鞠莉は改めて帰ろうとした。
が、その時に、どこからかズシィンッ! と激しい震動が起こって二人を揺さぶった。
「ひゃっ!? な、何なに!?」
「今のは……!」
鞠莉の顔に緊張が走って、窓へと首を向けた。その向こうに見えたものに、二人が息を呑む。
「ピポポポポポ……ゼットォーン……」
全身漆黒の甲殻に覆われた、人型でありながら明らかな異形の巨大怪物が湾内にそびえ立っていた。顔面に顔のパーツがない代わりに十字型の発光体が張りつき、腕の先は鎌状となっている。
氷室の手によって召喚された宇宙恐竜、ハイパーゼットンデスサイスだ!
「か、怪獣!」
「またサルモーネの仕業!?」
海面をかき分けながらこちらの展望水門に接近してくるハイパーゼットンデスサイスの姿に、曜と鞠莉は焦りを浮かべた。
「すぐにここから逃げましょう!」
「う、うん! 功兄ぃたちを捜さなきゃ!」
流石に慣れたもので、二人は冷静な判断の下にすぐさま水門の非常口に向かって駆け出し、ゼットンが攻撃してくる前の脱出を試みた。
克海と功海は怪獣出現のバイブス波をキャッチして、すぐに水門前に飛んできた。
「いたぞ!」
「サルモーネの野郎、もう悪だくみを再開しやがったのか!」
「あれだけのダメージで、もう動けるようになってるとは思えないんだが……」
車から降りた克海と功海の下へ、ちょうど水門から外に走り出てきた曜と鞠莉が寄ってくる。
「克海! 功海! もう来てたのね!」
「鞠莉ちゃん、曜ちゃん! 何でこんなところに……」
「克兄ぃ、逆かもしれないぜ。曜たちを狙って召喚したのかも」
「私たちが狙い!?」
目を見張る曜。
「曜たちの方を狙うなんて、卑怯な手を使いやがる!」
「だが、今更二人に何の用が……」
「そんなこと話してる場合じゃないわよ! 怪獣を上陸させちゃ駄目!」
鞠莉の言う通り、ゼットンはこうしている間にも陸地にどんどん近づいてきている。
「そうだった。行くぞみんな!」
「おうよ!」
「ヨーソロー!」
克海と功海が拳を打ち鳴らし合って、ルーブジャイロを前に突き出した。
「「俺たち色に染め上げろ! ルーブ!!」」
そして克海が目元でピースサインしながらウィンクする鞠莉を、功海が敬礼する曜を背にしながらクリスタルを選び取る。
「「セレクト、クリスタル!」」
[ウルトラマンタロウ!]
[ウルトラマンギンガ!]
克海は火の、功海は水のクリスタルを選択してジャイロにセットした。
「纏うは火! 紅蓮の炎!!」
「纏うは水! 紺碧の海!!」
「ヨーソロー!」
グリップを三回引いて、エネルギーチャージ!
[ウルトラマンロッソ! フレイム!!]
[ウルトラマンブル! アクア!!]
