ウルトラブライルーブ!サンシャイン!!   作:焼き鮭

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夢のとりでを照らしたい(A)

 

\前回のウルトラブライルーブ!サンシャイン!!/

 

善子「予備予選を前に、梨子の代わりに千歌と闇の契約を結んだ曜。千歌との間に、漆黒の鼓動を打つ悩みを抱えていた。しかし闇黒の魔神との戦いを乗り越えた後に、遂に神々の黄昏、ラブライブに堕天したのです!」

 

 

 

 『四つ角』にて、功海がドタドタと走りながら克海の元に飛び込んできた。

 

「克兄ぃ克兄ぃ! 大変だぜ大変!」

「功海! 旅館の中を走るなって何回言ったら分かるんだ!」

「それどころじゃねーって! 千歌たち、予備予選突破したんだぜ!」

 

 功海が見せつけたスマホの画面には、ラブライブの予備予選合格グループの一覧が表示されており、その中にAqoursの名前があった。

 

「千歌たち、やるじゃねーか! こりゃもしかしたらもしかするかもよ!?」

「はしゃぎすぎだろ。まだ全国どころか、地区予選もあるってのに」

「それでもさ! 最初の頃を思えば、すっげぇ人気の上昇具合じゃんか! この前のPVだって15万再生突破したんだぜ! この調子なら、優勝だって夢物語じゃねぇって! そうは思わね?」

 

 すっかり自分のことのように浮かれ調子な功海であるが……克海は対照的に、重い表情であった。

 

「……克兄ぃ、何かあったの?」

 

 それに気づいて、功海もクールダウンする。

 

「実はな……鞠莉ちゃんから聞いたんだが」

「うん」

「肝心の学校説明会の参加希望者が……未だに0人のままなんだそうだ」

「えッ……!?」

 

 克海から打ち明けられた事実に、功海も衝撃を禁じ得なかった。

 

「マジかよ……。もうすぐ九月で、二学期も始まるってのに」

「いくら千歌たちが頑張ったとしても、当初の目的である浦の星が存続できなければ、どうしようもない……。浦女がなくなれば、Aqoursも事実上解散だからな……」

「そっか……。現実ってやっぱ、そうそう甘くないんだな……」

 

 功海も肩を落として、克海の向かい側に腰を落とす。

 

「何でも、μ'sは今の千歌たちとほぼ同時期には、もう廃校の撤回がほぼ決まってたらしい。随分と状況が違うな……」

「まぁ……冷静になって考えりゃ、やっぱ全然違うっしょ。向こうは秋葉原の学校でしょ? 立地の条件が全然違うじゃん」

「確かにな……。いくら千歌たちが有名になったとしても、それだけでこの内浦の学校に通いたいかと言われたらと考えれば……ある意味当然の話ではあるな」

「けど、そしたら千歌たちはどうすればいいんだろうな?」

「全く分からんし、こればかりは千歌たち自身でどうにかしなきゃいけないことだろう。俺たちがここでああだこうだ言ったり、口を挟んだりしたところで、どうにもならない」

 

 結局は彼女たちを見守るしかない、と、二人はそういう結論に達した。

 

 

 

『夢のとりでを照らしたい』

 

 

 

 その後、克海と功海は千歌から、あることを打ち明けられた。

 

「えッ、また東京に行く?」

「そうなのっ!」

 

 千歌は身を乗り出しながら、二人に向かって力説する。

 

「色々考えて、思ったの。今のままの私たちじゃ、どうしたところで浦の星に入学希望者を呼び込めない。μ'sと私たちのどこが違うのか、μ'sがどうして音ノ木坂を救えたのか、それをこの目で見て、みんなで考えたいって。前の時はそんなこと全然頭になかったけど、今ならμ'sの足取りから何か掴めるんじゃないかなって……。ダメ、かな?」

 

 千歌の問いかけに、克海たちは笑顔で返した。

 

「ダメな訳があるもんか。お前が決めたのなら、存分に行ってくるといいさ」

「土産話、楽しみにしてるぜ!」

「! うんっ、ありがとう! お兄ちゃんたち、大好きっ!」

 