変身して飛び出していったロッソとブルが、ハイパーゼットンデスサイスの頭上を飛び越えて海面に着水した。
『『はッ!』』
「ピポポポポポ……ゼットォーン……」
堂々と決めポーズを取った二人に、ゼットンは180度振り返って両手の鎌を向ける。
『……普通に変身できたな。やっぱ、ジャイロが壊れたとかじゃないみてぇだ』
己の身体の調子を確認するブル。千歌の時はジャイロに拒まれたことを思い出している。
『じゃあ何が理由で……』
『今は気にしてる場合じゃないぞ、功海! 敵は目の前だ!』
ロッソの喝で我に返るブル。
『そうだったな。まずは俺たちから行くぜ!』
『「相手の手が鎌になってるよ! 危ない!」』
『だったらスラッガーだ!』
ブルはゼットンに対抗して剣で武装して、海面をかき分けながら猛然と肉薄していく。
『はぁぁッ!』
「ピポポポポポ……」
振り下ろされたルーブスラッガーブルを、ゼットンは腕の鎌で受け止めた。
『俺たちも行こう!』
『「OK!」』
ロッソの方もルーブスラッガーロッソを抜刀し、左に回り込みながらゼットンに斬りかかっていく。
『はッ!』
「ゼットォーン……」
片手が使えないゼットンでは双剣の攻撃は防ぎ切れないと思えたが、ゼットンは身をひるがえして斬撃をかわした。追撃を掛けようとするロッソだが、海の水に足を取られて思うように前に進めない。
『くッ、海の上だと動きづらいな……』
『けど、それは向こうだって同じはず……!』
とつぶやくブルだったが、
「ゼットォーン……」
ゼットンは渦巻きのように肉体が歪んで瞬時に消失した。
『はぁッ!?』
『「ど、どこ行ったの!?」』
動揺するブルたち。その背後に、ゼットンは瞬間移動していた。
『なッ……!』
「ピポポポポポ……」
咄嗟に振り向くブルだが、暗黒火球を肩に食らって吹っ飛ばされる。
『うわあぁぁぁッ!』
『功海ッ! こいつッ!』
ロッソがスラッガーを振るうもゼットンはワープで逃れ、ロッソの背後を取って鎌で切りつける。
『ぐわぁッ!』
『「アウチっ!」』
ロッソもまた海面に突っ伏したが、ブルとともにすぐに持ち直した。
『くそッ、瞬間移動できるのか……!』
『そんなんチートじゃねぇか!』
毒づくブル。ゼットンは鎌をもたげてこちらの動向を窺っているが、これでは迂闊に攻め入る訳にはいかない。
たじろいでいるロッソとブルに、鞠莉が激励する。
『「バラバラに攻撃してたら翻弄されるだけよ! Combinationを活かすの! 二人の気持ちを合わせて!」』
『「二人の気持ち……!」』
その言葉に、曜が一番反応した。
『そうだな! 行くぜ克兄ぃ!』
『ああ! 功海!』
ロッソたちはうなずき合うと、ブルが先行してゼットンにもう一度斬りかかっていく。
『おおおおッ!』
その間に鞠莉がクリスタルホルダーに手を伸ばして、新しくクリスタルを選択した。
『「Select, Crystal!」』
風のクリスタルから二本角を出して、ジャイロにセット。
[ウルトラマンティガ!]
『纏うは風! 紫電の疾風!!』
鞠莉がジャイロのグリップを引いていき、三回目で掲げる。
『「シャイニー☆」』
[ウルトラマンロッソ! ウインド!!]
ロッソの体色が紫に変わり、ロッソウインドにタイプチェンジする。
そしてブルの斬撃をワープで回避したゼットン目掛け、ジャンプで海面から跳び立ってスラッガーを振るう。
『はぁッ!』
「ピポポポポポ……ゼットォーン……」
風を纏いながらの素早い剣戟。しかしゼットンの身のこなしも速く、鎌でガード。そこにブルが飛び込んで突きを繰り出すも、またワープで逃げられる。
『「そこネー!」』
しかし鞠莉はゼットンの出現先を見切り、ロッソが両拳から球場の風を飛ばした。
「『ストームフリッカー!!」』
風は実体化したばかりのゼットンに命中し、風圧で動きを封じ込む。
「ピ……ポポポポポ……」
『「やった! 鞠莉ちゃんすごい!」』
『「うふふ。向こうの動きの癖を掴んだの」』
『やるじゃん! 次は俺たちの番だ!』
ゼットンの動きを抑えている内に、ブルが手の平から水流を放つ。
「『アクアジェットブラスト!!」』
顔面に水を被せて、水圧で更にひるませるブル。そこで曜が雷のクリスタルをスラッガーにセットした。
[ウルトラマンエックス!]
『「たぁーッ!」』
ブルが高々と跳躍し、ゼットンを狙ってルーブスラッガーを思い切り振り下ろす。
「『スパークアタッカー!!」』
「ゼットォーン……!」
電撃を纏った斬撃は、水を被っていたゼットンの全身を麻痺させて大きな痛手を与えた。
『今だッ! 一気に決めるぞ!』
『「イエース!」』
この機を逃すまいと、鞠莉がオーブリングNEOに手を伸ばす。掴まれたリングが光り輝き、鞠莉の指がボタンを押した。
「『ストビュームダイナマイト!!」』
ロッソの全身が炎に包まれ、更に風を纏いながらゼットンに突撃。正面からタックルを決める。
「ピポポポポポ……!!」
『「シャイニー!!」』
鞠莉が叫ぶと同時に大爆発! これによってハイパーゼットンデスサイスを粉砕した。
『「やったぁー!」』
『決まったぜ!』
カラータイマーが時間を報せる中、ブルはロッソに歩み寄ってパシッとタッチ。そして二人並んで空に飛び上がり、沈みゆく夕陽に向かって飛び去っていった。
――氷室はその後ろ姿を、じっと観察しながら独りごちた。
「……順調に成長しているようだ」
後日、ラブライブ予備予選直前の会場。
「そっか。千歌と新しくダンス作り直したのか」
「うん!」
ライブが始まるまでの時間に、Aqoursの応援に来た功海と克海が、曜から事の顛末を聞いていた。
初めは千歌に合わせたステップを取るつもりの曜であったが、考え直した千歌が、曜自身のステップと合わせるようにダンスを一から作り直すことを提案。彼女の気持ちに触れた曜は、心の中のわだかまりが解消され、快活に笑うようになっていた。
それに気づいた功海がからかう。
「おい何だよ~。随分といい笑顔になったじゃんか? 全くこの千歌スキーめがぁ~! そんなに嬉しいのかよ!」
「え~? 別にいいじゃーん。千歌ちゃん好きってのは人のこと言えないでしょ~?」
「な、なーに言ってんだこいつ! 曜のくせに生意気だぞ~!」
「功兄ぃのくせに偉そうに言うな~!」
明るく功海とじゃれ合う曜の様子をながめた克海が、鞠莉と微笑みを交わす。
「予備予選、上手く行きそうだな」
「もちろん! 私たちのPerformance、しっかり見てて下さいネー、克海♪」
「もちろん。精一杯応援するよ」
克海の言葉にうふふと満悦気味の鞠莉だったが、ふと顔を上げて告げる。
「あっ、そういえば、この間の戦いの直前に少し変わった女の子と出会ったの」
「変わった女の子?」
鞠莉の言葉に曜が振り向いて声を上げた。
「あーそれ! あの子、あの後どこにもいなかったけど、大丈夫だったのかな?」
「変わったって、どんな奴だったんだ?」
功海が気になって尋ねると、曜と鞠莉で説明する。
「格好や雰囲気は善子ちゃんみたいな感じなんだけど、妙に落ち着いてて大分自然なの。善子ちゃんみたいな、わざとらしさがないっていうか。どっちかって言うとSaint Snowの聖良さんたちに近いかな」
「初対面なのに、何でそんなに一生懸命なのか、なんてこといきなり聞かれてね。……それに、一番不思議に感じてるのは……何だか、初めて会った気がしなかったの」
「あっ、鞠莉ちゃんもそれ思ったの? 実は私もなの! 何か、ずっと前から知ってるみたいな。変な感じだけど」
「曜はそうなの? 私はそこまでじゃなかったけど」
二人の説明の後半が、あまり要領を得ないものだったので、克海と功海は今一つ想像がつかなかったし、大して気に留めなかった。
「へぇ……よく分からんが、世の中には色々と変わった子がいるんだな」
「そんなことよりそろそろ時間じゃね? 早くみんなのとこ行ってこいって!」