 兄たちに快く送り出され、千歌は満面の笑みを二人に返した。

 

 

 

 後日、千歌たちAqoursの九人は、μ'sの成功の秘訣を掴むために東京へ出発し――そして帰ってきた。

 

「おう。お帰り、千歌!」

「ただいま、お兄ちゃん!」

「梨子ちゃんも、コンクール金賞おめでとう」

「ありがとうございます。これ、東京のお土産です」

 

 『四つ角』の居間で克海と功海は、帰ってきた千歌と久々に顔を合わす梨子と机を囲んでいた。梨子は二人に菓子折りを差し出す。

 

「それで千歌、結局答えは見つかったのか?」

 

 功海が成果を尋ねると、千歌が笑顔でうなずいた。

 

「うんっ! 分かったの。私たちは私たちのままで、自由に走ればいいんだって!」

「え?」

 

 一瞬キョトンとする兄弟に、千歌が詳しく語る。

 

「μ'sのすごいところは、何もないところを、何もない場所を、思いっきり駆け抜けたことなんだって、東京で感じたの。だから……μ'sのようになりたい、μ'sのように学校を救いたいって考えじゃダメなんだって。私たちはμ'sに囚われず、私たちのありのままに輝くべきなんだ。それが、浦の星を救うために必要なこと。これが私の出した結論だよ!」

 

 千歌の答えを聞き、功海が冗談交じりに返す。

 

「なーんかありがちな結論だな。東京まで行って考えついたのがそれかよ」

「えー!? ダメなのー!? これが私の精いっぱいの気持ちだよー!」

「まぁ……確かに言葉だけならありきたりかもな。だが、単純なことこそ頭じゃなく心で感じ取るのが難しいのかもしれない。少なくとも、迷いを振り切ったならそれだけで行った意味があると俺は思うぞ」

「さっすが克海お兄ちゃん! 分かってくれるー!」

「克兄ぃは相変わらず言うことが優等生だなー。ま、千歌がそれでいいってなら俺も異論はないさ。肝心なのは、結果が出せるかだ!」

「うんっ! これから、私たち自身の輝きを前に押し出して、たくさんの人に見てもらう! それで私たちを育てた浦女はすごいところなんだって、みんなに知ってもらうの! 頑張るぞー!」

 

 張り切る千歌に思わず笑みがこぼれる克海と功海。

 話にひと区切りがついたところで、梨子がふと克海たちに尋ねかけた。

 

「ところで、私たちが東京に行ってる間、綾香市は大丈夫だったんですか? ニュースとかでは、怪獣が出たとは聞きませんでしたけど……」

「ああ、それなら心配はいらないさ。意外なほど、何も起きなかったから」

 

 克海が安心させるようにそう答えた。

 

「俺たちもちょっと警戒してたけどさ、ほんと何も起きなかったよな。平和そのものだったぜ」

「こっちとしても、そっちに何かしらのちょっかいが出されるんじゃって不安だったけど、その調子だと大丈夫そうだな」

「ならいいんですけど……。でも、どうして向こうは何もしなかったんでしょう。敵からしたら、私たちが離れてる時こそ都合がいいでしょうに……」

「さぁな……。何か事情があったのかもしれない」

「どうせ、傷の疼きがひどくて何もする気が起きなかったってとこじゃねぇの?」

 

 サルモーネからの動きが一切なかったことを、功海たちはそう深くは捉えなかった。

 

 

 

 アルトアルベロタワーの社長室では、依然として包帯ぐるぐる巻きのサルモーネが氷室を叱りつけていた。

 

「氷室君ッ! 君、どうして昨日は何もしなかったの! 戦いを仕掛けるのには何の問題もなかったはずでしょ!? あの兄弟とAqoursの連中が分断してる時こそ絶好のチャンスだったってのに!!」

 

 カンカンなサルモーネに対して、氷室は至って冷静に反論する。

 

「お言葉ですが社長。敵が分散している状況で戦いを仕掛けようなどと、社長の美学に反するのではないでしょうか」

「えッ?」

「相手の弱っているところにつけ込むなどと、それこそまさに三下の卑劣漢が好んで使う手口。社長は、誰にも負けない偉大なヒーローを目指されているお方。それを思えばこそ、私もいつ如何なる時も自らに恥じるような振る舞いはしないつもりなのです」