「あっ、うん!」
曜と鞠莉は最後に、梨子から送られてきたシュシュを巻いた手首に目を落としながらうなずき合った。
「東京でがんばってる梨子ちゃんのためにも!」
「予備予選、絶対突破しマース!」
「その意気だ! 二人とも、頑張ってこい!」
「最高のステージにしろよー!」
「「うんっ!!」」
克海と功海に送り出され、曜と鞠莉は勢いよくAqoursの仲間たちの元へと駆けていった。
そして、Aqoursのステージが始まる。
(♪想いよひとつになれ)
観客席からAqoursを見守る克海と功海は、センターの千歌と曜の息の合ったダンスに特に見惚れる。
「おお……ちょっと心配だったが、千歌も曜ちゃんも息ぴったりだな」
「ああ。ふたりとも、輝いてるぜ!」
もちろん他の六人のダンスも見事なものだが、肩が触れ合いそうなほどに距離をギリギリまで詰めているにも関わらず、互いの動きを阻害しない完璧な距離感を保っている千歌と曜のステップは、彼らの目にひと際輝いて映っていた。
ステージ上で天真爛漫に踊り切る千歌と曜の姿に、克海が満足げにうなずく。
「今は、あのふたりは煌めく星だな……」
――会場の観客席の最後部にて、曜と鞠莉と接触した黒衣の少女が、ステージ上のAqoursのライブをじっと観ていた。
「……」
やがて八人のライブが終了すると、少女は他のグループのライブは観ようとはせずに、扉をくぐって通路に出る。
しかしそこで、後ろからある男に声を掛けられた。
「――先日、ホロボロスを召喚した娘だな」
少女の足がピタリと止まり、後ろに振り返る。
そこにいたのは、氷室仁である。
「……何故そのことを知っている」
少女の問い返しに、氷室は答えずに、代わりにこう切り出した。
「話がある」
『Aqoursのウルトラソングナビ!』
鞠莉「シャイニー☆ 今回ご紹介するのは、『ウルトラマンエース』デース!」
鞠莉「この歌は『ウルトラマンA』の主題歌! 歌うのはみすず児童合唱団と、ハニー・ナイツデース! ハニー・ナイツは当時の色んな特撮やアニメ作品に関わってることで有名な男性コーラスグループなのデース!」
鞠莉「『A』は男女変身やレギュラー悪役といった、シリーズ初の要素をふんだんに盛り込んだ作品なので、歌詞にもそれらの単語が入れられてマース! 後に夕子は降板しますが、彼女の名前が入った一番は最後までオープニングに使用されてました!」
鞠莉「実は『A』の元々のタイトルは『ウルトラエース』だったのですが、商標の問題で『ウルトラマンエース』に変更されました。これがなかったら、代々のシリーズは『マン』を抜いたタイトルになってたかもしれませんネー」
克海「そして今回のラブライブ!サンシャイン!!の曲は『Pops heartで踊るんだもん!』だ!」
功海「テレビシリーズのBlu-ray第一巻の特装限定版の特典曲だ! タイトル通り、ポップなイメージを思いっ切り押し出した一曲だぜ!」
克海「ブルーレイディスク、それも限定版を購入した人だけが入手できるCDだから聴いたことのない人も多いだろうが、それでも一度でも聴いてほしいな」
鞠莉「それじゃ、次回でお会いしまショー☆」
鞠莉「私たちAqoursは順調に成果を上げてますが、肝心の浦女存続は目途が立たないまま……。私たちとμ'sで何が違うのか、その答えを探します」
梨子「でも怪獣はスクールアイドルに集中させてくれない。また強敵が現れた!」
鞠莉「もうっ! いい加減にしてほしいデース!」
梨子「次回、『夢のとりでを照らしたい』!」
鞠莉「次回も、シャイニー☆」