「……」

 

 説得され、サルモーネが押し黙る。

 

「勝利を得るならば、相手の本領が発揮できる状態で……。常に騎士道精神に溢れる者こそ、真のヒーローなのではないでしょうか」

 

 と囁かれ、虚栄心をくすぐられたサルモーネはあっさりと己の発言を撤回する。

 

「そうだね、その通りだ! いや~すまないね氷室君、ちょっと焦りすぎちゃってたよ。君はやっぱり私のことをよく分かってくれている! もう何も構うことはないから、存分に君のやり方で戦うといいよ!」

「ありがとうございます。それでは、日を改めてリングを奪い返しに向かいます」

「うんうん! 頑張ってねー! 期待してるからねー!」

 

 ペコリと一礼して、サルモーネの前から退室していく氷室。――社長室の扉を閉じた瞬間に、大きく眉間をしかめた。

 

「……馬鹿の相手は疲れる」

 

 

 

 予備予選を通過したとしても、当然ながらラブライブはそれで終わりではない。次は地区予選。その開催日は、既に目前に迫っている。

 

「ふぅ~……今日も暑くて、練習大変だった~……」

「お疲れさま、千歌」

 

 夜。テーブルの上にぐでぇっと溶けるように突っ伏した千歌に、克海が労いの言葉を掛けた。それから功海が尋ねかける。

 

「調子はどうなんだよ。地区予選は大丈夫そうか?」

「うん、やれるだけのことは毎日やってるけど……。あっ、そうそう!」

 

 バッと顔を上げて、克海たちに報告する千歌。

 

「実はね、今日、むっちゃんたち……クラスメイトの子三人が、一緒にラブライブに出てくれるって申し出てくれたんだ! 他の子も誘ってくれるって!」

「え?」

「それ、受けたのか?」

「もちろん!」

 

 意外な内容に、功海も克海も唖然。

 

「けどお前……今からじゃ到底間に合いっこねぇだろ。その子たち、何の練習もしてねぇんだろ?」

「そりゃあ踊ったりは無理かもだけど、一緒にステージで歌うとかなら間に合うんじゃないかなって。私たち九人だけじゃなく、学校全体で協力してラブライブで成功できたら、強いアピールになるし。きっと入学希望者もたくさん来てくれるって思うの」

「……まぁ、そういうことなら確かに上手くいった時のリターンが大きそうだけど」

「でしょ? それに何より……今は、0を1にしたい」

 

 功海に対して、強い想いを述べる千歌。

 

「……けど千歌、確かラブライブは……」

 

 千歌の言葉を聞いて、克海が何か言いかけたが――。

 

 

 

 それとほぼ同時刻に、氷室は一人、小高い丘にある内浦の展望台に立っていた。そこで夜のとばりに覆われている町をぐるりと一望してから、AZジャイロと「暴」のクリスタルを取り出す。

 

ギャラクトロン!

 

 クリスタルをジャイロの中央にセットして、グリップを三回引く――!

 

 

 

 克海たち兄妹の会話は、外から発生した大きい地響きで打ち切られた。

 

「ひゃっ!? この揺れって……!」

 

 同時に功海のスマホが、バイブス波検出のアラートを鳴らす。

 

「この反応は……!」

「近いぞ!」

 

 克海がカーテンをバッとめくると、窓の外に見える景色の中に、竜人型の巨大ロボットが夜の闇の中にたたずんでいるのが発見される。

 

「怪獣だ!」

「サルモーネの野郎……また仕掛けてきやがったかッ!」

 

 そう決めつける功海と克海。二人のすべきことは決まっていた。

 

「千歌、行ってくる!」

「ここはまだ離れてるけど、危なくなったらしいたけ連れて逃げるんだぜ!」

「うんっ! お兄ちゃん、お願いね!」

 

 千歌に端的に言い聞かせ、二人はすぐさま夜の町に向かって飛び出していった。

 

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